ロールモデルとは?社内でふさわしい人物の見つけ方やメリットを解説!

ロールモデルとは?

目標にしたい人、お手本にしたい人のこと

ロールモデルとは、社員各自が持つ「目標にしたい人」「お手本にしたい人」のことを指します。

ロールは英語の「role」で、「役割・任務・役目」などを意味し、モデルは英語で「model」「型・手本・模範」などの意味があります。1940年代にアメリカの社会学者によって定義された言葉で、日本にも1990年代以降紹介され、ビジネスの現場で用いられています。

仕事の処理の仕方や問題解決方法などの実務能力はもちろん、コミュニケーションの取り方、キャリア形成への考え方などの人間性も、各自のロールモデルから学び、刺激を受け、自身の成長に役立てることができます。

特定の役職の人を指すわけではなく、社員一人ひとりにとって、それぞれ年齢も性別も異なるロールモデルが存在します。また、吸収したいスキル、真似したい行動に応じて、一人が複数名のロールモデルをお手本として持つ場合もあります。

ロールモデルから得られる情報はビジネス面だけに限られない

当初ロールモデルは、マネージャー職など管理職につく人々の間で「この人のリーダーリップの取り方は真似したほうがいい」というような見方で、ロールモデルという概念に注目が集まっていた時期がありました。

最近のビジネスの現場では、強みを求める実務スキルだけではなく、特に新卒や新入社員にとっては、仕事への向き合い方や、会社での立ち居振る舞い、ワークライフバランスに至るまで、ロールモデルから得られる情報は大きなものとなります。

女性の人材活用においても、まだまだ男性社員の数が圧倒的に多い日本の企業風土では、「育児と仕事の両立はどのようにすべきか」「女性管理職になったら、どんな業務が待っているのか」などの生きた情報が手に入るので、女性のロールモデルが効果を発揮すると考えられています。

企業にロールモデルが存在することによるメリット

組織の活性化

ロールモデルが存在することによって、組織が活性化するというメリットがあります。

近年、社員同士のコミュニケーションが希薄になっていると言われていますが、社員各自が、ロールモデルを見つけ、社内で「真似したい、お手本にしたい」と思える存在を持つことで、より積極的に業務に関わるようになると期待されます。

また、自分もそのように誰かのお手本になる、あるいはなりたいと意識することで、より能力を発揮し、活き活きとした職場、組織がつくられていきます。

定着率の向上

ロールモデルを持ち、社員同士の交流が活発化し、組織が活性化すると、会社への愛着も芽生えていきます。帰属意識が生まれることで、定着率の向上、離職率の低下などのデータ上での成果も見込めるでしょう。

ロールモデルの設定

個人の面からのロールモデル設定の仕方

  1. 自己分析
    まず、自分がどのようなスキルや価値観を大切にしているかを明確にします。自分の強みや弱み、目指すキャリアパスを考えることが大切です。
  2. 目標設定
    将来的にどのような姿になりたいか、具体的な目標を設定します。その目標に近い人物を探すことで、具体的なロールモデルが見つかりやすくなります。
  3. 観察と学習
    目標とするロールモデルの行動や考え方を観察し、学ぶことが重要です。直接話を聞く機会があれば積極的に質問し、自分の行動に取り入れてみましょう。
  4. フィードバックを求める
    ロールモデルに直接アプローチし、フィードバックを求めることで、自分の成長を加速させることができます。先輩社員を「メンター」、指導を受ける後輩社員を「メンティ」と呼びます。 メンターとメンティの関係を築くことも効果的です。

企業の面からのロールモデル設定の仕方

  1. 社内文化の整備
    ロールモデルが活躍しやすい環境を整えることが重要です。オープンなコミュニケーションや、失敗を恐れず挑戦できる文化を醸成します。

  2. 適切な人物の選定
    各部門やチームからロールモデルにふさわしい人物を選定します。選定基準には、業務スキルだけでなく、リーダーシップやコミュニケーション能力も含めます。具体的には、新人社員、中堅社員、ベテラン社員それぞれにふさわしいロールモデルの以下の要件を考慮します。

    役職

    要件

    説明

    新人社員(若手社員)

    熱意と積極性

    自ら進んで学び、新しいことに挑戦する姿勢

    コミュニケーション能力

    上司や同僚との円滑なやり取り

    自己管理能力

    時間管理やタスクの優先順位を守り、効率的に業務を遂行する能力

    中堅社員

    専門知識とスキル

    専門分野での確かな知識と技術を持ち、他の社員に指導できる能力

    チームワーク

    周囲との協力を大切にする姿勢

    問題解決能力

    業務上の課題に対して適切な解決策を提案し、実行に移せる能力

    ベテラン社員(管理職)

    リーダーシップとビジョン

    チームを引っ張り、方向性を示し、メンバーを鼓舞する力

    意思決定力

    会社の方針や戦略に基づき、迅速かつ適切な判断ができる能力

    社員育成

    若手社員や中堅社員の成長を支援する姿勢

    このような要件を基に、適切な人物を選定し、ロールモデルとして紹介することで、社員全体の成長と組織の活性化を図ります。

  3. ロールモデルの紹介と認知
    社内のニュースレターやイントラネットを活用して、ロールモデルを社員に紹介します。具体的なエピソードや成果を共有することで、他の社員の認知度を高めます。

  4. メンター制度の導入
    ロールモデルとなる人物と若手社員をつなぐメンター制度を導入します。メンター制度とは、経験や知識を持つ社内の先輩社員が、後輩社員に対して、マンツーマンの面談を通じ、個別に指導したり、支援する活動のことを指します。定期的な面談やワークショップを通じて、ロールモデルからの学びを促進します。

  5. フィードバックと改善
    ロールモデル設定後も、定期的にフィードバックを収集し、制度の改善を図ります。アンケートやヒアリングを通じて、社員の声を反映させることが大切です。

ロールモデルを企業内で活用する方法

ロールモデルを効果的に活用するためには、企業全体で組織的に取り組むことが重要です。ここでは、その中でも重要なメンター制度とブラザーシスター制度の活用方法について詳しく見ていきます。

メンター制度の活用

メンターは、直属の上司とは別に存在する必要があります。直属の上司では、指示を受ける・従うという上下関係になりがちですが、メンターの場合は、他部署の先輩など、直接な利害見解を避け、より仕事上や長い目でのキャリア上など幅広い悩みを相談できたり、問題解決を話し合うなど、広範囲のコミュニケーションを取るということが目的とされています。

メンター制度を導入するには

メンター制度を導入するには、メンターとメンティーを選定し、適切にマッチングします。事前研修を行い、制度の内容を理解させた上でスタートし、フィードバックや成功事例を社内で共有します。

業務時間内で行うため、部署の上司の理解と協力が必要です。過去にメンティを経験した社員が、今度は自分がメンターになって、次のメンティを指導するという「メンタリング・チェイン」という仕組みを導入している企業もあります。メンタリング・チェインを導入することで、好循環を生み出し、社内のコミュニケーションを活性化させます。

参考>>>厚生労働省 メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル

ブラザーシスター制度の活用

ブラザーシスター制度もロールモデルを持つのに役立ちます。ブラザーシスター制度は、主に新入社員に対して、同じ部署の先輩社員が、仕事に対するアプローチを指導したり、問題解決について一緒に考えたり、悩みの相談を聞いたりする制度です。

ブラザーは男性の指導役、シスターは女性の指導役のことを指しています。一部のデータでは、「3年以内に離職する新卒社員は3割以上」という研究もあり、ブラザーシスター制度は主に新入社員の早期離職を防ぐことに貢献します。

ロールモデルと、メンター・ブラザーシスター制度の違い

メンター制度やブラザーシスター制度は、社員に満足度が高く、浸透すれば「自分からメンター、もしくはブラザー(シスター)になりたい」という積極的な希望者が増えることがあります。しかし、マンツーマンの対応が必要となるため、フォローやサポートが欠かせず、人事担当部署の業務負担も増加するため、すぐに導入しにくい状況もあります。

一方、ロールモデルは一人のスキルを多数の社員が学び、活かすことができ、人数に制約がないことが特徴です。まずはロールモデルの導入から始め、現場の課題や要望に応じてメンター制度やブラザーシスター制度に展開していくことが、実践しやすいアプローチとなります。

内容

詳細

利点

課題

メンター制度

経験豊富な先輩社員が他部署の後輩社員を指導し、広範囲の悩みを支援する制度

・社員の成長を促進、相談やアドバイスを通じて社員の満足度を向上させる

・幅広い悩みを相談できる環境の提供ができる

・マンツーマン対応のためフォローやサポートが必要で、人事担当部署の業務増加

ブラザーシスター制度

新入社員に同部署の先輩が指導し、早期離職防止に貢献する制度

・新入社員の早期離職を防ぐことができる

・同部署内での指導で迅速な対応が可能になる

・フォローやサポートだけでなく、導入に際して指導役の選定や研修が必要

ロールモデル

各部門で選定したロールモデルのスキルを多数の社員が学ぶ制度

・一人のロールモデルのスキルを多数の社員が真似できるため、人数に制約がない

・導入当初は認知度向上が必要

・現場の課題や要望に応じた対応が必要

参考>>>ブラザーシスター制度とは?早期離職防止に効果的な事例や制度導入のステップについて解説

ロールモデルをめぐる課題

女性管理職のロールモデル

ロールモデルは、女性の就業において特にメリットを発揮すると考えられています。日本の企業風土では、男女の就業機会はまだ平等とは言えず、先進国の中でも女性管理職の比率が低いことが知られています。これは、女性には妊娠・出産や家庭との両立への負担感が強いためです。

女性がロールモデルを持つことで、「あの人のようにやってみよう」と前例を知り、アドバイスをもらうことで、新しい仕事に挑戦しやすくなり、定着率が上がる効果が見られます。女性管理職が増えにくい理由として、「ロールモデルがいないからだ」と指摘する声もあります。

女性には仕事を続けたいという希望があっても、「わざわざ管理職になりたくない」「実務に加えてマネジメントまでは引き受けたくない」と思う場合が見られます。これは、女性管理職の前例が少なく、マネジメントに対する情報が行き渡っていないためです。

そのような女性たちが同じ女性のロールモデルから「管理職の魅力」「マネジメントが自分の成長につながるか」などを直接聞き、アドバイスを受けることは非常に有効です。ロールモデルの生の声を聞くことで、女性たちに安心感や意欲が生まれると期待できます。女性管理職の増加は、企業全体の成長にも寄与するでしょう。

ロールモデルがいない

また、社内で女性管理者が過去にいなかったなど、「ロールモデルとなるべき人材が、社内でどうしても見つからない」という場合があるでしょう。

その場合は関係会社など、社外にそのようなロールモデルを見つけ、講師として招き研修を行うのが良いでしょう。相手先を訪問して話を聞かせてもらうことも、社内の意識の改善や現状の問題発見につながります。

また、会社として、「どんなロールモデルをお手本にしてもらいたいか」という指針を持つことも大切です。「今はロールモデルになり得る社員がいない」という場合でも、「ゆくゆくは後輩のお手本になってもらえるように新入社員や若手社員を育成するという意識が、将来の人材への投資として必要でしょう。

参考>>>全労済協会 若者のキャリア形成における社会関係の役割

従業員の育成や教育のためにロールモデルは効果的

新入社員や若手社員にとって、社内に目標がいることでモチベーション向上にもつながる

ロールモデルやメンター制度は、すぐに目に見える効果があるわけではありません。しかし、社内の活性化、業績向上につながる点などを伝え、長期的な視点で取り入れることが重要です。

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TUNAG(ツナグ)では、会社と従業員、従業員同士のエンゲージメント向上のために、課題に合わせた社内制度のPDCAをまわすことができるプラットフォームです。会社の課題を診断し、課題に合った社内施策をご提案、その後の設計や運用のサポートまで一貫して行っています。

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