リカレント教育を企業が支援するには。定義や企業が支援する方法を解説
従業員のキャリア構築やスキルアップのため、リカレント教育の支援を考えている企業もあるのではないでしょうか。リカレント教育がどのようなものを指すのかという基本とともに、企業としてできる具体的な支援の施策を解説します。
リカレント教育とは?基本と背景
社会人のキャリアに影響する取り組みの一つに、リカレント(recurrent)教育が挙げられます。言葉としては浸透してきていますが、定義を正確に理解していない人も多いかもしれません。まずはリカレント教育とは何なのか、注目される背景も交えて整理していきましょう。
キャリアの学び直し「リカレント教育」の定義
「リカレント教育」とは、社会人が就労と学習を交互に繰り返す教育モデルです。語源である英単語の「recurrent」は、「再発する」「周期的に起こる」という意味を持ちます。
リカレント教育は、1960年代後半にOECD(経済協力開発機構)が提唱した概念で、キャリアアップ・キャリアチェンジを目的とする学び直しです。
ほかの概念(リスキリング・生涯学習)との違い
リカレント教育と混同しやすい概念に、「リスキリング」や「生涯学習」があります。それぞれの定義を見比べて、違いを把握しましょう。
- リスキリング:企業が業務再編に伴って新たなスキルを習得させる
- 生涯学習:職業と無関係な趣味・教養も含む広義の学習概念
- リカレント教育:本人が主体的に、スキルアップ・再就職を視野に入れて学ぶ(就業人生と直結したもの)
主体や目的の違いを整理することで、制度設計の指針になります。特にリスキリングとリカレント教育は、企業において混同されやすい概念です。従業員に正しく説明するためにも、違いをしっかりと理解しておかなければなりません。
日本でリカレント教育に注目が高まる背景
現代の日本でリカレント教育が注目される背景には、さまざまな要素が絡み合った現状があります。
まずは現役年齢の延長により、労働者にとって学び直しの必要性が増していることです。第4次産業革命やDX推進によってスキルの旧態化が早まっている現状も、背景として挙げられます。
また現代日本では、少子高齢化による労働力不足により、生産性の向上が求められています。そのためには労働者が就業と学習を繰り返しながら、スキルアップしていく取り組みが不可欠です。
さらに雇用の流動化や副業の浸透など、キャリアの多様化も影響しています。終身雇用を前提として企業がキャリアのレールを敷いてくれていた時代と違い、労働者が主体的に知識やスキルを身に付けながら、自分の市場価値を高めていく必要があるのです。
企業がリカレント教育支援で押さえたいポイント
従業員のスキルアップ・キャリアアップの手段として、リカレント教育の支援を考えている企業は多いでしょう。支援に当たって忘れてはいけない視点を二つ解説します。
人材の定着・育成・生産性向上につながる
リカレント教育の支援は、従業員だけでなく、企業にとっても確かなメリットがあります。具体的なメリットの例は、以下の通りです。
- スキルの陳腐化を防ぎ、長期的に戦力となる人材を育てられる
- 成長実感が従業員満足度を高め、離職防止につなげられる
- 多様な知識や視点を取り入れることで、組織の生産性が向上する
- 従業員のキャリア自律が進めば、役割への適応力も高まる
いずれも成長できる組織に必要な要素だと分かるでしょう。「支援してあげる」ではなく、企業にとっての利益と考えて積極的に支援する姿勢が重要です。
リカレント教育は従業員の「自主的な学び」と認識する
リカレント教育の大きな特徴は、本人の「自主的な学び」だという点です。企業主導のリスキリングと異なり、本人の学びたい意欲が出発点となります。
企業の支援はあくまで従業員がリカレント教育に取り組む後押しであり、押し付けは逆効果になるでしょう。「やらされ感」が出ないよう、学習意欲を引き出す取り組みが求められます。
従業員のリカレント教育を支援する具体的な取り組み
ただ「リカレント教育を支援しよう」と学習教材を集めても、役立たない・続かない・仕事で学びの時間を取れないなどの理由で、従業員に活用されない可能性が出てきます。
自発的にリカレント教育に取り組む後押しをするには、企業として何をすればよいのでしょうか。
対話で個々が何を学ぶべきかを明らかにする
同じ企業に勤める従業員でも、役割や得意・不得意によってリカレント教育で学ぶべき内容は違います。キャリアコンサルティングや1on1面談で、課題を明確化するところから始めましょう。
対話に当たっては、本人の興味や不安・理想とする将来像を丁寧に擦り合わせることが重要です。上司が一方的に判断せず、本人の意思を尊重する姿勢も求められます。対話は記録して振り返れるようにしておくと、継続的な支援の基盤になるでしょう。
eラーニングなど続けやすい手段を提供する
忙しい社会人の学びには「続けにくさ」が壁になります。企業が提供する学習手段としては、短時間でも学べるeラーニングやマイクロラーニングが学習の継続に効果的です。
業務と両立しやすい、オンラインスクールや通信講座を提供する選択肢もあります。「おすすめ講座一覧」などをまとめておけば、従業員が何から始めればよいか迷わず取り組みやすくなります。興味や目的別に分類しておくと、個々のニーズに合った学習をスムーズに選べるようになるでしょう。
学習支援手当や勤務調整制度を導入する
リカレント教育に取り組みたくても、従業員の経済的な困難や仕事による時間のなさで断念せざるを得ないケースも考えられます。以下のような支援制度を設けると、経済的・時間的な問題を解消しやすいでしょう。
- 受講費用の一部補助(例:上限付き学習支援金)を設ける
- 業務時間内の一部を学習に充てる制度(例:月1時間の学習タイム)
たとえば、資格取得に向けた費用補助や、繁忙期を避けた学習期間の設定なども工夫の一つです。とはいえ、予算も時間の余裕も企業によって違います。無理のない範囲で自社に合った支援制度を設計してください。
TUNAGを活用してリカレント教育をサポート
組織改善クラウドサービス「TUNAG(ツナグ)」はエンゲージメントの向上、コミュニケーションの活性化によってリカレント教育をサポートすることができます。どのように活用できるのか、リカレント教育の支援をスムーズにする機能を挙げて解説します。
タイムライン活用で対話の質向上と学びの可視化を
TUNAGのタイムラインや社内チャット機能を活用することで、日常的なコミュニケーションが活発になり、従業員が自身の学習状況や悩みを自然に発信しやすくなります。
その中で、上司や人事は学習に関するニーズや課題の兆しをつかみやすくなり、より深いコミュニケーションにつなげることができます。
さらに、学習内容を共有する施策を打つことで、自他ともに理解が深まったり、励まし合いの文化が育ったりといった効果も期待できます。
学習に対して社内ポイントシステムで報酬を与える
リカレント教育に取り組んだ従業員に対して報酬を与える施策は、学習意欲の向上や学習の継続につながります。
学習報告や成果の共有に対して、ポイントを付与する運用にすれば、学習の成果が評価されていると実感でき、継続のモチベーションにつながります。
リカレント教育の支援で人材定着を目指そう
リカレント教育は、変化の大きい現代の労働者にとって重要性を増してきています。企業としても、従業員が自主的に学んでキャリアアップ・スキルアップを果たせれば、多くのメリットを得られるはずです。
学び直しを支援する文化や制度は、人材定着・育成の土台にもなります。リカレント教育の支援を始めるに当たっては、企業・従業員双方にとって無理のない制度設計が必要です。従業員の成長を支援・活性化するようなツールの活用も検討しつつ、従業員が主体的にリカレント教育に取り組める環境をつくりましょう。