退職届に書かれる理由は、ほとんどが「一身上の都合」です。しかし、そのひと言の裏には、組織側に原因が潜んでいることも少なくありません。人間関係かもしれません。評価への不満かもしれません。どのような質問をすれば本音を引き出せるのでしょうか。本記事では、退職面談の目的から質問項目、本音を引き出す進め方までを解説します。退職面談を離職防止と組織改善の入り口にするための、実務で使える内容をまとめました。
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退職面談とは、退職を予定している従業員に退職理由や職場への意見を聞き取る面談のことです。単なる退職手続きの一環ではありません。まずは実施する目的を、四つの視点から整理しましょう。
退職届の「一身上の都合」からは、退職の背景までは読み取れません。退職面談の第一の目的は、その裏側にある事実を知ることです。
本人の事情なのか、組織側の問題なのか。ここを切り分けることが出発点になります。確認したい領域は、おおむね次の5点に整理できます。
同じ領域の指摘が、複数の退職者から出たとします。それは個人の不満ではなく、組織課題である可能性が高いでしょう。個別の声を蓄積し、傾向として捉える視点が欠かせません。
なお、退職理由には「本音」と「建前」があります。円満に去りたい心理から、当たり障りのない理由を口にする人は少なくありません。建前をそのまま記録しても、改善にはつながらないのです。
退職面談は、人事担当者と直属の上司の双方が行うケースがあります。両者は聞ける内容も、活用の仕方も異なります。役割の違いを整理しておきましょう。
上司自身が退職理由の一因である場合、本音は出にくくなります。一方で人事は、日々の業務実態までは把握しきれないでしょう。両方を組み合わせることで、課題が立体的に見えてきます。
在職者は、不満を率直には話しません。評価や人間関係への影響を気にするためです。その点、退職者は評価や処遇の利害から離れています。在職者に比べれば、本音を話せる余地は大きいといえます。
例えば「入社2年目の若手が同じ理由で辞めている」と分かってと分かったとします。育成体制の見直しが必要だと判断できるでしょう。「特定の部署だけ離職が続く」なら、管理職への支援が課題かもしれません。
退職面談は、次の離職を防ぐヒントが集まる場だといえます。
採用難が続く中、既存社員の定着はこれまで以上に重要になっています。1人の離職には、採用費や教育費、引き継ぎの負担が伴います。残された従業員の業務量が増える点も見逃せません。連鎖的な離職を招く恐れもあるでしょう。
退職面談で得た情報は、定着率向上の施策に直結します。例えば、制度見直しとして評価基準や昇格要件の明確化、育成強化として若手向けフォロー面談の追加、業務改善として特定部署への人員配置の再検討、情報共有として経営層への課題レポートの提出といった打ち手につながるでしょう。
本音を引き出せるかどうかは、質問の設計で決まります。抽象的な問いからは、抽象的な答えしか返ってきません。ここでは確認したい5つのテーマと、具体的な質問例を紹介します。
最初に確認したいのは、退職を決断した経緯です。理由は一つとは限りません。複数の要因が重なっているケースがほとんどです。
時系列に沿って聞くと、事実が整理されやすくなります。
「もし当社が改善していれば残っていましたか」と聞くのも有効です。改善の余地があったかどうかが、具体的に見えてきます。
厚生労働省の「雇用動向調査」では、個人的な理由による離職のうち「職場の人間関係が好ましくなかった」が上位に挙がり続けています。人間関係は、離職の主要因の一つなのです。
ただし、直球で聞くと答えづらいでしょう。事実ベースの質問から入るのが基本です。
具体的な場面を尋ねると、漠然とした不満が事実に変わります。「誰が悪いか」ではなく「何が起きたか」を聞きましょう。
評価と処遇は、退職理由として語られにくいテーマです。金銭的な話題を避ける人も多いためでしょう。制度への意見として聞くと、答えやすくなります。
「給与が不満」という声の背景に、納得感の欠如が隠れている場合もあります。金額そのものより、説明の不足が原因というケースです。
退職者は、すでに社外の視点を持ち始めています。だからこそ、自社を客観的に評価できるのです。良い点と改善点の両方を聞きましょう。
特に「知人に勧められるか」という質問は有効です。その理由まで聞けば、自社の強みと弱みが同時に見えてきます。
転職先を選んだ基準は、自社に足りない要素を映し出します。ただし、転職先の社名や条件を細かく聞き出すのは避けましょう。あくまで本人の判断軸を尋ねる姿勢が大切です。
これらの回答は、採用時の訴求内容の見直しにも役立ちます。求職者に何を伝えるべきかが、退職者の言葉から見えてくるのです。
例えば「裁量の大きさ」を挙げる人が続くとします。自社の任せ方に課題があるのかもしれません。求人票の表現だけでなく、実際の権限設計まで見直す必要があるでしょう。
質問項目が整っていても、進め方を誤れば本音は出ません。退職者にとって、面談は負担にもなり得ます。安心して話せる場をつくるポイントを押さえましょう。
実施時期は、退職の意思が確定した後が基本です。引き留めの場と誤解されないためです。
目安としては、退職日の2週間前から1カ月前が適しています。引き継ぎのめどが立ち、気持ちにも余裕が生まれる時期だからです。退職日の直前は避けましょう。慌ただしく、深い話にはなりにくいためです。
所要時間は30分から1時間程度をみておきます。会議室など、周囲の目が気にならない場所を選びましょう。
担当者の人選は、面談の成否を大きく左右します。上司が退職理由に関係している場合、その上司が聞き手では本音は出ません。
次の観点で選定するとよいでしょう。
人事担当者や、他部署の管理職が担うケースが多く見られます。誰が聞くのかを事前に本人へ伝えておくと、安心感につながります。
準備のない面談は、雑談で終わりがちです。限られた時間を生かすには、事前準備が欠かせません。
用意しておきたいのは次の情報です。
全ての質問を機械的に消化する必要はありません。優先順位を決めておけば、時間が足りない場合も要点を押さえられます。
面談のスタート時には、これまでの貢献に対する感謝の気持ちを真っ先に伝えることが肝心です。そのひとことが場を和らげ、良好な雰囲気を作ります。
同時に、面談の目的についても丁寧に説明しましょう。「無理な引き留めが目的ではないこと」「今後の職場環境を改善するために率直な意見を聞きたいこと」の2点をあらかじめしっかり共有しておきます。
さらに、ヒアリングした情報の取り扱い(誰に共有され、どのように活用されるか)を明確に示すことも欠かせません。ここがあやふやなままだと、退職者は警戒して本音を話せなくなってしまいます。冒頭で安心感を与えられるかどうかが、その後の対話の質を大きく左右します。
最も避けたいのは、退職者の発言を否定することです。「それは誤解です」「制度上は問題ありません」。こうした反応が出た瞬間、本音は止まります。
面談中に意識したい姿勢として、まず最後まで話を聞き切る受容の姿勢を持つこと、具体的な場面や時期を尋ねて深掘りすること、その場で評価や判断を挟まない中立的な態度でいること、そして認識のずれを丁寧に整理して確認することが重要です。
記録の際は、事実と感情を切り分けましょう。感情的な表現の裏側にこそ、改善のヒントが隠れています。
退職の意思は、ある日突然固まるわけではありません。仕事や会社への熱意、いわゆるエンゲージメントが少しずつ下がった先に、決断があります。本音を聞くべきタイミングは、辞めると告げられる前にもあるのです。
そのエンゲージメントの変化を可視化できるのが、TUNAG(ツナグ)です。パルスサーベイや日々の利用データから、コミュニケーション量やモチベーションの低下を分析できます。離職の兆候を早い段階で捉えられるでしょう。
サンクスメッセージや社内アンケートなど、改善施策そのものの設計・運用も可能です。退職面談で見えた課題を、日常の仕組みとして定着させられます。小売や製造、介護医療など、1,400社以上の企業で導入されています。
退職者の声を、次の一人を引き留める力に変える。その仕組みづくりから始めてみてはいかがでしょうか。