成長実感とは?実感を得やすい人の特徴や有効なアプローチを解説
仕事における「成長実感」は、モチベーションを左右する重要な要素です。自分が成長していると感じられるかは、仕事への取り組み方にも大きく影響します。成長実感の重要性とともに、実感を持ちやすい人の特徴や効果的なアプローチについて解説します。
成長実感とは?
成長実感とは、自分自身が以前よりもスキルや知識、考え方などの面で、成長していると実感できることです。
単なるスキルアップだけではなく、「以前は難しかったことがスムーズにできるようになった」「視野が広がり業務の全体像を把握できるようになった」など、自分自身の具体的な変化を認識できる状態を指します。
成長実感の重要性
成長実感は仕事のやりがいや、人生の充実感に直結する重要な要素です。人間は自分が成長していると感じられるとき、より高いモチベーションで仕事に取り組めるようになり、困難にも前向きに立ち向かえる傾向があります。
一方、企業も社員が成長実感を持つことで、組織の生産性が向上し、人材の定着率もアップするのがメリットです。特に若手社員にとって、自分の成長を可視化できるかどうかは、キャリア形成に対して、前向きな姿勢を持つ上で必要です。
一人一人が業務をこなす上で成長を実感できれば、自分の行動に意味を見いだせるようになり、日々の仕事に納得感を持って取り組めるようになるでしょう。組織全体として成果を上げやすくなり、より個人と会社の関係も良好になります。
成長志向との違い
成長志向とは、成長を目指す気持ちのことであり、成長実感は実際に成長できたという感覚です。両者は似ているようで、仕事への影響度は大きく異なります。成長志向だけでは意欲や満足度の向上には限界があり、実感を伴うことで初めて行動や成果に結び付きます。
実際、成長実感の方がパフォーマンスの向上や離職の防止にも、効果が大きいようです。自分の変化を具体的に認識できた社員ほど、業務への主体性や、持続的なモチベーションを保てる傾向にあります。
成長実感の欠如がもたらす影響
成長実感がないと、社員は停滞感や無力感を感じる可能性があります。例えば、「毎日同じ業務をこなすだけで変化がなく、何年経ってもスキルが向上しない」と感じたり、「頑張っても評価されず、自分の仕事が会社に貢献している実感がない」と悩んだりするケースも少なくありません。
こうした状態が続くと、仕事へのモチベーションが大幅に低下し、最終的に離職につながる場合もあるでしょう。実際、上昇志向の強い人材ほど、成長の機会が限られていると感じれば、早期に転職を検討する傾向があります。
企業は優秀な人材が辞めないように、日常業務において、一人一人の社員が成長を感じられる仕組みをつくることが重要です。
社員が成長を実感できない理由
社員に成長実感を持ってもらうには、まず多くの人材が成長を実感できない理由を知っておくことが重要です。業務内容や職場の環境、評価の仕組みなど、さまざまな要因が関係しているので、代表的なものを確認しておきましょう。
同じ仕事を繰り返し続けている
業務の性質上、一定の作業を継続的に繰り返す職種は少なくありません。ルーティンワークは業務の安定には貢献するものの、個人の成長実感を得にくい傾向があります。
特に、自分の裁量が限定されている場合、仕事を通じて自分がどう変化しているのか分かりにくく、成長を実感できない人は多くいます。長く変化を感じられない環境が続くと、やがて仕事そのものに意味を見いだせなくなり、惰性で業務をこなすようになるでしょう。
日々の積み重ねが達成感につながらず、社員が自ら、成長の機会を閉ざしてしまう可能性もあります。
目標を明確にせずに仕事をしている
明確な目標を持たずに仕事をしている社員は、自分がどこに向かっているのか分からなくなり、成長実感を得にくくなります。例えば、目の前のタスクの消化だけに集中し過ぎると、何のためにやっているのかが曖昧になり、業務に対する前向きな姿勢も徐々に薄れてしまうでしょう。
また目標があっても抽象的だったり、現実離れし過ぎていたりする場合も、達成感が得られず、自信を喪失する可能性があります。
目標の明確化は業務の方向性だけではなく、社員の自己認識の強化にもつながるため、管理者との面談や話し合いを通じて、一人一人明確にすることが大事です。
他者の価値観や評価軸で自分を考えている
他者の価値観や評価軸だけで自分を考えている社員は、成長や変化に気付きにくくなります。他人と比べて成果が見劣りすると感じたり、自らの強みが評価されていないと思ったりすれば、自己肯定感が下がってしまい、仕事にも身が入らなくなる可能性があります。
特に、周囲からの承認をモチベーションの中心に据えている場合、自分自身の変化や成果を正しく評価する機会が失われがちです。
本来、成長実感は他人との比較ではなく、自分自身の過去との比較によって生まれるものです。しかし、他者の視点にとらわれすぎると、実際には成長しているにもかかわらず、それを認識できないことがあります。
社員が他人との比較に陥らないようにするためには、個々に適した指標(例えば「昨年の自分の業績」や「自己設定したスキルアップの目標」)を定め、定期的にそれを振り返る機会を提供することが効果的です。
成長実感を持ちやすい人の特徴
成長実感を持ちやすい人には、以下のような特徴があります。
- 自己成長に対する強い意欲がある
- 新しい知識やスキルを積極的に習得する
- 失敗を恐れず新しい挑戦に踏み出せる
- 柔軟な思考と環境への適応力がある
- 目標や時間を自己管理できる
- 周囲からのフィードバックを積極的に受け入れる
- 小さな成功体験を大切にできる
自分の成長をプロセスとして捉え、途中の小さな成功も大切にできるので、継続的に高いパフォーマンスを発揮できます。
社員に成長実感を持たせるためのアプローチ
それでは、社員に成長実感を持ってもらうための有効なアプローチを紹介します。以下のポイントを押さえることで、社員のエンゲージメントを高められるだけではなく、組織の生産性のアップにもつながるでしょう。
目標や成長に関するマイルストーンを設定する
社員に成長実感を持たせるには、具体的な目標やマイルストーンを設定し、進捗を可視化することが大切です。目標が明確であれば、達成したときに自己の成長を実感しやすくなります。
小さな目標を段階的にクリアすることで、成功体験を積み重ねられるため、モチベーションの維持・向上につながります。定期的な面談や1on1などを通じて、一人一人の社員の目標を具体的に設定し、小さな成果でもきちんと評価することが重要です。
定期的な評価・フィードバックの場を設ける
成長実感を高めるには、管理者による適切な評価・フィードバックも必要です。上記のように、定期的に目標の設定・評価をするだけではなく、日常的なコミュニケーションにより、社員が自らの成長や貢献を認識できる機会を増やしましょう。
フィードバックをする際は、「前回よりも〇〇が改善されている」「最近、△△のスキルが向上して業務が円滑になった」など、具体的な行動や成果を明確に伝え、本人が自覚できるようにすることが大切です。
さらに社員自身が自己の成長を振り返り、言葉にして表現する場も設けることで、無自覚だった成長に気付くきっかけになります。
新しい挑戦の機会を設ける
社員に成長実感を持ってもらうには、日々の業務に新しい変化や、チャレンジを取り入れることも重要です。例えば、社内の新規事業立ち上げチームへの参加や、異なる部署間でのジョブローテーション、管理職に向けた研修への参加など、普段とは違った挑戦機会を設けることで、社員が自らの成長を感じやすくなります。
挑戦の機会が多い環境は、社員の成長意欲を刺激し、組織全体の活性化にも寄与するでしょう。
ただし、単に難しい仕事や課題を与えるだけでは不十分で、適切な支援体制や失敗を許容する文化の醸成も必要です。挑戦の結果を振り返る機会も設け、学びを次につなげられるようにサポートしましょう。
社員が成長を実感できる環境づくりに注力する
社員一人一人が成長実感を持てる職場環境をつくることは、組織の持続的な成長と従業員エンゲージメントの向上に寄与します。さらに成長実感を大切にする文化を根付かせれば、社員のやる気や満足度が高まり、組織全体のパフォーマンスもアップするでしょう。
そのためには、組織のリーダーが社員一人一人の成長に関心を持ち、積極的に支援する姿勢が求められます。日々の業務に挑戦の機会を設け、目標や成果を可視化するとともに、定期的なフィードバックにより、社員が成長を感じられる仕組みを構築しましょう。