毎月の給与計算と社会保険の手続きに、どれだけの時間を使っているでしょうか。人事担当が1〜2名という企業では、定型業務だけで月の大半が埋まってしまいます。採用や制度設計に手が回らない、という声も少なくありません。その解決策として広がっているのが人事代行です。人事代行とは、給与計算や社会保険手続き、勤怠管理、入退社手続きといった人事労務の実務を外部に委託する仕組みを指します。この記事では、委託できる業務の範囲、自社に合うサービスの見極め方までを整理します。
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本資料では、少数精鋭・非エンジニアで構成される当社バックオフィス部門が実際にAI活用を進める中で直面した5つの失敗と、そこから生まれた3つの対策をご紹介しています。きれいな成功談ではなく、泥臭い現場のリアルな試行錯誤をお届けします。
▼本資料でわかること
・経理・総務・人事労務領域における業務へのAI活用事例/詳細
・実際に起きた5つの失敗と、そこから生まれた3つの対策
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まずは、どこまで任せられるのかを押さえましょう。人事代行の対応範囲は思っている以上に広く、定型業務にとどまりません。ここでは三つの領域に分けて解説します。

最も委託されやすいのが給与計算回りです。勤怠データの集計から支給額の確定、明細の発行までを一括で任せられます。
具体的には以下の業務が対象になります。
これらは毎月・毎年決まった時期に必ず発生する業務です。業務を外部へ手放すことで、人事部門にまとまった時間が生まれます。
社会保険の手続きも同様です。資格取得届や資格喪失届、算定基礎届、月額変更届などが該当します。
ただし1点注意が必要です。労働社会保険諸法令に基づく申請書や帳簿書類の作成、提出代行、事務代理は、社会保険労務士の独占業務です。社労士が在籍していない事業者は、これらを代行できません。対応できるのは、データの入力や記入内容の確認といった補助的な作業までです。契約前に、有資格者が関与する体制かどうかを必ず確認しましょう。
勤怠管理も委託できる領域です。締め日ごとの集計だけでなく、日常的な運用まで含めて任せられます。
例えば、打刻漏れがある従業員への督促や、残業時間が上限に近づいた際のアラート通知です。従業員への勤怠アラートや資料回収まで幅広く対応するサービスもあり、システムだけではカバーしきれない領域を人が補う形になっています。
入退社の手続きも負担の大きい業務です。入社時は雇用契約書の準備、マイナンバーや扶養控除申告書の回収、社会保険と雇用保険の加入手続きが発生します。退職時は離職票の発行や資格喪失の届出が必要です。
採用が活発な時期は、この手続きが一気に集中します。人数が読めない業務だからこそ、外部に任せる価値があるでしょう。
定型業務以外も委託できます。人事労務のノウハウを社内で確保できずに悩む企業が増えており、実務代行と並行して仕組みづくりを支援するサービスが登場しています。
代表的なのが業務フローの整備です。バックオフィス業務の改善や土台づくりに強みを持つサービスでは、業務フローの構築やクラウドシステムの導入・運用まで対応します。属人化した手順をマニュアル化してもらえるため、担当者が退職しても業務が止まりません。
就業規則の作成・改定や人事制度の設計も依頼できます。ただし費用の考え方が異なる点には注意しましょう。就業規則の作成や人事制度の設計といった非定型かつ高度な専門性を要する業務は、初期費用またはプロジェクト費用として別途発生します。月額料金に含まれると思い込まないことが大切です。
人事代行には明確な利点があります。一方で、知らずに契約すると想定外の負担が生じる点もあります。両面を押さえておきましょう。

最大のメリットは時間が生まれることです。給与計算や社会保険手続きは、正確さは求められますが、企業の競争力に直結する業務ではありません。
空いた時間は、採用や制度設計、社員の定着施策に振り向けられます。従業員からの問い合わせ対応まで委託できるサービスもあり、差し込みの相談に時間を取られることなく、自社担当者はコア業務に注力できます。
もう一つの利点が属人化の解消です。人事・労務の実務経験者によるチーム制で対応するサービスであれば、担当者の退職リスクや業務の属人化を防げます。1人の担当者に業務が集中している企業ほど、この効果は大きいでしょう。
ただし懸念もあります。委託した業務のノウハウは社内に蓄積されにくくなります。将来的に内製へ戻す可能性があるなら、データの持ち出しやすさを確認しておきましょう。
費用は一律ではありません。委託範囲と従業員数、契約形態によって大きく変動します。
多くのサービスでは従業員数に応じて料金が変動します。特に従量課金制の場合、従業員数の増減が直接コストに影響します。採用計画がある企業は、増員後の総額も試算しておきましょう。
初期費用にも幅があります。業務フローの設計やシステム設定にかかる初期費用は0円から数十万円まで幅があり、複雑な引き継ぎが必要な場合は高くなる傾向にあります。
サービスを探す前にやるべきことがあります。委託したい業務を洗い出す作業です。
順番を逆にすると失敗します。サービス資料を先に見ると、対応範囲の広さに目が向いてしまうためです。結果として、必要のない業務まで含んだプランを契約しがちになります。
範囲を決める手順は次の通りです。
この一覧があれば、見積もり依頼の条件を各社でそろえられます。比較の精度が格段に上がるでしょう。
特に注意したいのが基本料金の中身です。年末調整や算定基礎届の作成、労務相談の回数制限など、一見基本サービスに含まれそうな業務が実は追加料金となるケースもあります。
範囲が決まったら、いよいよ比較の段階です。見るべきポイントは三つあります。順番に確認していきましょう。

人事代行は大きく二つの型に分かれます。社労士事務所が提供する専門特化型と、人材会社などが提供する総合型です。
両者の違いを整理します。
比較項目 | 社労士型(専門特化型) | 総合型 |
強み | 法令対応と手続きの正確性 | 対応業務の幅広さ |
主な対応範囲 | 社会保険・労働保険の手続き、就業規則 | 人事労務全般、経理や総務も可 |
料金の傾向 | 業務ごとの個別料金 | 月額固定制が中心 |
向いている企業 | 法令対応の確実性を重視する企業 | バックオフィス全体を任せたい企業 |
判断の基準はシンプルです。社会保険の手続きや就業規則の改定が中心なら社労士型が適しています。給与計算に加えて勤怠管理や庶務まで手放したいなら総合型でしょう。
中には社労士との連携機能を持つサービスもあります。顧問社労士がいる企業は、その社労士が対応しない範囲を埋める形での併用も検討できます。
契約時点の範囲だけで判断しないことが重要です。業務は必ず増えます。
例えば、繁忙期の採用対応や、法改正に伴う就業規則の見直しです。こうした業務が発生したとき、同じ委託先に追加で頼めるかどうかで運用の手間が変わります。
業種・業界に制限がなく、特殊な人事労務にも柔軟に運用を調整できるサービスは、変則的な勤務形態を持つ企業にとって選択肢になります。シフト制や複数の給与体系がある場合は、対応可否を事前に確認しましょう。
確認したい項目は次の通りです。
将来の変化まで見据えて選べば、乗り換えの手間を避けられます。
最後は費用の確認です。単純な月額比較では判断を誤ります。
料金表が明確に提示されているか、追加費用が発生する条件は何かを事前に確認しましょう。複数社から見積もりを取得し、同じ業務範囲での総額を比較すると分かりやすくなります。
年間総額での比較をおすすめします。年末調整や賞与計算は特定の月にしか発生しないためです。月額だけを見ていると、繁忙期のスポット費用を見落とします。
契約期間の縛りや解約時の条件も確認しておくと、万が一サービスに不満があった場合でも対応しやすくなります。最低契約期間が1年なのか1カ月なのかは、必ず押さえておきたい条件です。
ここからは具体的なサービスを紹介します。それぞれ得意な領域が異なります。自社の委託範囲と照らし合わせて参考にしてください。
株式会社ニットが運営する、チームによるオンライン業務代行サービスです。専属のディレクターが窓口となり、業務に応じたアシスタントチームが対応します。
人事領域では、採用まわりの実務を任せられます。採用事務局の運営や面接日程の調整、広告媒体の運用といった業務をオンラインアシスタントが担う体制です。採用が動き出すと日程調整だけで一日が終わる、という状況の解消につながるでしょう。
対応時間の柔軟さも特徴です。コアタイムは設けられておらず、海外に住むメンバーもいるため、時差を利用して幅広い時間帯に対応できます。
マルゴト株式会社が提供する月額制のバックオフィス代行サービス「まるごと管理部」の一つです。人事労務業務を代行する労務プランと、経理財務業務を代行する経理プランがあり、それぞれの専門チームが対応します。
現在使っているシステムをそのまま生かす上、業務状況に合ったシステムの提案・導入支援も受けられます。
マニュアル作成とフロー整備によってノウハウが社内に残る点も、外部委託への不安がある企業には安心材料になるでしょう。料金表はオンラインから無料でダウンロードできます。
フリー株式会社が提供する、給与計算・労務のクラウド型アウトソーシングです。人事管理・給与計算ソフトのfreee人事労務を用いて、専門スキルを持った人材が労務業務を運用します。
最大の特徴は、データが自社のシステムに蓄積される点です。従来のアウトソースでは委託先のシステムにデータがたまりますが、この仕組みでは自社側に残ります。
解約時の扱いも明確です。運用していたfreee人事労務の業務データをそのまま引き継げるため、データの加工やインポートの手間なく内製へ切り替えられます。将来的に社内へ戻す前提の企業に適しているでしょう。
従業員とのコミュニケーション対応は追加料金なしで受けられます。担当者が従業員との連絡役にならずに済む点は、工数削減に直結します。
株式会社Enigolが運営する、リモートバックオフィスサービス「Remoba」の労務メニューです。専属のコンサルタントとオンラインプロワーカーが担当し、労務業務をまとめて引き受けます。
パワハラの外部相談窓口や各種労務システムの導入もオプションとして用意されています。
顧問社労士がいる企業でも活用できます。社労士の変更は原則として必要なく、社労士が行わずに社内へ残る業務を代行する形です。具体的には、社労士とのやりとり、従業員からの資料回収、従業員データの更新作業などが該当します。
人事労務freeeやSmartHR、KING OF TIME、ジョブカンなど幅広いクラウドサービスに対応しています。連絡手段もSlackやChatwork、Microsoft Teamsなどから選べます。
人事代行の価値は、業務が減ることだけではありません。空いた時間を何に使うかで、投資の成果が決まります。
多くの企業が投資先に選ぶのが、社員の定着と組織づくりです。定型業務に追われている間は着手できなかった領域でしょう。
ただ、ここでつまずく企業も少なくありません。制度を作っても現場に浸透せず、形だけ残ってしまうケースです。社内に専任者がいない状態では、設計から定着までを自力で回すのは負担が大きいと感じるのではないでしょうか。
その部分を外部の知見で補う選択肢もあります。TUNAGコンサルティングは、人事制度、育成、文化、労務といった組織課題をまとめて扱う伴走型のサービスです。「定着」の先にある「活躍」する組織を目指し、150万人分のデータと知見を基に組織変革プランを提案します。
特徴は、提言だけで終わらない点です。プロジェクトリーダーや組織開発スペシャリストなどの専門人材が連携し、課題の特定から戦略設計、実行支援、定着までを一気通貫で支援します。
人事代行で手放すのは、成果に直結しにくい定型業務です。生まれた時間を組織づくりに向ければ、人事の役割は事務の担い手から組織の設計者へと変わっていきます。まずは委託範囲の洗い出しから、始めてみてはいかがでしょうか。