ウェルビーイング経営と健康経営は、どちらも従業員がより良い状態で働ける環境を考える取り組みであり、似た意味で使われることがあります。しかし、両者には明確な違いがあります。
健康経営が従業員の健康管理を経営的な視点で捉えるのに対し、ウェルビーイング経営では、健康に加えて働き方や人間関係、成長なども含めて幅広く考えます。
本記事では、ウェルビーイング経営と健康経営について、対象範囲や取り組みの違い、共通する考え方を整理します。そのうえで、自社ではどこから取り組むべきか、両方をどのように進めればよいかまで解説します。違いを理解し、自社の取り組みを見直す際にお役立てください。
▼記事のポイントまとめ
ウェルビーイング経営と健康経営の違いは、主に確認する範囲にあります。健康経営は従業員の健康管理を経営課題として扱うのに対し、ウェルビーイング経営では、健康だけでは捉えにくい働き方や人間関係などにも目を向けます。
両者を比較すると、次のように整理できます。
比較項目 | 健康経営 | ウェルビーイング経営 |
|---|---|---|
主に見る範囲 | 心身の健康や、健康に関わる勤務環境 | 心身の健康に加え、人間関係、働き方、成長など |
取り組みの例 | 健康診断、健康増進、長時間労働への対応など | 健康支援に加え、対話、社内のつながり、成長支援など |
確認方法の例 | 健康診断、労働時間、休職など | サーベイ、面談、施策の利用状況なども組み合わせる |
制度上の位置づけ | 健康経営優良法人認定制度などがある | 本記事では、特定の認定制度ではなく、従業員が良好に働ける状態を広く考える視点として扱う |
自社での判断軸 | 健康面や勤務環境に課題があるか | 健康以外の職場課題まで確認する必要があるか |
ここで大切なのは、「健康経営か、ウェルビーイング経営か」という二択にしないことです。勤務時間や健康面に明確な課題があるなら、まずその対応を優先します。健康施策を進めても相談のしにくさや成長への不安が残るなら、確認する範囲を広げてください。
名称の違いから施策を選ぶのではなく、自社の課題に対して、どこまで見直す必要があるのかを判断することがポイントです。
見る範囲には違いがありますが、健康経営とウェルビーイング経営には共通する考え方もあります。どちらも制度を用意して終わるのではなく、働く環境を見直し、実施後の変化を確認しながら改善を続けます。
主な共通点は次の3つです。
ウェルビーイング経営で人間関係や成長まで扱う場合も、心身の健康を軽視するわけではありません。健康に働き続けることは、そのほかの職場課題を考えるうえでも土台になります。
そのため、勤務時間や業務量に無理がないか、休暇を取りやすいかといった点は、どちらの取り組みでも確認しておきたい内容です。
共通しているのは、健康を本人だけの自己管理に任せず、職場側で変えられる条件にも目を向ける点です。
ただし、従業員の健康状態そのものを企業側で判定するわけではありません。専門的な判断が必要な場合は専門職へつなぎ、企業側では勤務環境の見直しを進めてください。
本人へセルフケアを求めるだけでは、仕事の進め方に原因がある問題は解消できません。特定の人へ業務が集中している、休暇を取りにくいといった状況なら、職場側の対応が必要です。
ここで見るのは、病気の有無ではなく、業務量や勤務体制など、企業側で変更できる条件です。本人の意識だけを変えようとせず、働きにくさを生んでいる原因を切り分けてください。
健康経営とウェルビーイング経営のどちらでも、従業員本人への支援と、職場側の見直しを分けて考えます。
施策を実施しただけでは、自社の課題に合っていたかは分かりません。改善したい内容に応じて、勤怠データやサーベイ、面談で得られた声などを確認します。
ただし、一つの数字だけで原因を決めないことが大切です。例えばサーベイのスコアが低くても、その背景が業務量なのか、人間関係なのかによって対応は変わります。
実施した施策が使われているか、その後に当初の課題が変わったかを分けて確認してください。 結果を次の見直しにつなげるところまでが、両者に共通する進め方です。
どこから取り組むかは、名称ではなく自社で起きている問題から決めます。健康に働くための勤務環境に課題があるなら、その部分を先に見直します。健康面への施策を進めても別の働きにくさが残る場合は、ウェルビーイングの視点まで範囲を広げてください。
判断の入口は次のとおりです。
自社で見えている状態 | 最初に確認したい領域 | 取り組みの方向性 |
|---|---|---|
長時間労働や休暇取得など、勤務環境に課題がある | 労働時間、休暇、業務量など | 健康に働くための職場環境を見直す |
健康施策はあるが、相談や成長などの課題が残っている | 人間関係、働き方、成長など | ウェルビーイングの視点まで確認範囲を広げる |
複数の領域に課題がある | 影響の大きさ、緊急性、原因 | 優先順位を決め、一度にすべてへ取り組まない |
長時間労働が続いている、休暇を取りにくいなど、健康に働き続けるうえで明確な問題がある場合は、日々の働き方から確認します。
例えば業務が一部の従業員へ偏っているなら、交流施策を増やすより、仕事の分担や人員配置を見直す方が原因に近い対応です。
まずは健康に働くための土台を整え、そのうえでほかの職場課題へ範囲を広げてください。
なお、健康上の不安や症状について企業が診断するわけではありません。必要な場合は産業医などの専門職へつなぎ、企業側では勤務上の配慮や職場環境を検討します。
健康診断や休暇制度を整えていても、相談のしにくさや成長への不安が残ることがあります。その場合は、健康施策を追加するだけでは問題に届きません。
例えば「今後どのように成長できるのか分かりにくい」という声が出ているなら、上司との対話や仕事の任せ方を確認する方が課題との関係は明確です。
健康面への対応を進めても働きにくさが残るなら、何が原因なのかを確認し、人間関係や成長などへ対象を広げてください。
実際の職場では、勤務環境と人間関係など、複数の問題が同時に見つかることもあります。この場合も、「健康経営から」「ウェルビーイング経営から」と分ける必要はありません。
まず見るのは、従業員への影響が大きいか、対応を急ぐ必要があるかです。業務量の偏りと相談のしにくさが同時にあるなら、どちらがより大きな負担につながっているのかを確認してください。
複数の課題があるときは、施策の始めやすさではなく、影響の大きさと緊急性から優先順位を決めます。
部署や職種によって状況が異なる場合は、全社平均だけで判断せず、差が大きい場所から確認すると課題を絞りやすくなります。
両方を進めるときも、最初から施策を増やす必要はありません。現在の職場を確認し、優先する課題を決めてから、原因に合った施策を実施します。実施後は結果を確認し、必要に応じて内容を見直します。
進め方は次の4ステップです。
最初に確認するのは、導入したい施策ではなく、現在どこに問題があるかです。勤務時間や休暇取得などのデータに加え、人間関係や仕事への感じ方はサーベイや面談から確認します。
ここでも、一つの数字だけで原因まで決めないようにしてください。勤怠データと従業員の声を組み合わせることで、職場側で見直すべき内容を絞りやすくなります。
課題が複数見つかったら、すべてへ同時に対応するのではなく、先に取り組むものを決めます。
従業員への影響が大きいか、対応を急ぐ必要があるか、特定の部署だけに集中しているかを確認してください。施策の始めやすさだけで選ぶと、実際に困っていることと対応がずれる可能性があります。
まず原因に近く、優先度の高い課題へ対象を絞ります。
優先課題が決まったら、その原因に近い施策を選びます。休暇を取りにくい原因が業務の偏りなら、健康イベントを増やすより仕事の分担を見直す方が直接的です。
上司へ相談しにくいことが課題なら、交流施策を増やす前に、1on1の運用や相談経路を確認します。
「健康経営向け」「ウェルビーイング向け」と施策を分類するより、何を改善したいのかを基準に選んでください。
施策を始めた後は、参加人数や実施回数だけで判断せず、最初に設定した課題に変化があったかまで確認します。
例えば1on1の実施率が高くても、相談のしにくさが変わっていなければ、回数ではなく内容や運用を見直す必要があります。一方、数値が変わっても、同じ時期の人員配置や業務変更など別の影響がないかも見てください。
結果は施策の成否を一度で決めるためではなく、次に何を続け、何を変えるかを判断する材料として使います。
施策は、制度として用意しただけでは日々の仕事に定着しません。従業員が目的を理解し、普段の業務の中で無理なく参加できる状態まで考える必要があります。
定着させる際に確認したいポイントは次の4つです。
新しい制度や取り組みは、利用方法だけを知らせても、「なぜ行うのか」が分からなければ参加につながりにくくなります。
例えば1on1を始めるなら、実施回数だけでなく、業務上の相談や今後の成長について話す場なのかなど、目的を共有します。
従業員へ参加を求める前に、会社として何を見直したい施策なのかを伝えてください。
目的が伝わっていても、参加するための手間が大きければ後回しになりやすくなります。特に店舗や工場など、常にPCを使わない職場では、オフィス勤務だけを前提にした運用では情報が届きにくくなります。
そのため、普段使っている端末や既存の業務導線から参加できないかを確認してください。新しい施策だけのために別の作業を増やさないことも、継続しやすくするポイントです。
1on1や勤務状況の確認など、管理職が関わる施策では、何を管理職が対応し、どこから人事や専門職へつなぐのかを先に決めます。
健康上の相談を受けた場合も、管理職が診断や治療方針を判断するわけではありません。必要な相談先へつなぎ、管理職は業務上の負担や勤務上の相談など、自身が担当する範囲で対応します。
管理職へ施策を任せるだけでなく、対応する範囲と相談先まで共有してください。
参加人数や利用率は、施策が従業員に届き、利用されているかを見るための数字です。ただし、利用率が高いだけで健康状態やウェルビーイングが改善したとは判断できません。
例えばサーベイの回答率が上がった場合、それは回答しやすくなったことを示す材料にはなりますが、もともとの職場課題が改善したかは別に確認する必要があります。
施策が使われているかと、改善したかった課題が変わったかを分けて確認してください。
健康経営とウェルビーイング経営を区別するのは、どちらか一方を選ぶためではありません。自社で起きている問題に対して、健康面を優先するのか、人間関係や成長まで確認するのかを判断しやすくするためです。
まず勤務時間や休暇など、健康に働くための環境に問題がないかを確認してください。そのうえで、健康施策を進めても相談のしにくさや仕事への納得感が残るなら、確認する範囲を広げます。
また、健康に関する専門的な判断は企業だけで抱え込まず、必要に応じて産業医などへつなぐことも大切です。企業側では、業務量や勤務体制など、自社で変えられる部分に目を向けます。
最初からすべてを変える必要はありません。まずは自社ですでに持っている勤怠データやサーベイ、面談の内容から、優先して見直したい課題を一つ決めてください。その課題に合うところから改善を重ね、従業員が安心して力を発揮できる職場づくりにつなげていきましょう。
健康経営やウェルビーイングに関する施策では、内容を決めた後に「どう従業員へ届けるか」「どう継続するか」という運用上の課題が残ることがあります。
TUNAG(ツナグ)は、「つながり・貢献の見える化・働く意義」を日常のコミュニケーションの中に根づかせ、従業員の働きがいを高める社内アプリです。タイムラインによる情報発信やサンクスカード、申請、サーベイなどを一つの環境で運用できます。健康診断や医療的な支援を提供するのではなく、企業が決めた社内施策を従業員へ届け、日常の中で運用する部分を支えることが特徴です。