部門管理に生かす組織統制の基本|代表的な手法やポイント・注意点を解説
組織統制は部門やチームが組織全体の目標に向かい、一体となり行動するために不可欠です。組織統制の基本的な考え方や代表的な手法、実践のポイントなどを詳しく解説します。部門管理の質を高め、組織全体のパフォーマンスの向上に生かしましょう。
組織統制の目的と重要性
組織統制は組織を目標の達成のため、効率的に機能させる枠組みです。各部門や個人がバラバラに動くのではなく、組織として一貫性を持った行動を促すことで、組織として成果の最大化やリスクの最小化を図る取り組みです。
組織を「統制する」とは?
そもそも組織を「統制する」とは、どういうことでしょうか?「統制」とは、単に何かに命令を出して動かすことではありません。組織の場合、各部門・部署やそこに所属するメンバーが、共通の目標に向かって整合的に動くように、環境を整えることです。
組織内の活動を計画通りに進めるには、行動のプロセスやルールの明確化、価値観や文化の浸透など、複数のアプローチが必要です。統制は組織運営の中枢であり、適切に機能すれば組織内の混乱を防ぎつつ、環境の変化に柔軟に対応できるようになります。
ただし一方で、行き過ぎた統制は現場の自主性を損なう恐れもあるため、バランス感覚が求められる取り組みです。
組織の統制が求められる理由
組織に統制が必要とされる理由は、目標の確実な達成とリスク管理です。統制が不十分だと、各部門やメンバーが独自の判断で行動してしまい、全体最適が損なわれる可能性があります。
さらに業務の非効率や、責任の所在が分からないことによるトラブル、不正やミスの発生リスクも高まるでしょう。組織のトップや管理層による適切な統制を通じて、全体の目標に向かって足並みをそろえつつ、業務を推進できる環境を整える必要があります。
内部統制との違い
組織統制と内部統制は混同されがちですが、対象となる範囲が異なります。上記のように、組織統制は、組織全体の目標達成のために、全体をまとめる取り組みです。一方、内部統制は、業務の有効性・効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関する法令遵守、資産の保全の4つの目的を達成するための組織内の仕組みを指します。
内部統制と組織統制は重複する部分もありますが、それぞれ異なる概念として理解する必要があります。ただし、近年は組織運営において「統制」といった場合、内部統制を指すケースも多いので、文脈に注意しつつ、うまく使い分けるようにしましょう。
組織統制の手法
組織統制の手法は、その対象により、以下の三つの領域に分けられます。それぞれ単独のアプローチが取られるケースもありますが、同一のアプローチで複数の領域の統制を図る場合も珍しくありません。それぞれの領域における、代表的な手法を見ていきましょう。
行動の統制(業務手順の指示など)
行動の統制は、組織のメンバーの具体的な行動に対して、直接的に指示やルールを設ける方法です。民間企業の場合、社員の業務マニュアルの整備や職務の分掌、定期的な会議による進捗確認などが典型的な例です。
こうしたアプローチは、業務の質を一定に保ちやすく、特に業務プロセスが標準化しやすい分野で有効です。ただし細かい規定が多すぎると、現場の柔軟性を損なう可能性があります。指示を一方的に押し付けるのではなく、現場の実情を反映させた、実効性のあるルール作りが求められます。
結果の統制(成果に基づく評価)
結果の統制は、メンバーの行動の成果に注目し、成果物や達成状況に基づいて評価・指導をする手法です。KPI(主要業績評価指標)や、MBO(目標管理制度)などが代表例です。管理者は結果にフォーカスすることで、現場に裁量を委ねつつ、全体の方向性をかじ取りできます。
この手法の強みは、創造的な業務や多様なアプローチが求められる場面において、柔軟性を確保できる点です。ただし、数値だけで評価すると目先の成果に偏りがちになり、本来の目的を見失う恐れもあります。目標設定や評価基準は、定期的な見直しと改善・合意の形成が不可欠です。
文化の統制(価値観による自律)
文化の統制は、組織の理念や価値観をメンバーに浸透させ、それに基づく自律的な行動を促す手法です。トップのビジョンやミッションの共有、組織文化の醸成などが、代表的なアプローチです。
統制された文化が根付いた組織では、細かなルールや管理者による監督がなくても、メンバーが自発的に組織目標に沿った行動を取るようになります。
変化の激しい時代には、こうした自律的な組織文化が競争力の源泉となりますが、価値観の共有には相応の時間と、継続的な取り組みが必要です。
効果的な組織統制のポイント
組織の統制を進めるには、単にルールや評価制度を設けるだけではなく、組織の現状や目標に合わせた柔軟な運用が必要です。以下のポイントを押さえつつ、改善を積み重ねることが大事です。
KPIや評価制度を活用した動機付け
組織統制の仕組みは、組織のメンバーにとって単なる監視ではなく、成長や目標の達成につながると捉えてもらう必要があります。
一人一人のキャリアの形成に寄与し、自らの働きが組織に貢献していると実感できるように、制度を設計することが大切です。また、評価に対するフィードバックを徹底し、納得感のある運用を意識することも、制度の定着に欠かせません。
内部統制とモニタリングの強化
組織統制の一環として、内部統制の仕組みや、モニタリングの体制の強化も必要です。リスクの早期発見や不正の防止、業務プロセスの改善などを目的として、定期的な監査やチェック体制を整備しましょう。
モニタリングは単なる監視ではなく、現場の声や課題を吸い上げる仕組みとして、機能させることも大切です。現場と管理部門が一方通行にならないように、双方向のコミュニケーションを促進する工夫も求められます。
またモニタリングの結果を、人事制度や業務改善につなげる仕組みがあれば、現場にとっても納得感のある統制が可能になるでしょう。
IT統制とリアルタイム管理
近年は、ITを活用した統制手法も重要性を増しており、業務システムやデータベースを活用して、業務の進捗や成果をリアルタイムで把握する方法が注目されています。
システムの活用により、異常値やリスクを即座に検知できる体制を構築すれば、迅速な意思決定とリスク対応が可能になります。例えば、ダッシュボード機能を通じて、KPIの達成状況や業務の滞留箇所を可視化すれば、管理者は現場の状況を的確に把握できるでしょう。
またアクセス権限の管理や、操作ログの記録といったIT統制の要素も、情報漏洩や不正操作の防止に役立ちます。ITの仕組みを統制の中に組み込むことで、属人的な管理から脱却し、より効率的かつ透明性の高いマネジメントが可能になります。
組織統制の注意点とリスク
組織統制は正しく機能すれば、組織の安定と一定の成果をもたらしますが、導入や運用の仕方によっては弊害を生む可能性もあります。過度な統制は現場の創意工夫を妨げたり、責任の所在を曖昧にしてしまったりする場合があるので、注意しなければいけません。
また上記のように、統制が「監視」や「管理の強化」などと受け取られると、組織メンバーの反発を招き、かえって士気が低下することもあるでしょう。ルールや評価基準が分かりにくい場合も、不公平感や混乱を招きやすくなります。
こういった問題を回避するために、制度設計の段階で現場との対話を重ね、統制の目的や意義を明確に伝えることが重要です。加えて、現場からのフィードバックを重視し、実態に合わない運用や過剰な管理が生じていないか、定期的に見直す必要があります。
組織統制によりガバナンスを強化する
組織統制は組織の部門や部署、あるいは個人の力を、全体の成果につなげるための取り組みです。適切な手法と運用によって、組織のガバナンスが強化され、不正リスクの低減や業務効率化、メンバーの自律・成長につながります。
民間企業の場合、多様で変化の激しいビジネス環境において、統制と柔軟性をうまく両立させるバランス感覚が求められます。「行動」「結果」「文化」の各側面から適切な手法を組み合わせ、実情に合った仕組みとして、設計・運用していくことが大事です。