組織力強化の必要性とは?組織力が高い企業の特徴と具体的な強化施策や成功事例を紹介
組織力強化は、企業や組織が持つ潜在的な能力を最大限に引き出し、活用するプロセスです。市場環境の変化が激しい現代において、企業が競争力を維持し続けるには、組織全体の力を結集させる仕組みづくりが欠かせません。
この記事では組織力が高い企業の特徴や強化のための手順、事例などを紹介します。
組織力とは
組織力の定義は抽象的になりがちですが、実務においては具体的な要素に分解して考える必要があります。ここでは組織力を会社全体のレベルと部署・チームのレベルに分けて、それぞれで必要となる要素を明確にしていきます。
会社としての組織力
会社全体の組織力とは、異なる部門や拠点が一つの目標に向かって効率的に協働できる総合的な能力を指します。経営者や人事部門が中心となり、組織構造の最適化、部門間連携の仕組み化、全社的な方針の浸透といった要素を強化することが求められます。
特に重要なのは、経営理念やビジョンを全社員が理解し、日々の業務に反映できる状態を作ることです。
規模が大きくなるほど部門間の壁が生じやすくなりますが、定期的な部門横断会議や情報共有の仕組みを構築することで、組織の一体感を維持できます。
このような取り組みにより、市場変化への対応スピードが向上し、企業全体の競争力強化につながるのです。
部署・チーム単位での組織力
部署やチーム単位の組織力は、メンバー間の信頼関係と相互理解を基盤として形成されます。マネージャーや部長がリーダーシップを発揮し、心理的安全性の高い環境を作ることで、メンバーが自発的に意見を出し合い、創造的な問題解決ができるようになります。
実務においては、定期的な1on1ミーティングやチーム内での情報共有会を通じて、メンバーの状況把握と相互理解を深めることが効果的です。
また、チーム目標を明確にし、各メンバーの役割と貢献度を可視化することで、一体感が生まれます。このような日々の取り組みの積み重ねが、チームとしての実行力を高め、成果創出につながっていくのです。
組織力の強化が求められる背景
組織力の強化が求められる背景には「VUCA(ブーカ)時代」と呼ばれる、変化が激しく未来予測が困難な現代の事業環境があります。VUCAは、下記の頭文字を取った造語であり、今日の社会やビジネスの特徴を表しています。
- Volatility(変動性)
- Uncertainty(不確実性)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性)
以前の時代は技術発展のスピードや外部環境の変化が緩やかであったため、戦略や商品の販売予測が立てやすく、確立された勝ち筋を追求することで成果が得られました。
しかし、VUCA時代に入ると、戦略や商品の成功は保証されず、市場の飽和状態もあり、絶えず挑戦し、失敗から学び、柔軟に戦略を調整して新たな勝ち筋を創出することが必要になりました。このため、組織は変化に強く、迅速に対応できる力、すなわち組織力の強化がより一層重要視されるようになっています。
組織力が高い企業の特徴
組織力の高さは抽象的な概念ではなく、具体的な特徴として現れます。実際に高い成果を上げている企業に共通する5つの特徴を理解することで、自社の組織力強化の方向性が明確になります。これらの特徴を参考に、自社の現状と照らし合わせてみましょう。
人間関係が良好で心理的安全性が高い
組織力が高い企業の特徴には、良好な人間関係と高い心理的安全性が挙げられます。心理的安全性とは、チーム内で対人リスクを取っても安全だと感じられる状態を指します。心理的安全性が確保されることで、失敗を恐れずに新しいアイデアを提案したり、建設的な批判を行ったりすることが可能です。
リーダーや上司が従業員の意見や提案を積極的に受け入れ、尊重する文化があり、従業員自身も失敗を恐れずに新たな挑戦を行える風土が確立されています。
このような環境は、創造性やイノベーションを促し、従業員のモチベーション向上や働きやすさに寄与します。結果として、離職率の低下や組織全体の生産性、成果の向上につながります。
コミュニケーションが活発に行われている
組織力が高い企業では活発にコミュニケーションが行われ、従業員がお互いに意見やアイデアを自由に交換し、互いに刺激を受け合う文化が醸成されます。その結果、社内の雰囲気はポジティブに保たれ、働きやすい環境が形成されます。
重要なのは、経営層も積極的に現場とコミュニケーションを取り、双方向の対話を実現することです。このような環境下では、問題の早期発見と迅速な解決が可能となり、組織の機動力が大幅に向上します。
経営ビジョンや目標が共有されている
共有されたビジョンは、社員一人ひとりの行動基準となり、全員が同じ目的を持って業務に励むことができます。
多くの成功企業では、経営層が定期的に全社集会を開催し、ビジョンの背景や意図を直接説明しています。さらに、各部門でビジョンを具体的な行動指針に落とし込み、個人の目標設定にまで連動させる仕組みを構築しています。
例えば、四半期ごとの目標設定時に、個人目標と企業ビジョンの関連性を明確にすることで、従業員の当事者意識が高まります。このような取り組みにより、組織全体が同じ方向を向いて進むことができ、戦略実行力が格段に向上するのです。
適材適所な人材配置が行われている
適材適所の人材配置は、個人の能力を最大限に発揮させ、組織全体のパフォーマンスを向上させる重要な要素です。従業員の強みや志向性を的確に把握し、それぞれが最も活躍できるポジションに配置することで、モチベーションの向上と生産性の最大化を実現できます。
実務においては、定期的なキャリア面談やスキルアセスメントを通じて、従業員の能力と希望を把握することが重要です。また、ジョブローテーションやプロジェクトベースの配置転換により、新たな能力開発の機会を提供している企業も増えています。
人事部門だけでなく、現場マネージャーも積極的に関与し、チームメンバーの特性を理解した上で役割分担を行うことが求められます。このような丁寧な人材マネジメントにより、組織の潜在能力を最大限に引き出すことができるのです。
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人材育成の環境が整っている
組織力の高い企業では、体系的な人材育成プログラムが整備され、従業員の継続的な成長を支援する環境が構築されています。
単発の研修だけでなく、目標設定から実行、評価、フィードバックまでの一連のサイクルが確立され、個人の成長と組織の発展が連動する仕組みとなっています。
この循環的なプロセスにより、企業が目指す組織像や人材像に沿った成長を促し、個々の従業員が自身のキャリアパスを明確にしながらスキルアップできる環境が整備されています。
また、このような人材育成体制は、企業内で次世代のリーダーや専門家を継続的に育成することに貢献し、組織の安定と持続的な成長を支えます。
組織力を強化する方法
組織力強化は適切な方法を選択し、計画的に実行することで、確実に成果を上げることができます。ここでは、多くの企業で効果が実証されている3つの基本的なアプローチを紹介します。自社の状況に応じて、優先順位をつけて取り組んでいきましょう。
経営理念・ビジョンを浸透させる
経営理念やビジョンの浸透は、組織力強化の出発点となる最重要施策です。理念やビジョンが単なるお題目ではなく、従業員の日々の判断基準として機能することで、組織全体の方向性が統一され、自律的な行動が促進されます。
経営理念・ビジョンを浸透させるためには、まず経営層が率先して理念に基づいた行動を示すことが不可欠です。
定期的な全社集会での発信に加えて、各部門での対話集会を開催し、理念と業務の関連性を具体的に議論する機会を設けることが効果的です。
また、理念に基づいた行動を評価制度に組み込み、人事考課の基準とすることで、従業員の意識と行動の変化を促すことができます。
このような多面的なアプローチにより、理念が組織文化として定着し、強固な組織基盤が形成されるのです。
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コミュニケーションを活性化させる
効果的なコミュニケーションによって、情報共有がスムーズになり、信頼関係や連携が深まるため、組織全体の一体感とパフォーマンスが向上します。
実践的な取り組みとしては、定期的な1on1ミーティングの制度化が挙げられます。上司と部下が月に1〜2回、30分程度の対話時間を持つことで、業務上の課題だけでなく、キャリアや個人的な悩みも共有できる関係性が構築されます。
他にも、社内SNSなどを導入することによって意見交換や情報発信など、社員同士のコミュニケーションの取りやすい環境を整えることができるでしょう。
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人材育成制度を充実させる
人材育成制度の充実は、組織の持続的な成長を支える基盤となります。従業員一人ひとりの能力向上が組織全体の競争力強化につながることを認識し、体系的かつ継続的な育成プログラムを構築することが重要です。
効果的な人材育成には、階層別研修やスキル研修といった集合研修だけでなく、OJTやメンタリング、eラーニングなど多様な手法を組み合わせることが重要です。
特に、学習したことを実践する機会を提供し、上司からの定期的なフィードバックを通じて成長を実感できる仕組みを作ることです。
また、キャリアパスを明確にし、将来の成長イメージを持てるようにすることで、学習意欲の維持向上を図ることができます。このような包括的な人材育成体制により、組織の知的資本が蓄積され、イノベーション創出力が高まるのです。
組織力を強化するための3つのステップ
組織力を高めるためには、まず現在の組織が直面している問題点を特定し、それらを解決するためのアプローチを計画的に実行することが重要です。以下に示すステップに従って、組織力の強化を目指しましょう。
1. 解決すべき組織課題についての仮説を立てる
組織力強化の第一歩は、自社が抱える課題を明確にすることです。
例えば、組織がまとまらない原因が「コミュニケーション」なのか、それとも「環境」「利用ツール」なのか、といった複数の原因から当たりをつけ、仮説を立てます。
仮説が正しいのかどうかは、従業員へのヒアリングやアンケート、1on1の記録など、多角的な要素から分析し、検証しましょう。このとき、最初から結論ありきで決めつけないことが重要です。
2. 課題が発生している原因を洗い出す
仮説を検証し、明確な課題が明らかになった後は、その課題がなぜ発生しているのか原因を探ります。
例えば、離職率が高いという課題があるなら、その原因が環境のせいなのか、それとも採用基準のミスマッチによるものなのかなど、さまざまな要因が考えられるでしょう。
その中から課題と関連性の高い要因を探っていきます。
このプロセスを通じて、表面的な問題だけでなく、根本的な原因を明らかにします。
3. 課題解決のための施策を考える
原因が明らかになったら、それを解決するための具体的な施策を考えます。
例えば、コミュニケーション不足であれば、情報共有のプラットフォームを整備する、定期的なミーティングの設定、オープンな社内文化の醸成などが考えられます。
このとき、他社の成功事例を参考にしつつも、自社の文化や状況に合わせてカスタマイズすることが重要です。
施策を実行する際は、目標設定、実行計画の策定、関係者への周知徹底、実施後の評価と改善を行うよう、フローを組むところまで計画した上で行いましょう。
組織力強化のために管理職が必要なスキル
組織力強化の成否は、現場をリードする管理職の能力に大きく左右されます。管理職が適切なスキルを身につけ、発揮することで、組織全体の変革が加速します。ここではその具体的なスキルについて解説します。
リーダーシップ
リーダーシップは、組織のビジョンを明確に示し、メンバーを目標達成に向けて導く力です。現代の管理職に求められるのは、指示命令型のリーダーシップではなく、メンバーの主体性を引き出し、チーム全体の力を最大化するサーバント・リーダーシップです。
実務においては、まずチームの目指すべき方向性を明確に言語化し、繰り返し伝えることが重要です。その上で、メンバーの強みを理解し、それぞれが活躍できる役割を与えることで、チーム全体のモチベーションを高めます。
また、困難な状況においても前向きな姿勢を示し、チームの精神的支柱となることも管理職の重要な役割です。定期的な1on1での対話を通じて、メンバーの成長を支援しながら、チーム全体の成果創出を実現することが求められます。
目標を立て、実行する力
管理職には、組織全体の目標を自部門の具体的な行動計画に落とし込み、確実に実行する力が求められます。単に上位方針を伝達するだけでなく、チームの現状と能力を踏まえた現実的な目標設定を行い、メンバーの納得感を得ながら推進することが重要です。
実践的には、SMARTの原則(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限設定)に基づいた目標設定を行い、定期的な進捗確認と軌道修正を繰り返します。
また、目標達成に向けた役割分担を明確にし、各メンバーの貢献度を可視化することで、チーム全体の一体感を醸成します。重要なのは、目標の意義をメンバーに理解させ、自発的な取り組みを引き出すことです。
このような丁寧なマネジメントにより、高い目標達成率と組織力の向上を両立できるのです。
課題解決力
複雑化する経営環境において、管理職には日々発生する様々な課題を迅速かつ的確に解決する力が不可欠です。問題の本質を見極め、限られたリソースの中で最適な解決策を導き出し、実行に移す能力が求められます。
課題解決のプロセスでは、まず問題の全体像を把握し、緊急度と重要度のマトリクスで優先順位をつけることから始めます。次に、関係者を巻き込んだ原因分析を行い、複数の解決案を検討します。
このとき、短期的な対処と長期的な再発防止策の両面から考えることが重要です。また、解決策の実行においては、リスクを予測し、代替案を準備しておくことも必要です。さらに、解決後は必ず振り返りを行い、得られた知見を組織知として蓄積することで、組織全体の課題解決力が向上します。
関連記事:課題解決とは?問題解決との違いやプロセス、押さえるべきポイント
人材マネジメント力
人材マネジメント力は、メンバーの能力と意欲を最大限に引き出し、組織の成果につなげる力です。個々の特性を理解し、適切な動機付けと育成を行うことで、チーム全体のパフォーマンスを向上させることができます。
実務では、定期的な1on1ミーティングを通じて、メンバーの業務状況だけでなく、キャリア志向や個人的な課題も把握することが重要です。日常的な承認や感謝の言葉により、メンバーの貢献を認識していることを示し、モチベーションの維持向上を図ります。
また、それぞれの成長段階に応じた適切な業務アサインを行い、段階的に責任と権限を委譲することで、自律的な人材を育成します。さらに、チーム内での知識共有や相互学習の機会を設けることで、組織全体の能力向上を実現できるのです。
コミュニケーション能力
管理職は経営層と現場をつなぐ要の存在であり、双方向のコミュニケーションを円滑に行う能力が不可欠です。単なる情報伝達にとどまらず、相手の立場に立った共感的なコミュニケーションを行うことで、組織の一体感を醸成することができます。
具体的には、経営方針を現場の言葉に翻訳して伝える力と、現場の声を経営層に的確に届ける力の両方が求められます。
会議やミーティングでは、参加者全員が発言しやすい雰囲気づくりを心がけ、多様な意見を引き出すファシリテーション能力も重要です。
また、対立や摩擦が生じた際には、感情的にならず建設的な対話を促進する調整力も必要となります。
デジタルツールを活用した非対面コミュニケーションにおいても、相手の状況を配慮した適切なコミュニケーションを行うことで、組織の結束力を高めることができるのです。
関連記事:コミュニケーション能力とは?不足する原因と職場改善の具体策を徹底解説
組織力の強化に成功した事例
理論や手法を理解しても、実際の取り組みがイメージできなければ実行は困難です。ここでは、組織力の強化に取り組んでいる企業の成功事例を2社ご紹介します。
相互の情報共有の精度向上により組織力を強化した事例
多慶屋は、シフト制勤務による社員間のコミュニケーション課題と情報共有の不十分さに直面していました。300名以上の従業員が異なるシフトで働く同社では、新型コロナウイルスの影響で社員間の直接的な交流が一層困難になりました。
これらの課題に対処するため、多慶屋は情報共有プラットフォームTUNAG(ツナグ)を導入しました。TUNAGを利用することで、社員は異なるシフトにもかかわらずリアルタイムで情報を共有し、相互にコミュニケーションを取ることが可能になり、社員間の関係性が強化されました。
また、店舗ごとの成果や成功事例の共有により、全社的なパフォーマンスの向上が見られ、組織全体の一体感が生まれました。この取り組みは、特に新型コロナの影響下で社内コミュニケーションを維持し、社員のモチベーション向上に寄与しました。
事例記事はこちら>>「小売業ならではのコミュニケーションの課題を解決」社員相互の関係性と情報共有の精度が向上した多慶屋様のTUNAG活用事例
各店舗へのビジョンの共有と情報ツールの一元化で帰属意識を高めた事例
株式会社ピーアンドエムは、アパレルとインポート寝具の事業部を持ち、約300名の従業員が在籍しています。
同社は、従業員間の情報共有が個人SNSを介して行われ、セキュリティの懸念と帰属意識の欠如が課題でした。
これを解決するためにTUNAGを導入し、情報共有を一本化。これにより、店舗間や事業部を超えたコミュニケーションが活性化し、スタッフは自身が組織の一部であるという意識を強く持つようになりました。
また、各店舗がTUNAGを通じてビジョンを共有することで、組織全体の一体感と帰属意識が向上しました。このように同社ではTUNAGの導入により社内コミュニケーションを効果的に改善し、組織力の強化に成功しました。
事例記事はこちら>>情報共有から帰属意識の醸成まで、TUNAGに一本化:ピーアンドエムが挑むコミュニケーション改革
組織力を強化するためには
組織力強化を成功させるためには、まず自社の現状を客観的に分析し、解決すべき課題を明確にすることが出発点となります。その上で、課題の根本原因を特定し、組織の実情に合った施策を選択・実行することが重要です。このプロセスにおいて、経営層のコミットメントと現場の主体的な参加の両方が不可欠です。
組織改善プラットフォーム「TUNAG(ツナグ) 」は、組織力強化に必要な機能を包括的に提供しています。
例えば、代表メッセージ機能により、経営層の想いやビジョンを全社員にダイレクトに届けることができ、組織の方向性を明確に共有できます。また、社内SNS機能を活用することで、部門や階層を超えたコミュニケーションが活性化し、情報共有のスピードと質が向上します。さらに、社内ポイント制度により、従業員の貢献や協力行動を可視化・評価することで、組織に望ましい行動を促進し、エンゲージメントの向上につながります。
組織力強化は継続的な取り組みであり、一度の施策で劇的な変化を期待するのではなく、小さな改善を積み重ねながら組織文化として定着させることが重要です。TUNAGのような統合的なプラットフォームを活用することで、施策の実行から効果測定、改善までのPDCAサイクルを効率的に回すことができ、着実な組織力向上を実現できるでしょう。