パーパス経営とは?企業事例から学ぶ、浸透のポイントと従業員エンゲージメント向上の必要性

「パーパス経営」という言葉を耳にすることが増えてきましたが、具体的にはどのような経営スタイルを指すのでしょうか。

パーパス経営とは、企業や組織が掲げる明確な目的を中心に据え、その目的を社会や地域、消費者、そして世界全体に伝え、事業活動を展開していく経営の考え方です。この経営スタイルは、組織内の一体感を高めるための有効な手段として注目されています。

この記事では、パーパス経営の詳しい概要と、その実例として有名企業が掲げるパーパスを紹介していきます。どのように企業が社会的な価値を追求しているのか、その背景や意義についても触れていきたいと思います。

パーパス経営とは

「世の中のために、会社は何ができるのか?」 パーパス経営とは、従来の利益追求型経営から脱却し、自社の存在意義や社会への貢献を明確にする「パーパス(目的)」を軸に、事業を展開していく経営スタイルです。

パーパス(purpose)は、「目的」「意義」などに翻訳されます。

パーパス経営は元々アメリカの大手投資運用会社であるブラックロックのラリー・フィンクが2018年に「パーパスの重要性」を提唱したところから始まった考え方であると言われています。2019年にはアメリカの大手経済団体であるビジネス・ラウンドテーブルが「企業のパーパスに関する声明(Statement on the Purpose of a Corporation)」を発表し、株主至上主義の経営から、人や社会を重要視する経営への転換を求めました。

このような動きは、近年日本国内でも広がっており、多くの企業がパーパス経営に注目して取り組み始めています。

パーパス経営の重要性

パーパス経営は、企業の存在意義を明確にし、それを経営の中心に据えることで、組織全体の一体感を高める重要な手法です。特に、現代の社会では、消費者や従業員が企業に対して求める価値観が変化しており、単なる利益追求ではなく、社会にどう貢献するかが重要視されています。

パーパス経営を実践することで、企業はその社会的責任を果たしながら、従業員のモチベーションを高め、長期的な成長を促進できます。このため、パーパス経営は、企業が持続的に発展するために欠かせない戦略となっています。

従来の経営モデルとの違い

パーパスと似た概念として、「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」があります。

ミッション(Mission)

企業として成し遂げるべきこと

ビジョン(Vision)

会社の理想の姿や将来像

バリュー(Value)

企業として重視する価値観、行動基準

パーパス(Purpose)とは、「社会、世界、環境の観点から考えた自社の存在意義」のことです。

まとめると、パーパス経営に取り組む企業は、purposeを前提として、valueを浸透させ、missionを達成し、visionに向かって進むというように説明できるかもしれません。

パーパスの方が「社会にどのような価値を提供するのか」という「対社会」の視点が強く出ている点も特徴といえます。

現代社会では、企業は単に利益を追求するだけでなく、環境問題や社会課題にも積極的に取り組み、その責任を果たすことが求められています。企業が掲げるパーパスは、まさにその姿勢を示すものであり、社会との信頼関係を築く上で重要な役割を担っています。

その答えはたくさんありますが、SDGsが指摘する17個の課題はそれに含まれます。
また、エシカル消費やESG投資、VUCAといったキーワードも、社会・世界・環境が抱える課題のなかから生まれたものです。
SDGs、エシカル消費、ESG投資、VUCAについては後段で解説しますが、このような社会課題に取り組むことを「パーパス経営」のテーマとする企業もあります。

パーパス経営が注目される社会的背景

経営者や企業がパーパス経営を重要視するのは、時代が要請するからでしょう。社会課題も世界的な課題も環境問題も深刻化する中で、企業が社会でどのような役割を担っているかが大きく注目されるようになりました。

また、社会課題を解決すると人々の生活がより豊かになるので、社会、経済の持続的成長が可能になります。そのため、大局的な視点で、パーパス経営は事業と経営の安定に寄与するはずです。社会と世界と環境か抱える課題は無数にありますが、ここでは以下の4つについて詳しく解説します。

  • SDGs、サステナビリティ
  • ミレニアル世代のエシカル消費・企業選び
  • ESG投資
  • VUCAの時代の到来

SDGs、サステナビリティ

  1. SDGsやサステナビリティという用語を、近年様々な場面で耳にすることがあるのではないでしょうか。SDGsはSustanable Development Goalsの頭文字で、和訳は持続可能な開発目標となります。サステナビリティの意味は持続可能性なので、両者はほぼ同様の文脈で用いられます。

    SDGsは2015年の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された17のゴールで構成されています。世界が協力して17のゴールを2030年までに達成させようとしています。17のゴールのキーワードは次のとおりです。

    1、貧困
    2、飢餓
    3、保健
    4、教育
    5、ジェンダー
    6、水、衛生
    7、エネルギー
    8、成長、雇用
    9、イノベーション
    10、不平等
    11、都市
    12、生産、消費
    13、気候変動
    14、海洋資源
    15、陸上資源
    16、平和
    17、実施手段

    このうちエネルギー、成長、イノベーション、都市、生産などは、企業が既存事業とマッチさせやすいのではないでしょうか。また、企業が新規事業を検討するとき、17項目のなかから事業テーマを選んでもよいでしょう。

    参照:
    SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省
    持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割(外務省 国際協力局)

ミレニアル世代のエシカル消費・企業選び

2000年以降に成人や社会人を迎える「ミレニアル世代」では、社会課題の解決を考慮した消費活動である「エシカル消費」への関心が高まっています。

今後、労働人口においてミレニアル世代の割合が高くなる中で、企業が生き残っていくためにはミレニアル世代に選ばれるようなエシカル消費を考慮しなければません。こういった意味でも、社会にどう貢献するか?を意図したパーパス経営が注目されています。

また、就職活動の際の企業選びの軸としても、ミレニアル世代は社会課題の解決を重視すると考えられています。優秀な人材を確保して生き残っていくためにも、多くの企業がパーパス経営に注目し始めています。

エシカル消費の具体例には、障害者支援につながる商品やフェアトレード商品、寄付つきの商品、リサイクル製品、資源保護に関する認証、地産地消、被災地産品などがあります。 エシカル消費はSDGsとも関連し、「12、生産、消費」がそれに該当します。「12、生産、消費」は詳しくは「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」となっていて、天然資源の管理や効率的な利用、食品廃棄物の減少といった課題が設けられています。

参照:
エシカル消費とは | 消費者庁
あなたの消費が世界の未来を変える(平成29年4月 「倫理的消費」調査研究会 取りまとめ)
目標12 持続可能な消費と生産のパターンを確保する

ESG投資

ESG投資とは、投資家がESGの要素を考慮して企業などに出資する投資スタイルのことです。

ESGはenvironment(環境)、social(社会)、governance(企業統治)の頭文字をとった略語です。

従来の投資家は、企業の業績や利益率、キャッシュフローなどの「お金」に注目して投資をしていました。 しかし投資家や企業、経済界が「お金」に固執しすぎたことで、気候変動などの環境問題や労働問題、社会問題、不祥事などが起きたと考えられます。 そこで投資家にも社会課題解決へのコミットが求められるようになりました。投資家はそのニーズに応えるために、ESGに力を入れている企業に注目するようになったのです。

ESGに力を入れているなら投資する、力を入れていないなら投資しない、という態度を取るようになったのです。 企業は投資家からお金を集めることで事業活動を行ったり経営したりするので、投資家がESGに注目すれば、企業もESGを重視するしかありません。 したがってESGが企業のパーパスになるわけです。

参照:ESG投資|年金積立金管理運用独立行政法人

VUCAの時代の到来

VUCA(ブーカ)はvolatility(不安定)、uncertainty(不確実)、complexity(複雑)、ambiguity(不透明)の頭文字で、いずれもネガティブな意味になります。 VUCA時代とは、これから到来するであろう、将来予測が難しくなる状態のことです。 VUCA時代が到来すると、企業がこれまで培ってきた価値やスキル、戦略、設備、ビジネスモデルなどが通用しなくなる恐れがあります。

例えば、サンマの漁獲量が激減すればサンマの加工品がつくれなくなりますし、電気自動車が普及すればガソリン自動車を製造する技術の多くが使われなくなりますし、現金の利用が減ってキャッシュレスが普及すればATMの必要性が薄れます。 したがって企業が生き残るには「想定できないVUCA時代を想定する」という矛盾した経営戦略をつくっていく必要があります。 つまり企業のパーパスづくりはこれからさらに難しくなるはずです。

パーパス経営の課題とその解決策

パーパス経営の重要性は広く認識されていますが、多くの企業がその策定や社内での浸透に苦労しているのが現状です。

経営理念が社長室や事務所の壁に飾られていることはよくありますが、従業員や社長自身がそれを忘れているケースは少なくありません。また、朝礼で唱和されることもありますが、従業員が言葉の真意を理解せず、単に読み上げるだけでは意味がありません。

NewsPicksの記事「「人」「組織カルチャー」を変えないと、パーパス経営は実現しない」では、このようなパーパス経営の課題について詳しく解説しています。

 多くの企業では、パーパスを策定した後、社員研修やワークショップなどを通して現場社員の行動をすぐに変えようとしますが、それだと現場社員は「やらされているだけ」になってしまう。

 そうならないために、戦略も組織もパーパスに従わせていく。つまり、パーパスを最上位概念として、経営・事業・人事戦略、ガバナンスやオペレーション、人材の採用・育成・配置を設計していくことが重要です。

組織全体にパーパスを根付かせるためには、組織変革が必要であり、特に人材と組織カルチャーの変革が重要です。

「戦略を描いても人が動かない」「仕組みや制度があっても活用されずに形骸化する」といったことが発生します。

このような事例は山ほどあるはずです。私たちは、数多くの企業様に対して変革のご支援を行ってきましたが、人と組織カルチャーの醸成なしに、真の変革は成し得ないと感じています。

記事の後半部分では、人事考課・評価制度の見直し、望ましい人材の採用や配置を考慮したタレントマネジメントの実施などについて触れています。タレントマネジメント系サービスの需要が高まっている背景には、人材開発の重要性があります。

パーパス経営は大きな課題ですが、人と組織の変革から始めることが効果的かもしれません。

パーパス経営のメリット

パーパス経営は、従業員のモチベーション向上や組織の一体感強化、ブランド価値の向上、そして持続可能な成長を促進するなど、さまざまなメリットをもたらします。それぞれについて詳しく解説していきます。

従業員のモチベーション向上

パーパス経営では、企業の存在意義が明確にされるため、従業員が自分の仕事に対して意義や使命感を感じることができます。この結果、日々の業務に対するモチベーションが自然と高まり、パフォーマンスの向上につながります。また、企業のビジョンと個人の価値観が一致することで、従業員の仕事に対する満足感が増します。

組織の一体感強化

パーパス経営においては、企業全体で共通のパーパスに基づいて行動することが求められます。この一体感が、従業員同士の結束を強め、部門を超えた協力が生まれやすくなります。組織全体が一丸となって目標に向かうことで、チームワークが向上し、効率的かつ効果的な業務遂行が可能になります。

ブランド価値の向上

パーパス経営を実践する企業は、社会的責任を果たす企業としての評価が高まります。消費者や取引先は、こうした企業を信頼し、支持する傾向が強くなります。その結果、企業のブランド価値が向上し、競争力も増します。さらに、社会貢献を重視する企業イメージが広がることで、新たな顧客層の獲得にもつながります。

持続可能な成長の促進

パーパス経営は、企業が短期的な利益だけでなく、長期的な視点で経営を行うことを促します。環境保護や社会貢献を重視した経営は、持続可能な成長を支える基盤となります。これにより、企業は社会からの信頼を得るだけでなく、安定した経営基盤を築くことができます。結果的に、企業の長期的な発展と安定が図られます。

パーパス経営を実践するための5ステップ

パーパス経営の実践には、企業の存在意義を明確にし、組織全体に浸透させるために重要な手順があります。この手順を順を追って進めることで、企業はパーパスを効果的に経営に反映させ、持続可能な成長を実現できます。以下では、パーパス経営を成功に導くために必要な具体的なステップを紹介します。

  1. ステークホルダーと自社の調査・パーパスの定義
  2. パーパスの共有
  3. 行動指針の策定
  4. パーパスの浸透
  5. 継続的な評価と改善

1. ステークホルダーと自社の調査・パーパスの定義

最初に、関わるステークホルダーと自社の現状を調査・分析します。これにより、企業の強みや課題を明確にし、パーパスを検討しやすくなります。その上で、企業の存在意義であるパーパスを再定義します。企業が社会や顧客に対してどのような価値を提供するのかを深く掘り下げ、経営理念やミッションステートメントに反映させることが重要です。

2. パーパスの共有

次に、定義したパーパスを全従業員に共有します。ここで重要なのは、パーパスが経営層だけでなく、すべての従業員にしっかりと伝わり、理解されることです。従業員がパーパスに共感することで、組織全体の方向性が一致し、各個人が企業のビジョンに基づいて行動できるようになります。

効果的な共有方法としては、定期的な社内ミーティングやワークショップ、企業内ポータルサイトでの情報発信などがあります。これにより、パーパスが単なる理念ではなく、実際の業務に活かされるべき重要な指針として位置づけられます。

3. 行動指針の策定

パーパスに基づいた具体的な行動指針を策定します。この行動指針は、企業の全従業員が日々の業務や意思決定の際にどのように行動すべきかを明確に示すものです。

行動指針の策定には、従業員の意見を反映させることが重要で、トップダウンだけでなくボトムアップのアプローチを組み合わせることで、従業員がより主体的にパーパスを体現する行動が取れるようになります。

また、行動指針は単に文書化されるだけでなく、研修や実践的なトレーニングを通じて従業員に深く浸透させる必要があります。

4. パーパスの浸透

パーパス経営を成功させるためには、企業が定義したパーパスを組織全体に浸透させることが非常に重要です。パーパスが浸透することで、従業員一人ひとりが企業の存在意義を理解し、それを基にした行動が自然に行われるようになります。

特に「共感」を醸成するためには、社内での浸透活動だけでなく、対外発信を並行して行うことが効果的です。第三者の評価や、パーパスの「ストーリー化」によって、社外からの好意的な反応を社員にフィードバックすることで、外部からの評価を実感しやすくなります。これにより、組織内での一体感が高まり、企業全体が同じ方向に向かって進むことができます。

また、パーパスが浸透している企業は、従業員のエンゲージメントが向上し、長期的な成長と持続可能な発展を実現しやすくなります。そのため、パーパスの浸透は経営戦略の中でも特に重要な要素といえます。

5. 継続的な評価と改善

最後に、パーパス経営がうまく機能しているかを継続的に評価し、必要に応じて改善を行います。定期的なフィードバックを通じて、従業員がパーパスに基づいて行動できているかを確認することが重要です。また、外部環境の変化や社会の期待に応じて、パーパスそのものや行動指針を見直すことも必要になるでしょう。

評価と改善のプロセスは、単なるチェック項目ではなく、企業の成長と変革を支える重要なサイクルとして捉えられます。これにより、パーパスが常に企業活動に反映され、企業が持続的に発展していくための基盤が強化されます。

パーパス経営の有名企業の事例一覧9選

社会的な影響力が大きく、世界でビジネスを展開し、環境への負荷が大きい大企業、有名企業ほど早くからパーパス経営への取り組みを公表しています。

ここでは9社の事例を紹介します。

1.ソニーグループの事例

ソニーグループはパーパスとして、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」を掲げています。

当初は、「パーパスを作ろう」という流れではなく「MVVをもう一度見直そう」という流れがあり、その中で海外はパーパスという考え方があるのを知り、ソニーグループでもパーパスを策定することに決めました。

代表自ら「ミッションを見直したい」「社員の皆さんの意見が欲しい」と全世界の社員に呼びかけ、「ソニーグループらしさとはなんだろう」意見を求めたり、対話を重ね、さらに代表とマネジメント層が議論してパパーパスを形にしていきました。

パーパスの浸透については、専門の事務局を立ち上げ、以下のような取り組みを実施していきました。

  • キービジュアルを作りポスターにして全世界に配布
  • 代表のPurposeへの思いをつづった署名入りレターを配信
  • ビジュアルで理解を促進するためのビデオを作成
  • 代表から各事業のマネジメント層に「事業戦略を語るときは、必ずPurposeと関連付けて話してください」と依頼
  • 社内のWEBサイトで、世界中の社員に「パーパスをあなた自身に置き換えるとどうなるのか」「日々の業務の中でどう実践しているのか」をインタビューした記事を公開

パーパスを作ったメリットとして、コロナ禍であってもパーパスを軸として社員が団結し、困難やリスクのある中でも業務に取り組めたことを挙げています。

参照:

ソニーグループポータル | Sony's Purpose & Values

多事業・多国籍の11万人の社員の心を同じベクトルへ。 ソニーグループのPurpose経営 | CCL. | 日経BPコンサルティング

2.味の素の事例

味の素株式会社では、まず自社の存在意義(パーパス)を「食と健康の課題解決」であると定義しました。そして、存在意義を落とし込んだグループビジョンとして「アミノ酸の働きで食習慣や高齢化に伴う食と健康の課題を解決し、人々のウェルネスを共創します」を策定しました。

経営陣と従業員で対話を重ね、さらにパーパスやビジョンを社内で浸透させるために、次のような一連のサイクルで取り組みを実施しています。

  • 代表と部長の対話をもとに組織・個人目標を設定し、個人目標発表会を実施
  • ベストプラクティスを社内SNSで共有し、年に1回表彰
  • エンゲージメントサーベイで効果測定

参考:味の素・西井社長は「パーパス経営」実践のために何を行ったか | Special Report [PR](1/3)|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

3.株式会社ウェルカムの事例

株式会社ウェルカムは、「DEAN & DELUCA」など食とデザインの2軸で多数のブランドを展開している会社です。

店舗や拠点も多く、やさまざまなバックグラウンドを持つ従業員がいる中、スマートフォンアプリを活用して、ブランドを超えてグループ全体の理念や行動指針、経営の想いを届けたり、コミュニケーションを促進することに取り組んでいます。

新型コロナウイルスの流行では、緊急事態宣言による自宅待機・突然のリモートワークなどで従業員のモチベーション低下が課題となりました。また、組織への帰属意識や自分達の仕事の意義に不安も大きくなりました。そこで、以下の取り組みを実施します。

  • アルバイトも含む従業員一人ひとりに、アプリ上で代表から「ウェルカムというグループにいる理由」「ウェルカムの存在意義」などを直接発信
  • 従業員同士で「おうち時間」の過ごし方やおすすめコンテンツをリレー形式で投稿してコミュニケーション

取り組みの結果、従業員のモチベーション維持につながったり、自宅待機中もライフスタイル事業へのヒントや気づきを得られ、従業員同士で仕事以外の関係も生まれました。

コロナ禍でも企業の存在意義などを軸に強い組織づくりに取り組んだ事例として参考になりそうです。

参考:「緊急事態宣言でも仲間と繋がれた事が心強かった」 従業員2,000名に代表の想いが届き、繋がりを生んだコミュニケーション施策

4.ネスレの事例

日本ではコーヒー等で知られるネスレでは、存在意義(パーパス)として「ネスレは、食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます。」を掲げています。

このパーパスを実現するため、ネスレ日本では以下の3つの領域で本業を通じた社会課題の解決に取り組んでいます。

個人と家族のために

ネスレの製品やサービスを通じて生活の質を高めることを目指すものです。

  • コーヒーマシンをオフィスでも活用する「ネスカフェ アンバサダー」では、オフィス内のコミュニケーションの活性化に貢献
  • 自宅で簡単にスーパーフードが摂れる新感覚スムージー「nesQino(ネスキーノ)」を開始し、仕事や家事で忙しくても、自分の体のために自然な素材にこだわったスムージーを手軽に飲む機会を提供

コミュニティのために

活力のあるコミュニティづくりへの取り組みです。

  • 沖縄で初となる大規模な国産コーヒー豆の栽培を目指す産学官連携の「沖縄コーヒープロジェクト」
  • バス車両を全面的に改装した「ネコのバス」を活用して保護猫の譲渡会を実施し、保護猫の啓発と譲渡促進に貢献

地球のために

未来の地球のために、資源と環境を守ることを目指しています。

  • 「包装材料を2025年までに100%リサイクル可能、あるいはリユース可能にする」というコミットメント
  • 日本では、「ネスカフェ」や「キットカット」など主力製品のパッケージの紙化

一見するとグローバルな大企業ならではの取り組みと思いがちですが、自社の事業や製品をパーパスとダイレクトに紐づける事例として参考にできる部分も多そうですね。

参照:

ネスレ日本株式会社 企業情報 (会社案内掲載情報)| ネスレ日本

ネスレのPurposeと実践 | Ideal Leaders株式会社

5.富士通の事例

富士通は、存在意義として「わたしたちのパーパスは、イノベーションによって社会に信頼をもたらし世界をより持続可能にしていくことです。」と掲げています。

パーパスを実現していくために、新しい評価制度「Connect」を2021年から導入しました。この評価制度では、パーパスを起点にマネジメント層がビジョンを描き、そのビジョンに向けてどれだけのインパクトを与えたかが評価されます。また、個人のパーパスを起点にどれだけ成長したかなども評価の対象となります。

参照:

Fujitsu Way : 富士通

共感・信頼をベースとしたマネジメントへ、富士通が実践する新たな評価制度とは - フジトラニュース : 富士通

6.トヨタ自動車の事例

トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ自動車)は歴史ある企業らしく、パーパスを「基本理念」と呼んでいます。トヨタ自動車の基本理念は7項目から成りますが、その第1はこちらです。

  • 内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす

ここには自動車も製造もものづくりも含まれていません。ここに存在するのは法の遵守、フェアな企業活動、国際社会からの信頼です。日本を代表する企業にふさわしい、堂々たるパーパスといえるのではないでしょうか。

なお環境問題に的を絞ったパーパスには、「トヨタ環境チャレンジ2050」があります。これは「気候変動、水不足、資源枯渇、生物多様性の劣化といった地球環境の問題に対し、クルマの持つマイナス要因を限りなくゼロに近づけるとともに、社会にプラスをもたらすことを目指す」取り組みになります。

参照:

基本理念 | 経営理念 | 企業情報 | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

トヨタ自動車、「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表 | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

7.アディダスの事例

世界的スポーツ・ブランド、アディダスが掲げるパーパスは「スポーツをとおして人々の人生を変える」です。アディダスはスポーツを、文化や社会の中心的な存在ととらえ、人々の健康と幸福の原点とみなしています。それゆえにスポーツには人生を変える力があるわけです。

アディダスは、20年以上前からサステナビリティ(持続可能性)を経営理念に据えている、と強調しています。つまり、昨今のサステナビリティ・ブームに乗って始めたわけではない、といわけです。その取り組みの1つが、スポーツ用品を「持続可能な素材」でつくることです。その素材とは、リサイクル素材、再生を踏まえた素材、天然素材のことです。スポーツの領域にも環境問題が深く関わっていることがわかります。

参照:adidas japanを知る|adidas 採用情報

8.三菱UFJフィナンシャル・グループの事例

日本の3大メガバンクグループの一角である株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、三菱UFJFG)は、2021年4月に新しいパーパスを設定したばかり。

それがこちら。

■世界が進むチカラになる

ここには、新しい時代において社会をリードする存在になる、という想いが込められています。そしてその新しい時代とは、輝かしい姿だけでなく、少子高齢化、人口減少、世界経済の低成長、コロナ禍といった苦難の姿も含まれています。

また、金融業界はデジタル技術の進展が目覚ましく、異業種の金融事業への参入も相次いでいます。三菱UFJFGは国内で最大規模の金融機関グループですが、自ら、世界の変化を進める存在であることで、存在意義を生み出していこうという姿勢が窺えます。

参照:「MUFG Way」の制定および新中期経営計画について

9.ソフトバンクグループの事例

ソフトバンクグループ株式会社(以下、ソフトバンクグループ)は純粋持株会社で、スマホなどの通信事業を行っているソフトバンク株式会社とは別の会社です。ソフトバンクグループはそれを理念と呼んでいますが、これをパーパスとみなしてよいでしょ。それはこちらです。

■情報革命で人々を幸せに

革命という言葉はものすごく強い言葉です。そしてソフトバンクグループは、人々が幸せになるには、情報の分野に革命を起こさなければならないと考えていることがわかります。

ソフトバンクグループには、数十年前には人々が想像すらできなかった手段でコミュニケーションを変えてきたという自負があります。

インターネットの将来性にいち早く目をつけ、そこへの投資を矢継ぎ早に行ってきたソフトバンクグループは今、これからの30年の情報革命はAIによって起こされるだろうと考えていて、その領域への資本参加を続けています。

参照:

理念・ビジョン・戦略 | ソフトバンクグループ株式会社

パーパス経営が注目される社会的背景

経営者や企業がパーパス経営を重要視するのは、時代が要請するからでしょう。社会課題も世界的な課題も環境問題も深刻化する中で、企業が社会でどのような役割を担っているかが大きく注目されるようになりました。

また、社会課題を解決すると人々の生活がより豊かになるので、社会、経済の持続的成長が可能になります。そのため、大局的な視点で、パーパス経営は事業と経営の安定に寄与するはずです。社会と世界と環境か抱える課題は無数にありますが、ここでは以下の4つについて詳しく解説します。

  • SDGs、サステナビリティ
  • ミレニアル世代のエシカル消費・企業選び
  • ESG投資
  • VUCAの時代の到来

SDGs、サステナビリティ

SDGsやサステナビリティという用語を、近年様々な場面で耳にすることがあるのではないでしょうか。SDGsはSustanable Development Goalsの頭文字で、和訳は持続可能な開発目標となります。サステナビリティの意味は持続可能性なので、両者はほぼ同様の文脈で用いられます。

SDGsは2015年の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された17のゴールで構成されています。世界が協力して17のゴールを2030年までに達成させようとしています。17のゴールのキーワードは次のとおりです。

1、貧困
2、飢餓
3、保健
4、教育
5、ジェンダー
6、水、衛生
7、エネルギー
8、成長、雇用
9、イノベーション
10、不平等
11、都市
12、生産、消費
13、気候変動
14、海洋資源
15、陸上資源
16、平和
17、実施手段

このうちエネルギー、成長、イノベーション、都市、生産などは、企業が既存事業とマッチさせやすいのではないでしょうか。また、企業が新規事業を検討するとき、17項目のなかから事業テーマを選んでもよいでしょう。

参照:
SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省
持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割(外務省 国際協力局)

ミレニアル世代のエシカル消費・企業選び

2000年以降に成人や社会人を迎える「ミレニアル世代」では、社会課題の解決を考慮した消費活動である「エシカル消費」への関心が高まっています。

今後、労働人口においてミレニアル世代の割合が高くなる中で、企業が生き残っていくためにはミレニアル世代に選ばれるようなエシカル消費を考慮しなければません。こういった意味でも、社会にどう貢献するか?を意図したパーパス経営が注目されています。

また、就職活動の際の企業選びの軸としても、ミレニアル世代は社会課題の解決を重視すると考えられています。優秀な人材を確保して生き残っていくためにも、多くの企業がパーパス経営に注目し始めています。

エシカル消費の具体例には、障害者支援につながる商品やフェアトレード商品、寄付つきの商品、リサイクル製品、資源保護に関する認証、地産地消、被災地産品などがあります。 エシカル消費はSDGsとも関連し、「12、生産、消費」がそれに該当します。「12、生産、消費」は詳しくは「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」となっていて、天然資源の管理や効率的な利用、食品廃棄物の減少といった課題が設けられています。

参照:
エシカル消費とは | 消費者庁
あなたの消費が世界の未来を変える(平成29年4月 「倫理的消費」調査研究会 取りまとめ)
目標12 持続可能な消費と生産のパターンを確保する

ESG投資

ESG投資とは、投資家がESGの要素を考慮して企業などに出資する投資スタイルのことです。

ESGはenvironment(環境)、social(社会)、governance(企業統治)の頭文字をとった略語です。

従来の投資家は、企業の業績や利益率、キャッシュフローなどの「お金」に注目して投資をしていました。 しかし投資家や企業、経済界が「お金」に固執しすぎたことで、気候変動などの環境問題や労働問題、社会問題、不祥事などが起きたと考えられます。 そこで投資家にも社会課題解決へのコミットが求められるようになりました。投資家はそのニーズに応えるために、ESGに力を入れている企業に注目するようになったのです。

ESGに力を入れているなら投資する、力を入れていないなら投資しない、という態度を取るようになったのです。 企業は投資家からお金を集めることで事業活動を行ったり経営したりするので、投資家がESGに注目すれば、企業もESGを重視するしかありません。 したがってESGが企業のパーパスになるわけです。

参照:ESG投資|年金積立金管理運用独立行政法人

VUCAの時代の到来

VUCA(ブーカ)はvolatility(不安定)、uncertainty(不確実)、complexity(複雑)、ambiguity(不透明)の頭文字で、いずれもネガティブな意味になります。 VUCA時代とは、これから到来するであろう、将来予測が難しくなる状態のことです。 VUCA時代が到来すると、企業がこれまで培ってきた価値やスキル、戦略、設備、ビジネスモデルなどが通用しなくなる恐れがあります。 例えば、サンマの漁獲量が激減すればサンマの加工品がつくれなくなりますし、電気自動車が普及すればガソリン自動車を製造する技術の多くが使われなくなりますし、現金の利用が減ってキャッシュレスが普及すればATMの必要性が薄れます。 したがって企業が生き残るには「想定できないVUCA時代を想定する」という矛盾した経営戦略をつくっていく必要があります。 つまり企業のパーパスづくりはこれからさらに難しくなるはずです。

まとめ|パーパス経営は掲げるだけではなく、浸透させることが重要

「パーパス経営に取り組む企業の事例」の部分でも紹介したように、パーパス経営を推進している企業では、パーパスを掲げるだけでなく具体的な施策や取り組みにパーパスを落とし込み、社内に浸透させているのが特徴です。

まずは、経営者や役員、管理職が、パーパスと事業、業務を結びつけていく必要があるでしょう。事業や業務を推進することでパーパスに一歩近づくことができれば、その成功体験が呼び水となり、従業員も自らパーパスと業務の関係性を意識するようになります。 さらに従業員教育のなかでパーパスを強調することも不可欠です。仕事上の学びとパーパスが同じほうを向いていれば、自然とパーパスと日常業務を結びつけられるようになります。

関連記事:パーパス経営が失敗する3つの原因とは?成功させるポイントと事例もご紹介

TUNAG(ツナグ)は、パーパスを様々な取り組みに落とし込み、その浸透度合いを効果測定し、改善していく仕組みをひとつのアプリで実現できます。

  • パーパスについて社長メッセージで発信
  • 従業員同士でパーパスを体現する行動にサンクスカードを送って称賛
  • Web社内報で従業員のパーパスとの向き合い方をインタビュー記事に

など、自社に合わせてオリジナルの取り組みを設計・運用し、数値を見ながら改善していくことができます。

「パーパス経営に取り組みたい」「パーパスを刷新したけど浸透しているのかわからない」という企業様は、ぜひ一度お問い合わせください。

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