階層型組織の特徴と課題を解説。フラット型・マトリックス型との比較と最適な運用方法

企業の成長と組織運営において、どの組織形態を採用するかは非常に重要です。中でも階層型組織は多くの企業で採用されている伝統的な形態であり、メリットとデメリットが存在します。本記事では、階層型組織の特徴や課題を明らかにし、フラット型・マトリックス型組織との比較を通じて、自社に最適な組織構造の選び方を解説します。

階層型組織とは何か

企業や官公庁など、多くの組織で採用されている階層型組織は、明確な指揮命令系統を持ち統制を取りやすい反面、意思決定のスピードや現場の意見反映に課題があります。ここでは、階層型組織の基本構造や特徴について詳しく見ていきます。

上位職の命令に従って下位職が動く組織形態

階層型組織は、上位職が決定した方針や指示に基づき、下位職が実行する組織形態です。

多くの組織で採用されており、業務の標準化や効率化を図ることが可能です。具体的には、CEOや部長などの管理職が指示を出し、課長・主任などの中間管理層がそれを現場の社員へ展開する仕組みとなっています。

責任の所在が明確になり、意思決定の混乱を防ぐことができます。主に官公庁のような公的な組織や大企業で用いられる組織形態であり、代表的な組織形態の一つといえるでしょう。

階層型組織の種類

階層型組織は、企業の目的や業務内容に応じて、いくつかの異なる形態に分かれます。主に「役職別組織」「組織別組織」「事業別組織」の3つに分類され、それぞれ異なる特徴を持ちます。

組織形態

概要

特徴

役職別組織

各部門が専門分野ごとに分かれ、役職ごとに業務が明確に定められている組織形態。

専門性が高まり、効率的な業務遂行が可能。意思決定がトップダウンになりやすく、部門間の連携が課題となることがある。

組織別組織

地域や顧客の特性に応じて組織を編成し、それぞれが独立した事業単位として運営される。

市場や顧客のニーズに柔軟に対応できるが、各組織の運営コストが増加し、全体の統制が難しくなることがある。

事業別組織

事業やプロジェクトごとに編成され、部門横断的なチームが結成される組織形態。

柔軟な対応が可能で、イノベーションが生まれやすいが、プロジェクト終了後の人員配置や責任の明確化が課題になることがある。

これらの組織形態を理解し、企業の目的や市場環境に応じた最適な組織構造を選択することが重要です。

階層型組織のメリットとデメリット

階層型組織は、明確な役割分担や効率的な業務遂行が可能な一方、縦割り意識の強化や意思決定の遅れといったデメリットも伴います。

この章では、組織の強みを最大限に生かしつつ、課題をどのように克服できるのかを見ていきましょう。

階層型組織のメリットとは

階層型組織の大きなメリットは、まず指揮命令系統が明確であることです。特に命令系統が複雑化しやすい大規模な組織では、混乱を防ぎ円滑な運営を実現することが可能です。

また、各階層で職務分担が明確になっているため、従業員は自分の役割を理解しやすく、専門性の高い業務においては効率的な遂行が期待できます。

適切な運用がなされていれば、各階層が一定の権限を持つことで日常業務における意思決定を現場レベルで迅速に行うことができ、経営層はより戦略的な判断に集中できるのも利点といえるでしょう。

階層型組織のデメリットとは

一方で、階層型組織にはいくつかのデメリットも存在します。まず、階層が多ければ多いほど、経営層の決定が現場に伝わるまでに時間がかかるという点です。

迅速な対応が求められる場面では、意思決定の遅れが生じやすくなります。トップダウン型の組織構造であるため、現場からの意見やアイデアが経営層に届きにくく、実際の業務と経営戦略との間にずれが生じる懸念もあります。

さらに、各部門が独立した役割を持つため、部門間の連携が不足し、縦割り意識が強くなりやすい傾向があります。情報共有が不足すると、組織全体の最適化が損なわれたり、イノベーションの妨げになるケースもある点は、デメリットといえるでしょう。

他の組織形態との比較

近年、フラット型やマトリックス型といった新しい組織形態が注目を集めています。それぞれの組織形態と階層型組織の違いを比較し、どのような業種や企業に適しているのかを詳しく解説します。

フラット型組織との違いとは

フラット型組織とは、チームや部署を管理する中間管理職をできるだけ配置せず、メンバー全員が等しい権限と責任を持つ組織形態のことです。

言葉の意味通り、メンバーに上下関係はなく、フラット(平ら・均衡)な状態を理想としています。

階層型組織とフラット型組織の最も大きな違いは、組織の階層の数と意思決定のプロセスにあります。階層型組織では、明確な指揮命令系統が存在し、管理職を通じて指示が伝達されます。

一方、フラット型組織は階層が少なく、社員一人ひとりの自主性やチームワークを重視する組織形態です。

フラット型組織のメリットとしては、意思決定のスピードが速く、社員の裁量が大きい点が挙げられ、変化の激しいスタートアップ企業やクリエイティブな業界に適しています。

しかし、明確な指揮系統がないため、責任の所在が曖昧になりやすく、組織規模が拡大すると管理が難しくなるというデメリットもあります。

マトリックス型組織との違いとは

マトリックス型組織は、階層型組織の持つ機能別部門と、プロジェクトごとのチームという2つの軸を持つ組織形態です。

従業員は通常の所属部門(例えば、営業部や開発部)に加えて、特定のプロジェクトチームにも参加します。そのため、一人の社員が複数の上司から指示を受けることになります。

この仕組みにより、異なる専門知識を持つ人材がプロジェクトごとに集まりやすくなり、組織全体の柔軟性が高まる一方で、通常の階層組織以上に命令系統が複雑化しやすく、適切な人事配置が求められるという点が課題と言えるでしょう。

自律型組織が注目を集めている

近年、特に新しい企業やイノベーションを重視する企業の間で、自律型組織(ホラクラシー型組織とも呼ばれます)が注目を集めています。

これは、従来のピラミッド型の階層構造を廃止し、社員一人一人がより主体的に意思決定を行うことを特徴とする組織形態です。

役職は固定されず、プロジェクトに応じて最適なリーダーが選ばれることが多く、権限が分散されることで迅速な意思決定と高い柔軟性を実現できます。

ただし、メンバー全員が自律的に動くことが求められるため、組織の文化や価値観がしっかりと共有されていないと統制が取れなくなるリスクや、意思決定の基準が曖昧になる可能性もあるため、慎重な運用が必要です。

自社に適切な組織構造を見直すポイント

組織構造は、企業の成長段階や事業内容によって最適な形が変化します。組織改革を成功させるためには、流行を追うだけでなく、自社の企業文化や戦略に合致した形態を選ぶことが重要です。

ここでは、適切な組織形態を選択するためのチェックポイントをご紹介します。

カルチャーフィットした組織構造を選択する

組織構造の変更は、企業の成長や外部環境の変化に対応するために不可欠なプロセスですが、最も大切なのは、その企業が大切にしてきた価値観や信念、つまり企業文化(カルチャー)との調和です。

例えば、創業以来の伝統や規律を重んじる企業であれば、上意下達が明確な階層型組織がスムーズに機能する可能性があります。

一方で、常に新しいアイデアを生み出し、変化を恐れないベンチャー企業であれば、役職の垣根が低く社員の自主性を尊重するフラット型組織が適しているかもしれません。

また、専門性の高いメンバーが複数のプロジェクトを同時進行するような企業では、それぞれの専門性を生かしつつ連携を図るマトリックス型組織が有効な選択肢となるでしょう。

組織の形を決める際には、企業の根本にある価値観、目指す事業戦略との整合性、そして従業員がどのように働きモチベーションを感じるかを総合的に考えることが成功への鍵となります。

全体に共有して課題や長所などの意見を集める

組織構造の最適化を進める上で、経営層だけで机上の空論を繰り広げるのではなく、日々の業務で実際に汗を流している従業員の意見を積極的に取り入れることが、組織全体の活性化につながります。

現場の意見を集めるための具体的な方法としては、定期的に組織運営に関するアンケートを実施し、満足度や改善点について率直な声を集めることが挙げられます。

上司と部下が1対1でじっくりと話し合う1on1ミーティングを通じて、個々の従業員の意見やキャリアビジョンを把握することも重要です。

匿名での意見投稿が可能な意見箱や、オンライン上のコミュニケーションツールを活用することも、より多くの声を集めるための有効な手段となるでしょう。

テクノロジーを活用して最適化する

従来の階層型組織では、情報の伝達に時間がかかり、部門間の連携が滞ることが課題となることがありました。

しかし、デジタルツールを適切に活用することで、これらの問題を克服することが可能になります。例えば、クラウド型の情報共有プラットフォームを導入すれば、階層に関係なくリアルタイムで経営層のメッセージを伝達でき、部門を超えた協力もスムーズに進めることが可能です。

TUNAGは、企業理念の浸透を促進し、従業員同士のコミュニケーションを活性化することで組織の最適化を支援します。

テクノロジーを活用して階層型組織の強みを活かしながら、柔軟性のある組織運営を目指してみてはいかがでしょうか。

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企業に合った組織づくりで会社を成長させる

階層型組織は、明確な指揮命令系統による効率的な業務遂行を可能にする一方で、柔軟性の欠如や意思決定の遅れといった課題も抱えています。

そのため、企業の規模、文化、そして事業戦略を総合的に考慮し、フラット型、マトリックス型、自律型組織といった他の組織形態と比較検討しながら、自社に最適な構造を選ぶことが求められます。

組織改革を成功させるためには、経営層だけでなく現場の従業員の意見を積極的に取り入れ、テクノロジーを効果的に活用することも重要です。

組織構造は一度決定したら終わりではなく、企業の成長や外部環境の変化に合わせて柔軟に見直していくことが、持続的な成長と競争力強化の鍵となります。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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