夜勤明けの次の日に日勤は可能?違法なケースやシフト作成のポイント
夜勤明けの次の日に日勤をさせることは可能です。ただし、夜勤からの連続勤務は従業員に負担がかかるため、働きすぎにならないようなシフトづくりを心掛けましょう。夜勤明けの連続勤務に関する法律や、夜勤シフトを作成する際のポイントを紹介します。
夜勤明けの次の日に日勤はできる?
夜勤明けからの日勤が問題ない理由について解説します。日勤から夜勤への連続勤務における注意点も押さえておきましょう。
法律上は夜勤明けからの日勤でも問題なし
夜勤明けの次の日に日勤をさせても、法律上は問題ありません。法律では連続勤務に関する規定がないためです。
夜勤と日勤の連続勤務では、それぞれの労働を「始業時間が属している日の労働」として扱います。例えば、次のようなケースを考えてみましょう。
夜勤:10月1日午後10時~10月2日午前5時(休憩1時間)
日勤:10月2日午前9時~10月2日午後5時(休憩1時間)
10月2日午前0時~午前5時の労働は、10月1日午後10時から始まった夜勤に属するため、10月1日分の労働として扱います。10月2日の労働時間は7時間です。
日勤から夜勤の場合は割増賃金の発生に注意
日勤から夜勤への連続勤務についても、法律による制限はありません。ただし、日勤と夜勤の開始時刻が同じ日なら、どちらも同じ日の労働として扱う点に注意が必要です。次のモデルケースを例に解説します。
日勤:10月1日午前9時~10月1日午後6時(休憩1時間)
夜勤:10月1日午後9時~10月2日午前6時(休憩1時間)
日勤と夜勤の開始時刻がいずれも10月1日であるため、両方とも10月1日の労働となります。つまり、10月1日午後6時から午後9時の間は、10月1日の労働における3時間の休憩として扱われるのです。
上記のモデルケースでは、10月1日分の総労働時間が16時間となります。夜間労働に対する深夜手当に加え、法律上の割増賃金も支払わなければなりません。日勤から夜勤の場合は残業が発生しやすいことに注意しましょう。
夜勤明けの連続勤務で違法になるケース
夜勤から日勤への連続勤務自体は違法ではありませんが、夜勤明けの連続勤務が違法につながることがあります。どのようなケースが該当するのかを見ていきましょう。
安全配慮義務に違反している(労働契約法第5条)
安全配慮義務とは、事業主が労働者の健康と安全に配慮する義務のことです。労働契約法第5条に明記されています。
夜勤明けの次の日に日勤をさせる場合、十分な休憩時間を与えなければ疲れがたまりやすくなります。健康上の問題が生じたり、疲労による労働災害につながったりしかねません。
夜勤から日勤への連続勤務では、安全配慮義務に違反しないよう、労働時間や休憩時間に配慮することが大切です。
法定休日を与えていない(労働基準法第35条)
労働基準法第35条では、事業主が労働者に対し、少なくとも毎週1日の休日または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならないとしています。
法律上の休日とは、午前0時から午後12時まで継続して働かない日のことです。夜勤中に日をまたぐ場合、夜勤明けの日は午前0時から24時間継続して働かない日とはならないため、法定休日に設定できません。夜勤者の休日を考える際は注意が必要です。
ただし、3交替制で日をまたぐ勤務がある場合、以下の要件を満たせば夜勤明けでも継続24時間をもって休日として構わないとされています。
3交替制であることを就業規則で定めて制度として運用している
それぞれの交替が都度設定されるものではなく規則的である
出典:労働条件 : 休憩・休日(休憩・休日) | 徳島労働局
36協定が守られていない(労働基準法第36条)
労働基準法第32条で定められている法定労働時間は、「1日8時間・1週40時間」です。法定労働時間を超えて労働者に働いてもらうためには、労働基準法第36条に基づく「36協定」を締結する必要があります。
36協定に基づく時間外労働の上限は、原則として「月45時間・年360時間」です。臨時的な特別の事情がある場合も、以下の上限を超えることはできません。
- 年720時間以内
- 月100時間未満(休日労働を含む)
- 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)(2カ月平均・3カ月平均・4カ月平均・5カ月平均・6カ月平均)
※月45時間を超えることができるのは年間6カ月まで
夜勤と日勤の連続勤務では残業が発生しやすいため、36協定違反にならないようなシフトを組みましょう。
割増賃金が支払われていない(労働基準法第37条)
午後10時から午前5時までの深夜労働には、労働基準法第37条に基づく深夜手当が発生します。深夜手当の割増率は25%以上です。
また、法定労働時間「1日8時間・1週40時間」を超えて働くケースでは、割増率25%以上の時間外手当を支払わなければなりません。
深夜労働と時間外労働が重なった場合、それぞれの割増賃金を別々に計算し、合計して支払う必要があります。
例えば、深夜時間帯(午後10時から午前5時まで)に時間外労働を行った場合、時間外労働の割増率(25%以上)と深夜労働の割増率(25%以上)をそれぞれ適用し、合計して支払います。
つまり、基本給の50%以上の割増賃金となります。日勤から夜勤の連続勤務では、このような深夜労働と時間外労働が重なるケースが発生しやすいため、割増賃金の計算に特に注意が必要です。
夜勤シフトを作成する際のポイント
夜勤を含むシフトは複雑化しやすい上、管理も難しくなりがちです。法令順守や労働者の健康だけでなく、以下に挙げるポイントも意識してシフトを作成しましょう。
公平なシフトを組む
交替制勤務を導入するなら、公平なシフトを組むことが重要です。夜勤や連続勤務が特定の従業員に偏ると、シフトに対して不満を感じるようになり、モチベーションにも悪影響を及ぼしてしまいます。公平なシフトを作成するコツを以下にまとめました。
- できるだけ早く希望シフトを提出してもらう(調整・変更を交渉しやすくなる)
- シフト希望に関するルールを決める(透明性が確保され不満が出にくくなる)
- 勤務日や業務をできるだけ公平に割り当てる
- ヘルプ体制を整えておく
適切な人員配置を行う
シフト作成で人員を割り当てる際は、従業員のスキルや経験を考慮しましょう。例えば、新人のみを夜勤に割り当てると、イレギュラーな事態に対応できない恐れがあります。どの時間帯にも1人はベテランを配置するのがポイントです。
過不足のない人数を配置することも重要です。人員を増やせば業務に対応しやすくなる反面、人件費が高くなってしまいます。また、どうしてもワンオペで働いてもらいたい場合は、1人で仕事ができるか本人にも事前に相談するとよいでしょう。
働きすぎを予防する「勤務間インターバル制度」とは
働き方改革の推進に伴い、「勤務間インターバル制度」の導入が企業の努力義務となっています。どのような制度なのか、助成金をもらうための要件と併せて解説します。
次の勤務までに十分な休息を設ける取り組み
勤務間インターバル制度とは、次の勤務までに一定の休息時間を設ける取り組みのことです。労働時間等の設定の改善に関する特別措置法で定められています。
例えば、夜勤明けの次の日に日勤をさせる場合、夜勤と日勤の間が短くなりがちです。このようなケースで十分な休息が取れずに従業員の心身の健康が損なわれないよう、勤務間インターバル制度が設けられました。
従業員の健康の維持・向上につながるだけでなく、従業員の定着・確保や生産性の向上が期待できることも、勤務間インターバル制度を導入するメリットです。休息時間数は会社ごとに決められます。
出典:労働時間等の設定の改善に関する特別措置法 第二条 | e-Gov 法令検索
出典:勤務間インターバル制度とは | 働き方・休み方改善ポータルサイト
条件を満たせば助成金の交付を受けられる
勤務間インターバル制度を導入し、一定の要件を満たした中小企業は、助成金の交付を受けることが可能です。休息時間数や取り組み内容の目標達成状況に応じて支給額が決まります。目標とする休息時間数に応じた支給額は次の通りです。
- 9時間以上11時間未満:最大50万円
- 11時間以上:最大60万円
新規導入に該当する取り組みがある場合は、上記のいずれも最大支給額が2倍になります。
出典:働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース) |厚生労働省
夜勤明けの次の日も日勤は可能
夜勤明けの次の日に日勤を設定しても、法律上の問題はありません。ただし、連続勤務は従業員の疲れがたまりやすいため、健康に配慮してシフトを組むことが重要です。
夜勤を含む勤務形態では夜間手当が発生するほか、残業と重なる場合は時間外手当の支払い義務も生じます。夜勤に関連した法令をしっかりと理解し、適切なシフト作成を心掛けましょう。