フリーアドレスとは?目的や導入方法、導入後の課題について解説

近年、多くの企業が働き方の多様化に対する対応やコミュニケーションの希薄さを課題としています。その改革の一環として注目を集めているフリーアドレスですが、効果を最大限に引き出すためには、適切な理解と準備が不可欠です。本記事はフリーアドレスの導入を検討している企業に向けて、フリーアドレスの基本的な概念から導入のメリット、課題、そして成功のポイントまでを詳しく解説します。

フリーアドレスの基本知識

近年の日本企業はダイバーシティが重視されており、さまざまな人が働く環境をどのように整えるかが課題となっております。その中でも、コミュニケーションの一環として、フリーアドレスという手法が注目を集めています。

フリーアドレスの導入を検討している企業に向けて、まずはフリーアドレスの基本的な概念や背景、そして類似概念との違いについて詳しく解説します。

業務内容に合わせて就労場所を選択できる方式

フリーアドレスとは、従業員が固定の席を持たず、その日の業務内容や気分に応じて自由に席を選択できるオフィスレイアウトのことを指します。

この方式では、オフィス内にさまざまなタイプの作業スペースを設け、従業員が自身の業務に最適な環境を選んで仕事をすることができます。

具体的には、集中して作業したい時は静かなブースを、チームでのディスカッションが必要な時はオープンなスペースを選ぶといった具合です。

このような柔軟性は、従業員の生産性向上やクリエイティビティの促進につながると考えられています。

フリーアドレスが注目される背景

フリーアドレスが注目される背景には、働き方改革の推進や、テクノロジーの進化による働く場所の多様化があります。

特に、新型コロナウイルス感染症の流行以降、リモートワークが一般化し、オフィスの役割が再考されるようになりました。

企業は、オフィスを単なる仕事をする場所としてではなく、コラボレーションや創造性を促進する場としての価値を見いだそうとしています。

加えて、多様な人間が働く環境下では、コミュニケーションが希薄化しがちです。そのため、オンライン飲み会やイベントなど、会社が提供する従業員同士の交流する場としても注目されるようになりました。

フリーアドレスは、このような新しいオフィスの在り方を実現する一つの手段として、導入する企業が増えているのです。

ABWとの違い

フリーアドレスと似た概念にABW(Activity Based Working)がありますが、両者には重要な違いがあります。

ABWとは、従業員が業務内容や目的に応じて最適な働く場所、時間、ツールを自由に選択できる働き方のコンセプトです。

両者の違いは、フリーアドレスが固定席を設けずに自由にオフィス内で働ける制度であるのに対し、ABWは、業務内容や目的に応じて働き方を選ぶこと、そしてオフィス内だけではなく、自宅やカフェなどオフィス外も範囲としている点が大きな違いです。

つまり、ABWはフリーアドレスの概念を含みつつ、より広範囲な働き方の改革を目指しているといえるでしょう。

フリーアドレス導入のメリット

実際に、オフィス内で好きな席を選べるとなった場合に従業員にはどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、フリーアドレス導入によって得られる主要なメリットについて解説します。

スペースコストの削減と活用

フリーアドレスの導入により、オフィススペースの効率的な活用が可能になります。なぜなら、通常の働き方の場合は従業員一人一人に働くスペースやデスク、パソコンなどの機材を用意する必要がありますが、フリーアドレスの場合は不要だからです。

そのため、従来の働き方ではオフィスのレンタル料やスペースの維持費、機材費などのコストが大きくかかってしまいますが、フリーアドレスの場合、従業員の固定スペースがなくなるため、小さめのオフィスで問題なく、維持費も抑えられます。

さらに、余剰となったスペースを会議室やリラックススペースに転用することで、従業員の満足度向上にもつながる可能性もあります。

このように、従業員一人一人にかかっていたスペースコストを削減できる点や、空いたスペースを他の目的に活用できることが、フリーアドレスのメリットと言えるでしょう。

社内全体のコミュニケーションの活性化

固定席の場合、どうしても同じ部署の人間とのみ交流する傾向がありますが、フリーアドレスではさまざまな部署の人と隣り合わせになる機会が増えます。

仲の良い人間だけではなく、他部署の人間や働き方の異なる人と接することでいい刺激になるだけでなく、新しいプロジェクトを始めるに当たっても、連携が取りやすくなるというメリットもあるでしょう。

また、従業員が経営層と自然に会話する機会が増えることで、組織全体の風通しが良くなることにも期待が持てます。

このようにフリーアドレスは、部署や階層を超えたコミュニケーションを促進する効果があります。

主体的に考えて動くようになる

フリーアドレスは、従業員の自律性と主体性を促進します。自分で働く場所を選択する必要があることから、従業員は自身の業務内容や働き方を明確に意識するようになります。

例えば、一人で集中したい仕事がある場合は静かなスペースで働くことを選択し、逆に誰かと相談しながら進めていく仕事では、相談相手と席が近くなるようあらかじめ連絡を取り合って場所を選択するなどが考えられます。

このように、フリーアドレスの場合は漠然と席を決めるのではなく、明確な目的と働き方を選択することで、従業員が主体的に考えて動くようになり、その結果生産性の向上にも寄与することが考えられるのです。

フリーアドレスの課題やデメリット

フリーアドレスには多くのメリットがある一方で、導入に際しては慎重に検討すべき課題やデメリットも存在します。フリーアドレス導入によって生じる可能性のある問題点について解説します。

コミュニケーションが閉鎖的になる可能性も

フリーアドレスは、部署を超えたコミュニケーションを促進する一方で、逆に閉鎖的なコミュニケーションを生み出す可能性もあります。

特に、仲の良い従業員同士が待ち合わせをして、いつも同じメンバーで集まって仕事をするようになると、他の従業員とのコミュニケーションがかえって阻害されるケースがあります。

ケースとして考えられるのは、フリーアドレス導入後に特定のグループが常に同じエリアを占有するようになり、部署間の壁がかえって強くなってしまったというような場合です。

このような状況を防ぐために、定期的な席替えや異なる部署のメンバーが協働するプロジェクトの推進など、意図的な介入が必要になる場合があります。

従業員の居場所を把握しにくい

フリーアドレスでは、従業員が日々異なる場所で仕事をするため、誰がどこで仕事をしているのかを把握することが難しくなります。これは、特に管理職にとって大きな課題となる可能性があります。

例えば緊急の会議や相談が必要な際に、関係者の所在を確認するのに時間がかかり、業務効率が低下することが懸念点として考えられるでしょう。

この問題に対処するためには、デジタルツールを活用した位置情報の共有システムの導入や、チーム内でのコミュニケーションルールの確立が重要になってきます。

生産性が落ちる可能性がある

フリーアドレスでは、毎日の席探しや荷物の移動、必要な資料の準備などに時間がかかり、結果として生産性が低下する可能性があります。特に、集中を要する業務や、大量の資料を必要とする仕事に従事している従業員にとっては、大きな負担となる可能性があります。

また、効率性についても考えなければなりません。固定席の場合、従業員は与えられたデスクに必要な書類や資料を置いておけるため、仕事への取りかかりもスムーズです。しかし、フリーアドレスの場合は席選びや資料の持ち運びなどで時間を使ってしまい、労働時間が減ってしまうことも予想されます。

この問題を解決するためには、十分な収納スペースの確保や、デジタル化の推進、そして従業員のニーズに合わせた多様な作業環境の提供が重要です。

フリーアドレス導入を成功させるポイント

フリーアドレスの導入を成功させるためには、単にレイアウトを変更するだけでなく、組織全体での取り組みが必要です。ここでは、フリーアドレスを効果的に導入し、そのメリットを最大限に引き出すためのポイントについて解説します。

従業員の位置情報を可視化できるツールの導入

フリーアドレスにおける重要な課題の一つは、従業員の所在把握です。この問題を解決するために、位置情報を可視化できるデジタルツールの導入が効果的です。

多くの企業で活用されている方法として、社内専用のスマートフォンアプリやWebアプリケーションの導入が挙げられます。これらのツールでは、従業員が自分の居場所を簡単に登録・共有でき、フロアマップ上で各従業員の位置をリアルタイムで確認することができます。

また、在席状況(会議中、在席中など)も表示される機能を備えているケースが多いです。

このようなシステムの導入により、緊急の相談や会議の際の人員招集が容易になり、業務効率が大幅に向上する可能性があります。

さらに、単なる位置情報の共有だけでなく、空きデスクの状況確認や予約機能を備えたツールも多く、フリーアドレスの運用をよりスムーズにすることが可能です。

ペーパーレス化の推進

フリーアドレスを効果的に機能させるためには、ペーパーレス化の推進が不可欠です。大量の書類や資料を持ち歩く必要があると、フリーアドレスのメリットが大きく損なわれてしまいます。

ペーパーレス化を進めるには、社内文書の電子化やタブレット端末の活用、クラウドストレージの導入などが効果的です。また、完全なペーパーレス化が難しい場合でも、必要最小限の個人ロッカーを設置し、どうしても必要な書類や私物を保管できるようにすることで、従業員の負担を大きく減らすことができるでしょう。

デジタルで交流する機会を創出する

同部署の人間や上司と離れて働くことで、コミュニケーションがかえって希薄になることも懸念されます。それに対し、社内SNSの活用は有効な手段です。

業務関連の質問や相談、アイデアの共有だけでなく、趣味や関心事についての話題も取り上げることができ、オンライン上でのカジュアルな交流が促進されます。また、定期的なオンラインイベント(バーチャルランチ会や部署横断のオンライン勉強会など)を開催することで、フリーアドレス環境下でも従業員同士の結び付きを強化することができます。

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フリーアドレスは自社に合うかの見極めも大切

フリーアドレスは多くの企業で注目を集めていますが、全ての組織に適しているわけではありません。自社の業務内容や組織文化、従業員のニーズを十分に考慮し、フリーアドレスが本当に自社に合っているかを慎重に見極める必要があります。

自社の文化や業務内容と合わない場合、従業員がストレスを抱えてしまったり、かえって生産性が落ちたりする懸念もあります。

また、単に制度として導入するだけでなく、導入後に予想されるトラブルや課題に対して、あらかじめ回答を用意しておくことも重要です。

フリーアドレスの導入自体が目的になっては本末転倒です。フリーアドレスは、あくまで働きやすさを追求する上でのアプローチの一つにすぎないということを念頭に置いて、どのような働き方が従業員に適しているのかを見極めることが重要になってきます。

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