離職票とは?離職証明書・退職証明書との違いや発行手順を解説
離職票は会社が退職者に渡す重要な書類の1つです。失業給付の申請時に提出を求められるため、会社としてきちんと手続きを行いましょう。離職票とは何か、離職証明書・退職証明書との違いや発行手順など、担当者が知っておきたい基礎知識を解説します。
離職票とは
従業員が会社を辞める際は、会社からさまざまな書類を渡す必要があります。まずは離職票について理解を深め、似た書類の意味も押さえておきましょう。
失業給付の受給手続きに必要な書類
離職票(雇用保険被保険者離職票)とは、退職者が失業給付を受け取るために必要な書類です。ハローワークが会社に発行し、会社が退職者に渡します。
離職票は「雇用保険被保険者離職票-1」と「雇用保険被保険者離職票-2」の2種類で構成されています。離職票-2は3枚つづりの書類の3枚目です。
退職者の転職先が決まっていて失業給付を受給しないケースなど、退職者が離職票の交付を希望しない場合、原則として会社はハローワークに発行申請を行う必要はありません。ただし、退職者が59歳以上なら本人が希望しなくても離職票の交付が必要です。
出典:ハローワークインターネットサービス - 雇用保険の具体的な手続き
出典:事業主の皆様へ:雇用保険について:被保険者についての諸手続き:5 被保険者が離職したとき | 徳島労働局
離職証明書との違い
離職証明書は、離職票の発行を申請する際に会社がハローワークへ提出する書類です。雇用保険被保険者資格喪失届と一緒に提出します。
離職証明書は3枚つづりになっており、1枚目は会社の控え、2枚目はハローワークへの提出用です。3枚目を離職票-2として退職者に渡します。
離職証明書の提出期限は、退職日の翌日から10日以内です。提出が遅れると退職者に迷惑をかけてしまうため、期限内に提出しましょう。
退職証明書との違い
退職証明書は、会社に在籍していたことや会社を辞めたことを証明する書類です。退職者から発行依頼を受けた会社が、任意の書式で作成・発行します。
退職証明書が必要になる主なケースは、退職者が就職を希望する会社から提出を求められたときです。応募先は退職証明書を見て、応募者における在籍中の業務内容・役職・賃金や退職理由を確認します。
労働基準法第22条に規定されている退職証明書のルールは以下の通りです。
- 退職証明書の発行請求を受けた会社は発行を拒否できない
- 退職者は退職証明書に記載する項目を自由に決められる
- 会社は退職者が希望する項目以外を退職証明書に記載できない
雇用保険被保険者証との違い
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していることを証明する書類です。本人の入社時に会社が雇用保険の加入手続きを行った際、ハローワークから交付されます。
発行後に本人へ渡すのが基本ですが、会社で保管しているケースも多いでしょう。失業給付の受給手続きで必要になるため、会社で保管している場合は退職時に本人へ返さなければなりません。
出典:ハローワークインターネットサービス - 雇用保険の具体的な手続き
離職証明書の記載項目
離職票の発行申請時に提出する離職証明書には、会社が記載する部分と退職者が記載する部分があります。退職者本人が書く項目は空欄にしておく必要があるため、それぞれが書く項目をしっかりと確認しておきましょう。
会社が記載する項目
離職証明書で会社が記載する項目は以下の通りです。
- 退職者の氏名・住所
- 被保険者番号
- 退職年月日
- 事業所番号
- 被保険者期間算定対象期間
- 賃金支払基礎日数
- 賃金支払対象期間
- 基礎日数
- 賃金額
- 備考
- 賃金に関する特記事項
- 離職理由
- 具体的事情記載欄(事業主用)
「具体的事情記載欄(事業主用)」には、退職に至った理由と経緯をできるだけ詳しく記入する必要があります。
出典:雇用保険事務手続きの手引き P40、41、51 | 熊本労働局
退職者が記載する項目
会社が書くべき項目を埋めたら、残りの部分を退職者に記載してもらわなければなりません。離職証明書で退職者が記載する項目は次の通りです
- 署名
- 離職者本人の判断
「署名」欄に署名させる際は、退職者本人に記載内容を確認してもらわなければなりません。「離職者本人の判断」欄は、会社が記入した離職理由を本人に確認させた上で、本人に「有り・無し」のいずれかを〇で囲んでもらいます。
いずれも本人が署名できない場合は、会社で理由を明記し、事業主の氏名を記載します。
出典:雇用保険事務手続きの手引き P40、41、51 | 熊本労働局
離職票の発行手順
離職票は会社が発行するのではなく、ハローワークで発行されたものを会社が退職者に渡します。具体的な発行手順をステップごとに確認しましょう。
手順1.離職票が必要か退職者に確認する
離職票は退職者本人が希望しなければ発行を申請する必要がありません。まずは退職希望者に離職票が必要かどうか確認しましょう。
退職後すぐに再就職することが決まっている場合や、しばらく再就職するつもりがない場合は、退職者が発行を希望しない可能性があります。
雇用保険法施行規則第7条3項により、退職者が離職票の発行を希望しない場合、離職証明書の提出は不要です。
手順2.必要書類をハローワークに提出する
雇用保険法第7条および雇用保険法施行規則第7条では、退職者が離職票の発行を希望する場合、会社は退職日から10日以内にハローワークへ離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届を提出することを義務付けています。
このルールを守らない場合、雇用保険法第83条4項により、6カ月以内の懲役または30万円以下の罰金を科される恐れがあります。
雇用保険被保険者資格喪失届は、従業員が雇用保険を脱退した際に提出する書類です。離職票を発行しない場合も、雇用保険被保険者資格喪失届は提出しなければなりません。
手順3.発行された離職票を退職者に送付する
ハローワークに必要書類を提出すれば離職票が発行されます。離職票-1はハローワークが作成する書類、離職票-2は離職証明書の3枚目です。
離職票の発行と併せて、離職証明書の会社控えと雇用保険被保険者資格喪失確認通知書もハローワークから渡されます。これらは会社で確認・保管するための書類です。
発行された離職票はできるだけ早めに退職者へ渡しましょう。
離職票に関するよくある疑問
離職票をなくしたり手続きを忘れたりした場合の対処法を紹介します。離職票は従業員が退職するたびに発行する必要があるため、トラブル対処法を覚えておきましょう。
離職票の再発行は可能?
退職者から離職票の再発行を依頼された場合、再交付申請書をハローワークに提出すれば再発行してもらえます。再交付申請書はハローワークのWebサイトからダウンロードすることが可能です。
また、離職票の再発行は退職者本人も申請できます。一度でも発行されていればハローワークで履歴を確認できるためです。
退職者が自分で再発行を申請する場合は、再交付申請書・写真付き身分証明書・雇用保険被保険者証・印鑑の準備が必要です。
離職票を発行しないとどうなる?
退職者が離職票の発行を希望する場合、会社は必ず発行しなければなりません。期日内に手続きを行わなければ、前述の通り雇用保険法第83条4項違反となり、懲役刑または罰金刑に科される恐れがあります。
何らかの理由で発行手続きが間に合わなかった場合、まずはハローワークに相談しましょう。正当な理由があれば罰則を回避できる可能性があります。
また、手続きが遅れたら退職者への連絡も必要です。離職票がなくても失業給付の仮受付をしてもらえるため、その旨を伝えるとよいでしょう。
離職票について理解を深めよう
離職票は失業給付の申請手続きに必要な重要書類です。会社がハローワークに発行申請を行い、交付されたものを会社から退職者に渡します。
退職者が発行を求める場合、会社には確実に発行する義務があります。手続きの流れを理解し、退職者に迷惑をかけないよう適切に手続きを進めましょう。