【社会保険】月額賃金が88,000円を超えたり超えなかったりする場合どうなる?加入条件や注意点

月額賃金が88,000円以上になると、従業員の社会保険への加入義務が発生する場合があります。事業主は88,000円の基準に含まれるものを含め、社会保険の加入条件を知っておくことが大事です。社会保険のメリットとともに、基本事項を押さえておきましょう。

社会保険の加入条件88,000円とは?

社会保険の加入条件はさまざまで、月額賃金88,000円以上も条件のひとつです。アルバイトやパートを雇用する事業主は、条件をきちんと押さえておく必要があります。

月額賃金88,000円以上が加入条件のひとつ

正規雇用の従業員(正社員)は社会保険の加入対象であり、事業主は雇用後、必ず社会保険への加入手続きをしなければいけません。一方、アルバイトやパートといった短時間労働者の立場でも、条件を満たすことで社会保険に加入することになります。

月額賃金88,000円はその条件のひとつであり、社会保険の加入条件を満たしていれば、短時間労働者でも加入手続きが必要です。加入が必要であるにもかかわらず手続きを怠っていると、罰則を受ける可能性があるので、事業主は十分注意しなければいけません。

88,000円の基準に含まれるものは?

社会保険の加入条件である月額賃金88,000円に含まれるのは、基本給と各種手当です。ただし、各種手当のうち、次のものは賃金には含まれません。

  • 臨時支給される賃金
  • 1月を超える期間ごとに支払われる賃金
  • 時間外労働による支払われる賃金
  • 深夜労働や休日労働により支払われる賃金
  • 最低賃金法において算入しないことを定められた賃金

結婚手当のように臨時支給されるものをはじめ、賞与や割増賃金・通勤手当・家族手当といったものは、月額賃金には含まないので注意しましょう。

88,000円を超えたり超えなかったりした場合は?

これまで、88,000円以下の賃金で働いていたパートやアルバイトの従業員が、繁忙期で出勤機会が増えたことで、88,000円の条件を超えるケースも考えられます。

たとえ一時的に、社会保険の加入条件を満たしたとしても、雇用契約において賃金が88,000円以下に設定されている場合は、加入の必要はありません。

逆に、これまで月額賃金88,000円以上で働いており、社会保険に加入していた従業員が、一時的に月額賃金の条件を下回る可能性もあります。その場合も、社会保険から除外されることはありません。

社会保険の加入条件をまとめて理解しよう

アルバイトやパートなど短時間労働者の社会保険の加入条件を、具体的に解説します。月額賃金88,000円の条件に加えて、以下の点もきちんと押さえておきましょう。

アルバイトやパートの加入条件

パートやアルバイトなどの短時間労働者が社会保険に加入する条件は、次の通りです。

  • 月額賃金が88,000円以上であること
  • 週の所定労働時間が20時間以上(30時間未満)であること
  • 2カ月間を超える雇用の見込みがあること
  • 学生の立場ではないこと(※夜間や定時制の学生は加入対象)
  • 事業員規模が51名以上の事業所に勤めていること(※2024年10月~)

労働時間や雇用期間に加えて、学生の立場ではないことも条件のひとつです。ただし、夜間や定時制の学生だったり、休学中だったりする場合は加入対象です。また後述するように、従業員規模も条件となります。

2024年10月から社会保険の適用拡大へ

2024年の9月時点では、従業員数が101名以上の事業所に勤めていることが、社会保険の加入条件にひとつでした。しかし10月からは社会保険適用拡大により、51名以上の従業員のいる事業所も対象となるので、事業主は注意が必要です。

社会保険の対象は徐々に広まっており、今後の法改正でさらに変更になる可能性もあります。労働関連法規に関しても、定期的にチェックしておきましょう。

出典:社会保険適用拡大ガイドブック|厚生労働省

社会保険に加入するメリットは?

社会保険に加入するメリットも理解しておきましょう。従業員にとっては将来受け取れる年金の額が増えるのに加えて、傷病手当金や出産手当金が受給できる場合もあります。

将来の年金額が増える

社会保険(厚生年金保険)に加入することで、対象者は国民年金と厚生年金がどちらも受け取れるようになり、老後の生活が安定しやすいのがメリットです。

保障内容も充実するので、さまざまなリスクに備えられるようになりのも、従業員にとっては嬉しいところでしょう。保険料も事業所と従業員が折半するため、経済的な負担も軽減できます。

傷病手当金・出産手当金が受給できる

社会保険(健康保険)への加入により、傷病手当金や出産手当金の対象にもなり得ます。病気やけがのため会社を休むことになった従業員が、その期間分に給与の支払いを受けていない場合、給与の3分の2相当の支給を受けられるのが傷病手当金です。

一方、産休期間中に、給与の3分の2相当の支給を受けられるのが出産手当金です。いずれも経済的な負担を軽減できるので、従業員にとっては大きなメリットといえます。

失業給付を受けられる場合もある

就業時間が週に20時間以上の場合、雇用保険に加入できます。雇用保険に加入していれば、失業給付や育児休業給付を受けられるのもメリットです。

失業給付は失業期間中、離職前賃金の45~80%の支給を受けられる制度です。これにより給付を受けながら、再就職先や転職先を探せるようになるので、特に雇用が不安定なアルバイトやパートの立場にある人にとっては、大きな安心材料となるでしょう。

また、育児休業給付は育児休業中、休業前賃金の67%相当(半年後から50%)の支給を受けられます。出産・育児には相応の費用がかかるので、こちらも従業員にとっては大きなメリットとなる制度です。

社会保険に加入するデメリット

社会保険は上記のように、企業に働く従業員にとって、さまざまなメリットがあります。しかし一方で、以下のデメリットもあるので、どちらもよく理解しておく必要があります。

手取りが減る可能性がある

パートやアルバイトの立場の従業員が、継続的に条件を満たしている場合、社会保険への加入が必要になるケースもあります。しかし社会保険に加入すると、保険料が給料から天引きとなるため、手取り額が減ってしまうので注意しましょう。

従業員によっては、手取りが減ることを理由として、社会保険に加入したくないと考える人も少なくありません。ただし、社会保険には多くのメリットがあるので、どちらもよく理解した上で、加入すべきかどうか検討しましょう。

引かれる保険料はどれぐらい?

社会保険は次のように、健康保険や介護保険など、種類によって保険料率や負担割合が異なります。

  • 健康保険料:給与の約5~10%程度
  • 厚生年金保険料:給与の約18%
  • 雇用保険料:給与の約0.3~0.6%程度
  • 介護保険料(40歳以上の場合):給与の約1.5~1.6%程度

例えば、毎月の給与が200,000円(賞与なし)の25歳の従業員の場合、57,000~59,000円程度が保険料となります。しかし、社会保険料は会社と折半して納付するため、従業員が負担する保険料は月に28,500~29,500円程度です。

これはあくまでも大雑把なシミュレーションなので、参考値として留めておきましょう。健康保険料や厚生年金保険料などは、都道府県によって保険料額が異なるので、自分で計算してみることが大事です。

社会保険への加入を避ける方法や注意点

上記のように、アルバイトやパートとして働いている人の中には、手取り額が減るために、社会保険に加入しない方が良いと考えている人もいます。短時間労働者が社会保険への加入を避けるには、月額賃金が88,000円を超えないように調整したり、労働時間を短くしたりする方法があります。

ただし、社会保険はさまざまな恩恵を受けられる制度なので、きちんとメリットを説明することも大事です。従業員の状況をよく確認し、相手の希望や意見をよく聞いた上で、社会保険に加入させるべきか否か慎重に検討する必要があるでしょう。

社会保険の加入条件を理解してトラブルを防止する

アルバイトやパート従業員の社会保険の加入条件には、月額賃金が88,000円以上であることが含まれています。一時的に、月額賃金が88,000円を超えたり超えなかったりする場合、加入の必要はありません。

しかし、従業員が継続して条件を満たしている場合、3カ月目からは社会保険への加入が必要になるので、注意が必要です。加入が求められているにもかかわらず、手続きをしていないと罰則の対象となる恐れがあります。特に事業主は、社会保険の加入条件と手続きについて、よく理解しておきましょう。

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