マルチタスク能力とは?求められるスキルや従業員を育成するメリット

人手不足で悩んでいるなら、従業員のマルチタスク能力を鍛えるのがおすすめです。多くの業務に対応可能となるため、人員の穴を埋めやすくなるでしょう。従業員のマルチタスク能力を上げるメリットや育成のポイントについて解説します。

マルチタスク能力とは

マルチタスク能力とはどのようなスキルなのか、まずは改めて意味をおさらいしておきましょう。シングルタスクとの違いも解説します。

同時に複数のタスクを遂行できるスキル

マルチタスク能力とは、複数のタスクを同時に遂行できるスキルのことです。コンピュータが複数の処理を並行して行う「multitasking」を語源としています。

マルチタスクの具体例は次の通りです。

  • 会議に参加しながらPCに議事録などのデータを入力する
  • 既存のプロジェクトに参加しながら新規プロジェクトにも関わる
  • クライアントとの打ち合わせ中に見積書を作成する


同時に複数の業務を並行して行う場合もあれば、複数の業務を短時間で切り替えながら進める場合もあります。仕事中だけでなく、プライベートでも無意識のうちにマルチタスクになっているケースがあるでしょう。

シングルタスクとの違い

シングルタスクは、1つの業務が終わってから次の業務に取り掛かるやり方です。業務内容によっては、シングルタスクで進めるほうが向いているものもあります。


ただし、業務効率の改善につながりやすいのはマルチタスクです。例えば、1つの業務が複数のフローで構成されている場合、各フローで待ち時間が発生することがあります。待ち時間の間に他の業務をこなせば、他の業務にかかる時間を少しでも短縮することが可能です。

シングルタスクとマルチタスクで複数の同じ業務をこなした場合、マルチタスクで進めたほうが、全ての業務がより早く終わる可能性があります。

従業員のマルチタスク能力を育てるメリット

近年はマルチタスク能力が高い人材が求められており、従業員側にもマルチタスク能力を鍛えたいと思っている人が増えています。従業員のマルチタスク能力を育てる企業側のメリットを見ていきましょう。

人手不足の解消につながる

従業員がマルチタスク能力を発揮できれば、より多くの業務を少人数で対応できるようになります。結果的に人手不足を解消できることがメリットです。

繁忙期が近くなると忙しくなることが予想され、ピーク時に合わせて人員を増やそうとするケースもあるでしょう。しかし、繁忙期以外の時期では余剰人員になってしまうほか、短期労働を前提とした募集は人が集まりにくくなります。

一方、既存の従業員がマルチタスクをこなせば、繁忙期でも追加募集を行う必要がありません。自社の業務に慣れている従業員が対応するため、採用のたびに教育を行う手間や時間も省けます。

個人や会社の生産性が上がる

マルチタスクを行う従業員が関わる業務は、シングルタスクで進める場合よりスムーズに進みやすくなります。業務の停滞も防げることから、個人の生産性アップにつながるでしょう。

また、マルチタスクをこなしていると、プロジェクトの全体像を把握しやすくなります。各業務の関連性や重要度への理解が深まり、マルチタスク自体の効率も上がります。

マルチタスクにより生産性が上がった従業員が増えると、結果的に会社の生産性もアップしやすくなるでしょう。

従業員のスキル向上を図れる

従業員のマルチタスク能力を鍛えれば、従業員自身のスキルアップも図れます。マルチタスクによりさまざまな業務を経験できるため、シングルタスクでは得にくい知識やノウハウを習得できるのです。

従業員が1つの業務しか担当しないケースでは、他の業務を経験する機会がありません。複数のスキルを身につけたいと思うなら、仕事以外のシーンで自主的に学ぶしかないでしょう。


向上心が強い従業員は、シングルタスクよりマルチタスクで仕事をしたいと思っているはずです。そのような従業員のマルチタスク能力を鍛えれば、自身が成長できることに喜びを感じ、エンゲージメントの向上にもつながる可能性があります。

従業員のマルチタスク能力育成における注意点

マルチタスクによる業務の遂行にはメリットが多い反面、いくつか気をつけるべきポイントもあります。従業員のマルチタスク能力を鍛える際の注意点を押さえておきましょう。

マルチタスクに向かない人もいる

全ての従業員がマルチタスクに向いているわけではありません。人によってはシングルタスクのほうが適しているケースもあります。

例えば、完璧主義の人は1つの仕事を中途半端にすることを嫌います。こだわりが強い人も、目の前の作業に没頭する傾向があるため、複数業務の同時進行は向かないでしょう。

このような特性を持つ人にマルチタスクを強要すると、強いストレスを感じてしまう恐れがあります。向き不向きを見極めたうえで、各自に適した仕事の進め方を取り入れることが重要です。

生産性が下がる恐れもある

マルチタスクでは業務を切り替えるたびに頭も切り替えなければなりません。しかし、業務内容によっては頭をうまく切り替えられずに、かえって時間がかかる恐れがあります。

特に、高い集中力を要する業務を行う場合は、頭の切り替えに時間がかかりがちです。慣れないうちは頭を切り替えやすい単純作業でマルチタスクに取り組むのがよいでしょう。

また、マルチタスクでは終了までの時間を読みにくいため、できると思っていた業務が終わらないケースも考えられます。従業員にマルチタスクをさせる場合は、時間内に業務を終わらせられる能力があるかどうかの見極めも大切です。

人によっては精神的なプレッシャーを感じる

マルチタスクの本質的な目的は、業務にかかる時間の短縮です。複数の業務を同時に進めていくことになるため、時間を意識して焦りが生じやすくなります。

人によっては期限が迫っていることに対し、精神的なプレッシャーを感じるケースもあるでしょう。ストレスをためてしまうとさらに焦ってしまい、業務の質も低下する恐れがあります。


精神的なプレッシャーを感じやすい人や、適切なスケジューリングが苦手な人は、マルチタスクに向かないといえます。

マルチタスクに求められるスキル

マルチタスクでスムーズに仕事を進められる人は、共通のスキルが備わっています。マルチタスクに求められるスキルを理解し、優先的に鍛えるとよいでしょう。

優先順位を付けられるスキル

複数のタスクを同時にこなす場合は、タスクごとに優先順位を付けることが重要です。早く終わらせるべきタスクを見極め、優先的に取り組む必要があります。

優先順位の低いタスクから着手してしまうと、納期に間に合わないタスクが発生しかねません。焦りが生じて業務の質が下がり、納期にも遅れるという悪循環に陥ってしまいます。

正しい優先順位を付けられれば、全ての仕事に余裕を持って取り組むことが可能です。マルチタスクを鍛える場合、まずは優先順位を付けられるスキルを習得しましょう。

スケジューリングスキル

タスクごとに優先順位を付けたら、次にそれぞれのタスクをスケジューリングする必要があります。どのタスクをどのタイミングでどれくらいの量こなすかを決める作業です。

それぞれのタスクには最終的な期限があるため、その時点より前に作業が終わっていなければなりません。イレギュラーに発生するタスクのために、ある程度の余地を設けておくことも大切です。

仕事を割り振るスキル

仕事を割り振るスキルは、マルチタスクをスムーズに進めるために周囲のサポートを得るためのスキルです。自分だけで仕事を進められない場合、うまくサポートを受ける必要があります。

周囲に割り振るタスクは、できるだけ協力者に負担がかからないものにするのがおすすめです。優先順位が高いタスクや、自分がしたほうが早く終わるタスクは、できるだけ自分でこなすように割り振りましょう。

研修に盛り込みたいマルチタスク能力育成メソッド

マルチタスク能力を鍛える際に効果的な育成メソッドを紹介します。従業員向けの研修を実施する際は、優先的に盛り込むのがおすすめです。

タスクシフト

タスクシフト手法とは、事前に設定したタイミングで業務を切り替える方法です。切り替えのタイミングは自分で設定しなければなりません。

「納期が近いからこっちのタスクからやるように」と上司に指示されてやむなく切り替えるより、自分が考えたタイミングでタスクを切り替えるほうが、作業効率が上がるとされています。


タスクシフトに取り組む場合、まずはタスクを洗い出して優先順位を付けましょう。全てのタスクを終わらせる期限を決め、スケジューリングをした上でタスクシフトを実行します。

1×10×1システム

1×10×1システムは、早めに終わらせられるタスクから着手していく手法です。最初の1は1分、次の10は10分、最後の1は1時間を意味しています。

1分程度で終わる作業から始めれば、タスクをため込まずに済みます。最後のタスクになると「これが終われば全て完了する」と思えるため、モチベーションも上がりやすいでしょう。

パーキングロット思考

パーキングロット思考は優先順位付けに関連する考え方です。今やるべき業務を遂行中に優先度の低いタスクが生じた場合の対処法として役立ちます。

目の前の業務より優先度が低いタスクを優先してしまうと、本筋の業務の作業効率が低下します。一旦脇に追いやり、本筋の業務に集中して取り組むことが大切です。

ただし、優先度が低いタスクもいつかはこなさなければなりません。手つかずのまま放置するのではなく、蓄積できる場所にストックしたうえで、適切なタイミングで確実に処理する必要があります。

本筋から外れた小さな問題をうやむやにせず、マルチタスクの一環として捉えることが、パーキングロット思考の重要なポイントです。

マルチタスク能力を育成して人手不足を解消

従業員のマルチタスク能力を育てれば、人手不足の解消を図れます。会社の生産性が上がることや、従業員自身のスキルアップにつながることもメリットです。

優先順位を付けられるスキルやスケジューリングスキルを鍛えれば、マルチタスク能力の向上を期待できます。従業員の特性も考慮しながら、適切な育成計画を立てましょう。


著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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