メタ認知とは?ビジネスでの活用メリットやトレーニング方法を紹介
ビジネスシーンで近年注目されている能力に、メタ認知と呼ばれるものがあります。従業員のメタ認知を高めれば、企業としてさまざまなメリットを得られるでしょう。メタ認知が高い人の特徴やトレーニング方法など、メタ認知について知っておきたい基礎知識を紹介します。
メタ認知とは
そもそもメタ認知とはどのような能力を指すのでしょうか。まずは、言葉の意味と重視される背景を見ていきましょう。
自らの認知を認知すること
メタ認知とは、自分が何かを認知している状態を客観的に認知することです。自分の行動や思考をより高次から把握して活動に生かすことを、メタ認知能力といいます。メタ認知の「メタ(meta)」とは、「高次の」「より上位の」を指す接頭語です。
もともとメタ認知は認知心理学の概念ですが、近年はビジネスだけでなく教育現場でも重要な考え方として認識されています。
メタ認知は、古代ギリシアの哲学者であるソクラテスの「無知の知」を連想させます。「自分が知らないことを自覚する」を意味する無知の知には、「知ったつもりにならず、分からないことは分からないと認めよ」とのメッセージが込められています。
メタ認知が重視される背景
状況が変動し続け先行きが不透明なVUCA時代では、これまでの常識や成功パターンが通用しません。物事をより広い視野で捉えることが重要です。
過去の経験を生かして着実に業務を遂行できる能力に加え、自分で考えて行動し柔軟な発想で新たなアイデアを生み出せる能力が求められます。
自分で考えて動くためには自分自身を深く知ることが重要であり、自分の行動や思考を客観的に把握できるメタ認知が求められているのです。
メタ認知の種類
メタ認知には、メタ認知的知識とメタ認知的活動の2種類があるとされています。それぞれの具体的な意味を押さえておきましょう。
メタ認知的知識
メタ認知的知識とは、メタ認知能力を発揮する際に影響を及ぼす知識のことです。メタ認知的知識には、次の3種類があるとされています。
- 人間(person):人間が本来持っている特性に関する知識
- 課題(task):経験から得られた課題そのものに関する知識
- 戦略(strategy):課題を解決するための方法や戦略に関する知識
どの程度のメタ認知的知識があるかによって、メタ認知による改善活動の結果が変わります。
メタ認知的活動
メタ認知能力を発揮することをメタ認知的活動といい、次の2種類に分かれています。
- メタ認知的モニタリング:自分の認知行動を観察する
- メタ認知的コントロール:メタ認知的知識とモニタリングの情報から行動の改善を図る
例えば、トラブルが発生して対処法を考える際にメタ認知が働くと、次のような思考が生まれます。
- メタ認知的モニタリング:自分では対処できそうにないが、彼ならできるかもしれない
- メタ認知的コントロール:自分だけで行動せず、まずは彼に相談してみよう
このように、メタ認知的技能が適切に発揮されれば、状況に応じた最適な行動を起こせるようになります。
メタ認知が高い人の特徴
自分自身を客観的に認知できる人は、どのような特徴があるのでしょうか。メタ認知が高い人に共通する特徴を紹介します。
行動における具体的な目標を設定できる
メタ認知が高い人は、具体的な目標を設定して行動できます。自らの特性や能力を客観的に分析し、行動する理由を論理的に導き出しているためです。
逆に自分の現状を認識できていない人は、なんとなく行動したり気分で決めたりしがちです。具体的な目標も設定できないため、何のための行動なのかも分からなくなります。
メタ認知が高い人は常に目標を持って行動し、目標を達成したらより高いレベルの目標を設定します。自分の行動に自信を持ち、成長意欲が高いことも特徴です。
相手の行動や質問の意図を理解できる
自分の認知だけでなく他者の考えを分析できることも、メタ認知能力が高い人の特徴です。自分のメタ認知のように正確な分析はできないものの、同じ思考を他者にも当てはめることで、より精度の高い想像を行えます。
相手からの質問に対してもメタ認知の思考を働かせるため、相手の意図をくんだ適切な返答ができます。自分の言動を調整しながら、誰とでも良好な人間関係を構築することが可能です。
一方、メタ認知が低い人は、他人の行動や発言の意図をくみ取るのが苦手です。人間関係でも苦労しやすいでしょう。
従業員のメタ認知を高めるメリット
教育の現場で重視されていることからも分かるように、メタ認知能力を高めることが人を育てる手法として大きな注目を集めています。従業員のメタ認知を高めると、どのような効果を得られるのでしょうか。
自分の強みや弱みを知れる
メタ認知が高まると自分を客観的に分析できるため、自分の強みや弱みを把握できます。自分の強みを知ることは、パフォーマンスの最大化やキャリアアップの実現でも重要なことです。
また、メタ認知は業務を正確に進める上でも役立ちます。「記載ミスがないか確認しよう」と考えるのは、「不注意によるミスがあり得る」ことが分かっているからです。
上司の話を聞きながらメモを取るのも、「聞いただけでは忘れてしまう」という弱みの認識から生じる行動です。
感情や価値観に左右されにくくなる
メタ認知の力を借りると、自分の感情もコントロールできます。感情は出来事の捉え方次第で変化するためです。
大きな失敗をした際、「取り返しがつかないことをした」と捉えるより、「次で挽回しよう」と捉えた方がマイナスの感情を抑えられます。メタ認知では、後者を選んだ方が自分にとって良いと分かるのです。
また、メタ認知が高いと価値観にも左右されにくくなります。自分と価値観が全く同じ人はいないことが分かっているためです。
メタ認知のトレーニング方法
メタ認知はトレーニングで鍛えることが可能です。メタ認知を高める具体的な方法を紹介します。
セルフモニタリング
セルフモニタリングとは、無意識な行動や考え方を客観的に観察し、課題を発見する方法です。セルフモニタリングで発見した課題は、コントロールと呼ばれる方法で改善します。
例えば、毎日気が付いたら残業している場合、定時までに仕事を終わらせれば残業せずに済むことが分かります。「業務の効率化を図る」「仕事を持ち帰る」「仕事が終わらなくても定時に上がる」など、解決策はさまざまです。
コントロールで考え出される解決策は1つとは限りません。できるだけポジティブになれる解決策を選択するのが、セルフモニタリングとコントロールのポイントです。
マインドフルネス
マインドフルネスとは、自分の現状を評価・判断せずそのまま受け止めていることです。過去の嫌な記憶や未来への不安から抜け出し、心を「今」に向けている状態を指します。
マインドフルネスの状態になることで、メタ認知に必要な「認知の認知」を行いやすくなります。
心をマインドフルネスの状態にする効果的な方法が瞑想です。意識を集中する「呼吸の瞑想」や、周囲に気を配る「音に耳を澄ます瞑想」などがあります。
従業員のメタ認知を高めて組織力を強化
メタ認知とは、自分の認知を客観的に認知することです。従業員のメタ認知を高めれば、行動の具体的な目標を設定したり、相手の意図を理解したりできるようになります。
メタ認知はトレーニングで高めることが可能です。従業員のメタ認知を鍛える施策を講じ、先行きが不透明なVUCA時代を乗り切るための組織力をつけましょう。