イノベーションとは?定義・分類や実現させるポイント、企業事例
企業が成長を維持するためには、イノベーションの推進が不可欠です。イノベーションについて理解を深め、自社でやるべきことを検討しましょう。イノベーションの定義・分類や実現させるポイント、企業事例を紹介します。
イノベーションとは
イノベーションはオーストリアの経済学者シュンペーターが1911年初版の著書で定義した言葉です。どのようなことを指すのか、まずは言葉の意味を理解しましょう。
革新的な手法で新たな価値を生み出す活動
イノベーションとは、これまでにない手法で新たな価値を創出・提供し、生活様式や産業構造に変化をもたらす取り組みのことです。
イノベーションの型は、時代により以下の3つに分類されます。
- 発明牽引型(1900~1949年):それまで世界にはなかった製品やサービスの発明
- 普及・展開型(1950~1999年):世界的な大量消費を実現する大資本企業の大量生産
- 21世紀型(2000年~現在):スタートアップやデジタルで世界に効率よく価値を展開
また、イノベーションの創出には次に挙げる5つの視点が重要です。
- 新たな価値やアイデアを生み出す
- 収益を上げられるビジネスにする
- 生活様式や産業構造に変革をもたらす
- 国や地域の枠組みを超えて世界中に広がる
- 次のイノベーションへのきっかけとなる
イノベーションが重視される理由
イノベーションを起こした企業は市場を独占しやすくなるため、収益の大幅アップが見込めます。企業の成長を維持するために不可欠な要素の1つといえるでしょう。
少子高齢化や労働人口減少といった課題解決につながることもポイントです。イノベーションによりDXが推進されれば、より少ない人員で仕事を回していけるようになります。
また、イノベーションに取り組むことで、グローバルな市場を視野に成長を続けられます。グローバル化への対応はより質の高い雇用を生み出すほか、新たな技術やノウハウの取得にもつながるでしょう。
日本におけるイノベーションの現状
戦後の日本では、数多くの発明牽引型イノベーションが創出されました。代表的なものは次の通りです。
- BtoB領域:内視鏡・新幹線・トヨタ生産方式・発光ダイオード
- BtoC領域:インスタントラーメン・漫画・アニメ・ウォークマン・ウォシュレット
また、以下に挙げる普及・展開型イノベーションを創出した業界は、現在でも改善・改良を繰り返しながら競争力を維持し続けています。
- BtoB領域:産業用ロボット・炭素繊維・中小型液晶パネル
- BtoC領域:自動車・デジタルカメラ・レーザープリンター・家庭用ゲーム機器
一方、21世紀型イノベーションに関しては、世界に大きなインパクトを残すような企業が不在です。政府は日本企業のイノベーションを促す目的で、2021年3月に「科学技術・イノベーション基本計画」を策定しています。
出典:科学技術基本計画及び科学技術・イノベーション基本計画 - 科学技術政策 - 内閣府
リノベーションとの違い
イノベーションと似た言葉にリノベーションがあります。リノベーションとは刷新や修復を指し、用途や機能を改善して価値を高めるという意味を持つ言葉です。
イノベーションがこれまでにない全く新しいものを生み出すのに対し、リノベーションではこれまでの良さや強みを生かしつつ付加価値を高めます。
一般的に、リノベーションは建築やリフォームの分野で使われる用語です。住宅の大規模かつ包括的な改修を行う場合は、リフォームではなくリノベーションを用います。
イノベーションの定義や分類
イノベーションの種類は提唱者ごとに異なります。代表的な定義・分類とそれぞれの着眼点を見ていきましょう。
5種類のイノベーション(シュンペーター)
イノベーションを最初に定義したとされるオーストリアの経済学者シュンペーターは、自身の著書でイノベーションを5種類に分けています。
- プロダクトイノベーション:創造的な活動による革新的な製品やサービスの開発
- プロセスイノベーション:生産工程や流通過程の見直し
- マーケットイノベーション:新たな市場への参入
- サプライチェーンイノベーション:原材料や供給ルートの新規開拓
- オルガニゼーションイノベーション:組織の変革
近年のイノベーションは、プロダクトイノベーションとプロセスイノベーションのいずれかに分類されるのが一般的です。
イノベーションのタイプ(チェスブロウ)
アメリカの経営学者チェスブロウは、2003年にイノベーションを以下の2パターンに分けて提唱しました。
- オープンイノベーション:外部の資源や考え方を取り入れる
- クローズドイノベーション:自社のみで完結させる
かつてはクローズドイノベーションが主流でしたが、現在はオープンイノベーションを取り入れるケースが増えています。
イノベーションの7つの種(ドラッカー)
「マネジメントの父」とも呼ばれるドラッカーは、イノベーションを生み出すための有益な視点を7つの種として提唱しています。
- 予期せぬもの
- ギャップ
- ニーズ
- 産業構造の変化
- 人口構造の変化
- 意識の変化
- 発明発見
7つの種は成功しやすい順に並べられています。下に行くほど予測や分析が困難になりますが、イノベーション創出の効果もより大きくなるでしょう。
イノベーションのジレンマ(クリステンセン)
クリステンセンはイノベーション研究の第一人者です。自身の著書でイノベーションを次の2つに分類しています。
- 持続的イノベーション:既存の製品やサービスの性能向上を図る
- 破壊的イノベーション:新しいアイデアを取り入れて製品やサービスを生み出す
また、持続的イノベーションに注力するあまり破壊的イノベーションを起こせないことを、クリステンセンは「イノベーションのジレンマ」と呼んでいます。
イノベーションを実現させるポイント
世間に大きなインパクトを与えられるイノベーションは、どの企業でも簡単に起こせるものではありません。イノベーションの創出に必要なポイントを紹介します。
経営層から意識を変える
イノベーションを起こすためには、企業全体の意識を変えることが重要です。古いやり方にとらわれず、常に創造性を追求することで、新しいアイデアが生み出されやすくなります。
ただし、経営層の意識が変わらなければ、現場の意識もなかなか変わりません。リスクを恐れずに挑戦する姿勢を、経営層から示していく必要があります。
自社の現状や強みを再認識する
イノベーションを成功させるポイントの1つに、自社の現状や強みを再認識することが挙げられます。自社の存在意義や提供価値を確認し、顧客の本質的なニーズを把握することが重要です。
オープンイノベーションを導入すれば、自社の強みをより明確化しやすくなるほか、新しい知識やノウハウも効率よく取り込めます。多様化する顧客ニーズにも対応しやすくなるでしょう。
イノベーションが起きやすい環境をつくる
イノベーションを起こすためには、従業員が新しいアイデアを生み出しやすくなる環境づくりも重要です。DXの推進やコミュニケーション環境の整備、イノベーションを起こす人材への支援などが必要になるでしょう。
また、新しいことにチャレンジしやすい文化の醸成や従業員からの意見をボトムアップで事業に反映する仕組みづくりも大切です。これまでうまくいっていたからといって、同じことを繰り返す考え方が定着していると、挑戦できない組織のままになってしまいます。
従業員の心理的安全性を確保する
イノベーションには失敗がつきものです。これまでにない新たな製品やサービスを生み出すまでの過程では、さまざまなリスクが生じます。
失敗が許されない環境下でリスクを恐れずにチャレンジできる従業員はほとんどいないでしょう。イノベーション創出を狙ったチャレンジに対して寛容な雰囲気をつくり、従業員の心理的安全性を確保することが大切です。
イノベーションの企業事例
イノベーションの創出に成功した国内企業の事例を紹介します。各企業の成果や成功要因を見ていきましょう。
ミツフジ
西陣織の帯屋として創業したミツフジは、銀メッキ繊維によるウェアラブルデバイスを開発し、生体データの収集・解析を行えるスマートウェア「hamon」を展開しています。
ウェアラブルという特定の産業でありながら、他の産業にも価値を提供できる革新的なビジネスモデルである点が特徴です。原則的には自社開発ですが、必要な部分で外部企業とも連携しています。
三井化学
三井化学は1912年創業の化学メーカーです。業績悪化を機に抜本的構造改革を推進し、プロダクトを起点とした従来の組織構造から、マーケットを起点とした組織に体制を変更しました。
エネルギーや医療の分野において、既存技術とITを組み合わせた高付加価値のサービスを提供するなど、今までにないイノベーションの創出を進めています。
長期・短期の両視点による事業戦略策定や、人材の多様性を促す仕組みの構築、オープンイノベーションの戦略的な使い分けなどが成功のポイントです。
NTTドコモ
NTTドコモは2010年以降、携帯電話サービスを軸とした通信事業以外に、コンテンツ配信や金融・決済サービスを提供する「スマートライフ事業」も進めています。
NTTドコモのスマートライフ事業は、さまざまな企業との協創を通じたオープンイノベーションです。新規事業創出プログラム「39work」を立ち上げ、パートナー顧客と検証・事業化を行いながら、事業をゼロから創出しています。
また、新規事業創出では段階ごとにマイルストーンを設け、受容性確認の段階から収益性を考慮していることもポイントです。
イノベーションが起きやすい組織を目指そう
イノベーションとは、ビジネスに新しい価値を生み出す変革のことを指します。これからの時代に企業が成長を維持するためには、イノベーションの推進が不可欠です。
イノベーションを起こすためには、自社の存在意義に立ち返り、その強みや競争環境を踏まえて目指すべき方向性を決定する必要があります。イノベーションについて理解を深め、自社でやるべきことを検討し、変革が起きやすい組織づくりを進めましょう。
また、現場で働く従業員から意見を積極的に募集し、イノベーション推進につなげることも重要です。弊社が提供するTUNAGのようなITツールを活用し、日報や意見箱などの取り組みを通じて、従業員の日頃の業務内容や意見を可視化することが可能です。イノベーション創出を狙ったチャレンジに対して寛容な雰囲気をつくりつつ、経営・従業員が一体となって推進することが重要です。
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