理想のリーダー像は変化する?時代が求めるスキルと育成のコツ

リーダーのタイプや考え方によって、組織の方向性や在り方が変わります。VUCA時代といわれる現代、どのような資質・スキルを持ったリーダーが理想とされているのでしょうか?求められる役割や育成のコツを解説します。

理想のリーダー像は時代とともに変化する?

組織が目標を達成するには、メンバーを束ねるリーダーの存在が欠かせません。企業における理想のリーダー像は、いつの時代も同じというわけではなく、人々の価値観や社会背景を反映しています。

過去と現代のリーダー像の違い

過去と現代では、理想のリーダー像にどのような違いがあるのでしょうか?ひと昔前までは、圧倒的な力で人々を引っ張っていくタイプのリーダーが求められていました。

組織はリーダーを頂点としたピラミッド構造で、指揮命令はトップダウンが基本です。大量生産・大量消費が拡大した高度経済成長期においては、ワンマン経営に近いスタイルが適していたといえるでしょう。

バブル崩壊後の日本は長期の低迷を経験し、現在はVUCA時代に突入しました。VUCAは、変動性(Volatility)・不確実性(Uncertainty)・複雑性(Complexity)・曖昧性(Ambiguity)の頭文字を取ったものです。

VUCA時代は思わぬ出来事が発生する可能性が高く、画一的なやり方や前例はほとんど通用しません。ボトムアップのマネジメントを取り入れる必要があり、周囲を巻き込む力やメンバーの能力を引き出せる力を持ったリーダーが理想とされる傾向があります。

理想の上司は「調和型」

リーダーには「リーダーシップ」が求められます。組織を目標達成に導く統率力・指導力のことで、経営者だけでなく、部下を持つ全てのビジネスパーソンに欠かせない要素の一つです。

リクルートマネジメントソリューションズでは、会社員を対象にリーダーシップに関する調査を行っています。「理想の上司のタイプ」を質問したところ、「調和型リーダー」を選ぶ人が最多でした。

調和型リーダーは、心情を判断のよりどころとし、メンバーと協力し合うのが基本のスタンスです。大きな変革は避け、現状を維持しながら適宜改善を行います。多くの人は、強権的な上司よりも、周囲との関係性を重視する上司を求めていることが分かるでしょう。

年代別で見ても傾向は同じですが、年齢が上がるにつれ、「心情よりも理性をよりどころにして判断をしてほしい」と思う人が増加します。

出典:【連載・コラム】働く人のリーダーシップ調査2024 第1回|人事データ活用|リクルートマネジメントソリューションズ

事業環境によって求められるタイプは変わる

全体の傾向としては、調和型リーダーを求める人が多いですが、事業環境によって求められるリーダーのタイプは変わります。

事業が安定している組織においては、現状維持と適宜改善を基本とする調和型リーダーが求められる一方で、事業環境が変化している組織には、共創型リーダー・民主型リーダー・開拓型リーダーといった「変革の性質」を持つリーダーが求められていることが分かりました。

現代に求められるリーダーといっても、リーダーシップのスタイルは多様です。時代の変化とともに、今後も理想像は変化し続けるでしょう。

リーダーが果たすべき役割

理想のリーダー像は時代とともに変化しますが、組織における役割には変わらない部分もあります。代表的な役割として、「ビジョンや方向性の決定」「チームマネジメント」「メンバーの育成とモチベーション管理」を取り上げます。

ビジョンや方向性の決定

リーダーは、組織のビジョンや方向性を明確に示す必要があります。とりわけ、先行きが見えないVUCA時代においては、進むべき方向性が定まっていないと、部下は具体的な行動を起こせません。

ビジネス環境が急速に変化する中、上意下達の指揮系統では、変化への対応が遅れてしまいます。リーダーが組織の方向付けをし、軸となる価値観や行動規範を共有することで、メンバーは自分の頭で考えながら臨機応変に行動できるようになるでしょう。

また、チームのビジョンが明確であれば、協力して目標を達成しようという仲間意識が醸成されます。組織での自分の役割を強く意識するようになり、モチベーションも高まります。

チームマネジメント

チームマネジメントは、メンバーを適切にマネジメントし、メンバーの生産性を向上させる取り組みです。マネジメントとは、管理や経営を意味する言葉で、ヒト・モノ・カネ・情報といった資源をうまく活用したり、リスクを適切に管理したりして、成果を上げることを意味します。

リーダーは、メンバーの強みや能力をよく理解した上で、それらを最大限に発揮する方法を考えることが重要です。例えば、異なるタイプのメンバーをペアにして、互いの弱みを補完できるようにすれば、組織としての力が強化されます。

少子高齢化が進む日本は、多くの業界で人手不足が深刻化しています。企業が優秀な人材を外から確保することは年々難しくなっているため、既存のメンバーの離職を防ぐとともに、少ないメンバーで生産性を上げる工夫をしなければなりません。

メンバーの育成とモチベーション管理

メンバーの育成は、リーダーの重要な任務の一つです。教育制度を整備し、一人一人の特性やキャリアプランに合わせた育成計画を立てることが求められます。

また、組織の生産性は、メンバーのモチベーションに左右されます。モチベーションが低下しているメンバーがいれば、原因を明らかにした上で、適切な対応を取らなければなりません。定期的フィードバックや声掛けに加え、評価制度の見直しやインセンティブの付与が有効になるケースもあります。

ただし、報酬や評価に代表される「外発的動機付け」の効果は一時的であるため、興味・関心・やりがい・自己成長といった「内発的動機付け」を行うことが肝要です。リーダー自らが手本となり、プロフェッショナルな姿勢を示すことで、メンバーの行動変容を促せます。

これからのリーダーに必要なスキル・資質

前述の通り、理想のリーダー像は時代によって変化します。先行きが不透明で将来の予測ができない時代、リーダーになる人には具体的にどのようなスキル・資質が求められるのでしょうか?

変化への対応力と創造性

急速なデジタル化やグローバル化、価値観の多様化により、ビジネス環境は目まぐるしく変化しています。前例がない出来事はどんどん増えていき、明確な答えが見つからない状態が続くケースも多くなるでしょう。

VUCA時代を先導するリーダーには、次々に生まれる新たな課題に向き合い、臨機応変に対応していく力が求められます。現状維持は、衰退の始まりといっても過言ではありません。既存の枠組みにとらわれない柔軟な発想力や創造性こそが、時代を生き延びる鍵となります。

情報収集力

情報収集力とは、無数の情報の中から必要な情報や正しい情報を取捨選択するスキルです。素早く検索するスキルと勘違いされやすいですが、スピードよりも、信頼性のある情報源を見極められるかが重要です。ただ単に情報を集めるだけでなく、情報を分析して適切に運用する力も求められるでしょう。

情報収集力が磨かれると、質の高いインプットとアウトプットが可能となります。業務効率が向上するほか、視野が広がって精度の高い判断ができるようになるのがメリットです。リーダーの正確で素早い判断は、機会損失を防ぎます。

システムシンキング

システムシンキング(Systems thinking)とは、物事をシステム全体として捉える思考です。各要素とのつながりやメカニズム、法則性などを理解した上で、複雑に絡み合う問題を多面的に分析します。

システムシンキングの基本のフレームワークに「氷山モデル」があります。目に見える氷山は全体の一部分にすぎないため、水面下に隠れているシステムの構造を突き止めて、全体像を把握する必要があるのです。

ビジネスの多様化・複雑化が加速する現代、解決策を導き出すのは容易ではありません。システムシンキングを身に付けることで、問題の本質の見極めと根本的な解決が可能となります。

EQ(心の知能指数)の高さ

EQとは、Emotional Intelligence Quotientの略称で、日本語では「感情知能指数」や「心の知能指数」などと呼ばれます。自分や他人の感情をうまくマネジメントする力を意味し、EQが高いリーダーほど、メンバーの感情に働きかけながら、人間関係を適切に管理できるといわれています。

IQ(知能指数)が高い人ほどビジネスで成功しやすいと考える人もいますが、実際のところ、優れたリーダーはIQだけでなくEQが高い傾向があるようです。

多様化が進む現代、組織はさまざまなバックグラウンドを持つメンバーによって成り立っています。部下はリーダーに対し、IQの高さよりも「心情に配慮したマネジメント」を求めているといえるでしょう。

リーダー育成がうまくいかない理由

企業の持続的な成長には、次世代リーダーの育成が欠かせません。育成計画を立てたものの、思った通りに進まないという企業は多いのではないでしょうか?育成がうまくいかない理由を探り、解決策を講じましょう。

社内の教育体制が不十分

リーダーに求められる資質やスキルは多岐にわたり、一人前に育て上げるまでには長い時間がかかります。社内の教育体制が不十分だと、リーダー候補がいても失敗に終わる可能性があるでしょう。

とりわけ、小さな会社はリーダー育成のノウハウがなく、教えられる内容にも限界があります。外部講師を招く手も有効ですが、高額な費用がかかるのがネックです。

リーダー育成は目に見える成果がすぐに現れない傾向があります。成長している実感が全く得られないと、候補者自身のモチベーションも下がりかねません。リーダーの育成計画をしっかりと立てた上で、社内の教育体制を十分に整えるところから始める必要があります。

企業への帰属意識が低い

近年は、リーダーを志望する従業員が減少傾向にあります。育成環境は整っていても、候補となる人材がいないケースも珍しくありません。

終身雇用制度や年功序列制度の崩壊により、一つの企業だけに勤め続けるのは当たり前でなくなっています。働き方の多様化が進む中、企業への帰属意識が薄い従業員が増えており、転職によるキャリアアップも一般的になっているのが現状です。

リーダーを目指す人材を増やすには、従業員に「この企業に貢献したい」という気持ちを持ってもらうことが重要です。「責任が重い上に仕事に見合った報酬が得られない」と考えている人もいるため、リーダーになるメリットを説明する機会を設けましょう。

従業員のエンゲージメントを高める「TUNAG」

帰属意識と似た言葉に、エンゲージメント(engagement)があります。企業と従業員、または従業員同士の信頼関係を指すもので、強固な組織基盤を築く上では欠かせない要素です。

帰属意識は、従業員から企業という一方通行のベクトルですが、エンゲージメントは双方向のベクトルです。企業がエンゲージメントを高める取り組みを行うことで、従業員の働きがいや企業に対する貢献意識が高まり、離職率が低下します。

組織改善クラウド「TUNAG」を導入すれば、コミュニケーションの円滑化・ビジョンの浸透・称賛文化の醸成といったエンゲージメント施策をスムーズに取り入れられます。リーダー育成の第一歩として導入するのもよいでしょう。

TUNAG(ツナグ) | 組織を良くする組織改善クラウドサービス

理想のリーダー像を明確にしよう

変化の激しい現代、企業が持続的成長を遂げるには、トップや管理職のリーダーシップが重要な意味を持ちます。

ひと昔前までのリーダーには、強力なリーダーシップが求められていましたが、理想のリーダー像は時代とともに変化するものです。現代は、周囲と協力しながら課題を解決していく調和型のリーダーが求められています。

リーダーに求められる資質やスキルは、事業環境によっても異なります。次世代のリーダーを育てる上では、人物像を明確にした上で、候補者探しや育成プログラムの策定を行う必要があるでしょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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