有効求人倍率とは?算出方法や日本の現状・今後の展望などを解説

有効求人倍率はハローワークに登録された求職者数と、求人数の比率を示す経済指標です。労働市場の動向を把握するために広く活用されており、景気の変動や雇用の需給バランスを理解するのに役立ちます。有効求人倍率の基本的な仕組みを理解しておきましょう。

有効求人倍率とはどのような指標か?

有効求人倍率とは、求職者数に対して、どれだけの求人があるかを示す指標です。雇用市場の需給バランスを把握でき、景気動向や採用難易度の変化を知るために重要な役割を果たします。

厚生労働省公表の求人数の倍率

有効求人倍率は、厚生労働省が毎月発表する「一般職業紹介状況」に基づき算出される指標で、ハローワークに登録された有効求人数を、有効求職者数で割った値です。例えば、有効求人倍率が1.5であれば、1人の求職者に対して1.5件の求人があることを意味します。

この指標は、企業の採用意欲や労働市場の需給の状態を表すものであり、景気動向と密接な関係を持ちます。ただし業種や地域によって数値は大きく異なるため、全国平均だけではなく、個別のデータを確認することも重要です。

完全失業率との関係

完全失業率は、働く意思と能力があるにもかかわらず、職に就けない人の割合を示しています。有効求人倍率とともに、労働市場を評価する上で欠かせない数値です。

一般的に有効求人倍率が高いと失業率は低下し、逆に倍率が低下すれば失業率は上昇する傾向にありますが、必ずしも完全に連動するわけではありません。

例えば、求人の内容が求職者のスキルと合致しない「ミスマッチ」が生じている場合、求人は多くても失業率が高いという状況が起こり得ます。両指標をあわせて読み解くことで、より立体的に労働市場の実情を把握することが大切です。

有効求人倍率の算出方法

有効求人倍率は、単なる求人の数や失業者数を並べたものではなく、一定の基準に基づいて計算されるものです。その仕組みを理解することで、数字の意味や背後にある雇用の状況を、より正確に読み取れるようになります。

基本となる計算式

有効求人倍率は、「有効求人数 ÷ 有効求職者数」で算出されます。有効求人数とは、ハローワークにおいて求人が出され、さらに現在も募集中の求人数です。一方、有効求職者数は、ハローワークに職を求めて登録している求職者数を指します。

例えば、有効求人数が100万件で有効求職者数が80万人であれば、有効求人倍率は1.25となります。ただし、この指標はあくまでハローワークに限定された情報を基にしているため、全体の雇用市場を完全には反映していない点には注意が必要です。

有効求人倍率から読み取れることは?

有効求人倍率が高い場合は企業側の求人が多く、求職者にとっては選択肢が広がる一方で、企業にとっては人材確保が困難になっている状況を示します。逆に、倍率が低い場合は求職者数が多く、企業側が人を選びやすいものの、求職者にとっては就職のハードルが高いといえるでしょう。

また、有効求人倍率が高く「売り手市場」の傾向がある場合、企業は優秀な人材を確保するため採用条件や待遇を見直す動きが強まります。一方、倍率が低く「買い手市場」の傾向があると、職を得るために求職者側の競争が激化し、企業側はより厳格な選考を実施しやすくなります。

有効求人倍率の活用方法

有効求人倍率は、以下のように企業の採用戦略の策定に役立ちます。市場の需給バランスを正確に把握し、それに応じた採用手法を調整したり、長期的な人材戦略を立案したりする際、参考にするとよいでしょう。

採用難易度を見極めて募集条件や手法を見直す

有効求人倍率が高い職種では、企業間での人材の奪い合いが起こり、従来の募集条件や採用手法では人材確保が難しくなる可能性があります。

求人の条件や職務内容の見直し、給与水準の調整などを積極的に検討する必要があるでしょう。多様な採用チャネルの活用や、スピーディーな選考プロセスの導入も効果的です。

逆に、求人倍率が低い状況下では、応募者が増えるため、選考基準やスクリーニングの厳格化が求められる場面もあります。時流や地域性に応じて、柔軟に募集方針を変えることが大切です。

採用ターゲットの最適化を図る

有効求人倍率が高い職種では、人材の確保が難しくなりますが、ターゲットを少し広げることで採用の可能性が広がるケースもあります。例えば、年齢や経験に対する要件を見直すことで、潜在的な候補者層の拡大につながるかもしれません。

また、職種転換やスキルアップを前提とした育成型の採用に切り替えることで、長期的に優秀な人材の確保を目指す選択肢もあるでしょう。有効求人倍率を参考にしつつ、採用ターゲットの見直しをすることで、固定的な条件にとらわれず、より柔軟で実効性のある人材戦略の策定につながります。

長期的トレンドから経営や人事戦略に生かす

有効求人倍率の長期的なトレンドを分析することで、中長期的な経営戦略や人事戦略の策定に活用できます。ここ数十年は少子高齢化の進行により、日本の労働力人口が長期的に減少傾向にあるため、有効求人倍率は構造的に上昇圧力を受けています。

この傾向を踏まえて、業務の自動化やAI活用による省人化、生産性向上への投資を早期に進めるのも効果的です。また、人材の定着率の向上に向けた職場環境の改善や、社員のスキルアップ支援による内部人材の活用なども、競争力の強化に役立つでしょう。

さらに、人手不足が見込まれる分野では、早めに将来を見据えた採用計画や人材育成策を検討することで、不測の人材不足リスクに備えられます。

有効求人倍率を参考にする際の注意点

有効求人倍率は有用な指標である一方で、いくつか注意すべき点もあります。上記のように、ハローワーク経由の求人・求職データで算出されているため、民間転職サイトや企業独自の募集活動などは、基本的に反映されていません。

また、地域や業種ごとに大きなばらつきが出る場合もあり、全国平均だけで判断すると、現場の実態とずれが生じることもあるので注意が必要です。景気動向や労働市場の構造変化を総合的に捉えるためには、複数の指標やデータを組み合わせた分析も必要です。

日本の有効求人倍率の動向

日本における有効求人倍率は、いわゆるバブル期には1.4を超える水準を記録し、その後バブルの崩壊やリーマンショック時に大きく低下しました。近年では、新型コロナウイルスの影響で2020年に一時的に1.0を下回りましたが、経済活動の回復とともに徐々に持ち直しています。

2024年時点では、全国平均で1.2前後の水準を保っており、業種別に見ると医療・介護・建設業などで特に高い倍率が続いています。一方、地方と都市部の格差も顕著で、地域によっては求人が大幅に不足しているところも多くあります。

※出典:一般職業紹介状況(令和6年3月分及び令和5年度分)について|厚生労働省

今後の有効求人倍率はどうなる?

有効求人倍率は景気の回復や構造的な人手不足、テクノロジーの進展など、さまざまな要因に左右されます。日本は少子高齢化による労働人口の減少が続いており、特に慢性的な人手不足が続く分野では、引き続き高倍率を維持すると考えられます。企業はこれまで以上に、効率的な採用活動と人材育成の強化が必要でしょう。

一方で、DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI導入によって、一部の業務が効率化されることで、求人構造に変化が現れると考えられます。さらに、企業によるリスキリングや学び直しの支援などにより、労働者の流動性が高まれば、職種間のミスマッチも徐々に解消される可能性もあるでしょう。

有効求人倍率はこうした変化を映す指標として、今後も注目し続けることが大事です。その上で、企業として取るべき対策を検討する必要があります。

有効求人倍率を読み解き採用活動を見直す

有効求人倍率は、採用の難易度や人材の需給バランスを把握するための有用な指標です。単に倍率の高低を見るだけではなく、その背景にある業種別や地域別の動向、時代的なトレンドを読み解くことが大切です。

さらに、倍率の変化を経営判断や採用戦略に反映させることが、安定した採用活動と人材戦略の策定につながります。継続的にモニタリングし、企業として柔軟に対応できるようにしましょう。

著者情報

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