物流DXの事例6選!メリット・注意点や推進時のポイントを紹介
本記事は物流業界で、どのようにデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めていくのか、具体的なDX事例を交えながら解説します。
物流DXとは?その意義とメリット
2024年4月以降の働き方改革関連法施行に伴い、『2024年問題』として物流業界の抱える労働上の問題が幅広く世間に認知され、物流企業は対応を迫られています。他にもEC物流の急激な需要増加や異常気象による物流の混乱、環境規制への対応など、多くの課題が存在します。
これらの課題を解決するための手段として、デジタルトランスフォーメーション(DX)の導入が有効です。物流DXはAI、IoTやビッグデータ解析を活用して業務の効率化や最適化を図ることを可能にします。
物流DXの事例6選
まず、DX化による物流業務の改善事例を紹介します。DX化により何ができるかを理解することが、DX推進を成功に導く鍵となります。
事例1:スマホアプリの活用
物流の現場では、事務所と現場の意思疎通が重要です。持ち運びが容易なスマートフォンのアプリを活用することで、常に最新情報を確認し、伝達ミスを防ぎ、業務効率化が図れます。
例えば、配送記録を写真や位置情報と共にアプリに残すことで、トラブル発生時の証拠を確実に残せます。また、輸送遅延が発生した際には即座に管理者に通知し、迅速な対応が可能となります。
さらに、アプリの活用は働きやすい環境作りにも寄与し、従業員のストレス軽減につながり、作業のスムーズな進行が期待できます。
事例2:自動倉庫システムの導入
自動倉庫システムは、商品の入庫から出庫までの工程を自動化し一元管理する物流システムで、作業効率の向上や保管スペースの有効活用により企業の競争力を高めます。
近年、自動搬送機や無人フォークリフトなどの技術進歩により企業での導入が進んでいます。しかし、荷姿の統一化やシステム障害時の事業継続計画(BCP)の確保といった課題もあります。システム停止時にも迅速に業務再開できる体制の整備や、初期導入コストとメンテナンスコストの考慮も必要です。
これらの課題を克服すれば、自動倉庫システムは長期的に大きな投資効果をもたらします。
事例3:IoTを活用した在庫管理
IoTを用いた在庫管理の代表例として、倉庫管理システム(WMS)とハンディターミナルやスマートフォンなどの電子機器の連携が挙げられます。
これにより、リアルタイムで在庫データを確認でき、バーコード読み取りによる入出庫登録により手入力作業が減りヒューマンエラーも減少します。また、入出庫票の出力が不要になるため、ペーパーレス化にも貢献します。
事例4:AIによる配送最適化
慢性的なドライバー不足への対応として、配送ルートの効率化があります。しかし、配送先や配送時間が多岐に渡る場合、人の手で組むのは容易ではありません。
そこで、AIを活用し、膨大なデータから事前に設定した条件や制約をもとに「どの車両がどの順番・経路で回るのが効率的か」を割り出し、配送ルートを設定することができます。これにより配送時間の短縮と燃料コストの削減が見込めるだけでなく、効率的な配送を実現し、ドライバーの時間外労働の削減にも寄与します。
また、効率的なルート設定により、車両の走行距離が短縮され、二酸化炭素(CO2)の排出量が削減されます。これにより、環境にやさしい物流システムの構築が可能となり、企業の社会的責任(CSR)にも貢献します。
事例5:ブロックチェーンを利用したトレーサビリティの向上
サプライチェーン(SC)は、原材料の調達から消費者に商品が届くまでの生産・流通プロセスを指します。この過程には多くの関係者が関わるため、商品がどのような状態にあるのか把握することは難しいです。
そこで、ブロックチェーン技術の導入により、商品の正確な状態情報を得られます。具体的な効果として、ブランド品の正規品証明、食品の安全管理や不良品発生時の迅速な対応が挙げられます。ブロックチェーンに各取引履歴を記録することで、ブランド品の偽造品流通を防止し、食品のトレーサビリティを確保します。
また、不良品発生時には製造元や流通業者が迅速に対応でき、顧客の混乱を防ぎリコール費用を削減することが可能です。
事例6:ドローンを活用した配送サービス
ドローン配送は過疎地域や災害時に迅速な対応が可能で、渋滞を避けることもできます。また、電動で動くためCO2削減にも効果的です。
しかし、課題も多く存在します。安全性の確保は重要で、事故防止や人口密集地でのリスク管理が必要です。さらに、法規制の整備も求められ、現在の法律に加えて新技術に対応した規制が必要です。
また、充電ステーションや着陸地点の設置などのインフラ整備も欠かせません。これらの課題があるものの、技術革新と法整備の進展により、ドローン配送の実現が期待されています。
スマホひとつでドライバー組織をDX「TUNAG for LOGISTICS」
TUNAG for LOGISTICSは、物流業界向けのオールインワンプラットフォームです。スマートフォン対応の使いやすいUIで、ペーパーレスで情報共有を実現し、物理的距離を超えて現場の全従業員をサポートします。
ある企業では、ドライバーの空き時間がバラバラでコミュニケーションが取りづらいという課題がありました。
TUNAGを導入し、ドライバー向け情報プラットフォームとして組織や業界の知識、経営層や管理職の考え、安全に関する情報を発信することにより、コミュニケーションが活性化し、組織全体のエンゲージメントの向上を実現しました。
参考>>>TUNAG for LOGISTICS
物流DX推進時の注意点
近年は物流業界でも業務効率の改善を目指し、DXを推進する企業が増えてきました。
しかし、誤った進め方をすると無駄な投資となり、損失を被ることになります。そのため、DX化を成功させるためには、きちんと順序を踏んで取り組む必要があります。
技術選定の重要性
まず、現状の業務プロセスを詳細に分析し、具体的な課題やニーズを把握します。
次に、選定する技術が既存の社内システムやインフラとの互換性があるかどうかを確認します。さらに、将来的な拡張性を考慮し、企業の成長に合わせて柔軟に対応できる技術を選ぶことが必要があります。
コストパフォーマンスも重要な要素であり、導入コストだけでなく、運用や保守のコストも含めた総合的な評価が求められます。また、ベンダーのサポート体制や導入後のサポートサービスが充実しているかも確認しましょう。
従業員のスキルアップと教育
eラーニングの導入や外部講師を招くなど、社内の学習環境を整えることで、従業員全体のITに対する教育水準を高めることが大切です。
その後、DX推進プロジェクトの中心となるメンバーには、ハンズオンセミナーで実践的なスキルを養うことも重要です。また、その過程で培った能力を評価し、報酬に反映させるなど、モチベーションを高めることも重要です。
セキュリティ対策の徹底
DXに取り組む際はサイバーセキュリティ対策だけでなく、貨物保全のための物理的なセキュリティ対策も講じることが重要です。セキュリティ対策には以下の種類があります。
セキュリティ対策 | 詳細 |
---|---|
サイバーセキュリティ対策 | ファイアウォール、アンチウイルスソフトウェア、エンドポイント保護プラットフォームを導入し、データの暗号化やクラウドベースのセキュリティサービスを活用して機密データを保護。 |
物理的セキュリティ対策 | 運転手の厳選、車両のセキュリティ強化、貨物のGPS追跡システムを導入し、盗難や損傷のリスクを軽減。 |
両者を組み合わせることで、信頼性の高いサービス提供と企業の成長を実現できます。
物流DX推進のポイント
DX推進で求められることは、現状の業務分析とシステム導入後の目標設定、そしてPDCAサイクルを回すことによる改善です。
現状分析と目標設定
DX推進において、現状の把握と目標設定は極めて重要です。現状の把握では、アナログで行われている業務や効率の悪い部分を洗い出します。
例えば、手書きの在庫管理や紙ベースの配送記録などをリストアップします。この分析により、どの業務を優先的にデジタル化すべきかが明確になります。
次に具体的な目標設定です。設定する目標は、業務効率化やコスト削減、正確性の向上など、可能な限り具体的かつ測定可能なものであるべきです。これにより、DXの進捗状況を定期的に評価し、改善を続けるPDCAサイクルを回すことが可能となります。
関連企業との連携
物流手配においては、メーカーや商社、船会社などの会社との連携が求められます。
そのため、これらの会社とシステム連携や共通のプラットフォームを導入することで、物流DXの効果を最大限に発揮することができます。
関連企業とのDX化を目指すには、双方の業務内容や業務手順を把握するだけでなく、DXに対する考え方を合わせることも重要なポイントです。
導入後の効果測定と改善
システム導入前と後での業務効率面やコスト面の観点から定量的、定性的に評価を行います。
その後、得られたを結果をもとに改善策を実施します。改善というのはシステム面だけでなく、従業員への再教育や作業標準の見直しも含まれます。
この一連の流れを繰り返すことで、企業は業務効率の向上や競争力の強化を図り、持続可能な成長を実現することが期待できます。
まとめ|物流DXを成功させるには
DX成功のためには、プロジェクトを実行するための人材の確保や経営陣の協力など、組織を上げて取り組むことが不可欠です。
システム導入後においても、従業員が適正にシステムを利用できるよう、マニュアルを作成したり、教育の機会を設ける必要があるでしょう。
また、DX推進の担当者は最新の情報技術のトレンドを把握することが求められます。企業のDX化は構造的な変革が求められるため、容易では無いですが、企業の競争力を高めるためには欠かさない取り組みです。今回の内容を参考にして、ぜひ導入を検討してください。