絶対評価と相対評価の違いとは?メリット・デメリットと最適な使い分けを解説

評価制度を導入・改善する際、「絶対評価」と「相対評価」のどちらを選ぶべきか悩む企業は少なくありません。それぞれにメリットとデメリットがあり、適切に使い分けることで従業員のモチベーションや生産性の向上につながります。この記事では、両者の違いと最適な活用方法を解説します。

絶対評価の概念と特性

評価制度には大きく分けて「絶対評価」と「相対評価」があり、同じ成果に対する評価であっても、この二つのどちらを取り入れているかでまったく評価が変わってしまうこともあります。

どちらを取り入れるかは、企業の性質や業務、体制などで選択することが重要です。その判断材料として、両方の特性を知る必要があります。まずは、絶対評価の概要や特性、絶対評価が用いられるケースについて解説します。

絶対評価とは

絶対評価とは、あらかじめ決められた基準や目標に対して、個人の成果や行動を評価する方法です。他の人と比較するのではなく、「その人が基準を満たしているかどうか」が重要視されます。

学校のテストを思い浮かべてください。100点満点のテストで、90点以上が合格という基準が定められている、とします。

この場合、クラスメートが何点を取ったかは関係なく、自分が90点を取れば合格です。これが絶対評価の考え方です。

会社でも同じように、営業職なら「年間売上1000万円を達成すれば高評価」、エンジニアなら「バグの少ないシステムを作れば評価が高い」といった形で、具体的な基準が定められます。

この方法では、何を達成すれば評価されるのかが明確なため、個人の努力がそのまま評価につながりやすいのが特徴です。

絶対評価のメリット・デメリット

絶対評価には、公平性や透明性が確保されるというメリットがある一方で、個人の成長を比較しにくいというデメリットもあります。それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

メリット:公平性と透明性の確保

絶対評価では、あらかじめ決められた基準に基づいて評価が行われるため、公平性が保たれやすくなります。

従業員は、評価の基準が明確であることで「何を達成すれば評価されるのか」を理解しやすく、目標に向けて努力しやすくなります。

例えば、営業職であれば「年間売上1000万円を達成する」、エンジニアであれば「開発したシステムのバグ件数を一定以下に抑える」など、数値や具体的な成果物によって評価されるため、主観が入りにくいのが特徴です。

また、評価が個人の実績に基づくため、チーム内での不必要な競争を防ぐことができ、協力的な職場環境の維持にもつながります。

デメリット:個人の成長比較が難しい

一方で、絶対評価は他の従業員との比較を行わないため、組織内での相対的な成長度合いを把握しにくいというデメリットがあります。

例えば、全員が基準をクリアしていたとしても、それが組織全体の競争力向上にどの程度貢献しているのかは分かりにくくなります。

また、設定する基準が曖昧だった場合、評価者によって判断にばらつきが生じる可能性があるため、基準の策定には慎重な対応が求められます。

絶対評価では一定の目標達成が評価の基準となるため、基準を超えた成果を出した場合でも、評価の上限が決まってしまうことがあり、従業員のさらなる成長を促しにくい側面もあります。

絶対評価が用いられるケース

仕事の結果が数値や目標で明確に示せる職種では、絶対評価が適しています。

例えば、営業職では「年間の売上目標を達成したか」「契約を何件獲得できたか」といった具体的な成果で評価されます。個人の努力がそのまま結果に表れるため、納得感のある評価ができます。

また、エンジニアやデザイナーのような技術職では、「作成したシステムのエラーが少ないか」「デザインが使いやすいか」といった基準で評価が行われます。このように、仕事の成果が客観的に測れる職種では、絶対評価が適しています。

相対評価の概念と特性

続いて、相対評価についても観ていきましょう。相対評価の特徴とともに、適切に活用するための方法を解説します。

相対評価とは

相対評価とは、従業員の成績を他の人と比較し、順位をつける評価方法です。

絶対評価が「決められた基準を満たしているかどうか」を見るのに対し、相対評価は「他の人と比べてどれだけ優れているか」を基準にします。

そのため、評価の結果は組織全体の成績によって変動するのが特徴です。例えば、学校のテストで成績上位10%の生徒が「A評価」、次の20%が「B評価」と決まっている場合、何点取ったかよりも、クラスの中で何番目かが重要になります。

100点を取っても、他の多くの生徒が同じく100点なら評価は変わりません。企業でも、営業職であれば「売上の上位20%がA評価」といった形で評価が決まることが多く、社員同士の競争を促す仕組みになっています。

相対評価のメリット・デメリット

メリット:競争意識の向上と成長促進

相対評価は、従業員同士が競い合う環境を作りやすく、パフォーマンス向上を促すメリットがあります。特に、成果主義を導入している企業では、従業員がより高い評価を得るために努力し、自己成長を加速させることが期待できます。

また、相対評価では、組織全体の水準を一定以上に維持しやすく、特定の基準に達していない従業員の課題を明確にし、適切な育成施策を講じることが可能です。

デメリット:社内競争の過熱とチームワークの低下

一方で、相対評価を過度に強調すると、従業員同士がライバル視しすぎてしまい、チームワークが損なわれるリスクがあります。

加えて、評価基準が変動するため、従業員が「どんなに頑張っても上位に入れない」という不満を抱きやすく、モチベーションの低下につながる可能性もあります。特に、評価基準が曖昧だったり、順位によって報酬が大きく変動する場合、従業員のストレスが増加し、離職率の上昇を招く恐れがあります。

相対評価が用いられるケース

相対評価は、競争意識を高め、成果を重視する企業や業界でよく用いられます。特に、限られたポジションへの昇進やインセンティブの付与がある環境では、この評価方法が適しています。

例えば、営業職では「トップセールスのみが高評価を得る」「成績上位の社員にインセンティブを支給する」といった仕組みが導入されている企業が多く、競争によって業績の向上を促します。

企業が競争力を高めるために優秀な人材を選抜したい場合や、一定以上のパフォーマンスを維持したい場合に、相対評価は効果的な手法となります。

絶対評価と相対評価をどう使い分けるか

絶対評価と相対評価それぞれの特徴を理解し、職種や企業文化に応じた最適な使い分けを行うことが重要です。本章では、両者の適用シーンや活用例を紹介します。

昇給や昇格は絶対評価を基準に

昇給や昇格の際には、公平で一貫した基準を持つ絶対評価が適しています。

特に、長期的なキャリア形成を促進するためには、従業員が自身の成長目標を明確にし、それを達成することで昇給・昇格の機会を得られる仕組みが重要です。

例えば、「業務スキルの向上」「特定のプロジェクトでの成果」「リーダーシップの発揮」といった基準を設けることで、従業員は自身の努力が正当に評価されると感じやすくなります。

従業員を競わせたい場合は相対評価

営業職やコンサルティング業界など、数値で成果を測りやすい職種では、相対評価を用いることで従業員のパフォーマンス向上が期待できます。

例えば、「上位20%の従業員にインセンティブを支給する」や「年間の売上ランキングを発表し、表彰制度を設ける」などの仕組みを導入することで、個々の努力を促し、組織全体の成果向上につなげることができるでしょう。

ただし、過度な競争がチームワークを損なうリスクもあるため、チーム評価や協力ボーナスの導入など、協力関係を維持するための仕組みも併用することが重要です。

両方の評価方法を組み合わせる

絶対評価と相対評価の両方をバランスよく活用することで、それぞれのメリットを最大限に生かすことが可能です。このハイブリッドな評価制度は、多くの企業で導入されており、特に大企業やグローバル企業では一般的な手法となっています。

例えば、「基礎評価は絶対評価で行い、ボーナスや特別報酬は相対評価を基準に決定する」といった方法を取ることで、公平性と競争意識を両立させることができます。

実際に、外資系企業や成果主義を重視する企業では、「基本給の昇給は絶対評価」「賞与や昇格は相対評価」のように使い分けるケースが増えています。このような組み合わせによって、従業員が自身の成長目標を持ちながらも、組織全体の競争力向上を促すことが可能となります。

適切に評価制度を活用するポイント

評価制度を導入するだけではなく、適切に運用することが重要です。評価を従業員の成長や報酬制度に結び付ける工夫や、評価者のトレーニングを行うことで、公正な評価が実現できます。

本章では、評価制度の効果を最大化するための具体的なポイントを解説します。

その後の行動に結び付ける

評価制度は、単に従業員のパフォーマンスを測るだけでなく、その結果を具体的な行動に結びつけることが重要です。

定期的な1on1ミーティングなどを実施し、「どのような行動を取れば評価を上げることができるのか」を伝えましょう。

そして、評価を昇給やボーナス、昇進などの報酬制度に反映させることで、従業員のモチベーション向上にもつながります。

評価が給与やキャリアアップに直結することが明確であれば、従業員は自身の成長を意識し、主体的に業務に取り組むようになるでしょう。

評価者のトレーニング

評価の公平性を保つためには、評価者に対する適切なトレーニングが欠かせません。特に、絶対評価を導入する場合は、評価基準の統一が必須であり、相対評価では評価の偏りを排除するための指導が求められます。

例えば、評価者が持つ個人的な価値観や先入観が評価に影響を与えないよう、「評価のためのチェックリスト」や「ケーススタディを活用した研修」を実施する企業も増えています。

さらに、360度評価を取り入れることで、一人の評価者に依存しない公正な判断を行うことも可能です。

普段から信頼関係を構築する

評価制度が機能するかどうかは、従業員と評価者の信頼関係に大きく左右されます。評価の納得感を高めるためには、日頃からのコミュニケーションが重要です。

評価のタイミングだけでなく、日常的に上司と部下の対話を増やし、信頼関係を築くことで、従業員の納得感とエンゲージメントを高めることができるでしょう。

最適な評価制度の選択で組織力を高める

評価制度は、企業の成長を支える重要な仕組みです。絶対評価と相対評価はそれぞれ異なる特性を持ち、適切に使い分けることで、組織全体のパフォーマンス向上につながります。

評価制度を適切に運用するには、評価結果を人材育成や報酬制度に反映させることが不可欠です。

最適な評価制度を導入し、継続的に改善していくことで、従業員のモチベーション向上や組織の成長を促進できます。企業のビジョンや文化に合った評価制度を選択し、組織の強化につなげていきましょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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