パーパスとは?メリットやMVVとの違い、策定のポイントを解説
パーパスは経営戦略やブランディングのキーワードとして用いられることが多い言葉です。自社でもパーパスを策定し、企業の持続的成長を図りましょう。パーパスの意味や期待できる効果、策定のポイントについて解説します。
パーパスとは
近年注目されているパーパスとは、どのようなものを指すのでしょうか。まずは言葉の意味を理解しておきましょう。
企業の社会的な存在価値
パーパスとは、企業の社会における存在価値や意義を指す言葉です。「目的」や「意図」を意味する英語「Purpose」を語源としています。
「自社は何のために社会に存在しているのか」「どのような目的でその事業を行っているのか」という、企業の本質的な問いに答えるのがパーパスです。
欧米で生まれた考え方ですが、近年は日本でも大きな注目を集めており、企業価値を高めるためのキーワードとして用いられています。
パーパスが注目される理由
パーパスが重視されるようになった理由には、主に次のようなことが挙げられます。
- サスティナブル経営への社会的要請(SDGsの世界的な推進)
- 投資家の価値評価基準の変化(ESG投資の拡大)
- 若者層の社会意識の高まり(企業を選ぶ際に社会貢献度や企業文化を重視)
- 消費者の指向の変化(エシカル消費への関心の高まり)
- 産業構造や組織の多様化(誰もが理解できる指針を示すことの重要性)
これからの時代、企業は経済的発展を目指すだけでなく、社会的責任を果たすことも求められているのです。
パーパスとMVVの違い
パーパスと意味を混同しやすい言葉に、ミッション・ビジョン・バリュー(Mission・Vision・Value、MVV)があります。それぞれの意味は次の通りです。
- ミッション:企業が果たすべき使命(What)
- ビジョン:企業が目指す未来(When・Where)
- バリュー:企業の姿勢や価値観(How)
- パーパス:企業の社会的意義(Why)
MVVとパーパスを比較した場合、パーパスはより根源的で、企業にとっての原点を示すものです。MVVはパーパスを基に構築されているといえます。
パーパスと関連するビジネス用語
パーパスはビジネスでどのように活用されているのでしょうか。派生語の意味を押さえながら、パーパスの具体的な活用方法を理解しておきましょう。
パーパス経営
パーパス経営とは、その名の通りパーパスを軸に企業経営を行うことです。自社が掲げた企業の社会的な存在意義を意識して経営に取り組むことを意味します。
パーパス経営を推進する場合、単にパーパスを掲げるだけでなく、社内の具体的な施策や取り組みにパーパスを落とし込む必要があります。
パーパスドリブン
パーパスドリブンは、全ての企業活動をパーパスに沿って検討・実践することです。製品やサービスから従業員の行動指針までパーパスを反映させます。
パーパス経営を実践する企業は、組織のあらゆる物事がパーパスを起点に始まっていなければなりません。戦略立案や課題解決の際には、パーパスドリブンを意識することが重要です。
パーパスブランディング
パーパスを自社のブランディングに生かす手法をパーパスブランディングといいます。商品やサービスに対する共感を集め、認知を拡大することが目的です。
パーパスブランディングを進める際は、実態が伴わないパーパスウォッシュに注意する必要があります。パーパスウォッシュを回避するポイントは次の通りです。
- 正確な情報をパーパスに反映する
- パーパスを実際の施策に落とし込む
- パーパスを軸に企業活動を行う
パーパスステートメント
パーパスステートメントとは、具体的なパーパスを言語化してまとめた声明のことです。パーパス経営に取り組む場合は、パーパスステートメントを作成する必要があります。
パーパスステートメントは以下の点を意識して作成しましょう。
- 簡潔かつ頭に残りやすい
- ユニークな表現を用いている
- 行動指針を明記している
- 社内外に向けてメッセージを発している
企業がパーパスを持つメリット
パーパスの考え方を導入すれば、さまざまな効果を期待できます。企業がパーパスを持つ主なメリットを見ていきましょう。
企業イメージの向上につながる
企業がパーパスを掲げると、自社の社会的意義や存在価値を示せるため、企業イメージの向上を期待できます。ステークホルダーから多くの共感を得られるでしょう。
信頼できる企業という印象を植えつけられれば、ネットを通じた認知度の向上につながります。商品やサービスを応援してくれる人が増えるため、売上向上も図ることが可能です。
イノベーションが起きやすくなる
パーパスは社外だけでなく、社内の従業員にもプラスの効果を与えます。企業の目指すべき方向性が定まり、組織として一体感が生まれるためです。
意識の方向が統一された組織では、部署の枠を超えたアイデアが生まれやすくなります。また、組織のベースが整っていれば従業員の自発的な行動を促しやすくなり、イノベーションが創出しやすい組織になるでしょう。
従業員エンゲージメントが高まる
企業の社会的な存在価値を示すパーパスは、従業員の働く意義を明文化したものであるともいえます。仕事を通して社会に貢献していることを従業員が実感できるため、従業員エンゲージメントが高まるでしょう。
自分の仕事に誇りを持って働けるようになる従業員が増えれば、離職率の低下も期待できます。従業員エンゲージメントが高い企業は個人の力を最大限に発揮しやすくなる点もポイントです。
また、パーパスを掲げた企業には求職者も集まりやすくなります。特に、エシカル消費を好むミレニアル世代やZ世代を取り込みやすくなるでしょう。
パーパス策定のポイント
自社でパーパスを策定する際は、いくつかのポイントを押さえることが大切です。パーパスを定めるときに検討すべき3つの要素を紹介します。
自社と社会の関係性を考える
パーパスを決める際は、自社が社会に対してどのようにアプローチしていけるかを考えることが重要です。社会における現在の課題を解決できるものでなければなりません。
企業が社会とのかかわりを示す場合、将来どうあるべきかといった理想論に走りがちです。しかし、パーパスではビジョンのような企業の未来像を述べるのではなく、現在進行形で顕在化している社会課題にフォーカスする必要があります。
また、企業と社会の関係性を考える際は、全てのステークホルダーの視点から検討することも重要です。自社のみでパーパスの方向性を決めず、従業員・顧客・取引先・株主を含めた社会との関係性を考えましょう。
自社独自の価値を組み込む
パーパスには自社独自の価値を取り込みましょう。他社と同じような内容のパーパスでは、企業が存在する社会的意義を示す際のインパクトが弱くなってしまいます。
ただし、あまりにもスケールが大きい非現実的な内容だと、ステークホルダーをしらけさせてしまうでしょう。コストも余計にかかってしまいます。
ステークホルダーからの共感を得やすいパーパスを策定するポイントは次の通りです。
- 自社で実現可能な内容である
- 自社が行うのに合理性がある
- 利益を生み出せる活動である
- 実現可能な未来を具体的にイメージできる
上記の要素を踏まえつつ、自社にしかできないユニークな内容を検討しましょう。
従業員の道しるべとなる内容にする
パーパスは自社の従業員にも大きな影響を与えるため、従業員の道しるべとなる内容にしましょう。組織の風土や文化が定まり、上位概念や理念が明確化されれば、従業員が自分の役割を理解し安心して働けるようになります。
自分が働く意義を企業に見出すことで、従業員のモチベーションも高まるでしょう。ひいてはワークエンゲージメントや生産性の向上も期待できます。
何らかの原因で企業の売上が下がった場合も、パーパスがあれば従業員の迷いや不安を払しょくする道しるべになります。自分たちの目標が間違っていないことを再確認できるため、多少の危機では揺るがない組織になるでしょう。
パーパス経営の成功事例
パーパスの内容は企業によりさまざまです。パーパスを活用した企業事例をチェックし、自社で策定する際の参考にしましょう。
パタゴニア
パタゴニアはアメリカのアウトドアブランドです。「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というパーパスを2018年に発表しています。
パーパスに基づくパタゴニアの具体的な取り組みは次の通りです。
- 非営利の環境活動団体に売上の1%を毎年寄付(1% for the Planet)
- 会社の価値観を守るために設定されたPatagonia Purpose Trustに会社の議決権付株式の100%を譲渡し、無議決権株式の100%を非営利環境保護団体Holdfast Collectiveに譲渡
- 事業に再投資されない余剰利益を配当金として毎年分配
これらの取り組みは多くのステークホルダーから高い支持を集めています。
出典:資本主義を再考する | パタゴニア | Patagonia
ネスレ
食品・飲料メーカーのネスレのパーパスは、「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」です。
このパーパスに基づき、ネスレは以下3つの目標を掲げています。
- 食の力で人とペットの生活に大きな違いをもたらす
- 環境を守り保全を強化する
- ステークホルダーに大きな価値をもたらす
また、ネスレは敬意に根差した価値観を重視し、自分自身・他者・多様性・未来に対する敬意がビジネスの進め方に大きな影響を与えているとしています。
出典:ネスレのパーパスと価値観 | 企業情報 | ネスレ日本 企業サイト | Nestle
パーパスが自社を新しいステージへ導く
パーパスは企業の社会的意義を示す言葉です。「なぜ自社は存在するのか」を問う流れが、世界のビジネスシーンでトレンドになっています。
パーパスを持つ企業は、自社のイメージ向上を図ることが可能です。イノベーションの発生や従業員エンゲージメントの高まりも期待できます。
また、パーパスは策定するだけでは、大きな効力を発揮できません。従業員や投資家、取引先などステークホルダーに認知され、浸透することが重要です。組織のエンゲージメント向上を支援するクラウドサービス「TUNAG」を活用することで、全従業員に対して策定したパーパスの意味や背景などの情報を迅速かつ正確に伝えることができ、パーパスの浸透を図れます。
ポイントを押さえてパーパスを策定・浸透に取り組み、自社を新しいステージへと導きましょう。
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TUNAG(ツナグ) | エンゲージメント向上で働きがいのある組織を作る