業務改善を実現するためには、まずは社内の現状と課題を把握することが必要です。社内アンケートはそのための有効な手段のひとつとされています。
しかし、社内アンケートを実施したものの業務改善にはつながらなかったというケースが少なくなく、「社内アンケートは業務改善に意味がない」という声もあります。
社内アンケートは適切な方法で行わなければ無駄になってしまう恐れが高い施策です。今回は、社内アンケートが業務改善につながらない原因と社内アンケートを効果的に実施して業務改善を実現する方法について解説し、アンケートの具体的な質問例を紹介します。
社内アンケートを業務改善に活かすためには、「現場の声を的確に把握すること」と「それを業務に反映させること」が必要です。
現場の声が的確に把握できない大きな要因は「従業員が本音を出さない」ことです。また、たとえ本音を出したとしてもそれが「業務に反映されない」のであれば意味がありませんし、次回以降のアンケートで従業員が本音を控えるようになってしまいます。
従業員が本音を出さない(出しにくい)理由には以下のようなものがあります。
社内アンケートを実施しておきながら経営層が結果に向き合わず、会社の認識とずれている回答や会社にとって都合の悪い回答は(意識的にまたは無意識的に)無視してしまうというケースが少なくありません。
また、アンケート結果をもとに打ち出された改善施策がたんなる言葉だけのもので、結局のところ業務には何ら変化が生じなかったというケースもしばしば見られます。
アンケートで問題点を挙げても業務に反映されないのであれば、アンケート自体が無駄な業務だったということになります。「社内アンケートは無意味」という認識が広まって従業員が以後のアンケートで本音を控えるようになったり、会社に対する幻滅感から従業員エンゲージメントが低下したりするおそれもあります。
社内アンケートを業務改善に活かすためには、「従業員の本音を引き出す」ことと「アンケート結果を業務に反映させる」ことが必要です。
「従業員の本音を引き出す」ためには、以下のような工夫が有効です。
「アンケート結果を業務に反映させる」上では、アンケート結果(現場の声)を経営層が真摯に受けとめて分析し、現場の実態にそくした実効性のある改善施策を打ち出すことが必要です。さらに、施策の浸透度合いや成果を(再度の社内アンケートなどで)モニタリングすることにより、業務改善を着実に進めることができます。
業務改善に向けた社内アンケート作りの進め方と注意点を解説します。
まずはアンケートの目的を明確化する必要があります。目的が曖昧なままだと適切なアンケートを作成できず、従業員に回答する意義を感じさせることもできず、現場に負荷ばかりかけて業務改善にはつながらないという結果に陥りがちです。
アンケートの目的としては、「業務改善の課題を深掘りする」方向と「課題を広く浅く拾い上げて業務改善の目標を探る」方向が考えられます。
経営層が現時点で把握・実感している課題をもとに業務改善の目標を立て、その課題・目標に関わる項目に絞り込んでアンケートを構成することにより、課題を深掘りできます。逆に、多様な側面から少数ずつ質問事項を拾って「広く浅い」アンケートを作成することで、社内の問題を幅広く収集して業務改善の課題と目標を明確化することも可能です。
今回のアンケートで割愛した課題や、アンケート結果から新たに浮上した課題については、次回以降のアンケートで追求していきます。
アンケートの目的に沿って質問事項を作成します。
課題を洗い出すために網羅的なアンケートを作成しようとしてしまいがちですが、それでは従業員に過剰な負荷がかかり、本音を引き出しにくくなります。質問数は必要最小限に絞りましょう。
また、曖昧・難解・長文の質問や回答の誘導につながる質問は避け、選択式の質問では中間的指標を選択肢から排除します。質問事項の選択や質問文・選択肢の作成においては、中立的な視点を持つことが重要です。「会社としての答え(こういう課題があるはずだ/こうすれば改善するはずだ)」が先に立ってしまうと、質問構成が偏って効果的な実態把握ができなかったり、回答を誘導してしまったりしがちです。
質問の分野を絞ることは必要ですが、各分野において質問事項・選択肢をバランスよく配置することも重要です。社内アンケート運営の担当部署だけで作成すると偏りやすいので、各部門から意見・フィードバックを受けながら作成するとよいでしょう。
業務改善の課題・目標は、以下の3分野に分けることができます。ここでは、分野ごとに効果的な質問例を列挙します。
業務量や残業・休憩時間、業務分担などの適切さについて質問します。
職場の物理的環境やコミュニケーション・対人関係、心身の健康、モチベーションなどに関して質問します。
業務の効率性の度合いや業務上の無駄・障害などについて質問します。
社内アンケート結果をもとに業務改善のための施策を検討する際には、業務改善の4原則「ECRS」を活用すると効果的です。ECRSでは、おおむね「Eliminate(排除)→Combine(結合/分割)→Rearrange(交換)→Simplify(簡素化)」の順で業務を見直します。
第一に、排除できる不要な仕事がないか検討します。例えば定例の会議・打ち合わせや形式化した検査・報告など、慣例として続いているだけで、排除しても事業に影響のない仕事を抽出します。
また、社内で遂行することに無理が生じている業務をアウトソーシングしたり、社内リソース・市場動向に照らして回復が難しい低迷中の部門を売却したりすることも検討します。
排除できない(事業にとって必要な)仕事については、できるだけひとつにまとめて効率化することを考えます。例えば、同種の業務を行っている部署・拠点を整理・統合したり、業務システムを導入して間接業務を一部門に集約したりすることを検討します。
逆に、担当部署を分けて分担体制にした方が効率化できる仕事がないかどうかも検討します。
排除と結合/分割により事業・業務の贅肉がそぎ落とされ、必要十分な仕事がスリムな形で残ります。この仕事について、要素の入れ替え(工程の順序や担当者の入れ替え、作業場所の変更など)によって生産性や業務効率が向上できないか検討します。
交換を検討したのち(またはそれと並行して)、仕事を全体的に簡素化して生産性を向上することができないか検討します。例えば、デジタルツールやFA機器を導入して業務を自動化したり、業務の標準化・マニュアル化によって現場での判断・対応・連携を迅速化・最適化したりする方法を考えます。
社内アンケートを業務改善に活かすためには、社内アンケートの目的を明確化した上で、その目的に沿いながら従業員の立場に立ってアンケートを作成・実施する必要があります。
アンケートの結果(従業員の声)を経営層が真摯に受けとめ、ECRSなどの考え方を活用して実効性のある改善施策を打ち出し、成果をモニタリングしながら施策を推し進めることも求められます。
アンケートの作成や実施、施策のモニタリングについては、コミュニケーション・情報共有機能や集計・分析機能を持つデジタルツールの活用が大きな助けになるでしょう。