適切な「フィードバック」の行い方や、やってはいけない例を解説。お互いの信頼関係構築が重要
そもそも、フィードバックとは
行動した結果を伝える事
フィードバックの目的や原理原則などご存知でしょうか。その前に、まずはフィードバックの理解度を高めるために、その意味からご紹介いたします。 語源の由来であるフィードバックとは、電子回路での増幅率の制御(出力されたものを修正、調整など改善をするために、入力側に返すこと)として使われていました。 また解剖生理学の分野でも体内の恒常性(バランス)を保つための用語としても使われてきました。 例えば暑ければ汗を出して体を冷やすなど、体温を一定に保とうとします。体内では「今暑い」という情報を脳に伝え、その指令を元に評価した結果、汗を出す指令を出しますが、この事をフィードバックといいます。 最近ではビジネス用語として広く使われるようになりました。ビジネス用語でいうフィードバックとは、“行動したことによる結果を伝える事”です。 行動した事象に対しての結果から、何を改善すべきか、どこが良かったのかを伝える事で人材育成や部下育成を目的としたマネジメント手法の一つになります。コーチングやマネジメントとの違い、共通点
コーチングとは、部下である対象となる相手に「問いかけて聞く事を中心とした双方向のコミュニケーションから、部下自らが様々な選択肢に気づき、自発的な行動を促す」手法です。 フィードバックは上司から部下へ次に繋がる情報を伝達し、一方通行のコミュニケーションという点でコーチングとは異なります。 また、マネジメントは組織で成果をあげるための手法全般を指し、フィードバックとは範囲や性質が異なりますが、メンバーを育成するという点では目的は同じです。 フィードバックはマネジメント手法の一部と捉えると分かりやすいでしょう。フィードバックの目的
人事考課や目標設定などの“結果”を伝える
フィードバックは行動による結果を伝える事ですが、マネジメントには欠かせない要素にもなっています。フィードバックを行う目的をしっかりと理解し、実践に役立てるようにしましょう。 面談をし、結果を伝えないケースも多々ありますが、なぜその結果になったのかをフィードバックしないと部下の成長には繋がりません。 また、フィードバックはあくまでもフラットな目線で行います。良かったと思ったら何が良かったのか、ダメな点も同様に何が悪かったのかを客観的な目線で話すことが重要です。ネガティブな要素であれば責めるのではなく来期に繋げるために建設的な話を行いましょう。部下の成長を促す
適切なフィードバックは部下の成長促進にもつながります。 その際のポイントとしては褒める事や叱る事ではありません。また、業務の指示やアドバイスでもありません。 あくまでも現状を冷静に捉えて、ポイントを伝え、次のアクションを考えさせる事です。自分の置かれている状況や行った対応などは、どうしても主観的に捉えがちです。上司が客観的な視線で的確に伝える事で、部下の理解度も上がるでしょう。 部下の育成を促す効果的なフィードバックの取り組みとして、株式会社八神製作所の事例があります。上司と部下のコミュニケーションや育成の観点で日報を運用しており、部下の日報に対して上司から丁寧なフィードバックを行なっています。また、チーム内で日報をオープンにしたことで、ナレッジの横展開も実現したそうです。 >>株式会社八神製作所の取り組みをもっと読むフィードバックの種類
フィードバックにはネガティブな事象を伝えるもとのポジションな事象を伝える2種類が存在します。それぞれの長所と短所をご紹介いたします。ネガティブ・フィードバック
ネガティブな事を伝えるネガティブフィードバックは、否定的な意見を伝えることにより、本人のハングリー精神を引き出し、ポテンシャルを引き出します。 分析力や課題解決力などのスキル形成に加え、逆境から這い上がり貪欲に成長する強い姿勢は、打たれ強く適応力が高い人材育成に期待できます。 しかしハングリー精神を引き出す一方で、ネガティブな要素は伝え方と受取手によっては“批判された”、“自分を否定された”と取られかねない一面もあります。 冷静でかつ客観的に、「これは良かったけど、ここはこう直したらもっと良くなる」など具体的なポイントを説明したり、人格を否定しないような言い方を心がけましょう。ポジティブ・フィードバック
先程とは逆に、ポジティブな言葉でのフィードバックを行います。 肯定的な言葉で部下に伝える事で、承認欲求を満たし、意欲を向上させる効果が期待できます。 褒めて伸ばすマネジメントとして取り入れるには良い効果がある半面、ネガティブな要素を全く伝えない状態が続くと、現状に満足してしまう可能性もあります。 実際にどのように取り入れるかは、受け手がどういう性格で、どう伝えれば次の行動につながるかを考えながら対応していくと良いでしょう。適切なフィードバックの例
フィードバックの種類(タイプ)をもとに、具体的な例文を紹介します。サンドイッチ型フィードバックの例
サンドイッチ型フィードバックでは、ポジティブ・フィードバック → ネガティブ・フィードバック → ポジティブ・フィードバックの順に内容を伝えます。この間の顧客対応では、先方に寄り添いながら会社としての対応を線引きしてくれてとても良かったです。(ポジティブ) 強いて言うなら、対応内容を引き継げるようメモを残したりできるとさらに良かったと思います。(ネガティブ) いつも顧客対応で、会社としてできること・できないことを踏まえてコミュニケーションをとってくれて頼もしいです。この調子で引き続きお願いします。(ポジティブ)
SBI型フィードバックの例
SBI型フィードバックは、状況(Situation)・行動(Behavior)・影響(Impact)の順にフィードバックを行います。この間の顧客対応のとき、(状況) 先方に寄り添いながらも会社としての対応を線引きしてくれましたよね。(行動) おかげで先方も納得してくれて、会社としても必要以上の対応をせずに済んで、とても助かりました。(影響)
ペンドルトン型フィードバックの例
心理学者のペンドルトン氏が開発したのが、ペンドルトン型フィードバックです。一方的なフィードバッではなく、以下の順番でコミュニケーションを取りながら、相手に考えさせるというのが特徴です。- 確認(何について話すのかの前置き)
- 良かった点
- 改善点
- 行動計画(今後どうするのか)
- まとめ
上司:この間の顧客対応についてですが。(確認) 上司:先方に寄り添いながら会社としての対応を線引きしてくれてとても良かったです(良かった点) 上司:ちなみに、「こうするともっと良かったかも」という点はあったりしますか?(改善点) 部下:その後の引き継ぎがもう少し上手くできたら良かったなと思います。経緯とか、お客さまの言っていたこと、こちらからお伝えした内容を口頭では伝えることができましたが・・・。 上司:次から追加で伝えるとよさそうなこと、伝え方の改善点などは思いつきますか? 部下:さらにフォローが必要なのか、対応完了で良いのかは次回から伝えるようにしたいです。あと、口頭ではなくチャットで残しておくと同じ対応が必要なとき他の人が参考にできそうです。(行動計画) 上司:良いですね。経緯・先方の言い分・伝えた内容・フォローが必要かどうかを、チャットで残すようにしていきましょう。(まとめ)