TUNAGで目指す、組合員主体で組合活動が活性化する組織



「どこの労働組合でも、組合員の関与が減ってきていることを課題に思われているのではないでしょうか。働き方改革やダイバーシティの問題も相まって、組合活動の質を保持しながら負担を減らす必要性に迫られる中、ITツールの活用は避けて通れません」そう話すのは、セイコーエプソン労働組合 中央執行委員長の品川友様です。

セイコーエプソン労働組合では、組合員が主体的に活動に取り組める組織を目指してTUNAG(ツナグ)を導入。ツールの導入に至った経緯や背景にある課題などを伺いました。

組織について

組合員数約1万人 全国に8支部19拠点を展開するセイコーエプソン労働組合


品川:我々セイコーエプソン労働組合では、「組合員の充実した人生の実現」「会社の成長・発展」「地域・社会の発展」をミッションに掲げています。
中期的なビジョンとしては、「つながりを深めながら、皆で変化に適応し働きがいを高めあっている。」こういう状態を目指して組合活動を進めています。

組織の概要としては、現在組合員数が約1万人。すべて正規従業員です。全部で19拠点全8支部あります。
役員の構成でいいますと、労組執行委員(中央執行委員)が18名。組合専従者は役員が10名、事務局の書記が13名です。

その中での私の役割は、ミッションやビジョンの実現に向けて組織の目指す姿や進むべき方向を示すこと。
そして、それに必要な環境整備、場合によっては対外的な折衝をすることです。
あとは、23名の専従者のマネジメント業務ですね。執行委員長ですので、あらゆる仕事に責任を負っているという立場です。

導入前に課題に感じていたこと

「情報が行き届いていない」情報発信の仕方を模索していた

〜TUNAG導入前、セイコーエプソン労働組合様ではどんな課題をお持ちでしたか?〜

品川:組合からの情報が、組合員に十分に届いていませんでした。
例えば、こちらはしっかり説明しているつもりなのに、それがまったく伝わっていないような意見が組合員から出てきたり。
アンケートでも、すでに組合で取り組んでいることについて「なぜ組合はやってくれないんだ」と書かれることがあったんです。

やはり我々としては発信してるんだけども、届いてないんだろうなと。
それで、情報の届け方も見直していかなきゃいけないだろうなという中で、それまで使っていた組合のホームページは20年前に導入したもので、ビジュアルの古さや、スマートフォンでの閲覧に対応しきれていないなどの問題がありました。
システム自体が古いので、今の組合員の感覚に合う形で情報を伝えたくても、どうしても制限がありました。

それに、ホームページからでは一方通行の発信しかできません。
情報を取りたいと思うきっかけがあれば見にきてくれますが、そうでなければ見にきてもらえません。
実際にアクセスログを見ると見にきているのは全体の2割程度で、役員とか組合活動にポジティブな方がアクセスしているんだろうなという感じでした。

今は在宅勤務などもあって組合活動の入り口がオンラインになってきている中で、入り口のコミュニケーションツールは本当に一方向だけでいいんだろうか、本当に組合員がきちんと組合活動を認識して関与して一緒に活動していく入り口になるんだろうかという課題感がありました。

TUNAG導入のきっかけ

「ワクワクを見つけよう」をコンセプトに、システムの検討を開始


品川:システム導入にあたっては、コンセプトの検討からスタートしました。
単純な情報発信の場というよりも、組合員がそこに来るとワクワクする場にしたい。
そこでコンセプトを「ワクワクを見つけよう」にして、それを実現するキーワードとして4つを掲げました。

1つ目が、新しさ。
組合のホームページに古いイメージがついているので、新しくなったよねというイメージを明確にして、組合活動が変わったと認識してもらいたかったんです。
2つ目が、親しみや愛着です。
「誰かが作ったページ」ではなく「自分が関わる場所なんだな」と感じられる、自分らしさのあるツールであること。
3つ目は、気づく・学ぶ。
我々がビジョンに掲げた「働きがい」につながるような気づきや学びが得られる場であること。
4つ目が、人とつながることです。
組合側が箱を用意してそれを見るだけではなくて、せっかくならばそこに来て仲間とつながって、自分たちでどんどん輪を広げられるような、起点になるようなシステムが望ましいだろうと考えました。

スマホで見れるのが前提、双方向コミュニケーションと導入スピードが決め手に


品川:そうしたコンセプトのもと、前提として「スマホで見れないシステムは初めから選ばない」っていうぐらい、自分が見たいときに見れることは重要なポイントでした。
どこの労働組合もそうだと思うんですが、企業内労働組合だからといって社内で情報を見られればいいという時代ではありません。
例えば自宅で家族と一緒に組合の情報を見れるという瞬間も重要で、組合員が見たいと思ったときに、制約がない形で見てもらえることが大事だと思っていて、それができるツールを探していました。


〜どこからでもアクセスできることで、セキュリティ面を心配する声はありませんでしたか?〜

品川:ありました。特に、情宣ニュースと呼んでいる情報は完全に社内情報なので、セキュリティの問題があるなと。
かといって社内イントラ以外で見られないようにすると、本来見れるべき人たち、例えば営業で外回りをしている人や、海外出張、海外赴任している人もアクセスできません。
画面を開くと見れてしまうじゃないかという話もあるんですけど、それを言うなら紙で配ってるものも全く同じことが起こりますよね。
セキュリティの限界はどこかにあるので、システムの中でできる範囲で線を引くことで対応していきたいです。


TUNAGの運用について

組合員発信で「やりたいこと」が実現できるプラットフォームに

〜今後の組合活動の推進において、TUNAGをどのように活用される予定ですか?〜

品川:以前のホームページの置き換えという側面もありますので、従来通りきちんと我々から組合員に情報を届ける発信媒体としての活用は基本にあります。
ただ、一番の活用の目玉というのは、TUNAGを媒介して組合員同士がつながって、自分たちがやりたいことを始めたり、仲間を募ったり。
そういったコミュニケーションツールとして活用していくのを一番のポイントにしたいです。

具体的には、これまで組合員の声はアンケートなどで我々執行部が受け取って特定の媒体に織り交ぜる形だったんですけど、組合員から直接声を発信していきたいです。
例えばセミナーに参加してどう思ったかのレポートも、我々役員が発信するよりも、実際に参加した人たちが「こう思った」と発信してくれたほうが、それを見た人が「参加してみようかな」という気持ちになるんじゃないでしょうか。
組合員が発信して、それを組合員が拾ってつながりに昇華させられたら、TUNAGを導入した価値をより高められるんじゃないかと思います。

支部役員と本部専従役員で分担して運用体制を構築、告知には情宣媒体をフル活用

〜今後、どのような体制でTUNAGを運用されていきますか?〜

品川:現時点で想定しているのは、全体の統括責任者1名を専従者で置くのと、サポートとしてあと2名程度はやはり必要かなと思っています。
IT部門出身の非専従の支部長がいるので、そうした専門性のあるメンバーも入れながら、本部としては3名くらいの体制を作る予定です。
また、コンテンツの変更や管理は各支部でどんどんアップデートしていく必要があるかなと思うので、8支部それぞれに1名は担当をつけたいと思っています。

トータルで、全体として13名から15名くらいをざっくりイメージしている状況です。
役割分担も考えていきたいと思っていて、瞬発力というかタイムリーに発信したほうが良い内容は本部専従役員がやりながらも、組合員同士のつながりを促進したり、サポートするようなアクションは支部役員から発信したほうがいいのかなと考えています。


〜組合員が約1万人とかなり大人数ですが、TUNAGをどう周知していくのでしょうか〜

品川:そこが最大の課題ですね。現状持っている情宣媒体をフル活用して周知していきたいなと思っています。
当然ニュースも出しますし、各支部で職場役員を集めて行われる代議員会の場で具体的に画面を見せたり、大会に参加してくれた人に認知してもらうなどしたいですね。
機関誌でも大々的にアピールして、ダイレクトメールにちょっとリンクを貼って置くとか、複合的な形で周知していきたいと思っています。

「身近に感じる労働組合」イメージの刷新につながることを期待

〜運用にあたって目標にしていることはありますか?〜

品川:指標としては登録数ですね。
登録は任意ですが、せっかく導入するなら、8割とか9割を目指して粘り強くやっていきたいと思っています。
一方で、登録しても使われなければ意味がないので、アクセス数など利用実態は見ていきたいですね。

それから、我々は年に1回、組織診断アンケートをやっていて、その中で設問として「組合を身近に感じますか?」「組合を通じて取り組みたいことは何ですか?」という質問をしています。
これに対して、「より身近に感じる」「人的交流に取り組みたい」などのポジティブな回答が少しずつでも増えているかどうか、指標として見ていきたいと考えています。
指標以外でも、このプラットフォームを使って組合員発信でいろんな活動が起こるといいですね。

例えばですけども、「社内のこういうことが知りたいんだけど、誰か教えて!」と発信した人に対して、「教えられるよ!」「せっかくだから仲間を募ってやってみよう」と何か活動が起こるとか。
もっといい仕事をしよう、もっと会社生活を充実させようという主体的な動きがわずかでも起こったり、「労働組合でそういうことができるんだね」「やっていいんだ、だったらもっとみんなでやってみよう」とイメージの刷新みたいなものに繋がるといいなと考えてます。


組織が目指す姿

組合員一人ひとりが主体的に取り組める組織を目指して

〜セイコーエプソン労働組合様としてどのような組合を作りたいと考えていますか?〜

品川:これまでは終身雇用が前提で、処遇条件やキャリアについては会社側からある一定の型が提示されてきました。
その型の中で、みんな一緒に頑張ることで成長してきたのがこれまでの日本だと思うんですが、今後は労働者一人ひとりが自立して「自分がどう働きたいのか、どう生きていきたいのか」を考えた上で、会社で働くことについて判断したり見極める時代になっていくと思います。

1人1人の価値観も多様化してきている中で、従来の労働組合の活動の延長線上では、労働者として力を合わせることの意味や価値を生み出しにくくなってきているんだろうなと。
例えばこれまでは、我々執行部が組合員に必要な活動を考えて、用意して、参加してもらう形でしたが、これでは受け身のサービスを享受するような活動になってしまいます。
組合員がやりたいことを、労働組合という組織を通じて実現できる。組合員一人ひとりが主体的な取り組みができる組織に転換していかなきゃいけないだろうと考えています。

ITツールを活用して知見を蓄え、業界全体として環境変化に対応したい

〜最後に、労働組合でのIT活用について、ほかの労働組合の方にメッセージがあればお願いします〜

品川:そうですね。おそらくどこの労働組合さんも、組合員の関与が減ってきていることを非常に課題に思われていると思うんですね。
そこに加えて、昨今は働き方改革などで労働時間を短縮する動きがあり、「定時後に残って組合活動をやってていいの?」とか、テレワークで物理的に集まれない状況が出てきたり。

さらにダイバーシティもありますよね。
労働組合でも女性の役員をもっと増やしたり、もっと言うと子育てしてたって組合活動ができるぐらいじゃないといけないんじゃないか。
そうすると、従来のような活動では限界があるんだろうと思います。

それを改善するために、時間を削って質を落とすのではなく、一定の質は保持しながら負担を下げることが必要になってくる。
そうなると、ITツールを活用するというのは避けて通れません。
ITツールやオンラインのデメリットを懸念される労働組合さんは少なくないと思いますが、大事なのはツールの使い方を間違えないことだと思います。

今はまだ組合活動の中でITツールについて知見が足りない状況なんだろうと思いますが、これからいろんな労働組合でITツールを活用して知見を蓄えていけると、業界全体が環境変化に対応する力をつけていけるんじゃないか、そんなふうに思っています。

〜品川様、お話しいただきありがとうございました!〜

TUNAG お役立ち資料一覧
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