イニシアチブとは?シーン別の意味やビジネスでの重要性を解説

イニシアチブを発揮する人材が多い組織は、競合他社との競争に強く、時代の変化にも柔軟に対応できるといわれます。本記事では、イニシアチブ(initiative)の意味や使い方、ビジネスでの重要性を分かりやすく解説します。

イニシアチブとは何か

ニュースや新聞で、「イニシアチブ」という言葉を耳にしたことがある人は多いでしょう。「交渉のイニシアチブを取る」など、ビジネスシーンでも用いられます。語源やリーダーシップとの意味の違いを押さえましょう。

英語の「initiative」が語源

イニシアチブは、「initiative」のカタカナ表記です。initiativeは、始める・創始するの意味を持つ「initiate」の名詞形で、日本語では「イニシアチブ」と表記される場合もあります。

  1. 物事を先導すること
  2. 主導権
  3. 構想・戦略・行動計画
  4. 国民発案

意味は複数ありますが、ビジネスシーンでは「主導権」の意味で使われるケースが多いでしょう。デジタルイニシアチブや戦略イニシアチブなど、「〇〇イニシアチブ」の形で使われる場合は、構想の意味を持ちます。

類語と対義語

イニシアチブの類語は、「オーナーシップ」です。英語の「ownership」には、所有・所有権・所有者の意味がありますが、ビジネスシーンでは、ミッションや課題に対して、当事者意識を持つことを指します。

オーナーシップのある人は、上司から指示されたからやるのではなく、常に自分ごと化して主体的に取り組みます。

対義語は「追従(ついじゅう)」や「追随(ついずい)」で、前を行く人の後を追うこと・従うことを意味します。言葉自体にマイナスの意味合いはありませんが、職場やビジネスシーンでは、主体性のない態度や受け身の姿勢は改善の対象になるでしょう。

リーダーシップとの違い

リーダーシップ(leadership)の意味は、「統率力」や「指導力」です。組織を一つにまとめ、率いていく力がある人は「リーダーシップがある」と表現できます。フォロワー(組織の構成員)がいてこそ発揮される力といえるでしょう。

イニシアチブの類語でもありますが、「主導権を握る」と「組織を統率する」とでは、意味合いが微妙に異なります。イニシアチブは、個人の自発的な行動やミッションへの関わり方を指しており、必ずしも組織を統率するわけではありません。

シーン別にみる意味と使い方

カタカナ英語の中には、使用するシーンや文脈によって、意味が変わるものがあります。ビジネス・政治・スポーツを例に挙げ、イニシアチブがどのように使われるのかを解説します。

ビジネス

ビジネスでは、「イニシアチブを取る」や「イニシアチブを発揮する」というフレーズが多く使われます。

【例文】

  • 商談でイニシアチブを取るには、A社に関する徹底したリサーチが必要だ
  • 前回の反省を踏まえて、今回はイニシアチブを発揮できる人材を採用したい

商談や営業では、イニシアチブを取れるかどうかに結果が大きく左右されます。相手のペースに完全に飲まれると、交渉の機会さえも失いかねません。組織や団体においては、イニシアチブを発揮する人が多いほど、組織全体のパフォーマンスが向上します。

スポーツ

対戦相手がいるスポーツでは、「イニシアチブを取る」や「イニシアチブを取り返す」というフレーズを目にすることが多いでしょう。

【例文】

  • ベスト4に入るなら、イニシアチブを取る戦い方をしなければならない
  • 相手チームにイニシアチブを握られ、3回連続の逆転負けとなった
  • ここでイニシアチブを取り返せば、優勝も夢ではない

一般的には、ゲームの主導権や先手を指しますが、相手に攻勢を仕掛けることの意味合いで使われる場合もあります。

政治

政治では「イニシアチブを行使する」という表現がよく使われます。この場合のイニシアチブは、「国民発案」や「発案権」を意味します。

国民発案とは、有権者が憲法改正案や法律案などを発案できる制度です。例えば、直接民主制を採用するスイスでは、国民が発議した提案を国民投票にかけ、その採否を決定します。

日本には、有権者に条例案の直接請求を認める「条例制定改廃請求の制度」が存在しますが、スイスのような国民発案は認められていません。

覚えておきたい関連用語

「〇〇イニシアチブ」の表現で使われる場合、構想や戦略、行動計画を意味します。ビジネスシーンでの登場が多い関連用語として、「戦略的イニシアチブ」と「プライベート・ファイナンス・イニシアチブ」を取り上げます。

戦略的イニシアチブ

企業が持続的な成長を続けるには、目先の利益を追求するだけでなく、5年後、10年後の変化を見込んだ長期的な目標を立てる必要があります。

戦略的イニシアチブとは、組織がビジョンや長期的な目標を達成するために掲げる構想です。全社レベル・事業レベル・部門レベルに大別され、目標達成までのステップ・手段・予算・スケジュールなどが記載されるのが一般的です。

イニシアチブを掲げることで、進むべき道筋が明確になる上、理想と現実のギャップをいち早く解消できます。

プライベート・ ファイナンス・イニシアチブ

プライベート・ファイナンス・イニシアチブ(以下、PFI)とは、公共施設の建設や管理に、民間事業者の資金やノウハウ、技術などを活用する方法です。PFI事業では、複数の民間事業者に提案競争をさせ、最も効率的で効果的な提案をしたものを採用します。

PFIのメリットは、国や自治体が実施するよりも、事業コストを抑えられる点です。民間事業者に新たな事業機会が与えられれば、地域経済の活発化にもつながるでしょう。

PFIの対象となるのは、道路・河川・庁舎・教育文化施設・情報通信施設・人工衛星・新エネルギー施設といった公共性の高い施設です。

イニシアチブの発揮が組織にもたらすメリット

ビジネスシーンにおいて、イニシアチブは主導権の意味合いで使われます。イニシアチブを発揮できる人材がいると、組織にどのようなメリットがもたらされるのでしょうか?

組織が活性化する

従業員がイニシアチブを発揮すると、組織全体が活性化するのがメリットです。ミーティングではさまざまなアイデアや意見が交わされ、新規事業や技術革新につながりやすくなります。

プロジェクトチームでは、各自が自分の役割を認識しながら、互いにサポートし合う協力体制が構築されます。困難な課題や未知の取り組みにも前向きにチャレンジするため、チームに大きな成長がもたらされるでしょう。

一方で、イニシアチブが発揮できないと、上司から指示を受けることが常態化してしまいます。現状維持を望む従業員が多ければ多いほど、組織は弱体化に向かいます。

ビジネス環境の変化に対応できる

グローバル化や社会のデジタル化に伴い、企業を取り巻くビジネス環境は、急速に変化しています。現代は、将来の予測が困難なVUCA時代であり、変化に柔軟に対応できない企業は、時代に淘汰されるといっても過言ではありません。

これからの時代は、一部の限られたリーダーが組織をけん引するのではなく、組織を構成する一人一人がイニシアチブを持って行動することが求められるでしょう。自らの頭で考え、自発的に行動できる従業員が多い企業ほど、時代の変化に順応できます。

競争相手よりも優位に立てる

取引先やクライアントとの商談において、上司から「イニシアチブを取れ」と言われるビジネスパーソンは少なくありません。組織にイニシアチブを発揮できる人材がいると、商談やビジネスを自社に有利に進められるのがメリットです。

また、受け身で消極的な人が多いと、社内ミーティングがなかなか前に進みませんが、イニシアチブのある人材が多い組織では、活発な意見交換が行われます。意思決定の質やスピードが向上し、結果的に企業の競争力強化につながるでしょう。

特に、新規事業への参入においては、意思決定をできるだけ迅速に行い、競合他社よりも先に行動することが肝要です。

メンバーにイニシアチブを発揮してもらうには?

自分の部下やチームメンバーに対し、もっと率先して動いてほしいと感じている人もいるはずです。イニシアチブは日々のトレーニングや習慣によって強化できます。部下やチームメンバーの意識を変えたいと思ったときは、まずは自分のマネジメント方法を見直しましょう。

主体性を重んじる

「指示通りにやればよい」というスタンスの上司の下で長く働いていると、自分の頭で考えて動かない「指示待ち人間」になりやすくなります。

何でも手取り足取り教えたり、指示通りにやっているかを毎回厳しくチェックしたりすれば、創意工夫をしようという気持ちが薄れるでしょう。

人の上に立つリーダーは、部下やメンバーの主体性を尊重することが重要です。ある程度の責任と決定権を与えることで、自分の力で物事を進めたり、課題を解決したりするスキルが身に付きます。

ただし、信頼して任せることと、仕事を丸投げすることをはき違えないようにしなければなりません。

小さな成功体験を積ませる

イニシアチブが弱い人は、自己効力感(self efficacy)が低い傾向があります。「自分ならきっとできる」と思える感覚のことで、自信と同義です。

自己効力感を養い、イニシアチブを発揮させるには、スモールステップで成功体験を積ませる必要があります。「自分にもできた」という達成感を味わうたびに自己評価が高まり、徐々に大きな挑戦ができるようになります。

目標をクリアできたときは十分にほめ、クリアできなかったときもポジティブなフィードバックを心掛けましょう。問題点の指摘だけでなく、良かった点や改善のヒントを与えるのがポイントです。

情報共有を徹底する

自分の頭で考え、正しい判断をするためには、十分な情報が与えられていることが前提です。限られた人だけしか情報を閲覧できなかったり、上司が情報共有を怠ったりすれば、本人の主体性は伸び悩みます。判断ミスにより、自信を喪失する恐れもあるでしょう。

特に、現場スタッフやアルバイトに対する「情報の共有漏れ」は深刻です。口頭・紙の文書・電話による共有はタイムリーさに欠ける上、伝達ミスが発生しやすい傾向があります。デジタル端末で利用できるITツールを導入し、従業員間での情報格差をなくしましょう。

「TUNAG(ツナグ)」は、組織エンゲージメントの向上を目的に開発されたITツールです。社内チャット・タイムラインの投稿・情報掲示板などの機能が搭載されており、情報共有ツールとしても活用できます。スマートフォン対応なので、現場のスタッフにも素早く情報が届きます。

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イニシアチブの意味と重要性を理解しよう

イニシアチブは、使用する場面によって意味が変わります。ビジネスシーンでは、主導権を指すのが一般的ですが、構想や計画の意味で用いられるケースもあることを覚えておきましょう。

従業員がイニシアチブを発揮すると、生産性の向上や意思決定の迅速化につながるほか、商談でも自社に有利な条件を引き出せます。

率先して行動するメンバーを増やしたいのであれば、まずはマネジメント方法を見直すところから始めましょう。主体性を尊重し、小さな成功体験をできるだけ多く積ませることで、イニシアチブが発揮されるための土台が整います。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
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