強い組織を作るためには?具体的な取り組みや成功事例を解説
組織が成長し続けるためには、単なる規模の拡大や収益の向上だけでなく、外部環境に左右されない組織の「強さ」を持つことが求められます。
一方で、
・そもそも強い組織とはなんだろうか
・今の組織をもっと強くしていくためにはどうしたらよいのか
このような疑問や悩みをお持ちの方も多いと思います。
本記事では、強い組織を作るための基本原則とその特徴、さらに組織力を高めるための具体的な取り組みを詳しく解説します。この記事を読んで、組織の強さについての理解を深めましょう。
組織づくりとは?
組織づくりは、企業が目指す目標達成のために必要不可欠な取り組みです。しかし、多くの経営層や人事担当者が「何から始めればよいのか」と悩んでいるのが現状でしょう。
まずは、組織づくりの定義や目的について紹介します。自身の組織づくりの構想と一致しているかを確認してみてください。
組織づくりの定義
組織づくりとは、企業の目標と戦略に沿って組織の文化や構造、人事システムなどの仕組みを構築することです。単なる組織図の作成や人員配置にとどまらず、従業員を適材適所に配置し、会社の成長につながる協働体制を築くことを指します。
多くの企業では、組織づくりを体系的に進める方法が明確になっていないため、場当たり的な対応になりがちです。組織の文化、構造、人事システムという3つの要素を統合的に設計し、企業の仕組みで人を動かしていく体制を整えることが重要です。
組織づくりの目的
組織づくりで最も大きな目的は、従業員全体を企業の目指す方向へ効率的に動かし、継続的な成長を実現することです。人材育成が個人レベルでの能力向上を図るアプローチであるのに対し、組織づくりは従業員全体を企業に適合させる包括的なアプローチといえます。
近年の労働環境では、優秀な人材の流動性が高まり、組織の結束力やエンゲージメントの向上が重要な経営課題となっています。組織づくりにより目標や理念を共有し、従業員が一体感を持って業務に取り組める環境を整備することで、変化や困難に対応できる強固な組織基盤を構築できるでしょう。
組織運営の基本原則
組織を作るためには、以下の基本原則を押さえることが重要です。それぞれの原則を理解し、実践することで、持続的な成長を支える組織づくりが可能になります。
専門化の原則
専門化の原則とは、組織内の業務を機能や職種ごとに分割し、各従業員が特定の専門分野に集中して取り組む体制を構築することです。
営業、製造、経理、人事といった機能別の分業により、個々の従業員が専門性を深め、組織全体の業務品質向上を図ります。
権限責任一致の原則
権限責任一致の原則とは、従業員に与えられる責任の重さと、その責任を果たすために必要な権限の範囲を一致させる考え方です。
責任だけが重く権限が不足している状態や、権限が過度で責任が軽い状態を避け、適切なバランスを保つことで組織の健全性を維持するのです。
命令一元化の原則
命令一元化の原則とは、各従業員が受ける指示や命令を一人の上司からのみ受けるよう、指揮系統を明確に統一することです。
複数の上司から異なる指示を受けることによる混乱や非効率を防ぎ、組織内の意思疎通を円滑にします。
統制範囲の原則
統制範囲の原則とは、一人の管理者が直接管理できる部下の適正な人数を定める考え方です。
管理者の能力や業務の性質を考慮し、効果的な指導と管理が可能な範囲内で組織を設計することで、適切な監督体制を確保するのです。
例外の原則
例外の原則とは、管理者が日常的なルーティン業務から離れ、例外的な事案や重要な意思決定に専念するための組織運営方針です。
定型業務は部下に任せ、管理者は非定型の課題解決や戦略的判断に集中することで、組織全体の意思決定品質を高めます。
強い組織の特徴
アメリカの組織論学者であるチェスター・バーナードが提唱する強い組織には3つの特徴があり、どの業種の強い組織にも共通しています。
例えば、強い組織はオープンな社風であったり、組織内で活発に意見交換が行なわれる、などです。それでは、強い組織に共通する3つの特徴について解説します。
社内で円滑なコミュニケーションが取れている
オープンで社員同士が活発にコミュニケーションを取っている組織では、社員同士が積極的に意見交換をして、双方の考えをシェアします。意見が食い違った際には、どのように解決するのかを考えて、適切な方法を模索して実行します。
社内のコミュニケーションが円滑に取れると、伝えるべき事柄が相手に正確に伝わります。そうすると信頼関係を築くことができるので、組織として強くなれるのです。
さらに、上司と部下の関係が明確なことも大切な秘訣だといえるでしょう。常に報告、連絡、相談をすることで無駄がない業務を遂行することができるのです。
協働意欲がある
協働意欲がある組織では、個々の社員が高いモチベーションを示し、お互いにサポートをして足りない部分を補うように自律して動くため、組織力が高まります。
有名な戦国武将、毛利元就の言葉に「3本の矢を重ねることで折れにくくなる」という三矢の訓は有名ですが、同じ毛利元就の言葉に「百万の人が心を一つに」という一致団結の重要性を謳った言葉があります。
強い組織は協働意欲があり、一人一人の能力を組織として1つに束ねる事で何倍にも強い組織になると考えられます。
組織全体が共通の目標に向かっている
強い組織であるためには、全社一丸となって組織全体が同じ目標に向かっていて、目標達成のために「ビジョン」と「企業理念」を共通の認識として設定し、2つの側面により日々邁進していきます。
この2つの側面とは、「組織としての側面」と「主観的側面」です。「組織としての側面」では、既に述べたように組織で働く社員が、それぞれのスキルを活用して組織に貢献して組織を強いものにします。
もう1つは社員個人としての側面で、自分の理想や家族のために自分自身の能力を高め、組織で活躍することで強い組織ができます。
適材適所で個々人の能力が発揮されている
強い組織では、メンバーそれぞれの特性やスキルに応じた適材適所の配置が行われています。これにより、個々のメンバーは自分の得意分野で力を発揮でき、業務に対する意欲やモチベーションが高まります。
また、適材適所の環境は、組織全体の効率とパフォーマンスを向上させ、イノベーションや創意工夫を生み出す原動力となります。こうした環境が、持続的な成長と組織力の強化に貢献します。
関連記事:適材適所で定着率や生産性の向上を図る!実現させるポイントや方法
組織づくりの具体的な取り組み
このように、強い組織を作るためには3つの特徴に対してそれぞれの取り組みがあります。その取り組み方法について具体的に紹介します。
コミュニケーションを活性化させる取り組み
組織に求められるコミュニケーションには大きく分けて2種類あります。
一つは、他部署との連携やチーム・部署内で心理的安全性を保ち、相談しやすい状況を作ることです。このためには、定期的なランチやイベント、サンクスカードといった交流を活性化する仕組みが効果を発揮します。
もう一つは、経営層から現場まで一貫したメッセージが正確に伝わる縦のコミュニケーションです。これは、社内掲示板などで経営者自らが現場にダイレクトにメッセージを届けたり、逆に現場から直接フィードバックを受けられるような体制構築が必要になります。
この両方向から、コミュニケーションを活性化させる取り組みを検討しましょう。
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協働意欲を高めるための取り組み
従業員の組織貢献意識で最も重要な要素は、個人の成果が組織全体の成功に直結していることを実感できる環境の整備です。明確な役割分担と相互依存関係を設計することで、従業員が自分の仕事の意義を理解し、積極的に協力し合う文化を醸成します。
成果を正当に評価し、適切に報酬へ反映させる制度により、従業員の努力が認められる組織風土を構築することが重要です。チームワークを重視した評価項目の導入や、部門を超えた協力に対する表彰制度により、組織全体の協働意識を高めることができるでしょう。
従業員の能力を引き出す取り組み
従業員の能力を最大限に引き出すためには、個々の強みを認識し、それに応じた育成方法を提供することが重要です。例えば、上司と従業員の間で密なコミュニケーションを図り、適切なフィードバックを行うことで、従業員は自分の成長に対して自信を持ちやすくなります。
また、業務改善プログラム(PIP)を活用することで、パフォーマンスが低い従業員に対しても効果的な指導を行い、組織全体のエンゲージメントを向上させることができます。これにより、組織全体が強固になり、個々の従業員がより高いパフォーマンスを発揮できるようになります。
組織を維持するための5つのポイント
実際に強い組織にするための取り組みをしたら、その状態を維持する必要があります。社員が組織の一員となって強い組織を構築する取り組みをしても、長期にわたり維持しなければ強い組織とは言えないのです。
強い組織は、各役割、機能に応じて業務分担を細分化し、担当ごとの専門性を高めて業務と生産性の向上を図っています。強い組織を維持するには5つの原則に基づいた対策をする必要があります。
責任と義務を全うするための権限を付与する
組織の持続性で最も重要な要素は、従業員の責任と権限のバランスを適切に保つことです。業務遂行に必要な決定権限を従業員に委譲することで、迅速な判断と行動が可能になり、組織全体の機動性が向上します。
報告・連絡・相談の体制を明確にし、従業員が適切な範囲内で自律的に業務を遂行できる環境を整備することが重要です。権限の範囲と責任の重さを一致させることで、従業員の主体性向上と組織運営の効率化を同時に実現できるでしょう。
業務指示を一元化する
各従業員に適切な権限を付与する一方、上司からの業務指示は一本化する必要があります。
例えば、営業部において個々の従業員が「商品Aをプッシュしたいから資料を作る」「私は商品Bを売るために工夫する」など、方針がバラバラでは部署が混乱し、働き方の効率が悪くなります。
そのため、期間と達成目標、それを達成するための部署全体での業務指示は、チームリーダーや上司の元に一元化することが重要です。
部門内での情報伝達がスムーズになり、組織全体の統制が取れた状態を維持することで、継続的な業務品質の確保が期待できるでしょう。
適切な統制範囲を設定する(スパン・オブ・コントロール)
強い組織では、1人の上司に対して部下は多くて10人までの小グループで構成しています。これは、統制範囲(スパン・オブ・コントロール)の原則とよばれ、上司1人に対する部下の数を制限することで業務が効率的に遂行するための方法です。
この原則によると、部下の数は一般的に企業において5~10人、工場の製造ラインにおいては20~30人程度が適切であるとされています。そのため、強い組織では統制範囲の原則に基づいて組織形成をしているため、強さを継続しています。
専門スキルを生かす人材戦略を行う
管理体制の効率性で最も重要な要素は、管理者一人当たりが監督する部下の適正な人数設定です。業務の性質や複雑さに応じて、管理者が効果的に指導できる範囲内で組織を構成することが、組織力維持の鍵となります。
一般的な管理業務では5-10名程度、定型的な業務では20-30名程度が適正範囲とされています。適切な統制範囲の設定により、管理者の負荷軽減と部下への丁寧な指導が両立でき、組織全体のパフォーマンス維持が可能になるでしょう。
業務の権限委譲を進める
人材活用の効率性で最も重要な要素は、従業員の専門性を最大限に活かす業務配置と役割設計です。機能別の細分化により、各従業員が得意分野に集中できる環境を整備し、組織全体の専門性向上を図ります。
専門化による業務品質の向上と効率化により、ミスの削減と生産性向上が実現できます。従業員の専門性発揮により仕事への責任感と誇りが醸成され、組織への貢献意識向上と継続的な成長が期待できるでしょう。
強い組織づくりに成功した事例
実際に、社内活性化の取り組みや社内制度を整備して強い組織づくりに成功した事例を紹介します。
事業拡大の中でも、経営と従業員の距離を縮めた事例
株式会社Eグループ様は、「みんなが笑顔になる介護の実現」を経営理念に掲げ、愛知県に有料老人ホーム、訪問介護・看護、障がい者グループホームなどの事業を展開しています。
同社では、強い組織を作るために理念経営を推進していたものの、事業が拡大するにつれて、経営理念の浸透や事業所間のコミュニケーションが困難になっていることが課題でした。
そこで、経営と現場の距離が近づき、全スタッフに想いを伝えられるツールとしてTUNAGを導入します。導入後は、申し送りなどの業務上の情報共有から事業所同士のコミュニケーションをTUNAGで実施しています。
TUNAGの活用により事業部ごとの取り組みが可視化されただけではなく、経営メンバーからダイレクトに想いを伝えることができ、「ほったらかしにされているわけじゃないんだ」「見てくれてるんですね」と、良い意味で距離が近づいているとのことです。
取り組み事例はこちら>>「みんなが笑顔になる介護」を目指して:代表とスタッフの距離を埋めた、Eグループの社内コミュニケーション
社内研修・教育の場を提供し、自律的な組織づくりを実現した事例
コンテンツマーケティング事業・自社メディア事業を展開するサムライト株式会社様では、コミュニケーションが生まれる社内イントラとして「TUNAG」を活用しています。
同社の特徴的な取り組みとして、「CHALLENGEに成長あり。CHALLENGEに失敗なし。」という方針に関連して、メンバーの成長支援の制度「サムカレッジ」を運用しています。サムカレッジとは、社員が自ら手をあげて講師となり、社員同士で専門知識を身につけるための勉強会です。受講後はTUNAGの仕組みを利用して「単位」を獲得でき、単位が一定以上貯まったら、自己研鑽のために活用できる支援金がプレゼントされるというものです。その他にも書籍購入補助の制度を設けています。
これらの取り組みによって、従業員が楽しく自律的に学ぶ場が生まれただけではなく、他部署とのコミュニケーションも活発になったといいます。
取り組み事例はこちら>>行動指針が浸透する“サムカレッジ”の取り組みとは。社員の自発的な学びを楽しく促す「社内イントラ」として活用
強い組織を作るためには
強い組織は、「社内で円滑なコミュニケーションが取れている」、「協働意欲がある」、「組織全体が共通の目標に向かっている」の3つの特徴があり、それぞれに対する取り組みをしています。さらに、強い組織づくりを実行後には5つの原則に基づいて運営をしています。
強い組織は、社員全員に共通の認識があり、目標達成のために組織に貢献をしてくれます。この記事を参考にして、強い組織づくりのために課題を解決してください。