キャリアアンカーの8つの分類とは?診断方法や企業での活用方法

こんにちは、エンゲージメントプラットフォーム「TUNAG(ツナグ)」を提供する株式会社スタメンの編集部です。

キャリアの選択や方向性を決定する上で、個人の価値観や欲求、能力を「キャリアアンカー」として捉える考え方が注目されています。

キャリアアンカーとは、個人がキャリアを選択していく上で絶対に譲れない軸となる価値観や欲求、能力などを人生の錨(アンカー)として例えた言葉で、これを理解し、社内で活用することで、従業員エンゲージメントの向上や人材の定着率アップに繋がると言われています。

ただし、「なんとなく」で取り組むだけでは、その真の効果を引き出すことは難しいでしょう。

この記事では、キャリアアンカーについて、エンゲージメント向上の観点から解説します。

キャリアアンカーとは

築き上げてきたキャリアに基づいた、生涯に渡ってブレない自己欲求・または自己が望む価値観

キャリアアンカーとは、個人がキャリアを選択していく上で絶対に譲れない軸となる価値観や欲求、能力などを人生の錨(アンカー)として例えた言葉です。

マサチューセッツ工科大学ビジネススクールの組織心理学者であるエドガー・H・シャイン博士によって提唱されたキャリア理論の概念として有名です。

キャリアアンカーは一度形成されると周囲の環境や年齢が変化しても代わりにくいと言われており、生涯にわたってその人のキャリアを決定づける重要なファクターだとされています。

キャリア形成が確立するのは30歳前後と言われておりますが、シャイン氏が提唱する8つのアンカーはキャリアが形成された後は、その後の経験や結婚や出産などの環境の変化があっても生涯にわたって根幹は大きく揺らがないとのこと。

そのため、学生や新卒などキャリア形成がまだできていない人材に当てはめる事は適切ではありません。

また、一般的な自己分析にある「何が好き」「何が得意」「何がしたい」というような表面的な分析法とは異なり、生涯に渡るキャリアの核となるような「どのように働きたいか」という点を分析する手法がキャリアアンカーです。

つまり「What?」ではなく「How?」を問い、築き上げてきた価値観の中から中長期的なキャリア形成に重きを置きます。

キャリアアンカーを知るメリット

キャリアアンカーを把握することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。個人・企業に分けてそれぞれご紹介します。

個人としてのメリット

自身の根幹となる軸(アンカータイプ)を把握することで、自分に合う選択を取れる可能性が高まるでしょう。アンカータイプを知ることは、様々な人生の節目の場面で、自分にとってより満足度の高い働き方を選択しやすくすることにつながります。

また、そうしたキャリア選択の際に表面的な情報(報酬・地位など)に惑わされることなく、自分の内面的な価値観や動機に基づいた選択ができるため、後から不満を感じるような選択をするリスクを回避できます。

企業としてのメリット

企業の場合、従業員のアンカータイプを把握することで個々の仕事に対する価値観や希望する働き方などを知ることができ、それを「採用」「人員配置」などに活かすことができます。

例えば、キャリアアンカーに沿った人事異動を行うことで、企業と個人のニーズのミスマッチを減らすことができ、従業員のエンゲージメントを向上させられるでしょう。こうした工夫を人事が加えることで、離職率の低下や生産性の向上が期待できます。

キャリアアンカーの基となる3要素

キャリアアンカーを考える際には「コンピタンス」「動機」「価値観」の3要素を深掘りすることが重要になります。この3つの要素が重なる部分をキャリアアンカーとすることで、仕事に対してのモチベーションの向上などに直結するでしょう。

こちらでは、キャリアアンカーの基となる3つの要素について詳しく解説していきます。

コンピタンス

コンピタンスとは、単に「ある特定のことができる」ということではなく、「ある目的を達成ための状況から出る要求に適切に処理・順応する努力」とされており、仕事上においては「会社からの期待に応えきる能力」と表すことができます。

例えば、プロジェクトを期限内に完了させる能力や、クライアントの要求に迅速かつ適切に対応するスキルがこれに該当します。

コンピタンスを備えることで、自信を持って業務を進行でき、仕事へのモチベーションも向上すると考えられています。キャリアアンカーの分類では「専門能力・職人」との関連性が高いでしょう。

動機

動機とは、「自分は何がやりたいのか」「何に興味関心があるのか」など、自分が本当は何がやりたいのかというポイントを深掘りする要素のことです。具体的には、「新しい技術を学びたい」「チームをリードすることに興味がある」というものが挙げられます。

業務の中で達成感や満足感を得るためには自らの動機にあった仕事をすることが重要になります。キャリアアンカーの分類では、「管理職」「チャレンジ」との関連性が高いでしょう。

価値観

価値観とは、自分が大切にしてる信念のことを指します。例えば、「仕事とプライベートのバランスを考える」「社会貢献を重視した企業を選択する」ということがこちらに該当します。自分が持つ価値観に沿った仕事をすることで、自らの業務に対して誇りを持つことができ、仕事へのモチベーション向上にもつながります。

キャリアアンカーの分類では、「自立・独立」「安全・安定」「生活様式」などとの関連性が高いでしょう。

キャリアアンカーの8つの分類

シャイン氏が提唱したキャリアアンカーには、8つの分類があります。具体的に8つの分類をご紹介いたします。

1)管理職:ジェネラル・マネジメント・コンピタンス

・タイプ:「出世思考」が強い

・目標:ゼネラルマネジャーや経営者を目指す

・価値観:経営側に立つ事に価値を見出す

・思考:

スケールの大きな仕事がしたい、組織を動かしたい、責任を引き受け成長したい

専門的な能力は必要と認めつつも、経営に求められる全般的な能力の獲得を重視する

若いうちは多くの職種を経験したいと異動も積極的に受け入れる

昇進のための資格取得にも積極的に取り組む

2)専門能力・職人:テクニカル/ファンクショナル・コンピタンス

・タイプ:「専門家」としての能力を発揮したい

・目標:昇進して管理職になるよりも、現場の仕事を続けたい

・価値観:経特定の仕事について高い才能と意欲を持つことに価値を見出す

・思考:

特定の分野でエキスパートとして活躍したい

専門技術や知識について誰にも負けたくない

他の業務に異動するとやりがいを見失い満足感が低下してしまう

3)安全・安定:セキュリティ/スタビリティ

・タイプ:「保証や安全性」を重視する

・目標:安定していて終身雇用が期待できる大企業や公務員として働く事を目指す

・価値観:ゆったりとした気持ちで仕事に就きたい

・思考:

将来が見通せる安定性

予測が可能な範疇で仕事したい

リスク回避が最優先

大きな変化を嫌うため、これまでのキャリアと異なる働き方や部署異動などは大きなストレスとなる

堅実な転職先が用意されていない限りは転職を考える事はあまりない

4)企業家的創造性:アントレプレヌール的クリエイティビティ

・タイプ:発明家や芸術家、「起業家」を目指す

・目標:企業に属していても最終的な目標は独立・起業の道を選ぶ

・価値観:新しい製品やサービスの開発、組織の立ち上げ、既存事業の買収・再建などに注力したい

・思考:

新しいものが好き

創造性を大切にしたい

事業を起こしたい

社内にとどめて置きたい優秀な人材であれば、社内ベンチャー的なプロジェクトを任せるのも有用

5)自律と独立:オートノミー/インディペンデンス

・タイプ:「自分のペースやスタイル」を守って仕事を進めたい「研究職」など

・目標:規律や他者の作ったルールで縛られたくないため、行動の自由度が高い環境で仕事をしたい

・価値観:集団行動が苦手でマイペース

・思考:

納得のできるやり方で進めたい

人の力を借りずに仕事をしたい

一定の規律が求められる企業組織に属する事を好まない

独立志向もあって上司などに叱責された事をきっかけに退職を申し出たりすることも

6)奉仕・社会貢献:サービス/大義への献身

・タイプ:医療・看護・社会福祉・教育などを目指す

・目標:「世の中のためになるか」に最も重要な価値を置く

・価値観:自分の仕事を通して「世の中をよくしたい」

・思考:

社会に貢献したい

人の役に立つ仕事がしたい

誠意のあるものづくりがしたい

内部不正も見逃せない

商品・サービス開発、監査、福利厚生部門などで力を発揮します。

7)チャレンジ:ピュアなチャレンジ

・タイプ:「あえて困難に飛び込んで挑戦」する

・目標:挑戦が人生のテーマ

・価値観:誰しもが無理だと思うような厳しい状況下で問題を解決することに喜びを感じる

・思考:

不可能を可能にしたい

手強いライバルと競い、自分を磨きたい

退屈な生活は好まない

得意・不得意、専門性を問わず難しい仕事に挑戦したがる

誰しもが無理だと思うような厳しい状況下で問題を解決することに喜びを感じる

喜んでハードワークにも勤しむが、ルーティンワークのように淡々と日々をこなす仕事はやりたくない

8)生活様式:ライフスタイル

・タイプ:仕事とプライベート、企業人と一個人などどちらも大切に考え、両者との「ベストバランス」を常に考えている

・目標:熱心に仕事に打ち込む一方で、子供が生まれると育児休暇を取得し、育児にもしっかりと関わりたい

・価値観:在宅勤務や育休制度などにも魅力を感じます。一方で予定にない会社の飲み会や残業はきっぱりと断る事ができる

・思考:

仕事と家庭を両立させたい

仕事以外の自分の生活も大切にしたい

有給休暇はしっかりと取得したい

キャリアアンカーの診断方法

キャリアアンカー診断

シャイン氏が提唱するキャリアアンカー診断は、下記のサイトから手軽に診断する事ができます。全部で40問ありますが、無料で診断する事ができます。

参考:https://chikaku-navi.com/carrier/

「キャリアアンカー」の概念が企業にとってどのような意味を持つか

キャリアアンカーの概念を理解する事は個人はもちろん、企業にとっても有用です。

企業にとって組織運営を行う上でのキャリアアンカーの活用法をいくつかご紹介いたします。

異動に際してのアドバイス

組織運営をしていく上で、異動や昇進は欠かせないものですが、本人が持つ特質によってそれが成功したり、裏目になったりする事を理解しましょう。

例えば専門職タイプの人材は、その専門性を活かしてエキスパートになりたいと考えています。職種が変わるような大きな異動や、管理職への昇進もモチベーション低下につながり、それがきっかけで転職にもつながります。

そこで「やりたい仕事」にこだわらず、キャリアアンカーの視点で「どのように働きたいか」の部分を考えさせ、新しい配属先で自分が活躍できるポイントを見出します。

職種や環境が変わっても、その中には自分が最も大切にするキャリアアンカーに合致する部分があれば、今までとは違うやりがいを見出せる提案ができれば、後ろ向きだった社員に意欲が湧き上がります。

育成研修への活用

中堅以降の社員には育成研修の場でもキャリアアンカーについて繰り返し説明して、その重要性や理解を深める事が大切です。

特に部下を管理・育成していく立場になる社員がキャリアアンカーの重要性を理解する事で、個人が持つ価値観のギャップから起こるトラブルを回避したり、チーム内を円滑にする事ができます。

また、社員がそれぞれお互いのキャリアアンカーを確認・理解しあう事により、うまく役割分担ができるようになれば、組織運営もスムーズになり、より強固なチームとなります。

新入社員の研修ガイダンス

キャリアアンカーは仕事を始めてから5年くらい経過した頃に確立すると前述しましたが、新卒の頃は「したい仕事」に対して視点が行きがちです。そこで今後どのようにして働くかというキャリアアンカーの概念を紹介していきます。

自分のキャリアアンカーを確立していく上で今後発生する「仕事をする上で譲れないポイント」や「大切だと思った事」を振り返り、自分が持つ価値観を確立させていきます。

そうする事で今後の職務経験や自分のキャリアアンカーに合わせたキャリア形成、組織のニーズなどを擦り合わせていく事が可能となります。

【参考】エドガー・H. シャイン(2003) 『キャリア・アンカー―自分のほんとうの価値を発見しよう』(白桃書房)

どのタイプが良い・悪いということはない

自分自身のキャリア形成や、組織運営に活用できるもの

これらはあくまでも人それぞれの価値観を分類したものであり、「○○だから悪い」という判断はすべきではないでしょう。

しかし、働き方への価値観が多様化し、これから人手不足が考えられる時代、会社にとって必要な人財が何を望んでいるのかを知ることは重要です。

人を動かす組織運営には、個人が価値観を置くキャリアアンカーに重点を起き、人員配置をしていく事が組織を発展させていく上での成功要因ともなります。

ご紹介したキャリアアンカーテストは無料でも行えるため手軽に行うこともできます。ぜひ一度試してみて、自分のキャリア形成や、組織運営にも役立てていただければと思います。

エンゲージメント向上のための“社内制度のプラットフォーム『TUNAG(ツナグ)』について

TUNAG(ツナグ)は、会社と従業員、従業員同士のエンゲージメント向上のために、課題に合わせた社内制度のPDCAをまわすことができるプラットフォームです。

会社の課題を診断し、課題に合った社内施策をご提案、その後の設計や運用のサポートまで一貫して行っています。

TUNAG(ツナグ)では、社内で取り組まれているあらゆる社内制度の活用状況をデータで可視化することができます。会社の課題にあわせ、どのような施策を行うと効果的かをご提案し、TUNAG(ツナグ)を通して実行していきます。

従業員のキャリアへの考え方を知ったり、上司部下で対話を深めるために1on1MTGを実施することや、会社の教育研修の実施をTUNAG(ツナグ)を通して行うことが可能です。

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