内定式でエンゲージメントの強化を! 内定式の基礎知識から入社意欲を高める工夫まで
内定式後の辞退が出る、コロナ禍以降しばらく対面での内定式を控えていたなどの事情で、式の設計を見直したい企業もあるでしょう。企業が内定式の設計を考えるに当たって必要な基礎知識とともに、就活生の入社意欲が高まる内定式づくりのポイントを紹介します。
内定式についての基本知識
内定式は、一般的に就活生を対象として、正式に内定を伝えるための式典です。内定式を実施している企業の現状や時期のルールなど、基本的な知識をおさらいしておきましょう。
内定式がある企業・ない企業がある
内定式は正式な内定を通知するために実施されますが、内定式がなければ内定を決定できないわけではありません。
内定の手続きは内定式で実施されることが多くあります。ただ、「内定通知書」「採用通知書」「内定証書」など正式に内定が決まったことを示す書類をメールや書面で送付し、就活生がそれに承諾すれば入社が決まります。人件費やリソース不足などで、内定式ができない場合は実施しなくても問題ありません。
とはいえ内定式には、企業・学生双方にメリットがあります。予算や企業の方針とメリットを考慮して、実施を決めましょう。
内定式の目的は「通知」だけではない
企業が内定式を実施する目的には、内定の正式な通知以外に次のようなものがあります。
- 学生に入社意欲を持ってもらい、内定辞退を防ぐ
- 企業について深く理解してもらう
- 入社意思の最終確認をする
- 内定者同士や内定者と先輩社員との交流を深め連帯感を高める
- 入社に必要な書類の手続きを行う
内定式後に内定辞退者が出るなど、内定式が学生に「響いていない」と感じるなら設計の見直しが必要でしょう。内定式で説明した企業の理念について、新卒社員が理解していないと感じる場合も同様です。
実施形式は対面が主流
コロナ禍以降は、オンラインでの内定式も増えました。ただ、現在はリアル(対面)で実施している企業が多いようです。必要書類の手続きとともに、より深い交流などを目的としていると考えられます。
学生側も、リアルでの実施を望む傾向があるようです。リアルでの内定式には、実際にほかの内定者と交流したり、社員と顔合わせをして企業の雰囲気を実感したりできるメリットがあります。
内定式が10月1日に集中する理由と現在のルール
新卒採用者の内定式は、卒業・修了年度の10月1日に行われるのが一般的です。これは以前、日本経済団体連合会(以降「経団連」)が主導して採用スケジュールなどを定めた指針で、正式な内定日を卒業・修了年度の10月1日以降と定めていたことによります。
しかし経団連は指針を廃止すると発表し、2021年春の入社から経団連主導の指針は適用されないことになりました。以降は政府が主導して、採用日程のルールを守るよう経済団体などに呼びかけている状態です。ただ経団連が主導していたときの「正式な内定日は卒業・修了年度10月1日以降」という日程ルールは、現在も引き継がれています。
日程のルールは今後変わる可能性もあるため、内定式の実施時期については、厚生労働省のサイトで毎年発表されている情報を確認して決めましょう。2026年度卒の日程ルールは、2025年7月25日時点ですでに発表されています。
参考:大学等卒業・修了予定者の就職・採用活動時期について|厚生労働省
内定式の一般的な流れと内容
内定式の設計を見直すに当たっては、まず自社が実施している内定式の内容を振り返りましょう。一般的な流れやプログラムごとの目的を紹介するので、自社の内容と照らし合わせてみてください。
内定式の流れと所要時間
一般的に内定式は、次のような流れで実施します。
- 社長・役員のあいさつで式を始める
- 内定通知書(内定証書)を授与する
- 内定者に自己紹介してもらったり先輩社員と交流させたりする
- 必要書類の提出を受け、内定式後のスケジュールを伝える
通常、内定式の時間は2時間程度に収まります。ただ、内定者同士や内定者と先輩社員の交流のために座談会などを設ける場合は、合計で3〜4時間に及ぶ可能性もあるでしょう。
プログラムごとの内容と目的
一般的な内定式で実施されるプログラムには、それぞれに目的があります。流れで挙げたプログラムごとに、具体的な内容と目的を見てみましょう。
プログラム | 具体的な内容 | 目的 |
社長・役員のあいさつ | 企業理念や今後の展望、求める人材像を内定者に伝える | 企業理解を深めてもらい、入社後の役割についての理解を促す |
内定通知書(内定証書)の授与 | 社長から内定者に1人ずつ内定通知書を手渡すか、内定者の代表にのみ手渡す | 内定したことを確実に伝え、企業の一員として入社する実感を持ってもらう |
内定者の自己紹介 | 内定者それぞれが、名前や出身校・入社後の抱負などを手短に話す | 初めて顔を合わせる内定者同士の相互理解を促進する |
先輩社員との交流 | 座談会などさまざまな形式で、内定者と既存社員で、主に企業や業務内容についての談話をする | 内定者が抱える仕事上の不安を解消したり、入社後の仕事について具体的なイメージを持ってもらったりする |
必要書類の手続きとスケジュール連絡 | 内定を承諾する「内定承諾書」ともに、必要に応じて健康診断結果などの必要書類を受け取る | 確実に学生から「内定を承諾した」という証拠を受け取る(正式な労働契約はまだ成立していないことに注意) |
自己紹介や既存社員との交流については、内容に工夫する余地があります。例えば以下のように、ユニークな取り組みで注目された企業もありました。
- 内定者にあらかじめPowerPointで自己紹介資料を作ってもらい、内定式で発表してもらう
- 同期と一緒に天ぷらを作ってもらう(食品会社)
- 経営陣や先輩社員とサイクリングをしてもらう(自転車販売会社)
入社後のポジションや自社の事業内容を生かした内容を検討しましょう。
入社意欲が高まる内定式づくりの工夫
就活生が内定式を通じて入社意欲を高めるためにも、内定式は単なる式典ではなく「記憶に残る体験」となる必要があります。どうすれば学生に響く内定式を設計できるのでしょうか。
「体験型」の内容を取り入れる
内定式に「入社後の業務に関する体験ができるプログラム」を取り入れることで、具体的なイメージが湧いて入社意欲が高まります。
社内見学で実際に働く社員の様子を見せる、営業ポジションの内定者なら自己紹介で自分自身をプレゼンしてもらうなどの手法が効果的です。
ただ、体験型のプログラムを取り入れると、内定式の時間が長くなってしまいます。社内のリソースや参加人数を考慮して検討しましょう。
若手社員の意見を基に内容を設計する
若手の社員の声を内定式設計のベースにするのも、学生に響く式をつくるポイントです。特に20代の若手社員は新卒学生に世代が極めて近いため、学生が興味を持つ可能性がある内容を考案しやすいと考えられます。
企業説明にしても体験型学習の内容にしても、若手社員の意見は重要です。人事部門に限らず、設計に協力してくれる若手を集めて内定式の設計を始めることをおすすめします。
開催前後に内定者の声を収集する
より内定者に寄り添った内容を考案するには、内定式の前に「知りたいこと」「どのようなプログラムがあるとよいか」を内定者自身にメールなどでヒアリングするのも効果的です。
開催後に「良かった点」「盛り込んでほしかった内容」など、感想も収集すれば、来年度以降の内定式設計に生かせます。
設計を見直して入社意欲が高まる内定式に
内定式は伝統的な式典であり、厳かで形式的なものと捉えられがちです。ただ内定式には、企業に対する理解促進や内定者同士・内定者と既存社員の交流を通じて、入社意欲を高める効果があります。
もし現在の内定式が学生に響いていないと思う状況があるなら、設計を見直しましょう。体験型のプログラムで実感を与える、若手社員を交えて内容を考えるなどの工夫が効果的です。内定式が学生にとって、入社意欲を高める「印象的な体験」となります。