経営層の高齢化が進む一方で、次の経営を担う人材が十分に育っていないと感じている企業も多いのではないでしょうか。これまで、社内で経験を積んだ人材が自然と幹部になってきた企業も少なくありません。しかし、将来の経営を安定させるためには、候補者を早い段階から選び、計画的に育成する仕組みが必要です。本記事では、幹部候補に求められる要件や候補者の見極め方、育成プログラムの進め方まで解説します。
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幹部候補とは、将来的に経営層や重要なポジションを担うことを期待される人材です。
単に仕事ができる人や、高い実績を上げている人を選べばよいわけではありません。まずは、幹部候補に何を求めるのかを明確にしておきましょう。
管理職として優秀だからといって、そのまま幹部としても活躍できるとは限りません。管理職と幹部では、求められる視点や責任の範囲が異なるためです。

例えば、自部門の予算を減らしてでも、成長が期待できる別部門に資金を振り向ける必要がある場合を考えてみましょう。
管理職であれば、自部門の成果を守ることが重要です。一方、幹部には自部門だけでなく、会社全体にとってどの判断が最善なのかを考えることが求められます。
そのため幹部候補には、担当部門を越えて会社全体を見る視点が必要です。
幹部候補には、経営理念を深く理解することも求められます。
ただし、理念の文章を覚えているだけでは十分ではありません。「自社は何を大切にしているのか」「なぜこの事業を行うのか」を、自分の言葉で説明できることが重要です。
さらに、理念を実際の経営判断や行動につなげる力も必要です。
経営層が考えている方向性を理解し、それを具体的な方針として現場に伝える。反対に、現場の状況を経営層に伝える。こうした経営と現場をつなぐ役割も、幹部には求められます。
幹部候補には、組織を目標に向かって動かすリーダーシップも欠かせません。
見極めたいのは、役職や権限がなくても周囲が動くかどうかです。例えばプロジェクトなど、指揮命令の関係にない場面での振る舞いが手がかりになります。
例えば、次のような力が求められます。
自分一人で成果を上げるのではなく、周囲の力を引き出しながら組織として成果を出せる人材かどうかを見極めることが重要です。
幹部候補を選ぶ際に、評価者の感覚だけで判断すると「社長が気に入っているから」「実績が目立つから」といった理由で人選が偏る可能性があります。
そのため、候補者を選ぶ前に評価基準を決めておきましょう。
幹部候補の評価軸として、例えば次の5点が挙げられます。
どの能力を重視するかは、企業によって異なります。自社の経営戦略や将来像と照らし合わせて評価基準を定め、評価する側の認識もそろえておきましょう。
幹部候補に求める要件が決まったら、次は候補者を選びます。
選び方が決まっていないと、上司の好みや過去の実績だけで判断されるなど、人選が属人的になりかねません。継続して幹部を育てるためにも、選抜の仕組みを整えておきましょう。
これまでは、たまたま社内に適任者がいて経営陣が整ってきた。そうした企業も少なくないでしょう。しかし次の世代でも同じように見つかるとは限りません。
東京商工リサーチの調査では、2025年度の「後継者難」倒産が461件と、調査開始以来もっとも多くなりました。経営を担う人材が育っていないことは、事業の継続そのものに関わる問題です。
将来の経営を安定させるためには、数年後に必要になる経営ポストを想定し、その候補となる人材を早い段階から確保しておく必要があります。
一人だけを後継者として決めるのではなく、複数の候補者を選び、育成しておく「人材プール」をつくる方法もあります。
幹部が必要になってから探すのではなく、将来を見据えて計画的に育てる体制へ切り替えることが重要です。
出典:2025年度の「後継者難」倒産 過去最多の461件 5年連続400件台、サービス業他や建設業が上位 | TSRデータインサイト | 東京商工リサーチ
幹部候補を見つける方法の一つが、上司や部門長による推薦です。
日常的に仕事をしている上司であれば、数字として表れる成果だけでなく、周囲との関係やトラブルが起きたときの対応なども把握しています。そのため、候補者の普段の行動まで含めて評価できる点がメリットです。
ただし、推薦だけに頼ると候補者が偏る可能性があります。
例えば、推薦すれば優秀な部下が異動してしまうため、上司があえて挙げないケースも考えられます。上司との相性によって評価が左右されることもあるでしょう。
そのため、上司からの推薦だけでなく、社内公募や人事部門による選出など、複数の方法を組み合わせることが重要です。
幹部候補を公平に選ぶには、候補者を評価する手順も決めておきましょう。
例えば、次のような流れが考えられます。

特に、リーダーシップや信頼性などは数字だけでは判断しにくい項目です。
一人の評価者だけで決めず、複数の立場から評価することで、人選の偏りを抑えやすくなります。
あわせて決めておきたいのが、選抜を社内にどこまで開示するかです。
公表すれば候補者の自覚は高まりますが、選ばれなかった社員の意欲低下を招くこともあります。逆に伏せたまま進めると、本人に納得のないまま重い役割を任せることになりかねません。
どちらを選ぶにせよ、選抜の基準と次の機会の有無は社内に示しておきましょう。一度きりの選抜ではないと分かれば、受け止め方は変わります。
候補者を選んだら、次に育成プログラムを設計します。
幹部育成は、数日間の研修を受ければ完了するものではありません。経営に必要な知識を学ぶだけでなく、実際に難しい判断や責任ある仕事を経験することが重要です。
座学と実務経験を組み合わせ、継続的に育成していきましょう。

育成プログラムをつくる前に、まず「どのような幹部を育てたいのか」を決めます。
候補者を将来どのようなポジションに就けたいのか、そのポジションではどのような能力が必要なのかを明確にしましょう。
その際は、自社の経営戦略や将来の事業計画から逆算して考えることが重要です。
例えば、海外展開を進めたい企業であれば、海外事業の経験や異文化マネジメントの能力が求められます。一方、既存事業の収益改善が課題であれば、財務や業務改善に強い人材が必要になるでしょう。
自社がこれからどこを目指すのかによって、育てるべき幹部像も変わります。
求める人材像が決まったら、それに合わせて評価項目や育成内容も設計します。
経営についての知識を学ぶだけでは、実際の経営判断ができるようになるとは限りません。一方、実務経験だけを積ませても、経験した範囲の考え方に偏る可能性があります。
そこで、座学と実践を組み合わせた育成が有効です。
例えば、財務・法務・経営戦略などの基礎知識を研修で学んだ後、実際の業務やプロジェクトでその知識を使う機会を設けます。
その後、実務で感じた課題を振り返り、再び必要な知識を学ぶという流れです。
「学ぶ→実践する→振り返る」を繰り返すことで、知識を実際の判断に使える力へと変えていきます。
幹部候補を育成する上で、責任のある仕事を経験させることも重要です。
幹部になると、十分な情報がそろっていない状況でも判断しなければならない場面があります。こうした判断力は、座学だけでは身につきにくいためです。
例えば、次のような役割を任せる方法があります。
重要なのは、単に難しい仕事を任せることではありません。
定期的に上司や経営層と振り返る機会を設け、「なぜその判断をしたのか」「ほかにどのような選択肢があったのか」を考えさせることで、経験を学びにつなげます。
あわせて、うまくいかなかった場合の扱いも決めておきます。育成目的の役割で結果が出なかったことが、そのまま評価に響く運用では、候補者は挑戦を避けるようになります。判断の過程を評価する仕組みが必要です。
幹部候補は、それまで所属してきた部門によって得意分野が偏っている場合があります。
例えば、営業部門で長く働いてきた人は営業や顧客対応には詳しくても、財務や法務について十分な経験がないかもしれません。技術部門出身者であれば、技術には詳しくても営業や人事の経験が不足している場合があります。
幹部には、特定の部門だけでなく会社全体を見て判断する力が必要です。
そのため、財務三表の読み方や経営戦略だけでなく、ガバナンス、法務、リスク管理などについて学ぶ機会も設けましょう。
また、経営会議への陪席や役員によるメンタリングも有効です。
経営層が「どの情報を重視し、なぜその判断をしたのか」を間近で見ることで、経営者の考え方を学びやすくなります。
幹部育成は、一部の優秀な従業員を選んで研修を受けさせれば終わるものではありません。将来の経営戦略から必要な人材像を定め、候補者を選び、実務経験を通じて継続的に育てていくことが重要です。
そのためには、人事部門だけでなく、経営層や各部門も育成に関わる必要があります。候補者に責任ある仕事を任せ、定期的に評価やフィードバックを行いながら、必要に応じて育成内容を見直していきましょう。
経営を担える人材が組織内に複数いれば、退職や異動が起きても対応できます。人材プールの考え方は、リスク管理としても有効です。
経営を担える人材が組織内に複数いれば、退職や異動などが発生した場合にも対応しやすくなります。
まずは、3年後に空くポストを一つ書き出すところから始めてみてはいかがでしょうか。そこから逆算すれば、今誰を育てるべきかが見えてきます。