エルダー制度とは?期待できる効果や実施手順、導入事例を紹介
新入社員の早期離職は、多くの企業が直面する課題です。その解決策の一つとして導入が進んでいるのが「エルダー制度」です。本記事では、エルダー制度の基本概念やメンター制度との違いを解説し、導入による具体的なメリットを紹介します。
目次
エルダー制度とは
エルダー制度はメンター制度とは異なり、より実務に密着した指導が特徴です。社員のフォローアップのためにエルダー制度を導入する企業も少なくありません。
まずは、エルダー制度の基本的な仕組みと、メンター制度との違いについて詳しく解説します。
年齢の近い先輩社員が教育すること
エルダー制度は、新入社員が職場に適応しやすい環境をつくるために、年齢の近い先輩社員が教育を担当する仕組みです。この制度では、新入社員が身近な先輩から仕事の進め方や社内ルールを学び、実務のスキルアップを図ることができます。
特に、同世代の先輩が指導を行うことで、指導内容が新入社員にとって実践的で理解しやすくなります。
また、新入社員にとっても年齢の近い先輩であれば、質問がしやすく、心理的な負担が軽減されるため、職場への適応スピードが上がります。
こうした関係性が構築されることで、新入社員の定着率向上やチームの結束力強化にもつながるのです。
エルダー制度とメンター制度の違い
エルダー制度とメンター制度は似ているように見えますが、それぞれ目的や役割に違いがあります。以下に、その違いを表にまとめました。
エルダー制度 | メンター制度 | |
---|---|---|
目的 | 新入社員の業務習得をサポートし、即戦力化を促す | キャリア形成やメンタルのサポートを行う |
指導者 | 年齢の近い先輩社員 | 年齢の近い年上の先輩社員や、社歴が近い先輩社員 |
関係性 | 実務に密着した指導 | 直属の上司とは異なる立場の相談役 |
支援内容 | 業務の具体的な進め方や技術的サポート | キャリア相談や精神的な支援 |
期間 | 比較的短期間(新人研修の一環として) | 長期間(中長期的な成長支援) |
企業の活用 | 早期戦力化を目的とする企業に向いている | 社員の定着や成長を重視する企業に向いている |
このように、メンター制度がキャリアやメンタル面のフォローアップを目的としているのに対し、エルダー制度は実務スキルの定着を促し、新入社員の早期戦力化を目指す仕組みとして導入されるケースが多いのです。企業の目的に応じて、どちらの制度が適しているのかを判断し、適切に活用することが重要です。
エルダー制度で期待できる効果
以下では、エルダー制度によって得られる具体的な効果について解説します。
新入社員の早期離職を防げる
新入社員の早期離職は、多くの企業にとって大きな課題です。その主な原因として「職場の雰囲気になじめない」「業務についていけない」「相談できる相手がいない」といった点が挙げられます。エルダー制度は、こうした問題を解決するための有効な手段の一つです。
年齢の近い先輩社員がサポートすることで、新入社員は仕事の進め方や社内ルールをスムーズに理解できるようになります。
また、困ったときに気軽に相談できる環境が整うため、孤立を防ぎ、精神的な負担を軽減できます。特に入社後の数ヶ月間は、不安や疑問が多く生じる時期であり、フォロー体制が充実していることで、安心して業務に取り組めるようになるでしょう。
社内コミュニケーションが活性化する
エルダー制度の導入は、社内コミュニケーションの促進にも効果的です。新入社員とエルダーとの密なやりとりを通じて、職場内での関係性が強化されます。
特に、新入社員が年齢の近い先輩と日常的にコミュニケーションを取ることで、意見を伝えやすい環境が整います。
その結果、職場の風通しが良くなり、チーム全体の一体感が向上するでしょう。また、エルダーを中心に他の社員とも関わる機会が増えるため、部署を超えた交流が生まれることもあります。
組織内のコミュニケーションが活性化すると、新入社員だけでなく、既存社員にとっても働きやすい職場環境が構築され、結果的に業務効率の向上や企業文化が強化されるでしょう。
エルダーのマネジメントスキルを鍛えられる
エルダー制度は、新入社員をサポートする側の先輩社員にとってもメリットがあります。エルダーとして指導に携わることで、マネジメントスキルの向上が期待できるのです。
具体的には、エルダーは新入社員に対して業務を教えるだけでなく、メンタル面のサポートや成長を促す役割も担います。指導力やコミュニケーション能力が鍛えられ、リーダーシップの向上にも期待が持てます。
エルダー制度を経験した社員は、将来的に管理職へとステップアップする際に必要なスキルを身に付けやすくなります。そのため、エルダー制度は新人育成だけでなく、組織全体の人材育成にも貢献する仕組みといえるでしょう。
エルダー制度の実施手順
エルダー制度を効果的に機能させるためには、導入前の準備や適切な運用が欠かせません。早期離職の原因分析からエルダーの選定、制度の運用、効果測定までの流れを詳しく説明します。
早期離職の原因を明確にする
エルダー制度を導入する前に、まずは新入社員の早期離職の原因を分析し、企業が抱える課題を明確にすることが重要です。
課題を整理するためには、過去の離職者へのアンケート調査や現場のヒアリングを実施し、具体的な問題点を把握することが有効でしょう。
業界や職種ごとに異なる要因があるため、自社の実情に即した分析を行うことが求められます。
エルダー制度の導入を社内に周知する
エルダー制度を効果的に機能させるためには、制度の目的や運用ルールを社内に周知することが不可欠です。特に、エルダー役を担う先輩社員には制度の意義を十分に理解してもらう必要があります。
社内への周知方法としては、説明会の開催や社内報、イントラネットを活用した情報共有が有効です。導入時には、エルダーとなる社員だけでなく、全社員に向けて制度の目的や期待される効果を伝え、理解を深めてもらうことが重要です。
また、エルダー制度を円滑に運用するためには、新入社員自身にも制度の存在を認識してもらい、積極的に活用できる環境を整えることが求められます。
エルダーを選定し環境を整備する
エルダーとして適任な社員を選定することも、制度を成功させるための重要なステップです。エルダーには、単に業務スキルが高いだけでなく、後輩への指導力やコミュニケーション能力が求められます。そのため、選定の際には以下のような基準を設けることが有効です。
- 社歴が数年程度で、業務経験が豊富な社員
- 後輩指導に積極的で、コミュニケーション能力が高い社員
- 責任感があり、指導役として適任な社員
また、エルダーが指導しやすい環境を整備することも重要です。例えば、定期的な面談の機会を設ける、エルダーが抱える課題を相談できるサポート体制を構築するなど、企業側のバックアップが制度の成功を左右します。
エルダー制度の運用を開始する
エルダーの選定が完了したら、いよいよ制度の運用を開始します。効果的な運用を実現するためには、以下のようなポイントを押さえておく必要があります。
- エルダーと新入社員のペアリングを決定する
- 指導計画を策定する
- 定期的な振り返りを実施する
運用開始後は、エルダーだけに負担が偏らないよう、管理職や人事部が適宜サポートを行うことも重要です。
効果測定と改善を行う
エルダー制度を継続的に運用し、その効果を最大限に引き出すためには、定期的な評価と改善を行うことが不可欠です。
効果測定の結果を基に、制度の改善点を洗い出し、必要に応じて運用方法を見直すことが求められます。
「指導の頻度を増やす」「エルダー同士の情報交換の場を設ける」「評価制度を導入する」といった施策を講じることで、より実効性の高い制度に進化させることができるでしょう。
エルダー制度は、一度導入すれば終わりではなく、継続的な改善を行うことで、より良い育成環境を構築できるのです。
エルダー制度の導入事例
実際にエルダー制度を導入し、新入社員の定着率向上に成功した企業の事例を紹介します。大和ハウス工業株式会社や社会福祉法人園盛会など、異なる業界での取り組みを参考にしながら、自社導入のヒントを探りましょう。
大和ハウス工業株式会社
大和ハウス工業株式会社では、新入社員の職場適応と成長を支援するため、「OJTエルダー制度」を導入しています。この制度では、中堅社員がエルダーとして新入社員をサポートし、部門内外の関係者と連携しながら育成を担当します。
同社の社員教育は、「多くの人の役に立ち、喜んでもらえる事業や商品を提供する」という創業者の精神を基に、OJTとOFF-JTを組み合わせた体系的な制度を採用しています。
特に新入社員に対しては、エルダーとなる中堅社員に指導方法の研修を実施するなど、細やかな支援体制を整え、スムーズな職場適応を促しています。
参考:大和ハウス工業の「社員を満足させる」秘訣 創業から63年、改革し続ける企業の信念
社会福祉法人園盛会
社会福祉法人園盛会では、「互いに尊敬し、教え合うこと」を重視し、職員全体で技術向上を目指す文化があります。
その一環として、新入社員職員を対象とした育成システム「エルダー制度」を導入し、特別養護老人ホーム多摩の里けやき園で運用しています。
対話の質が向上し、新入職員からも高い評価を得ているとのことです。また、資格取得支援制度も用意されており、福祉の知識がない状態で入職した職員でも、安心して成長できる環境が整っています。
エルダー制度で新入社員の定着率向上を図る
エルダー制度は、新入社員が職場にスムーズに適応し、定着率を向上させるために効果的な仕組みです。
年齢の近い先輩社員が指導を担当することで、新入社員が気軽に相談できる環境を整え、早期離職のリスクを軽減します。また、実務に密着したサポートを受けられるため、業務への理解が深まり、スキルの習得スピードも向上します。
エルダー制度は単なる新人教育の枠を超え、社内コミュニケーションの活性化や組織の成長にもつながる重要な施策です。
企業が長期的に人材を育成し、安定した経営基盤を築くためには、この制度を適切に活用し、定着率向上に向けた環境整備を進めることが求められます。