リテンションの重要性を理解しよう。優秀な人材を離職させないための具体策とは?
近年は労働人口の減少による人材不足が大きな問題となっています。その状況下では、人材の採用と同じく、離職を防ぐ施策も重要です。リテンションは、優秀な人材の流出を防止し、企業の持続的な成長を支える施策になります。本記事では、リテンションの概念や重要性を解説するとともに、効果的な施策の具体例を紹介します。
リテンションとは何か?その重要性を理解する
働き手の不足は、日本企業の多くが抱える問題として、近年注目を集めています。この問題を解消するには、採用に力を入れることも重要ですが、同時に現在働いている従業員をいかに離職させないかも考えなければなりません。
その課題解決となるのが「リテンション」です。以下では、リテンションの基本と、それが企業経営において欠かせない理由について解説します。
リテンションは「離職防止・人材確保」のための施策
リテンション(Retention)とは、「保持」や「維持」を意味する言葉です。人事の領域では、優秀な人材を組織に留めておくための取り組み全般を指します。
このリテンションには単に従業員の退職を防ぐだけでなく、彼らのモチベーションや生産性を高め、組織への帰属意識を強化することも含まれます。
効果的なリテンション施策は、従業員の満足度を向上させ、自発的に組織にとどまりたいと思わせる環境をつくり出すのです。
リテンションが重視されるようになった背景
近年、リテンションが特に注目されるようになった背景には、企業の「離職」に対する認識の変化があります。かつては避けられないものとして受け入れられていた離職が、今日では企業にとって無視できない重要な課題となっているためです。
この変化の根底には、少子高齢化による労働力不足、デジタル化に伴う専門性の高い人材への需要増加、そして転職に対する社会的認識の変化などによる、労働市場の大きな転換があります。
特に、労働人口が減少する中で、優秀な人材はより一層貴重な存在となっており、人材の流出は企業にとって大きな痛手です。
いかに離職を防ぎ、優秀な人材を維持するかが企業の重要な経営課題となっています。リテンションは、まさにこの課題に対するアプローチとして注目を集めるようになりました。
効果的なリテンション施策の実施は、単なる離職防止策ではなく、企業の持続的な成長と競争力の維持に直結する重要な戦略となっています。
なぜリテンション施策が重要なのか
リテンション施策は、単に従業員の離職を防ぐだけでなく、組織全体の成長と安定に大きく寄与します。ここでは、リテンション施策が企業にもたらす具体的なメリットについて詳しく見ていきます。
離職率低下
リテンション施策をそもそも導入する目的は、離職率を下げることです。離職率が高い組織では、常に新しい人材の採用と教育に時間とコストがかかり、業務の効率が低下しがちです。
さらに、頻繁な人員の入れ替わりは、チームの士気にも悪影響を及ぼす可能性があります。
一方、離職率が低い組織では、チームの結束力が高まり、長期的なプロジェクトにも安定して取り組むことができます。また、採用コストの削減にもつながり、その分を従業員の育成や新規事業の開発など、より建設的な目的に投資することが可能となるのです。
人材に投資するコスト面やチームワークなど、離職率の低下は企業にとって大きなメリットをもたらします。
社内のスキルやノウハウの蓄積
離職率低下による副次的な効果でもありますが、リテンション施策の重要な効果の一つに社内のスキルやノウハウの蓄積があります。
長年勤務している従業員は、業務に関する深い知識だけでなく、社内特有のルールや業界特有の知見を持っています。これらは、数字では表しにくいものの、組織の競争力を支える重要な資産です。
優秀な人材が長く勤務することで、これらの知識やスキルが社内に蓄積され、新入社員への効果的な技術伝承が可能になります。また、長期的な視点で業務改善や革新的なアイデアを生み出す土壌にもなります。結果として、組織全体の生産性と創造性が向上し、持続的な成長につながるでしょう。
長期的な企業戦略の遂行
リテンション施策は、長期的な企業戦略の遂行にも大きく貢献します。優秀な人材が長期にわたって組織にとどまることで、長期的なプロジェクトを効率よく進めることが可能になります。
プロジェクトの中には、5年後や10年後を見据えた長期的な展望を持つものもあるでしょう。そうしたプロジェクトのコアメンバーが頻繁に変わることは避けたいものです。リテンション施策によって、コアメンバーの交代を最小限にとどめたプロジェクト運営が可能になります。
また、長期的な視点を持った従業員は、自身のキャリアと企業の成長を重ね合わせて考えるようになり、より主体的に業務に取り組むようになります。これは、イノベーションの創出や新規事業の開発など、企業の持続的な成長に不可欠な要素につながります。さらに、安定した人材基盤は、投資家や取引先からの信頼にもつながり、企業のブランド価値向上にも寄与するのです。
リテンションの種類と施策の具体例
リテンション施策は色々な種類がありますが、大きく分けて金銭的報酬と非金銭的報酬に分類できます。それぞれの特徴と具体的な施策例を見ていきましょう。
金銭的報酬
金銭的報酬は、最も直接的で分かりやすいリテンション施策です。主な例としては以下のような施策があります。
- 基本給の引き上げ
- 業績連動型のボーナス
- ストックオプショ(自社株購入権)の付与
これらは従業員の経済的な安定を支え、モチベーション向上に直結しやすい施策です。
しかし、金銭的報酬には注意点もあります。過度に高額な報酬は、短期的には効果があっても、長期的には従業員の内発的動機づけを低下させる可能性があります。
また、金銭的報酬のみで従業員の人心を掌握するのは難しく、「やりがい」や「人間関係」など、報酬以外に働く動機がある人を引き留めることは難しいでしょう。加えて、より好条件の待遇を提示する企業があった場合に、簡単に引き抜かれてしまうことも考えられます。
非金銭的報酬
非金銭的報酬は、金銭以外の要素で従業員の満足度と帰属意識を高める施策です。具体的には以下のような施策があります。
- フレックスタイム制やリモートワークなどの柔軟な働き方の導入
- 社内外の研修プログラムの充実
- メンター制度の導入
- 社内コミュニケーションの活性化
これらの施策は、従業員のワークライフバランスの向上、キャリア開発の支援、組織への帰属意識の強化などに効果があります。特に、近年の働き方の多様化や価値観の変化を考慮すると、非金銭的報酬の重要性は増しています。
非金銭的報酬の効果を最大化するには、従業員のニーズを適切に把握し、個々の状況に応じて柔軟に対応することが重要です。金銭的報酬よりも離職率の低下に貢献する可能性があります。
ただし、いくら環境整備が進み、働きがいのある組織だったとしても、金銭的報酬が低すぎると従業員の離職を防止することは難しいでしょう。金銭的報酬と非金銭的報酬のバランスのいい施策であることが重要になります。
離職防止のためのリテンション施策
効果的なリテンション施策の実施には、組織全体での取り組みが不可欠です。ここでは、具体的な離職防止策とその実施方法について詳しく解説します。
キャリアパスの明確化とスキルアップ支援
従業員の長期的なコミットメントを得るには、個々人のキャリア展望を組織の成長と結び付けることが重要です。
キャリアパスの明確化は、従業員に将来のビジョンを示し、目標に向かって努力する動機づけとなります。
具体的な施策としては、定期的なキャリア面談の実施や社内公募制度の導入、メンター制度の確立などが効果的です。また、部門横断的なプロジェクトへの参加機会や外部研修、資格取得支援制度の充実など、スキルアップを支援する制度を整えることも重要な施策となります。
これらの施策を通じて、従業員は自身の成長と会社の発展を重ね合わせて考えるようになり、長期的な視点で仕事に取り組むようになります。将来も企業で働いているイメージを具体的に持ってくれることは、離職防止に大きく貢献するはずです。
柔軟な働き方の推進
現代の労働環境では、正社員としてフルコミットする以外の多様な働き方を選択する人も少なくありません。
このような労働環境に適応するためにも、フレックスタイム制やリモートワーク環境の整備、短時間勤務制度の拡充などが主な施策として挙げられます。
また、有給休暇の取得促進やサバティカル休暇制度の導入も効果的です。これらの施策は、従業員のライフステージや個人の事情に合わせた働き方を可能にし、特に育児や介護との両立支援は長期的な人材確保につながります。
現在はインターネットが発達し、業種によっては出社しなくても働ける時代です。働き方を見直さなければ、柔軟な働き方のできる会社に転職を考える従業員も増えてくるかもしれません。
公正な評価制度と報酬の見直し
従業員が離職する理由の中で、「評価への不満」は大きな割合を占めています。自身の働きぶりが評価されていないことや、評価に対して正当な報酬が払われていないと感じることは、離職につながります。
その一方で、公正で透明性の高い評価制度は、従業員の信頼を獲得し、離職を防ぎます。360度評価の導入や、成果主義と能力主義のバランスを考慮した評価基準の設定が効果的です。また、定期的な評価制度の見直しと従業員からのフィードバック収集、評価結果のフィードバック面談の充実によって、評価の透明性をアピールすることも重要な施策になります。
加えて、評価と連動した報酬制度の設計により、従業員は自身の貢献が適切に認識され、報われていると感じることができます。評価の公平性と透明性の確保、それに見合った報酬を支払う制度を整えましょう。
離職予兆のモニタリング
離職を防ぐためには、早期に離職リスクを察知し、適切な対応を取ることが重要です。離職予兆のモニタリングは、組織全体の状況を把握し、タイムリーな施策実施を可能にします。
定期的な従業員満足度調査の実施や1on1ミーティングの定例化、離職率や残業時間などの人事データの分析が効果的です。
また、SNSや口コミサイトでの従業員の声のチェック、退職希望者に対するヒアリングの実施と分析も重要な手法です。これらの情報を総合的に分析することで、組織や個人レベルでの問題点を早期に特定し、適切な対策を講じることができます。
離職防止のために「TUNAG」と「TERAS」を活用しよう
デジタル技術の進歩により、リテンション施策の実施や効果測定がより効率的に行えるようになりました。ここでは、豊富な機能で社内交流や業務効率化、人材育成の課題を解決する「TUNAG」と、初期費用・月額費用0円で利用可能なエンゲージメントサーベイ「TERAS」を活用した具体的な離職防止策を紹介します。
予兆を察知し素早くケア
TERASの「エンゲージメント診断」とTUNAGの「社内アンケート」機能は、従業員の状態を常時モニタリングし、離職リスクを早期に察知するのに役立ちます。
エンゲージメント診断では、定期的に従業員の組織への帰属意識や満足度を測定し、その推移を可視化することができます。
また、社内アンケート機能を活用することで、特定のトピックに関する従業員の意見や要望を効率的に収集できます。例えば、新しい制度の導入前後で従業員の反応を調査したり、働き方に関する希望を聞いたりすることができます。これらの情報を基に、従業員のニーズに合わせた施策を迅速に展開することで、離職リスクの低減につなげることができます。
社員同士の交流を活性化
TUNAGの「社内掲示板」や「タイムライン機能」は、従業員同士のコミュニケーションを活性化し、組織の一体感を醸成するのに効果的です。社内掲示板では、部署や職位を超えた情報共有や意見交換が可能になり、組織の風通しを良くすることができます。例えば、プロジェクトの進捗報告や成功事例の共有、業務改善のアイデア募集などに活用可能です。
タイムライン機能では、日々の業務や成果、感謝の気持ちなどを気軽に投稿し、互いにコメントやリアクションを送り合うことができます。リモートワークが増えた現在でも、オフィスにいるような一体感を醸成することが可能です。
また、上司や経営層からの積極的な発信や反応は、従業員のモチベーション向上につながります。このような日常的なコミュニケーションの活性化は、従業員の帰属意識を高め、離職防止に寄与します。
リテンション施策で働きやすい環境をつくる
効果的なリテンション施策の実施は、単に離職を防ぐだけでなく、組織全体の生産性向上と革新的な企業文化の醸成につながります。ここまで紹介してきたさまざまな施策を、自社の状況に合わせて適切に組み合わせ、継続的に改善していくことが重要です。
重要なのは、リテンション施策を単発的なものではなく、組織の文化として定着させることです。経営層から現場のマネージャーまで、全ての階層がリテンションの重要性を理解し、日々の業務の中で実践していく必要があります。
そうすることで、従業員一人一人が「この会社で長く働きたい」と思える環境が自然と形成されていくでしょう。
リテンション施策の成功は、企業の持続的な成長と従業員の幸福度向上の両立につながります。常に従業員の声に耳を傾け、時代の変化に合わせて柔軟に施策を進化させていくことで、真に働きやすい環境をつくり上げることが可能になります。