入社式の成功が社員定着を左右する。準備や運営、入社後のフォローアップまで解説
新年度を迎える企業にとって、入社式は新入社員を迎える重要なイベントです。しかし、「毎年同じような内容でよいのだろうか」「入社式に意味があるのだろうか」と疑問を感じている人事担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、効果的な入社式の準備から運営、そして入社後のフォローアップまでを体系的に解説します。
入社式に関する基礎知識
入社式は、会社にとって新たな戦力を迎えるための大きなイベントです。しかし、入社式には社内リソースが割かれるため、開催に懐疑的な経営者もいるでしょう。
入社式とは、何のために行う必要があるのでしょうか?
入社式について改めて整理し、その重要性と他のイベントとの違いを明確にしていきます。意外と混同されがちな内定式との違いも押さえておきましょう。
入社式の目的
入社式は、企業にとっては、新入社員を「一人の戦力」として迎え入れる第一歩であり、人材への投資を回収していくための最初のアクションです。
企業が人を採用するには、採用活動から内定フォロー、入社準備まで多くのコストと時間がかかっています。入社式は、その投資を無駄にしないための最初の仕掛けとして機能します。
入社式は以下のような目的で行われます。
- 経営者が直接メッセージを伝えることで、新入社員に「この会社で働く意味」を見いださせる
- 同期と顔を合わせることで「自分はここに所属している」という感覚を持たせる
- 会社からの期待や成長の道筋を示すことで、未来へのモチベーションを生み出す
これらは全て「早期離職の抑止」や「育成コストの最適化」に直結します。
初期の印象が社員のその後の働き方に長く影響を与えることを考えれば、入社式は組織文化の醸成、価値観の浸透、人材戦略の起点として、企業にとって欠かせない場だといえるでしょう。
内定式との違い
入社式と内定式は、目的とタイミングが大きく異なります。
項目 | 内定式 | 入社式 |
開催時期 | 10月1日ごろ | 4月1日ごろ |
主な目的 | 内定者の不安解消、入社意思の確認 | 正式な組織への迎え入れ |
参加者の心境 | まだ学生、不安が強い | 社会人としての覚悟ができている |
内容 | 式典もあるが、懇親会中心、リラックスした雰囲気 | 式典形式、フォーマルな内容 |
内定式は「安心感」を与えることが主目的ですが、入社式は「責任感」と「やる気」を引き出すことが重要になります。この違いを意識して内容を設計しましょう。
入社式の準備と運営のポイント
効果的な入社式を実現するには、事前準備と当日の運営が鍵になります。基本的な流れと必要な準備について詳しく見ていきましょう。
入社式の基本的な流れ
一般的な入社式は、以下のような流れで進行します。
- 開式の辞(5分)
厳粛な雰囲気で式をスタートします。 - 代表者あいさつ(15分)
社長や役員から、会社の理念や新入社員への期待を伝えます。抽象的な内容ではなく、具体的なエピソードを交えると効果的です。 - 入社辞令の交付(10分)
一人ひとりに辞令を手渡します。人数が多い場合は代表者のみに行い、他の方には後日配布することも可能です。 - 新入社員代表あいさつ(5分)
新入社員から決意を込めたあいさつをしてもらいます。事前に内容を確認しておくと安心です。 - 先輩社員からのメッセージ(10分)
入社2〜3年目の先輩から体験談や励ましの言葉を贈ります。同世代の声は新入社員にとって心強いものです。 - 集合写真撮影(10分)
記念として、また広報素材としても活用できます。 - 懇親会・オリエンテーション(60分)
リラックスした雰囲気で交流を深めます。
全体で約2時間程度を目安に構成すると、集中力を保ちながら進行できます。
入社式までに準備しておくもの
入社式を成功させるには、以下の準備が必要です。
会場・設備関連
- 会場の確保
- 音響・映像機器の準備とテスト
- 座席表の作成
- 受付用品の準備(名札、資料、記念品など)
資料・配布物
- 入社辞令
- 会社案内・組織図
- 就業規則の要約版
- 新入社員研修スケジュール
- 先輩社員からのメッセージ集(任意)
人的リソース
- 司会者の選定と台本作成
- 代表者あいさつの内容確認
- 新入社員代表の選定と挨拶内容の事前確認
- 写真撮影者の手配
準備は遅くとも1カ月前から始めて、当日の2週間前には最終確認を完了させておくことをおすすめします。
オンライン入社式が増えている?
コロナ禍を経て、入社式の開催方法も多様化しています。オンラインと対面、どちらを選ぶべきか迷っている企業も多いでしょう。最新の傾向と判断のポイントを整理します。
入社式は対面開催が主流
株式会社学情の調査によると、2022年度の入社式において調査に参加した67.2%の企業が「リアル」での実施を予定しており、前年よりも6.3ポイント増加しています。
この点からも、コロナが流行していた時期と比べて、近年はオンライン入社式よりも対面開催を選ぶ企業が増えていると言えそうです。
参考:「2022年4月入社の入社式・新入社員研修の実施方法」に関しての調査|株式会社学情
オンライン入社式開催のメリットとデメリット
オンライン入社式について検討する前に、メリットとデメリットを比較してみましょう。
オンライン開催のメリット
- 会場費、設備費、交通費などが大幅に削減できる
- 遠方の新入社員も参加しやすく、家族も一緒に見守ることができる
- 録画により後から見返すことができ、研修資料としても活用可能
- 移動時間がないため、短時間で効率的に実施できる
オンライン開催のデメリット
- 画面越しでは参加者同士の交流や雰囲気づくりが難しくなる
- 通信環境や機器の不具合により進行が止まるリスクがある
- 画面越しでは集中力が続きにくく、途中で離脱される可能性がある
- 厳粛な雰囲気や特別感を演出することが困難
自社がオンライン開催にするかどうかの判断基準
自社の入社式について、対面かオンラインのどちらにするか悩んでいる場合、以下の観点から検討しましょう。
第一に、そもそもオンライン入社式が可能かどうかです。オンライン開催には、通信設備やツールの準備や、万が一トラブルが起こった際にサポートができるスタッフの存在が必要になります。また新入社員側にもツールの導入が求められるため、事前にツールの使い方や設定方法を案内するといったサポート対応も必要です。
一方、対面で開催するには式を行う会場の設営や受付スタッフが必要になるため、場所や人的リソース的にどちらの開催がふさわしいかを判断しなければなりません。
次に、開催する目的です。上述した通り、入社式を行う目的は新入社員に企業の一員である自覚を持たせることにある企業が多く、この場合は対面での開催が適しています。ただし、コストについてはオンライン開催の方がはるかに安く済みます。
以上のように、実行可能かどうか、そして目的やリソースに合った開催方法を選択しましょう。
入社式後のフォローアップ
入社式は新入社員の育成プロセスのスタート地点です。式の効果を最大化するには、その後のフォローアップが欠かせません。継続的なサポート体制の構築方法を見ていきましょう。
入社式後のオリエンテーションの進め方
入社式の翌日から1週間程度で実施するオリエンテーションは、新入社員の不安解消と早期適応を促進する重要な機会です。
業務の説明や仕事で使うツールの使い方、社内ルールやマニュアルについて紹介しましょう。全社で共有していているSNSや掲示板があると便利です。
また、相談先についても紹介しておくと、新入社員が研修で分からなかった点などについて質問できるため、理解度に差が出るのを防ぐことができます。
重要なのは、一方的な説明だけでなく、質問や相談の時間を十分に設けることです。「分からないことは何でも聞いてよい」という雰囲気づくりが、その後のコミュニケーションを円滑にします。
定着率向上のための継続的なサポート体制
新入社員の早期離職を防ぐには、入社後3カ月間の継続的なサポートが重要です。相談窓口の設置以外に、個別に新入社員の相談先を設けられる制度を導入しましょう。
具体的には、メンター制度や1on1面談の実施が効果的です。入社して3カ月から半年程度は、週1程度のペースで定期的に行うと良いでしょう。
コミュニケーションツールの導入によるフォロー
現代の新入社員は、デジタルツールを活用したコミュニケーションに慣れています。適切なツールを導入することで、より効果的なフォローアップが可能になります。
新入社員同士や先輩社員との気軽なコミュニケーションを促進するため、社内SNSの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
日常的な情報共有や相談がしやすくなり、組織への帰属意識を高める効果が期待できます。
このような継続的なフォローアップを支援するツールとして、「TUNAG(ツナグ)」がおすすめです。
TUNAGでは、1on1の設定やリマインド機能、社内SNS、アンケート機能などが統合されており、新入社員のフォローアップを効率的に実施できます。
福利厚生の情報共有なども含めて、総合的な組織エンゲージメント向上をサポートできるでしょう。
円滑な入社式の運営とフォローで定着率をアップ
入社式は、新入社員の組織への第一印象を決定づける重要なイベントです。単なる儀式として捉えるのではなく、人事戦略の重要な一部として位置付けることが成功の鍵となります。
効果的な入社式を実現するためには、事前の準備から当日の運営、そして入社後の継続的なフォローアップまでを一連の流れとして設計することが重要です。
特に、入社式で伝えた企業の理念や価値観を、その後の研修やメンター制度を通じて継続的に浸透させていくことで、新入社員の定着率向上と早期戦力化を実現できるでしょう。
来年度の入社式を検討される際は、今回ご紹介したポイントを参考に、貴社らしい特色のある入社式を企画してみましょう。