他責思考とは?特徴的な行動パターンと改善方法を分かりやすく

他責思考は、個人や組織の成長を妨げるといわれます。職場やビジネスシーンにおいて、自責思考が歓迎されるのはなぜでしょうか?他責思考の特徴的な行動パターンや周囲への影響、改善方法を分かりやすく解説します。

他責思考とは?

組織風土は、組織を構成する人々の考え方や行動パターンに影響されます。「他責思考」は、人材の長期的な成長を妨げるとして、組織やビジネスシーンでは改善の対象になりがちです。対極にある自責思考と比較しながら、他責思考の意味と特徴を解説します。

問題の原因や責任を他人に押し付ける思考

他責思考は、「問題の原因や責任は他人にある」とする思考パターンであり、「自責思考」と対の関係にあります。

例えば、社内でトラブルが発生した場合、自分に非がなかったかどうかを振り返る人が大半でしょう。自責思考が強い人は、「この問題の原因は私だ」と自分が至らなかったことを認め、改善に努めようとします。

一方で、他責思考の人はトラブルの責任を自分以外に押し付けるのが特徴です。「上司の指示が悪い」「クレームは顧客が神経質なせいだ」「〇〇のフォローがなかった」と、反省の色があまり見られません。

他責思考は組織で歓迎されない

組織やビジネスシーンでは、どちらかというと自責思考の方が歓迎され、他責思考は改善すべきものとされています。

他責思考の従業員が多くなれば、課題の共有や改善のための議論が進まないだけでなく、責任のなすり合いが生じる恐れがあります。心理的安全性が損なわれ、自分の意見やアイデアを自由に発信しにくくなるでしょう。チームワークの乱れは、生産性の低下や離職の増加にもつながります。

トラブルや失敗を他人のせいにせず、「自分に何ができるのか」を主体的に考えられる自責思考の人は、周囲に謙虚で真面目な印象を与えます。日々の行いを反省し、学びや改善につなげられるため、ビジネスパーソンとしての大きな成長が見込めるのです。

他責思考の人によくある行動パターン

思考は行動に表れるといわれますが、他責思考の人にはどのような行動パターンが見られるのでしょうか?代表的なものをピックアップして解説します。

同じミスが多い

他責思考の人は、同じミスを繰り返す傾向があります。失敗の原因を外に求めるばかりで、「何が悪かったのか」「どうすれば改善できるのか」を考えようとしないため、問題解決能力が養われません。

同じミスを繰り返す従業員がいると、上司をはじめとする周囲の業務負荷が増大し、チーム全体のパフォーマンスに悪影響が及びます。

接客業やサービス業であれば、お客さまからのクレームが増えて、企業イメージの低下や収益ダウンにつながるかもしれません。

「~してくれない」が口癖

他責思考の人の多くは、「~してくれない」が口癖です。問題が起きたとき、環境やチームメンバーのせいにする傾向があります。

  • 会社は私たちに何もしてくれない
  • 何度も言っているのに、お客さまが分かってくれない
  • 上司のマネジメントが悪いせい
  • 自分のせいじゃないし

他責思考の従業員が増えると、会社や仲間の陰口を言い合うようになります。人によっては怒りや不満をあらわにするため、職場の雰囲気が悪化するでしょう。自責思考の人であれば、「自分が力不足だったから」と反省し、次回に向けて改善策を考えます。

指示されるまで待っている

他責思考の人は、他人任せで当事者意識が低く、「ほかの人が解決してくれるだろう」「自分が進んでやる必要はない」と考えがちです。

上司の指示がないと動かない「指示待ち人間」になりやすく、「どうすればいいですか?」「〇〇さんに言われた通りにやりました」というせりふが多くなります。

責任感が希薄な故、リスクを取らなければならないリーダーのポジションはあまり好みません。役を任せられたとしても「指示されたからやっているだけ」というスタンスを貫くでしょう。

他責思考が生まれる主な要因

他責思考は、性格的な特性や過去の経験、周囲の環境などによって、徐々に形成されていきます。思考の癖を改善させるには、なぜそうなったのかの要因を探ることが重要です。

自己肯定感の低さ

他責思考が生まれる要因の一つに、自己肯定感の低さが挙げられます。自己肯定感とは、ありのままの自分を認めて受け入れる感覚のことで、自己効力感と同義です。

自己肯定感が低い人は、自分と他人を比較して落ち込む傾向があります。「他人に認められたい」という気持ちが強く、失敗して自分の評価が下がることを恐れるのです。その結果、他人に責任を押し付けたり、指示されるまで動かなかったりと、自分を守るための行動が多くなります。

もともとの性格のせいもありますが、自己肯定感の形成は、家庭環境や職場環境が大きく影響しています。

過去の苦い経験

学業や仕事で失敗する、親や教師に叱られるといった経験は、誰もが通る道といえますが、プライドが高い人や心が繊細な人は、心が深く落ち込みます。強い不安や恐怖による心理的ストレス(トラウマ)につながる人も珍しくありません。

過去に自尊心が傷つけられた人の場合、心理的な攻撃から身を守るための「自己防衛本能」が強くなります。「同じ気持ちを味わいたくない」という思いから、他人の目を気にし、自分に怒りの矛先が向かないように動くのでしょう。

特に、過去の苦い経験が自分の努力でコントロールができないものであるほど、他責思考が強まる傾向があります。

ルーティン化した業務

ルーティン化した業務も他責思考を引き起こす要因の一つです。会社で毎日同じことを繰り返していると、それなりのスピードで業務を遂行できるようになります。

一方で、「タスクをさばく」という感覚が強くなっていき、変化を嫌うようになるのが実情です。人によっては、「与えられた仕事をこなしさえすればいい」「なぜそんなことまで自分がしなければならないのか」という思考パターンに陥りやすくなります。

創意工夫をして付加価値を高めようという気持ちや課題を見つけて改善しようという気持ちがなくなり、結果的に他責思考へとつながっていくのです。

他責思考は組織にとって本当にマイナスなのか?

組織では、自責思考を持つ人材が歓迎される傾向があり、他責思考は改善すべきものとされています。実際のところ、他責思考にはマイナスの側面しかないのでしょうか?

他責思考からアイデアが生まれることがある

他責思考は、問題や責任の所在を自分の外に探す思考です。当事者意識がなく、責任感も希薄なイメージがありますが、見方を変えれば客観的な視点を持っているともいえます。

自責思考の人が「自分の努力が足りなかったせい」としてしまうところ、他責思考の人は、マネジメントが機能していない・環境が整備されていない・システムが使いにくいなど、問題を自分とは切り離して考えるのが特徴です。

事実、業務フローや環境に課題がある場合も多く、他責思考からアイデアが生まれたり、職場環境が改善されたりすることもあります。

自責思考が強い人はストレスに弱い

他責思考の人は不利な立場に置かれると、矛先を他人に向けて自分を守る傾向があります。自分を責めたり、思い悩んだりすることが少なく、ストレスはたまりにくいといえるでしょう。メンタルが崩壊するリスクも少なく、指示された業務は安定的にこなします。

逆に、自責思考が強い人はストレス耐性が低い傾向があり、メンタルが不安定になりがちです。他者とのコミュニケーションでも主導権を握られやすく、理不尽な要求にも応えてしまう場合があります。度が過ぎると、うつ病などの精神疾患を引き起こす恐れもあるでしょう。

部下の他責思考を改善させるポイント

他責思考はデメリットばかりではないものの、度が過ぎると組織にマイナスの影響を与えるのは明らかです。自分の部下が他責思考に偏っている場合、どのようにして改善させればよいのでしょうか?マネジメント層が意識すべきポイントを解説します。

自分で選択させる機会を増やす

他責思考の従業員が多い組織の特徴として、自分で選択できるチャンスが少ないことが挙げられます。日々の仕事がルーティン化していたり、上司の指示が絶対的だったりして、自分に決定権はないと思わざるを得ない環境になっている可能性があります。

責任感や主体性を育むには、従業員に適切な決定権を与えることが重要です。自分で決める行為により、その物事が「自分ごと化」し、徐々に責任感が養われます。自分の選択が良い結果につながれば、自己肯定感も向上するでしょう。

内発的動機付けを意識する

過度な他責思考を是正するには、内発的動機付けが有効です。ここでいう動機とは、働くためのモチベーションと同義です。

給与・福利厚生・罰則といった外から与えられるものを「外発的動機」と呼ぶのに対し、興味・関心・やりがいといった内面から湧き上がるものを「内発的動機」と呼びます。

報酬や罰則を与えれば、従業員のモチベーションは一時的に高まりますが、長続きはしません。逆にやりがいや喜びを引き出すことができれば、周囲がいちいち指示しなくても自分から積極的に取り組むようになります。

他責思考の従業員に対しては、業務を行う意義やゴールをしっかりと伝え、内側からのやる気を引き出すことが重要です。

社内で優れた思考・行動を称賛する

称賛文化の醸成は、他責思考の改善につながります。優れた思考・行動を互いに評価・称賛し合うことは、内発的動機付けにほかなりません。

上司や同僚からの「いつもありがとう」「助かった」という言葉は、自己肯定感を高め、さらなるやる気を引き出します。コミュニケーションの活発化によって、従業員同士の信頼関係が構築され、心理的安全性の高い職場へと変わっていくでしょう。

心理的安全性の高い環境下では、誰もが安心して自分の考えを伝えられます。「それは他責だよね」「無責任だよ」と互いに指摘・評価し合うため、一人一人の成長につながっていきます。

称賛文化の醸成には「TUNAG」を活用

称賛文化を醸成するには、社内のコミュニケーションを促すとともに、従業員が気軽に感謝の気持ちを伝え合える仕組みを構築する必要があります。

例えば、サンクスカードで感謝の気持ちを伝え合ったり、少額のインセンティブを贈る「ピアボーナス」を導入したりすれば、褒め合うことが日常的になるでしょう。

会社と従業員、または従業員同士のより良い関係性を構築したい企業は、「TUNAG」の導入を検討してはいかがでしょうか?

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過度な他責思考・自責思考に注意

他責思考とは、問題や責任の所在を他人に押し付ける思考を指します。自己分析や反省の機会が少なく、ビジネスパーソンとしての成長が少ないと評価されがちですが、客観的な視点やアイデアが生まれやすい側面もあります。

うつ病などの精神疾患が増えている現代、何でも自分のせいにする自責思考が必ずしもよいとは限りません。過度な自責はストレスや離職の原因となります。どちらの思考にも偏らず、バランスを保つことが大切でしょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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