組織力強化の必要性とは?組織力が高い企業の特徴と具体的な強化施策や成功事例を紹介
組織力強化は、企業や組織が持つ潜在的な能力を最大限に引き出し、活用するプロセスです。競争の激化や市場の変化に直面する現代のビジネス環境では、組織が柔軟性を持ち効率的に運営されることが不可欠です。
この記事では組織力が高い企業の特徴や強化のための手順、事例などを紹介します。
組織力とは
組織力とは、会社全体や各チームが共通の目標を効率的に達成するための多面的な要素や能力を指します。高い組織力を持つことで、困難な状況にも柔軟に対応し、持続的な成長を実現することができるようになります。 以下のように、大きく二つのレベルで考えられます。
会社としての組織力
会社全体の組織力とは経営者や人事担当者が中心となり、組織の構造、管轄する人数、運営する拠点の数など、大規模な視野で組織の能力を高めることを目指します。ここでは、全社員が一致団結して動けるように、組織の方針を明確にし、異なる部門間の連携を強化することが重要です。
部署・チーム単位での組織力
部署・チーム単位のレベルでは、マネージャーや部長がリーダーとなり、チーム内の人間関係や相互理解に重点を置きます。良好なコミュニケーション、チームワーク、共有された目標へのコミットメントが、このレベルでの組織力を高めるカギとなります。
組織力の強化が求められる背景
組織力の強化が求められる背景には「VUCA(ブーカ)時代」と呼ばれる、変化が激しく未来予測が困難な現代の事業環境があります。VUCAは、下記の頭文字を取った造語であり、今日の社会やビジネスの特徴を表しています。
- Volatility(変動性)
- Uncertainty(不確実性)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性)
以前の時代は技術発展のスピードや外部環境の変化が緩やかであったため、戦略や商品の販売予測が立てやすく、確立された勝ち筋を追求することで成果が得られました。
しかし、VUCA時代に入ると、戦略や商品の成功は保証されず、市場の飽和状態もあり、絶えず挑戦し、失敗から学び、柔軟に戦略を調整して新たな勝ち筋を創出することが必要になりました。このため、組織は変化に強く、迅速に対応できる力、すなわち組織力の強化がより一層重要視されるようになっています。
組織力が高い企業の特徴
組織力が高い企業の特徴には、どのようなものがあるのでしょうか。5つの特徴をみていきましょう。
人間関係が良好で心理的安全性が高い
組織力が高い企業の特徴には、良好な人間関係と高い心理的安全性が挙げられます。ここでは、従業員が自らを安心して表現できる環境が整っていることを意味します。リーダーや上司が従業員の意見や提案を積極的に受け入れ、尊重する文化があり、従業員自身も失敗を恐れずに新たな挑戦を行える風土が確立されています。
このような環境は、創造性やイノベーションを促し、従業員のモチベーション向上や働きやすさに寄与します。結果として、離職率の低下や組織全体の生産性、成果の向上につながります。
コミュニケーションが活発に行われている
組織力が高い企業では活発にコミュニケーションが行われ、従業員がお互いに意見やアイデアを自由に交換し、互いに刺激を受け合う文化が醸成されます。その結果、社内の雰囲気はポジティブに保たれ、働きやすい環境が形成されます。
このように働きやすい環境は、従業員の満足度を高め、結果として生産性の向上に直結します。さらに、定期的な意見交換は業務プロセスの効率化や問題解決に役立ち、企業全体の改善と成長につながります。
経営ビジョンや目標が共有されている
企業の核となる価値観や目指すべき方向性が明確に社員に伝わることで、一致団結して目標に向かって取り組むことが可能になります。共有されたビジョンは、社員一人ひとりの行動基準となり、全員が同じ目的を持って業務に励むことができます。
さらに、社員に強い帰属意識を育むことで、組織の一体感を高めます。経営層と現場スタッフが共通の理念の下で協力し合うことは、戦略の実行や生産性及びサービス品質の向上に欠かせない要素となります。
適材適所な人材配置が行われている
個々の能力を見極め、それぞれに合った業務に従事させることで、従業員のモチベーションが大幅に向上します。このアプローチは、従業員の満足度を高め、結果として離職率の低下に寄与します。加えて、個人の能力や過去の実績に基づいて役職や役割を定期的に見直し、人材配置を最適化することで、組織全体のパフォーマンスと効率を高めることができます。
このように、適切な人材配置は組織の生産性向上に不可欠な要素となっています。
人材育成の環境が整っている
組織力が高い企業では、目標設定から軌道修正、評価(フィードバック)、そして次の目標設定へと続く、企業方針に即した人材育成のサイクルが確立されています。
この循環的なプロセスにより、企業が目指す組織像や人材像に沿った成長を促し、個々の従業員が自身のキャリアパスを明確にしながらスキルアップできる環境が整備されています。また、このような人材育成体制は、企業内で次世代のリーダーや専門家を継続的に育成することに貢献し、組織の安定と持続的な成長を支えます。
組織力の強化が必要な企業の特徴
組織力の強化が必要な企業にはいくつかの共通した特徴があります。以下で代表的な特徴を紹介します。
コミュニケーションが不足している
社員間の交流が少ないと情報や意見が届かないことで連携が取れず、業務でミスやズレが発生しやすくなってしまいます。また、信頼関係も構築されないため、心理的に不安を抱えたまま業務に臨むことになります。
柔軟性や自発性がない
社員が自身で意思決定ができず、常に上司の指示を待っています。自ら考えて行動する習慣が身についていないため、急な問題が発生した際も柔軟に対応することができません。権限を与えるなどして、社員が自己判断で行動できる環境を整えましょう。
人材育成が不足している
社員の成長を支援する仕組みが整っていない企業では、社員のスキルや能力が向上せず、業績やイノベーションの停滞につながります。また、成長機会が不足していると、優秀な人材の離職リスクも高まります。
組織力を強化させる方法
経営理念・ビジョンを浸透させる
企業における理念やビジョンは、会社の存在意義であり、価値観や考え方を示します。理念やビジョンを浸透させることで社員の行動指針が明確となります。組織全体の考え方や価値観に社員が共感することで組織としての一体感が高まり組織力を強化させることにつながります。
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コミュニケーションを活性化させる
効果的なコミュニケーションによって、情報共有がスムーズになり、信頼関係や連携が深まるため、組織全体の一体感とパフォーマンスが向上します。
例えば、上司と部下の定期的な1on1ミーティングを行い、個々の目標や課題、キャリアパスについて深く話し合う機会を設けることで、社員のモチベーションが向上し、個々の業務に対する理解が深まります。
他にも、社内SNSなどを導入することによって意見交換や情報発信など、社員同士のコミュニケーションの取りやすい環境を整えることができるでしょう。
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人材育成制度を充実させる
人材育成制度の整備を通じて、社員が成長しやすい環境を作ることで、組織全体の活力や競争力を高めることができます。研修プログラムの導入やeラーニングを活用し、社員の成長を促しましょう。
また、定期的に上司が部下にフィードバックを行い、社員が自分の強みや改善点を把握できるようにサポートすることで、より具体的な成長目標を立てられるようになるなどの効果が期待できるでしょう。
組織力を強化するための3つのステップ
組織力を高めるためには、まず現在の組織が直面している問題点を特定し、それらを解決するためのアプローチを計画的に実行することが重要です。以下に示すステップに従って、組織力の強化を目指しましょう。
1. 解決すべき組織課題についての仮説を立てる
組織力の高い企業の特徴を参考に、自社がこれらの特徴をどの程度満たしているかを評価します。満たしていない場合、具体的な課題点を特定するための仮説を立てます。
例えば、コミュニケーションの不足、意思決定の遅延、チームワークの欠如など、組織内で見られる問題点に焦点を当てます。
この段階では、社内のさまざまな声を収集し、問題の兆候を捉えることが重要です。
2. 課題が発生している原因を洗い出す
仮説を立てた後は、その課題がなぜ発生しているのか原因を探ります。原因分析には、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)や「なぜなぜ分析」などの手法が有効です。
また、社内アンケートやインタビュー、グループディスカッションを通じて、社員の意見や感じている不満を直接聞き取ることも大切です。
このプロセスを通じて、表面的な問題だけでなく、根本的な原因を明らかにします。
3. 課題解決のための施策を考える
原因が明らかになったら、それを解決するための具体的な施策を考えます。
施策は、課題の性質や組織の状況に応じて多岐にわたりますが、根本的な原因に対処することが重要です。例えば、コミュニケーション不足であれば、情報共有のプラットフォームを整備する、定期的なミーティングの設定、オープンな社内文化の醸成などが考えられます。
施策を実行する際は、目標設定、実行計画の策定、関係者への周知徹底、実施後の評価と改善が必要です。
組織力強化のために管理職が必要なスキル
組織を強化するためには、管理者のスキルが求められます。ここではその具体的なスキルについて解説します。
リーダーシップ
リーダーシップは組織のビジョンや方向性を明確に示し、チーム全体を鼓舞・動機付けする力です。チームの士気を高め、目標達成への一体感を醸成することで、組織力を引き出します。これらを十分に発揮するには、管理者の説得力のある言動が欠かせません。
目標を立て、実行する力
組織全体としての目標を把握し、その目標の達成に向けた計画を立て、遂行させる力が管理者には求められます。また、適切な人材配置を行い、部下のモチベーションを維持させます。
課題解決力
突発的な問題や業務上の課題を迅速に特定し、解決策を見出す力も必要です。問題や遅延が発生した際、まず原因を分析し、短期的な対策と長期的な改善策を考案します。関係者と協力しながら解決策を実行に移し、再発防止策を講じます。
人材マネジメント力
社員の成果を日常的に認め、フィードバックを通じて感謝や称賛を伝えることで、やる気を引き出します。そうすることで組織全体の生産性向上や士気の向上、そして持続的な成長を実現でき、組織がより強固になります。
コミュニケーション能力
管理職は、経営者と部下の中間にあります。そのため、方向性の維持や情報共有において重要な役割となります。それぞれの立場に立って考えたり、それぞれの意思や指示を明確に伝えなければいけません。その上で、上下間のコミュニケーション不足が起こらないように努めなければなりません。
組織力の強化に成功した事例
ここでは、組織力の強化に取り組んでいる企業の成功事例を3社ご紹介します。
コミュニケーションの活性化により会社全体に一体感が生まれた事例
一つ目の事例は、楽器音響機器メーカーの株式会社ヤマハミュージックマニュファクチュアリング。
同社は、社員間の関係性が希薄であり、とくに現場職と間接業務者間で情報伝達に大きな格差があるという課題を抱えていました。現場職の社員はパソコンを使用しないため、情報が伝わりにくい状況でした。
このため、社内のコミュニケーション活性化と組織力強化を目指し、情報共有プラットフォームであるTUNAGを導入しました。
TUNAGの導入により、社内の全員がリアルタイムで情報を共有し、互いの活動を可視化することが可能になりました。これにより、社員同士のコミュニケーションが活性化し、互いの仕事への理解が深まりました。
また、TUNAG上での積極的な情報共有と交流は、社員のエンゲージメントを向上させ、社内に一体感を生み出す効果をもたらしました。
事例記事はこちら>>「組織として固まっていきたい」 現場職にも間接業務者にも平等に情報を届ける、楽器音響機器メーカーのTUNAG活用法
相互の情報共有の精度向上により組織力を強化した事例
多慶屋は、シフト制勤務による社員間のコミュニケーション課題と情報共有の不十分さに直面していました。300名以上の従業員が異なるシフトで働く同社では、新型コロナウイルスの影響で社員間の直接的な交流が一層困難になりました。
これらの課題に対処するため、多慶屋は情報共有プラットフォームTUNAGを導入しました。TUNAGを利用することで、社員は異なるシフトにもかかわらずリアルタイムで情報を共有し、相互にコミュニケーションを取ることが可能になり、社員間の関係性が強化されました。
また、店舗ごとの成果や成功事例の共有により、全社的なパフォーマンスの向上が見られ、組織全体の一体感が生まれました。この取り組みは、とくに新型コロナウイルスの影響下で社内コミュニケーションを維持し、社員のモチベーション向上に寄与しました。
事例記事はこちら>>「小売業ならではのコミュニケーションの課題を解決」社員相互の関係性と情報共有の精度が向上した多慶屋様のTUNAG活用事例
各店舗へのビジョンの共有と情報ツールの一元化で帰属意識を高めた事例
株式会社ピーアンドエムは、アパレルとインポート寝具の事業部を持ち、約300名の従業員が在籍しています。
同社は、従業員間の情報共有が個人SNSを介して行われ、セキュリティの懸念と帰属意識の欠如が課題でした。
これを解決するためにTUNAGを導入し、情報共有を一本化。これにより、店舗間や事業部を超えたコミュニケーションが活性化し、スタッフは自身が組織の一部であるという意識を強く持つようになりました。
また、各店舗がTUNAGを通じてビジョンを共有することで、組織全体の一体感と帰属意識が向上しました。このように同社ではTUNAGの導入により社内コミュニケーションを効果的に改善し、組織力の強化に成功しました。
事例記事はこちら>>情報共有から帰属意識の醸成まで、TUNAGに一本化:ピーアンドエムが挑むコミュニケーション改革
まとめ |組織力を強化するためには
組織力を強化するためには、まず組織内の課題を特定し、その原因を深掘りすることが重要です。課題の仮説を立て、原因分析を行い、具体的な解決策を策定するプロセスを経ることで、組織内のコミュニケーションを活性化させ、一体感を醸成することが可能になります。
このアプローチにより、組織はより強固なものへと変化し、持続的な成長を遂げることができます。組織力を強化したい企業は、このプロセスを参考にして取り組みを進めてみるといいでしょう。