コーチングとティーチングは使い分けが重要!効果を高めるコツも解説
コーチングとティーチングは、意味を混同しやすい人材育成手法です。それぞれに異なる特徴があるため、違いを理解して上手に使い分けましょう。コーチングとティーチングの特徴や違い、効果を高めるためのポイントを解説します。
コーチングとティーチングの意味
コーチングとティーチングは、いずれも相手の成長を促す側面を持つ手法です。ただし、育成の目的や答えの存在場所がそれぞれ違います。まずは、コーチングとティーチングそれぞれの意味を押さえておきましょう。
コーチングとは
コーチングは相手の目標達成を支援する人材育成の手法です。相手が自ら答えを導き出せるようにサポートすることが、コーチングの本質といえます。
ただし、「自分で考えなさい」と一方的に指示するのは、コーチングではありません。指導する側とされる側が双方向の対話を行い、コミュニケーションを通して相手の目標達成の手助けを行うのがコーチングです。
相手の意見にしっかりと耳を傾けることや、成果を出した場合に褒めてあげることが、コーチングを成功させるための重要なポイントです。
ティーチングとは
ティーチングは指導者が持つ知識やスキルを相手に教えることです。ビジネスにおいては、新人にビジネスマナーを教えたり中途採用者に業務のやり方を伝授したりすることが、ティーチングの代表例となります。
学校の先生と生徒の関係をイメージすれば、より分かりやすいでしょう。先生が生徒に学問を教えることこそ、まさにティーチングが行われている様子を指しています。
ティーチングのコミュニケーションは、指導する側からされる側への一方的なものです。相手が知らないことをなくすのが、ティーチングの主な目的といえます。
コーチングとティーチングの違い
コーチングとティーチングはさまざまな面が異なっています。以下の表で違いを確認しましょう。
コーチング | ティーチング | |
答えの存在場所 | 指導を受ける側自身の中にある | 指導者が持っている |
目的 | 自発性を引き出し、スキルアップを促進 | 問題を解決し、知識やスキルを習得させる |
指導方法 | サポートや励まし、対話を通じた支援 | 明確な指示や命令、教える行為 |
コミュニケーションタイプ | 双方向のやり取りを重視 | 指導者からの一方的な説明 |
関係性 | 対等 | 指導を行う側が上 |
上記の違いをしっかりと理解し、目的に応じて使い分けることが大切です。
コーチングとティーチングに似た言葉
人材育成手法にはコーチングとティーチングに似たものも存在します。カウンセリング・メンタリング・トレーニングの意味を理解し、適切な育成を行いましょう。
カウンセリングの意味
カウンセリングとは、相手の悩みを解消するために行われる手法です。主に相談者の精神的な悩みにアプローチし、相手と一緒に悩みの解消を目指します。
コーチングと同じく、双方向の対話を重視する点は共通していますが、目的が異なります。コーチングが相手の成長や目標達成をサポートすることを重視するのに対し、カウンセリングの目的は、相手の精神的な安定や心の健康を回復させることです。
そのため、カウンセリングでは対話を通して相手の気持ちに寄り添い、共感するスキルが求められます。従業員のメンタルヘルスケアを目的とした企業内カウンセリングでは、専門的な知識を持つカウンセラーに依頼するケースが一般的です。
メンタリングの意味
相手の課題解決や悩み解消を1対1でサポートする手法がメンタリングです。一般的には年齢やキャリアが近い先輩がメンターとなって指導を実施します。
対話を通して相手の成長を促進するという意味では、コーチングに似た手法といえるでしょう。ただし、コーチングでは積極的な助言や指示を行わないのに対し、メンタリングでは必要に応じて積極的にアドバイスを行います。
トレーニングの意味
訓練を意味するトレーニングは、ティーチングに近い手法です。ビジネスにおいては、主に相手のスキルアップを指導者が引っ張る形で実施されます。
コーチングとティーチングには指導する側とされる側が存在する一方、トレーニングは1人で行うことも可能です。指導者不在でも実施できる点において、コーチングとトレーニングとは違うともいえます。
コーチングの特徴
コーチングとティーチングには、それぞれにメリット・デメリットがあります。まずは、コーチングのメリット・デメリットを見ていきましょう。
コーチングのメリット
コーチングの大きなメリットは、相手の自発的な行動を促せることです。適切なサポートにより相手が自分で答えを引き出す力を習得できるため、仕事においても自分で考えて行動するようになるでしょう。
目標達成に向けて自分で考えた行動を実践するため、モチベーションが高まりやすい点もコーチングの大きな利点です。自分の意思で行動することにより、達成感ややる気が自然と高まるでしょう。
また、コーチングの過程では、相手が自己理解を深めることが期待できます。この中で、自分でも気づかなかった強みや能力を発見するケースもあります。個性を引き出し、それを成長や目標達成に結びつけられるのがコーチングの魅力です。
コーチングのデメリット
一方で、コーチングにはいくつかの課題もあります。そのひとつが、時間を要する点です。コーチングは対話を重ねながら相手の気づきを促すため、成果が出るまでに時間がかかります。特に、短期間で結果を求める場面や、人材を急速に育成する必要がある場合には適していません。
また、1対1で実施するコーチングは、集団を相手にする育成手法に比べ非効率的です。結果が指導者のスキルに左右されることも多く、指導者のコーチングスキルも鍛えなければなりません。
さらに、結果はコーチングを行う指導者のスキルに左右されやすいという側面もあります。効果的なコーチングを実践するには、指導者自身が十分なトレーニングを受け、高いスキルを習得していることが求められるため、指導者の育成にも時間とコストがかかる可能性があります。
ティーチングの特徴
コーチングの特徴を理解できたら、ティーチングのメリット・デメリットも理解しておきましょう。実際に育成手法を選択する際の参考になるはずです。
ティーチングのメリット
ティーチングの最大のメリットは、短期間で効率的に知識やスキルを共有できる点です。一度に集団を指導することが可能で、結果を迅速に出したい場合に適した手法といえます。特に、全社員に共通のルールや基準を浸透させる際には大きな効果を発揮します。
また、ティーチングは複数の従業員に同じ知識やスキルを習得させられます。ルールの統一を徹底できることやチームとして同じ方向を向かせられることもメリットです。
指導者に求められるスキルレベルがコーチングほど高くない点も特長です。指導者は相手に答えを教えればよいため、指導者ごとのスキル差が結果に大きく影響しにくく、導入のハードルが低いのも利点といえるでしょう。
ティーチングのデメリット
一方で、ティーチングには自主性を育てにくいという課題があります。指導者が常に答えを与えるため、相手が自分で考える力を鍛える機会が少なくなり、「自分で答えを導き出す」というスキルが身につきにくくなる恐れがあります。
画一的な指導になる点もティーチングのデメリットです。従業員ごとに指導のやり方が変わるわけではないため、大きく成長する可能性がある従業員の芽をつぶしてしまう恐れもあります。
また、指導者のスキル差が結果に影響しにくいとはいえ、指導者が十分な知識や経験を持っていない場合、指導内容の質が低下する可能性があります。その結果、従業員の習得レベルが期待に届かず、組織全体の成長が停滞してしまうリスクもあるでしょう。
これらのデメリットを踏まえ、ティーチングは短期的な育成や基本的なスキルの習得に向いている一方で、長期的な成長を目指す際には他の手法と組み合わせることが重要です。
コーチングとティーチングの使い分け
コーチングとティーチングは特徴が異なるため、使い分けることが大切です。コーチングとティーチングを使い分けるポイントについて解説します。
コーチングが向くケース
コーチングは、相手にある程度の知識や経験があることを前提とした手法です。そのため、業務に一定の理解がある中堅従業員やリーダー候補者への教育に適しています。たとえば、業務改善のアイデアを引き出したり、リーダーシップの育成を図ったりする際には、コーチングを活用することで、自ら考え行動できる人材を育成する効果が期待できます。
一方で、新人社員などが対象の場合は、知識や経験が不足しているため、適切な答えを導き出すのが難しく、モチベーションが下がる恐れがあります。そのため、コーチングよりも、ティーチングを優先する方が適している場合が多いでしょう。
また、コーチングは対話を重ねることで、長期的な成長を促進する手法です。キャリア形成やマネジメントスキルなど、即効性よりも継続的な成長が重要な分野において効果的です。急を要しない内容や、時間をかけて育てたいテーマに対してコーチングを選ぶのが適切です。
ティーチングが向くケース
自社における知識や経験が乏しい相手には、ティーチングが向いています。新入社員や中途採用者には、自社のビジョンや業務の進め方をティーチングで教えるのが効果的です。
緊急性が高い仕事を任される従業員にも、コーチングではなくティーチングで教育しましょう。トラブル・クレーム対応やエラーの修正などは、時間をかけて教育しているとさらなるトラブルを招きかねないため、ティーチングで教えるのが適しています。
さらに、ティーチングはチーム全体に統一的なルールや基準を伝える際にも役立ちます。全員が同じ理解を持つ必要がある業務プロセスや手順については、効率的に教育を進められるティーチングが向いています。
コーチングとティーチングのポイント
コーチングとティーチングの選択が正しくても、適切なやり方で進めなければ効果が半減してしまいます。コーチングとティーチングの効果を高めるためのコツを把握し、実際の指導に生かしましょう。
コーチングの効果を高めるためのコツ
コーチングを効果的に行うには、指導者がいくつかのポイントを意識することが重要です。相手が自ら考え、行動できるようサポートするためには、適切なアプローチと環境づくりが求められます。以下のコツを参考に、コーチングの効果を最大限に引き出しましょう。
辛抱強く対話を続ける
コーチングでは、相手が自分で答えを見つけるプロセスを重視します。そのため、すぐに結果を求めず、相手が考えを深められるよう辛抱強くサポートすることが大切です。答えが出ない場合は、質問の切り口を変えたり具体例を示したりして、相手の思考を引き出す工夫をしましょう。
明確な目標を設定する
コーチングは目標が曖昧なままでは効果を発揮しにくい手法です。指導を始める前に、相手と一緒に具体的な目標を設定することが欠かせません。「業務を改善したい」ではなく、「顧客対応の満足度を10%向上させる」といった測定可能な目標を設定することで、進むべき方向が明確になります。
相手の意欲を見極める
コーチングは、相手が目標に向けて意欲的であることが前提です。意欲が低い状態で進めても効果が得られにくいため、まずは相手がコーチングに取り組む準備が整っているかを確認しましょう。相手がやる気を持てるような働きかけを行い、前向きな姿勢が見られる場合にコーチングを実施するのがポイントです。
ティーチングの効果を高めるためのコツ
ティーチングは、相手に知識やスキルを効率的に伝える手法ですが、ただ一方的に教えるだけでは十分な効果を得ることはできません。より効果的なティーチングを行うために、次のポイントを意識しましょう。
視覚的な工夫を取り入れる
図や表、具体例を使うことで、相手にわかりやすく情報を伝えることができます。特に難しい概念や手順を説明する際には、視覚的な補助資料を活用することで、理解を深めやすくなります。
定期的に理解度を確認する
ティーチングでは、相手がしっかり内容を理解しているか確認することが重要です。定期的にテストやフィードバックセッションを実施し、指導内容が定着しているかを把握しましょう。不足があれば補足説明を行い、相手に寄り添った指導を行います。
相手に応じた指導方法を選ぶ
相手のレベルや状況に応じて指導方法を調整することが大切です。初心者には基礎的な内容を重点的に教え、経験者には応用的な課題を与えるなど、相手に合わせた指導を心がけることで効果を高めることができます。
コーチングとティーチングを使い分けよう
相手の成長を促すコーチングとティーチングは、特徴が全く異なる人材育成手法です。コーチングがサポートを重視するのに対し、ティーチングでは最初から答えを教える指導を行います。
効果を実感できるまでの期間や育成目的、コミュニケーションタイプなども、コーチングとティーチングで大きく異なる部分です。
それぞれに向いたシーンがあるため、コーチングとティーチングの特徴をしっかりと理解した上で、状況に応じて使い分けましょう。