交流分析のエゴグラムとは?具体的な意味やビジネスでの活用方法
交流分析のエゴグラムは、従業員の性格特性を理解するのに役立つ手法です。自我状態のバランスを視覚的に把握できるため、さまざまなビジネスシーンに活用できます。交流分析のエゴグラムについて知っておきたいことを詳しく解説します。
交流分析の基礎知識
エゴグラムは交流分析を構成する要素の1つです。まずは、交流分析とエゴグラムそれぞれの意味を理解しましょう。
交流分析とは
交流分析とは、コミュニケーションのパターンを分析することで人間関係の改善を図る心理療法です。主に以下7つの要素で構成されています。
- ストローク(相手の存在を認める全ての言動)
- 自我状態(交流するときの思考の癖や感情)
- 人生態度(自分や他人に対する基本的な姿勢)
- やりとり分析(会話や行動におけるやりとりを分析する理論)
- ゲーム分析(パターン化されたやりとりを分析する理論)
- 脚本分析(行動パターンを脚本として分析する理論)
- 時間の構造化(対人関係における時間の使い方を分析する理論)
交流分析はメンタルヘルスの分野だけでなく、ビジネスでも活用されています。対人スキルを高められるため、社内コミュニケーションの活性化や接客・クレーム対応の向上を図ることが可能です。
エゴグラムとは
交流分析を構成する7つの要素のうち、自我状態のバランスを視覚的に把握できるようにする手法がエゴグラムです。自我状態を5つの要素に細分化し、図表化することで心理状態を分析します。
エゴグラムで表される5つの自我は次の通りです。
- CP(Critical Parent):厳しい父親的な部分
- NP(Nurturing Parent):優しい母親的な部分
- A(Adult):客観的かつ論理的な大人の部分
- FC(Free Child):自由奔放な子どもの部分
- AC(Adapted Child):従順な子どもの部分
エゴグラムでは数十問の質問に回答するテストを行い、自我状態を診断しタイプを把握することでコミュニケーションの改善を図ります。
エゴグラムで分かる5つの自我状態
エゴグラムとは、人の性格や行動パターンを5つの自我状態(CP・NP・A・FC・AC)に分けて分析する心理テストです。どの自我が強く働きやすいかを把握することで、自分の長所や短所を理解し、より良いコミュニケーションや自己成長につなげることができます。
ここでは、エゴグラムの5つの自我の特徴を分かりやすく解説します。
CP(厳格でルールを重んじる)
CPは「批判的な親」の要素を持つ自我で、道徳やルールを大切にし、厳しく物事を判断する性格です。
責任感が強く、リーダーシップを発揮しやすいため、管理職に向いているタイプといえます。しかし、厳格すぎると他人にプレッシャーを与えたり、自分の価値観を押しつけたりすることがあるため、柔軟さも意識することが大切です。
逆にCPが低い場合、ルーズで自己管理が苦手な傾向があり、決められたルールを守るのが難しくなることがあります。
NP(優しく面倒見がよい)
NPは「養育的な親」の要素を持ち、思いやりがあり、他人を支える性格です。他人の気持ちを尊重し、困っている人を積極的に助けるため、職場では後輩や部下の指導役として適任です。
ただし、世話を焼きすぎると過干渉になり、相手の成長を妨げてしまうことがあります。
NPが低い場合、他人との距離を取りすぎて冷たい印象を与えたり、チームワークを築くのが難しくなったりすることがあるため、適度なバランスが求められます。
A(冷静で論理的)
Aは「大人の自我」と呼ばれ、物事を客観的に判断し、冷静に対応する性格です。感情に左右されずに論理的な思考ができるため、周囲から信頼されやすい傾向があります。
しかし、冷静すぎるあまり、感情のない冷たい人だと誤解されることもあります。Aが低いと、感情に流されやすくなり、直感や勢いで判断してしまう場面が増えます。
バランスを意識しながら、論理的思考と感情の調和を取ることが重要です。
FC(自由で活発)
FCは「自由な子ども」の要素を持ち、好奇心旺盛で感情表現が豊かな性格です。自分の気持ちに素直で、好きなことに夢中になりやすく、チームの雰囲気を明るくする存在になることが多いです。
しかし、自由奔放すぎると周囲と協調できず、わがままな印象を与えることもあります。FCが低い場合は、自分の意見を主張するのが苦手で、控えめになりすぎることも少なくありません。
AC(従順で協調性がある)
ACは周囲のルールに従い、協調性を重視する性格です。
集団行動が得意で、指示通りに動くことができるため、組織の中で信頼されやすい傾向があります。ただし、周囲の顔色をうかがいすぎると、自分の意見を言えずにストレスをため込むことがあるため注意が必要です。
ACが低い場合は、協調性に欠け、自己中心的な行動を取りがちになることもあるため、周囲との関係性を意識しながら、適切なコミュニケーションを心がけることが大切です。
エゴグラムで従業員を診断するメリット
エゴグラムを職場に導入すれば、どのようなメリットがあるのでしょうか。従業員の自我状態をエゴグラムで診断する効果を紹介します。
信頼性が高い
エゴグラムが構成要素となっている交流分析は、1950年代にアメリカの精神科医エリック・バーンによって開発された信頼性の高い手法です。エゴグラム自体も初期の内容に検討が加えられ、より精度の高いものにブラッシュアップされています。
医療・看護・福祉の分野だけでなく、教育やビジネスなど幅広いシーンで活用されている点も特徴です。多くの診断結果を検証することにより、信頼性の高いテストに進化しているため、安心して活用できます。
個々の性格や心理状況を把握できる
エゴグラムのメリットとしては、従業員の性格や心理状況が分かることも挙げられます。いくつかの診断例を見てみましょう。
- 抑うつになりやすい人:CP・A・ACが高く、NP・FCが低い
- 仕事中毒になりやすい人:他に比べFCが極端に低い
- 能力を発揮しきれない人:CP・FCが高く、NP・A・ACが低い
エゴグラムでは現在の状態だけでなく、将来的になりやすい傾向も把握しやすくなります。
個々の相性を踏まえた人事を検討できる
エゴグラムで従業員の性格特性が分かると、従業員同士の相性を考慮した人事を検討できるようになります。
例えば、前項で紹介した「仕事中毒になりやすい人」と「能力を発揮しきれない人」は、一緒に仕事をさせるとうまくいかない可能性が高い関係です。
また、エゴグラムによる診断結果を活用すれば、従業員が組織にとってより良い存在になるような人材育成を行うこともできるでしょう。
エゴグラムを活用できるビジネスシーン
エゴグラムの診断結果は組織で共有することが重要です。自分や周囲の性格特性を把握することでメリットを得られるビジネスシーンを見ていきましょう。
チームビルディング
チームビルディングでメンバーの関係強化を図る際は、お互いの特徴や価値観を理解し合うことが重要です。
チームが形成される過程で、エゴグラムを実施するためのグループワークを行いましょう。診断結果をチームで共有すれば、お互いを理解した効果的なコミュニケーションが実現しやすくなります。
リーダーの育成
エゴグラムはリーダーの育成に活用することも可能です。診断結果をリーダーと共有すれば、リーダーとして欠けている部分を把握できるため、部下との関わり方を見直せます。
例えば、NPが高い人は面倒見が良い半面、部下に干渉しすぎる傾向があります。部下が困っている場合のみサポートしたり、部下にあえて裁量を持たせたりすることで、部下の主体性を引き出せるリーダーに育つでしょう。
交流分析のエゴグラムで従業員の内面を把握
交流分析のエゴグラムを活用すれば、従業員の性格や心理状況を把握できます。将来的になりやすい傾向も分かるほか、個々の相性を踏まえた人事を検討できることもメリットです。
組織のコミュニケーション改善にエゴグラムを取り入れ、チームビルディングやリーダー育成などに役立てましょう。