企業経営における集団心理とは?具体的な影響やリスク対策を解説

企業の組織運営において、集団心理は大きな影響を及ぼす要素の一つです。良い面もあれば、意思決定を誤らせるリスクも潜んでいるため、メカニズムを理解し適切に対策を講じましょう。集団心理の意味や企業に及ぼすリスクへの対策を解説します。

集団心理の基本

私たちは一人で行動するときと比べ、集団に属すると考え方や行動が大きく変わることがあります。このような「集団心理」は、協力や団結を生み出す一方で、誤った判断や行動にもつながりかねません。

まずはその基本を理解することが、健全な組織運営の第一歩となります。

集団心理とは

集団心理とは、人が集まったときに個人の思考や行動に影響を与える心理的傾向のことです。集団心理の作用によって、個人では行いにくい行動が集団の中で活発になることがあります。

例えば、清掃や募金といった社会貢献活動は、集団に参加することで参加への動機づけが高まりやすくなるでしょう。一方で、集団に流されて冷静な判断ができなくなり、行動が過激化するリスクもあります。

企業においても、チームワークの強化や士気の向上といった良い効果が生まれやすい反面、建設的な意見が出にくくなったり、問題点を指摘できず誤った判断が組織全体に広がったりするリスクもあります。集団心理の影響を理解し、健全な意思決定ができる仕組みを整えることが重要です。

集団心理のメリット

企業における集団心理のメリットは、協力体制が築かれやすく、個人では成し得ない成果をチームで達成できる点です。大きな挑戦にも取り組みやすくなり、新規事業や社会貢献活動への積極性が高まります。

「みんなでやる」という同調性が賛同を得やすくし、意思決定や施策の浸透をスムーズにする点もメリットです。また、感情表現が活性化し、職場の雰囲気や一体感の強化にもつながるでしょう。

集団心理のデメリット

企業における集団心理のデメリットは、同調圧力によって個人の意見が言いづらくなり、多様な視点が失われる点です。その結果、誤った判断や偏った意思決定が行われやすくなります。

また、周囲に流されることで不適切な行動にも参加しやすくなり、組織全体が望ましくない方向へ進む危険があります。集団内で感情が高まりすぎると冷静さを欠き、衝突や暴走につながる可能性もあり、健全な組織運営を妨げる要因となるでしょう。

企業に影響を及ぼす集団心理のメカニズム

企業の意思決定は個人の能力や意志だけでなく、同調圧力や責任の分散、内集団バイアス、集団浅慮などの集団的な心理メカニズムによって影響を受けます。これらのメカニズムを理解し制御することが、健全な組織運営に不可欠です。

同調圧力

同調圧力とは、集団の中で多くの人が持つ意見や行動に合わせるよう、無意識のうちに個人へ働きかける心理的な力のことです。企業組織では、チームの和を乱さないために社員が多数派に従う傾向が強まりやすく、結果として発言や行動の自由度が制限されます。

同調圧力には、互いの足並みを揃えることでチームワークやモチベーションを高め、組織全体の生産性向上に寄与する利点があります。一方で、従業員が自分の意見を出しにくく主体性を失いがちになり、新しい挑戦や革新的な発想が生まれにくくなるという大きなデメリットも伴うのです。

責任の分散

企業の会議では、参加者が多いほど「誰かが発言するだろう」と考え、意見を控えてしまう傾向があります。これは「責任の分散」と呼ばれる心理です。人数が増えるほど当事者意識が薄れ、主体的な行動が抑制されます。

また、周囲の反応をうかがい沈黙を選ぶ「多元的無知」や、他人の評価を気にして発言を避ける「聴衆抑制」も作用しやすく、結果として会議の質が低下し、重要な意見が出にくくなるリスクを生み出します。

内集団バイアス

内集団バイアスとは、自分が属する集団やそのメンバーを他の集団よりも高く評価し、好意的に感じる傾向のことです。自部署やプロジェクトチームを過剰に良く見てしまい、他部門や外部組織を軽視することがあるため、部門間の不協和や偏見、排他的な風土を生み出すリスクがあります。

この心理は結束力をもたらすメリットがある一方で、多様な視点が排除されたり、革新性が損なわれたりするデメリットも伴います。

集団浅慮

集団浅慮とは、組織やチームでの合意形成がかえって非合理的な結論を導いてしまう現象です。集団の結束力や同調性が強くなると反対意見が出にくくなり、リスクを過小評価したり、異論を排除したりする傾向が強まります。

その結果、冷静な判断が失われ、自信過剰な決定や誤った方向性に組織全体が進んでしまう危険があります。多様な意見が抑え込まれることで、革新的なアイデアが生まれにくくなり、企業の成長を阻害する要因にもなるでしょう。

集団心理が企業に及ぼすリスクへの対策

集団心理は組織の結束や協力を生む一方で、誤った意思決定や革新力の低下といったマイナス面も伴います。企業が持続的に成長するためには、これらの影響を理解し、組織全体で適切に対策を講じることが不可欠です。

リーダーが意思決定を適切に管理する

リーダーは組織において、公正かつ合理的な意思決定を導く責任を担っており、その姿勢は集団心理に左右されやすい企業の判断を安定させる要となります。

特定の意見や多数派に流されるのではなく、多様な視点を取り入れて冷静かつ論理的な議論を重ねることで、集団浅慮や偏った結論を防ぐことが可能です。一方で、強いリーダーシップは時にメンバーの盲目的な服従を生み出し、異論や批判的意見が出にくくなるリスクも抱えています。

こうした事態を避けるためには、反対意見を歓迎する文化を組織内に根付かせ、あえて異論を唱える役割を設けるなど、健全な対話を促す仕組みを構築することが重要です。

心理的安全性を確保する

心理的安全性とは、組織やチームにおいて「自分の意見や疑問を述べても否定されたり不利益を受けたりしない」と信じられる状態のことです。組織における集団心理が強く働くとき、異論を出しにくい雰囲気が生まれがちですが、心理的安全性が高い環境では社員が「意見を述べてもとがめられない」と感じられます。

その結果、自由な発言が促され議論が活性化し、問題発見や革新が生まれやすくなります。一方で安全性が低いと、集団の空気に流され沈黙が常態化し、意思決定が一部の声に偏りがちです。

心理的安全性を高めるには、リーダーが率先して課題や失敗を共有し、会議で「異論はありませんか?」と問いかけることや、匿名での意見提出や少人数でのディスカッションなど、発言のハードルを下げる工夫が効果的です。こうした取り組みにより、集団心理に呑まれない健全な対話を育むことが可能になります。

外部からの意見を積極的に取り込む

組織では集団心理の影響により、同調圧力で異論が出にくくなったり、集団浅慮に陥ったりする危険があります。これを防ぐには、外部の意見を積極的に取り入れ、多様な視点を加えることが有効です。

外部の専門家や他部門の声を交えることで、発想の偏りを避け、リスクを多角的に検討できます。また、匿名での意見提出や自由に発言できる雰囲気づくりなど、意見をしやすい環境を整備することも重要です。

企業における集団心理の影響を理解しよう

企業では、集団心理が協力やモチベーションを高める一方、同調圧力や責任の分散、内集団バイアス、集団浅慮などのリスクも伴います。

心理的安全性を確保し、外部の意見を取り入れ、リーダーが公正に意思決定を行うことで、組織は健全で柔軟な判断を実現できます。集団心理の特徴を理解し、より良い職場づくりに生かしていきましょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
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