現場の声を集めるために必要な4つの要素

現場の声とは、企業や組織の最前線で働いている従業員が持つ意見や要望、感想や不満などを指します。 しかし、日本の組織文化には現場の声を吸い上げにくい要因があり、経営陣や本社スタッフと現場で意識のズレが生じることがあります。 この記事では、現場の声を集めるために必要な組織文化、情報流通システム、定期的な会議、非定期のインタビューについて詳しく解説します。 さらに、私たちの支援実績とノウハウを基に「エンゲージメント向上施策50選」というお役立ち資料を作成し、無料配布しています。 従業員の定着率UPのために、情報収集段階の方でもご自由にダウンロードください。 お役立ち資料「エンゲージメント向上施策50選」はこちら 「エンゲージメント向上施策50選」 ダウンロード(無料)⇒こちらから

なぜ現場の声が重要なのか

現場の声とは、企業や組織の最前線で働いている従業員が抱えている意見や要望、感想や不満などのことです。
この現場の声を吸い上げることは、経営にとって二つの大きなプラスの効果をもたらします。一つ目は、経営陣や本社スタッフが現場スタッフの働きや貢献を認識することで、現場スタッフのモチベーションが上がり現場が活性化されることです。

SHRM Globoforce Survey(2018)の調査結果では、人事担当者の実に89%が、継続的な同僚からのフィードバックは組織にとって幾分か、または非常にプラスであると報告しています。

参照:SHRM/Globoforce Survey Insights -- Press Release

そして、二つ目のプラス効果は、直接、顧客と接している現場から真の顧客ニーズやウォンツ情報を得られることです。これらの情報は、顧客の満足度向上や新たなサービスや商品開発に役立てられます。

このように経営にとって価値ある現場の声ですが、実際には、適切に吸い上げられていないケースが起きています。

日本の組織文化

現場の声がうまく吸い上げられていない大きな理由として、日本の組織文化が影響しているかもしれません。

集団の意思を優先し、不確実性を嫌う文化

日本では文化的背景から、組織の調和を保とうとする意識が高い傾向にあります。
社会学者ホフステッドが作成した、文化的特徴や国民性を示すホフステッド指数によると、日本は「不確実性の回避」傾向の値が、100分の92と他の国よりも高い水準にあります。個人主義の傾向としては、100分の46と、欧米各国と比べると集団主義的な傾向にありますが、他のアジアの国よりは、個人の平等を謳う教育が行われていたりする点で、個人主義的であると分析されています。

参照:Country comparison tool - Hofstede-Insights. China, Japan, United States

また、現場スタッフには、年功序列の意識があり、上位職の指示に従うことで仕事を進めるのが当たり前という意識があります。

そのため、現場スタッフは自分の意見や提言によって、組織に波風を起こすことを嫌う風潮があります。その理由は、自分が人間関係を悪化させたり、仕事に支障をきたす原因になることを恐れ、不安定な状況になるより、現状維持を選ぶという判断になりやすいのかもしれません。

長期的視点を重視する

先述のホフステッド指数では、日本は「長期的視点」の傾向値は、100分の88で高い値になっています。
また、日本企業での社内評価は長期的視点から行われるケースがあり、現場スタッフが何かしらの業績を上げても、すぐには評価されないという問題点もあります。それにより、現場スタッフは提言することで得られるメリットよりも、デメリットを大きいと感じる場合があります。

このように、日本の組織文化には現場の声を吸い上げにくい要因があり、経営陣や本社スタッフと現場で意識のズレが生まれる一因となっています。

信頼関係の話

現場の声を組織的に吸い上げるには、現場スタッフとの信頼関係を構築することが大切です。

現場スタッフは、会社にとって自分が必要な存在と認められることに、大きな喜びを感じます。そのため、自分たちが会社への貢献を感じられると、より積極的に意見や要望を出すようになります。

一方で、自分たちの声が無視されたり軽視されたりすると、現場スタッフの間には沈黙や不満が広がります。そのような事態を防ぐためには、「現場のために動いていることの可視化」や「現場の声に対する丁寧な対応」が大切です。

現場の声に対して改善策や施策を実施した場合は、その内容や効果を報告することで、現場の声が活かされていることをアピールできます。また、現場の声を実現できなくても、その理由や今後の対応を示せば、現場の声が尊重されていることを伝えることが可能です。

このようにして現場スタッフとの信頼関係を構築していけば、組織的に現場の声を吸い上げられるようになります。その結果、現場や顧客の問題点を経営戦略や方針に反映させることができ、組織の競争力や成長力を高めることにつなげられます。

現場の声を集めるために必要な4つの要素

米国の文化人類学者エドワード・T・ホールは、文化を氷山に例えて表現しています。文化の表面に見える要素とは氷山の一角であり、その根底には潜在化している価値観や信念、思考パターンなどが水面下の巨大な氷のように存在していると主張しています。

参照:Edward T. Hall’s Cultural Iceberg Model

この文化の氷山モデルは、組織においても当てはまる一面があります。経営陣や本社スタッフから見える現場とは、まさに氷山の一角のようなものです。営業成績や予算実績、時折の現場視察などで把握できる問題点は、実態のほんの一部かもしれません。表面的には簡単に解決できそうな問題であっても、現場スタッフにはそれを実行できない隠れた問題点が潜んでいる可能性があるのです。

そのため、経営陣や本社スタッフは隠れた本当の問題点を把握するために、現場の声を効果的に吸い上げる仕組み作りが大切です。その仕組みを構築し、時間をかけて現場の価値観や思考パターンに触れることが、現場に潜む本当の問題点を明らかにする手段と言えます。

それでは、現場の声を効果的に吸い上げるには、どのような点に留意することが必要でしょうか。ここでは、4つの重要な要素について解説します。

1.組織文化

現場の声を吸い上げるためには、組織文化が重要な役割を果たします。組織文化とは、組織内で共有される価値観や行動様式のことです。もし、組織が風通しの悪い組織文化となっていたら、現場の声を吸い上げるのはとても難しい状況にあるでしょう。

現場が声を上げやすい組織文化をつくるには、経営陣主導で取り組む姿勢が重要です。組織文化の形成には、経営陣の信念や行動が大きく影響します。経営陣が目指す方向性や目標をメッセージとして発信することで、組織の方向性や目標を明らかにしていきましょう。

その上で、経営陣からのメッセージをベースとして、組織文化を仕組み化することも大切です。仕組み化とは、現場からの意見やアイデアを収集し、評価し、フィードバックするプロセスを定めることです。仕組み化することで、現場スタッフはメッセージが掛け声だけでなく、経営陣が本気で取り組んでいる覚悟を感じます。

組織文化の変革は水面下の氷山を変えようとする取り組みです。すぐに効果が表れなくても、経営陣の強い信念のもと、粘り強く実行していきましょう。

2.組織内の情報流通システム

現場の声が経営陣や本社スタッフへと速やかに伝わるには、組織内に効果的な情報流通システムを構築するのが効果的です。組織内の情報を横断的かつ体型的に可視化することで、現場と経営陣や本社スタッフとのコミュニケーションが活性化し、現場の声を吸い上げやすくなります。
組織内の情報流通システムには、大きく分けてオンラインとオフライン両面からのアプローチが可能です。ここでは、それぞれのアプローチ手法について解説します。

オンラインプラットフォーム

オンラインで現場の声を吸い上げるには、オンラインプラットフォームを利用する方法があります。オンラインプラットフォームとは、Web上で利用できるサービスの基盤で、代表的なものにSNSや検索エンジン、Saasなどがあります。
これらのオンラインプラットフォームの中で、現場の声を吸い上げるのに効果的なのは情報共有システムです。情報共有システムとは、企業で発生する情報のやり取りを、クラウド等を利用したサービスを介することで、作業や時間の効率化を図るシステムです。
情報共有システムを活用すれば、これまで書類や電話、FAXでやり取りしていた情報を、オンラインプラットフォーム上で一括管理できます。そのため、コミュニケーションにおける時間や場所の制約が少なくなり、よりスムーズなコミュニケーションを図れます。
組織内の情報共有システムには、グループ内で連絡のやり取りをする「チャットツール」やプロジェクトの進捗を管理する「プロジェクト管理ツール」、様々な社内施策が可能な「経営プラットフォーム」などがあります。

オフラインの仕組み

情報の可視化など、オンラインでの情報共有にはいくつものメリットがあります。しかし、オンラインでの情報はオープンになりやすいため、秘匿性の高い現場の声を吸い上げるにはデメリットとなる場合があります。

例えば、コンプライアンス問題などで、情報がオンライン上で共有化されることで、通報者の情報が漏洩する危険性が高まり、通報をためらうようなケースです。
このような事態に対しては、消費者庁からは「公益通報を理由とした不利益な取扱いや公益通報者が誰であるかを特定させる情報が必要な範囲を超えて共有されることを防止する措置等をとること」と指導されています。

参照:消費者庁「公益通報ハンドブック 6.(1)事業者内部に通報があった場合」

電話による相談窓口や無記名によるアンケートなど、現場の声を伝えた人が守られる仕組みをつくれば、オンラインや対面ではなかなか伝わってこない重要情報を速やかに得られる可能性が高まります。
組織内に情報流通システムを構築する際は、オンライン、オフライン双方のメリットを理解して、組織にとって必要な現場の声を吸い上げやすい仕組み作りを目指していきましょう。

3.定期的な会議

定期的な会議は、現場の声を吸い上げるために欠かせない要素のひとつです。定期的に会議を開催することは、現場スタッフと経営陣や本社スタッフとの親近感を高めて、お互いが話しやすい雰囲気をつくれます。
現場から本当の課題や問題点を吸い上げるには、現場スタッフとの信頼関係構築が欠かせません。もし、双方に信頼関係がなければ、現場スタッフが重大な課題や問題点を認識していても、それを経営陣や本社スタッフに伝えるのは困難です。
ですが、定期的に会議を開催し、現場の人たちと顔を合わせてコミュニケーションをとることで、お互いに信頼感が生まれ、オープンな対話ができるようになります。
人間には対人関係において接触する回数が増えると、相手に対する好感度が上がるという心理効果が働きます。この効果は「単純接触効果」や「熟知性の原理」と呼ばれ、1968年にアメリカの心理学者ロバート・ザイアンスによって提唱されました。

参照:Zajonc, Robert B. (1968). “Attitudinal effects of mere exposure”. Journal of Personality and Social Psychology

このような心理効果が働くことで、繰り返し現場スタッフと接点を持つことは互いの心理的距離を縮め、現場に根差している価値観や思考パターンの理解にもつながります。経営陣や本社スタッフと、現場スタッフの考え方には様々な相違点があるものです。その相違点を経営陣や本社スタッフが理解できなければ、なぜ現場からそのような声が上がるかの本質を、見誤ってしまう可能性が発生します。

4.非定期のインタビュー

非定期でインタビューを行うことも、現場の声を吸い上げるために必要な要素のひとつです。

組織が大きくなるほど、現場と経営陣や本社スタッフとの間には心理的な距離感が生まれ、円滑なコミュニケーションを図ることが難しくなります。その大きな理由は、組織の役割分担上、経営陣や本社スタッフは情報を発信する側、現場スタッフは受け取る側になる傾向が強くなるからです。そのため、現場スタッフは「現場と本社は違う存在」という考え方を抱きやすくなり、自ら情報発信することをためらうようになります。

このような状況を回避するのに有効な手法が、非定期で実施する社内インタビューです。現場スタッフへのインタビューを社内報などに掲載すれば、現場スタッフの活躍を社内の多くの人に伝えられます。

現場スタッフは自分たちの成果や苦労、工夫や挑戦などを紹介されることで、「自分たちは組織の重要な一員」としての存在感や貢献度を高め、自信やモチベーションを高められます。
また、経営陣や本社が、現場の価値観を理解できるようになることも重要なポイントです。経営陣や本社スタッフが直接現場に足を運んでインタビューすることで、現場の状況やニーズを理解できるようになります。そこから現場の本音や問題点、改善点などを的確に把握できるようになるでしょう。

まとめ

ここまで、現場の声を吸い上げるために必要な4つの要素について解説しました。

現場スタッフはビジネスの最前線で活躍し、顧客にとっては組織の顔となる存在です。だからこそ、現場スタッフは顧客の悩みや問題点を直に感じていて、組織にとって貴重なデータや意見を持っています。だからこそ、経営陣や本社スタッフは現場スタッフの立場に寄り添い、現場の真実の声を吸い上げる仕組みをつくることが大切です。

現場の声から顧客の本当の悩みや問題点を把握して、顧客のニーズやウォンツに貢献できる経営を目指していきましょう。

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