従業員の半数以上には経営理念が伝わっていない!モチベーション向上のカギは「共感」と「行動」
経営理念は社内に浸透すればモチベーション向上や組織力強化などの効果をもたらします。しかし、せっかく経営理念を策定しても従業員の半数以上に伝わっていないのが日本企業の平均的な姿のようです。
理念浸透の鍵は「理念への共感」と「理念と行動の結びつき」にありますが、これらは積極的に取り組まないとなかなか実現できません。今回は、経営理念が従業員に伝わらない要因と理念浸透を実現するポイントについて、具体的な施策例とともに紹介します。
【時間がない方のためのポイントまとめ!】
- 約60%の従業員は企業理念への理解・共感をしていない
- 目線のズレは大きな組織の溝になる
- 企業理念は伝え続けることが重要
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経営理念を正しく理解している従業員はわずか4割
パーソル総合研究所が全国の正規雇用就業者を対象に2023年に行った調査によると、企業理念の内容を「十分理解している」と答えた人の割合は41.8%でした。
経営理念の内容について「共感できる」「同意できる」と答えた人の割合も同程度です(それぞれ41.9%、44.5%)。
参照:「企業理念と人事制度の浸透に関する定量調査」(パーソル総合研究所)
まずはこうした実態の背景にある要因について考えてみましょう。
従業員にとって経営理念は理解しにくい
経営者はこれまでに蓄積した経験・知識や各自の想い、社会全体や市場の分析、中長期的な展望などをもとに経営理念を策定します。
多くの企業では、従業員に対して経営理念そのものは伝えているものの、背景となっている情報までは共有できていないケースがあります。
経営理念を読んだだけでは抽象的にしか伝わらないため、十分な理解や共感までは得られていないと考えられるでしょう。
また、従業員が多くなればなるほど、全従業員に伝えることが難しくなります。
普段の業務と理念がつながらない
経営理念は会社としての基本方針をまとめたもので、本来は会社のすべての業務と何らかの関わりがあるはずです。
しかし、経営理念を抽象的な形で一方的に提示するだけでは、従業員にとって普段の業務とのつながりが見えません。
その結果、経営理念が単なる形式的な標語のようにとらえられてしまい、普段の業務のなかでは軽視されてしまうことになります。
目線のズレはやがて大きな溝に
各部署の現場では他部署や会社全体のことを考える余裕はなく、自分たちの部署だけを見て物事を判断し、「部署内の最適化」を目指す傾向があります。その結果、経営層や他部署の目線との間にズレが生じがちです。
社内全体の目線を合わせて事業の「全体的な最適化」を図るためには、経営層が経営理念を通して全体を貫く「ストーリー」を現場に提示し、各現場の目線をうまくマネジメントしていく必要があります。
理念が背景から伝わっておらず、標語として捉えられてしまうと「経営層は現場のことをわかっていない・考えていない」という疑念・反感を生むことも。
目線のズレが長期化すると、組織のなかに大きな溝を生じさせてしまう恐れがあります。
重要なのは理念への「共感」と「行動」
経営理念を社内に浸透させるためには、「理念に共感」してもらうことと「理念と行動(実際の業務)とのつながり」を理解してもらうことが必要です。
さらに、従業員のなかに生まれた「理念に沿った行動」の実践例を全社的に共有することで、理念浸透をいっそう促進し、従業員のモチベーション向上を実現することができます。
会社の思いを具体的な背景から伝える
経営理念に「共感」してもらうには、まずその内容を理解してもらわなければなりません。そのためには経営理念を定めた背景・理由・意図・根拠・想いなどを分かりやすい言葉で説明する必要があります。
「なぜやるのか?」理念と業務を紐づける
日頃の業務とのつながりが感じられない経営理念は、「自分ごと」として感じられず、共感が得られません。
業務の必要性や目的、「なぜやるのか」「最終的に何を目指しているのか」について、経営理念をベースに具体的に説明することにより、理念と業務・実際の行動を紐づけることが必要です。
効果的な説明がどうしても案出できないようであれば、その経営理念は事業の実態とはかけ離れたものだったり、事業を進めている中で乖離してしまったということになります。
その場合は、経営理念そのものを再考する必要もあるでしょう。
経営理念と具体的な業務とのつながりを全てひとまとめに説明しつくすことはできないため、社内報やトップメッセージなどの発信によって、少しずつ説明していくことが必要になります。
理念に沿った行動は全体に共有する
従業員が実際に行った「理念に沿った行動」を積極的に取り上げて全社に向けて発信すれば、理念と業務のつながりをより具体的に周知でき、理念に沿った行動の促進にもつながります。
それを繰り返していけば、理念が組織の習慣・文化のなかに根づき、より安定的に機能するようになります。
理念は“周知し続ける”ことが大事
経営理念を標語や一括りの文章としてまとめて掲示するだけでは、十分に伝えることはできません。
さまざまな形で「活用」して、具体化・肉付けをしながら周知し続けることが重要です。理念を「周知し続ける」ための効果的な方法をいくつか紹介します。
【社内報】会社や部署の動きを従業員へ共有
社内報には経営陣の考え・動向を従業員に向けて伝達するコンテンツや、各現場(部署・従業員)の取り組み・成果・思いを全社に向けて伝達するコンテンツ、顧客の声を紹介するコンテンツなどがあります。
会社から従業員に向けた節目ごとの決算報告・事業計画発表や各種ニュース・レポートなどのコンテンツは、経営理念の背景や業務とのつながりを具体的に説明する場として最適でしょう。
また、現場の取り組みや顧客の声を紹介するコンテンツのなかで、理念に沿った行動の事例を幅広く取り上げて配信していくのも効果的です。
社内報には紙媒体で配布する企業もありますが、直接的な伝達やタイムリーな共有という点では社内ポータルや社内SNSといったツールを活用した方がより効果的と言えます。
【社長メッセージ】社長の想いを直接届ける
社長メッセージ(トップメッセージ)では、経営理念の背景や業務とのつながりなどを社長自身の言葉で従業員に直接届けることができます。
社内行事の際に口頭で伝えたり、定期的に発行する社内報のコンテンツとしたり、社内SNS上で随時発信したりする形がありますが、従業員の心にとどくような内容・表現にすることが重要です。
従業員への理念浸透に効果的な施策20選
経営理念浸透に効果的な施策は社内報・社長メッセージ以外にも多くあります。自社の現状に照らして適切な施策を選び、とにかく実践し続けていくことが大切です。
これまで800社以上の理念浸透やエンゲージメント向上を支援してきた「TUNAG」では、経営理念浸透に効果的な20の施策を実際の取り組み事例と共にまとめた資料を配布しています。自社に適した施策を検討するための参考資料としてぜひご活用ください。
▶ 従業員に伝える4つのステップと理念浸透のための20の施策
経営理念を浸透させて組織の一体感を強めよう
本記事では、経営理念が従業員に伝わらない要因と、理念浸透を実現するためのポイントを解説しました。
現状、全国の正規雇用従業員の約4割が経営理念を十分に理解していないというデータがあります。従業員が経営理念を理解していないと、経営層と現場の間にズレが生じ、組織内に大きな溝ができる原因となります。
経営理念を浸透させるためには、以下のポイントが重要です。
- 会社の思いを具体的な背景とともに伝える
- 業務の必要性や目的を説明し、理念と業務・行動を結びつける
- 従業員が実際に行った「理念に沿った行動」を全社に向けて発信する
経営理念は継続的に周知することが大切です。根気がいる取り組みですが、本記事でご紹介した経営理念を浸透させるポイントを参考に、理念経営の第一歩を踏み出しましょう。