再雇用制度とは?注意点や進め方、助成金について解説。

再雇用制度とは?

再雇用制度とは退職者を雇用すること

一般的には定年退職者を再度雇用することを指します。日本では長らく55歳での定年制度をとる企業が多かったのですが、年金受給年齢が60歳である事から60歳を定年とするようになりました。

現在では、高齢者雇用安定法により希望する正社員全員に対し、企業は65歳までは就労の機会を与える事が義務付けられております。

また、近年の労働者不足から定年退職の年齢を引き上げたり、65歳まで雇用の延長する事例も多くあります。

定年退職者を指すことが多いですが、その他にも、出産や育児を理由に退職する女性労働者に復職を保証する「再雇用制度」ももちろんあります。

勤務延長制度と定年後再雇用制度との違い

一般的には定年退職者を再び雇用する際の呼称を再雇用と言いますが、「勤務延長制度」と「定年後再雇用」があります。

「定年後再雇用」は一度定年退職したのち再度雇用する形式をとりますが、「勤務延長」は退職せずにそのまま勤務期間を延長する制度の事です。

再雇用制度のメリットとデメリット

再雇用制度にはメリットとデメリットがあります。どちらの面もしっかり考慮し、慎重に検討することが重要です。再雇用制度を導入する際には、経験豊富な従業員を活用できる一方で、給与や待遇に関する課題にも注意が必要です。企業として適切な制度設計を行い、トラブルを未然に防ぐための準備が求められます。

メリット

デメリット

経験豊富な従業員の知識とスキルを継続的に活用できる

給与の減額により不満が出る可能性がある

顧客との関係を維持し、ビジネスの連続性を保てる

全く異なる業務への適応が難しい

教育期間が不要になり、新規採用のコストを削減できる

正規雇用者との待遇差が法的トラブルのリスクを増加させる

長年の経験を持つ高齢労働者を再雇用することで、労働力不足に対応できる

社内の受け入れ体制が十分でない場合、士気低下やトラブルが発生する可能性がある

社内外の人間関係を維持しやすく、円滑な業務遂行が可能になる

業務内容が変更される場合、従業員の適応が困難になる場合がある

再雇用制度について契約上の注意点

賃金や待遇を巡り、トラブルが起こったり、士気低下などが発生したりする事もあります。そうならないためにも、雇用契約書の準備や社内の受け入れ体制を十分に整えてから進めていきましょう。

雇用形態

一旦60歳で定年退職者となりますが、再雇用制度をする際は、1年毎の有期雇用契約とすることがあります。高齢になると体調面も心配になりますので、契約期間を長く設定せずに、その都度条件を見直すことが多いようです。

また1年間の契約であったとしても、正社員の時と同様に雇用を終了する事も可能です。例えば社員が退職を希望した場合に雇用契約を終了したり、著しく欠勤が続くなどの正当な理由があれば企業側からも解雇する事が可能です。

また、子会社などグループ会社での再雇用制度を行うケースもあります。そのケースに備えて、55歳になったら60歳以降の雇用意思の有無を確認し、継続を希望する場合は55歳から子会社へ転籍し、再雇用制度するなどの選択肢を設けるケースもあります。

無期転換ルール

1年毎の有期雇用契約を締結し、その後5年間雇用を継続した場合は、雇用期間を無期限の雇用に転換するよう法律で定められているので注意が必要です。

重ねて65歳までは希望する社員の雇用を義務付けられておりますので、60歳で定年退職をし65歳まで働いた場合は上記のルールが適用となります。しかし、高齢者の場合は届け出を申請すれば特例として適応外となります。

年収など給与待遇について

日本の年功序列で給与テーブルが上がっていく仕組みでは、定年時の給与がピークになっている事もあります。再雇用時にそのままの条件で雇用するのかどうか、改めて条件を確認する必要があります。

定年後に正社員から嘱託社員に転換すると、責任の有無などもあり、賃金を引き下げる事ももちろんあります。また同じ業務であっても、正社員時よりも一定の年収を下げる事は合法とみなされています。

ただし「同一賃金、同一労働」の考え方からすると、正当な理由なく引き下げる事は違法となります。

過去の裁判事例でも通勤手当や皆勤手当などの諸手当についても同様で、公平に扱う対象となります。一方で職務給、住宅手当、家族手当、賞与などの手当は不合理ではないとの判決事例も出ています。従って再雇用制度を導入時には項目別に精査する必要があります。

退職金に関しては、就業規則の定めに則りますが嘱託社員の期間は加味せず定年退職時に清算するのが通常です。また、高齢者の再雇用制度に関しては、後述する国の助成金なども上手く活用すると良いでしょう。

仕事内容について

業務内容について、定年退職前と異なる業務に従事させる事は問題ありませんが、全く異なる“業種”で就労する事は原則として認められていません。

過去の裁判事例では、デスクワークの事務職で勤務していた社員を清掃員として再雇用制度をする事は違憲であるとの判決が出ています。

社会保険について

定年後の再雇用者は高齢のため、支払いは各保険によって対象となる年齢が異なるため注意が必要です。

  • 雇用保険

    雇用保険(週20時間以上の勤務)に加入できるのは65歳までです。ただし、保険料の負担は64歳到達後の4月までとなっています。また定年が理由での退職時にも失業給付は受給できますが、一部の例外を除き年金は受給されません。

  • 労災保険

    年齢制限はなく全て会社負担となります。

  • 健康保険

    75歳までとなっており、75歳になると後期高齢者医療制度に加入します

  • 介護保険

    65歳までとなっており、65歳になると年金から天引きされます

  • 厚生年金

    70歳までとなっており、60歳から繰り上げで受給していた場合は、給与額に応じて全額または一部が支給停止になります。

再雇用制度の進め方

再雇用制度の進め方は以下の3つの段階を中心に行うことが重要です。それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。

制度の構築と規則の見直し

再雇用制度を設計し、就業規則を見直すことから始めます。定年後の雇用方針を明確にし、必要な規則を整備します。

  1. 再雇用制度の設計: 再雇用制度を設計し、企業の方針を明確にします。高齢者の活用方法や対象者の条件を定めましょう。多くの企業では60歳定年が多く、その後5年間継続雇用した際の無期転換ルールも念頭におきながら制度を構築すると良いでしょう。
  2. 就業規則の更新: 再雇用に合わせて、就業規則を見直し、規則を整備します。給与や勤務条件の変更も含まれます。
  3. 制度の周知: 社内に新しい再雇用制度を周知し、従業員に理解を促します。

事務手続き

通常の退職手続きを経て、再雇用手続きを行います。空白期間を避けるために、スムーズな手続きを心掛けます。

  1. 定年退職の手続き: 通常の退職手続きを行い、必要な書類を整えます。
  2. 再雇用契約の締結: 再雇用契約を締結し、契約内容を明確にします。条件や期間を詳細に記載します。
  3. 空白期間の回避: 定年退職と再雇用の間に空白期間がないように手続きします。1日も空白の期間がなく再雇用をした場合は一部の手続きが不要になります。

本人の意向確認と調整

定年前に面談を行い、再雇用の希望や条件を確認します。給与や職位の調整を行い、すべての条件について合意を得ます。

  1. 面談の実施: 定年前に面談を行い、再雇用の希望や条件を確認します。定年前に面談を通じてコミュニケーションをとり、会社として求めることを伝えながら、再雇用後のミスマッチが起こらないように準備していきましょう。
  2. 給与や職位の調整:再雇用後の給与や職位について、本人の意向を反映させます。モチベーションを維持するための調整が必要です。再雇用の場合、現役時代よりも給与が減額されると、モチベーション低下の原因となります。
  3. 合意の取得:すべての条件について合意を得て、書面で確認します。

定年の年齢についての検討

2016年度の統計では定年退職の年齢が60歳の企業が78.7%占めておりましたが、シニア活用について改めて検討する際は、どの雇用条件にする事が双方にとってメリットがあるのかを再度検討しましょう。

  • 60歳定年で退職後も再雇用
  • 65歳まで定年の延長
  • 65歳以上の雇用継続の延長
  • 定年の撤廃

サントリーホールディングスでは、これまで希望者全員を65歳まで再雇用をしておりましたが、65歳まで定年を延長しました。その結果として社員との間に無駄な遠慮がなくなり、またこれまでも多くの社員を再雇用していた事もあり、懸念していた人件費も一定レベルに抑えられた事例もあります。他にも定年を撤廃した事例なども紹介されていますので、詳しくは下記の65歳超雇用推進マニュアルをご参照ください。

*参照:65歳超雇用推進マニュアル - 高齢・障害・求職者雇用支援機構

高齢者雇用に関する助成金や給付金について

高齢者を再雇用する事で助成金を受給できたり、高齢社員は定年時より減額になってしまった場合の補填をハローワークから受けったりすることができます。

特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金は、就職が困難な高齢者、障害者、母子家庭の母などを雇用する企業に対して支給される助成金です。この助成金は、ハローワークや指定された職業紹介事業者を通じて採用した場合に適用されます。支給額は雇用した労働者の種類や条件によって異なり、一定の訓練や賃金引上げを行うことで助成額が増額されることもあります​。この助成金の対象となるには、以下の要件と条件を満たす必要があります。

  • ハローワーク経由の雇用:ハローワークや指定された職業紹介事業者から紹介された人を雇用することが条件です。
  • 継続雇用の確保:雇用者を継続して雇用することが確実であることが求められます。
  • 支給額の増額条件:一定の訓練を実施し、賃金引上げを行った場合、通常よりも高額の助成金が支給されます。

この助成金を利用することで、企業は多様な人材を確保しやすくなり、雇用機会を広げるとともに、労働力の安定確保を図ることができます。特定求職者雇用開発助成金の詳細については、最新の情報を厚生労働省の公式サイトで確認することをお勧めします。

*参考:​ 特定求職者雇用開発助成金 特定就職困難者コース

65歳超雇用推進助成金について

65歳以上への定年引上げや定年の撤廃や66歳以上の希望者全員に継続雇用制度の導入などをした場合、中小企業に対して最大で160万円が支給されます。 ※参考:65歳超雇用推進助成金 - 厚生労働省 -

高年齢雇用継続給付金

60歳を超えて働く労働者が60歳時点での給与が75%未満に低下した場合は、国がこの賃金低下部分を給付金として支給する制度です。 ※参考:高年齢雇用継続給付 -厚生労働省-

これまで活躍した従業員の再雇用も人手不足対策の一つ

これまで長く活躍した社員を再雇用する事は、企業側にとってもメリットがあります。

希望する社員全員を65歳まで雇用する義務がありますので、企業としても制度面や環境の整備は行っていく必要があります。国の助成金などもあるため、上手く活用してみてはいかがでしょうか。

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著者情報

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