休日出勤の割増率は?正しい計算方法や割増賃金が発生しないケース
休日出勤の割増賃金計算で悩んでいる人事担当者は少なくありません。法定休日と法定外休日の違いがわからず、適切な割増率を適用できているか不安に感じることもあるでしょう。実際、休日の種類により割増率は大きく変わり、間違った計算は労働基準法違反につながる可能性もあります。では、どのように休日出勤の割増賃金を正しく管理すればよいのでしょうか。
休日の種類
休日出勤の適切な管理には、まず休日の種類を正確に理解することが重要です。労働基準法では休日を「法定休日」と「法定外休日」に分類しており、それぞれで割増賃金の取り扱いが大きく異なります。
人事担当者として、どの休日にどのような規定が適用されるかを把握しておく必要があるでしょう。
法定休日
休日は大きく分けて「法定休日」と「法定外休日」の2種類があります。このうち、法律で定められた休日が法定休日です。
労働基準法では、毎週少なくとも1日、または4週間で4日以上の休日を労働者に与えなければなりません。法定休日のみを設定している企業の場合、休日の年間最低日数は52日です。
特別の理由がない限り、労働者が法定休日に働く必要はありません。企業が労働者に法定休日に働いてもらう場合は、36協定を締結して労働基準監督署に届け出ておく必要があります。
法定外休日
法定休日とは別に企業が独自に設定する休日が法定外休日です。週休二日制の場合は、片方が法定休日、もう片方は法定外休日ということになります。土曜日や祝日、会社の創立記念日が休日になっている場合は、法定外休日であることが一般的です。
法定休日に労働した場合は割増賃金が発生しますが、法定外休日については労働基準法の適用外となるため、休日出勤の割増賃金を支払う義務はありません。ただし、状況によっては法定外休日に働いた場合に、時間外労働の割増賃金が発生することがあります。
代休
代休とは、休日に労働した場合に、その代わりとして後日休みを与える制度です。働いた日が法定休日であった場合は、その労働に対して割増賃金を支払う必要があります。
代休を義務付ける規定はありませんが、代休が累積すると法律上の休日を確保できずに違法となる可能性があるため、週休1日制を維持するために代休が必要となる場合があります。
振替休日
休日と労働日を事前に入れ替える制度が振替休日です。代休の取得が事後的な措置であるのに対し、振替休日は事前に決めておきます。
振替休日を設定した場合は、もともと休みであった日に働くことになりますが、その労働は休日労働にはなりません。休日と労働日を事前に入れ替えた時点で、もともとの休日は通常の出勤日扱いになります。
休日の割増賃金の計算方法
休日の割増賃金の扱いは、法定休日と法定外休日で異なります。基本的な考え方と割増率や計算方法を見ていきましょう。
法定休日に出勤した場合
法定休日に労働した場合、通常の賃金に加えて、35%以上の割増賃金を支払う必要があります。労働基準法で定められた週1日または4週4日の休日に労働した場合に適用されます。
例えば、時給1,000円の人が法定休日に1時間働いた場合、最低割増賃金は1,000円×0.35=350円です。
法定外休日に出勤した場合
法定外休日の労働に対しては、法定休日の割増賃金が発生しません。ただし、法定外休日労働を含めて週の労働時間が40時間を超える場合は時間外労働として扱われ、25%以上の割増率が適用されます。
例えば、時給1,000円の人が法定外休日に1時間労働し、週の労働時間が41時間となった場合、最低割増賃金は1,000円×0.25=250円です。
法定休日に深夜労働を行った場合
休日労働と深夜労働(22時から翌5時まで)が重なった場合は、両方の割増率を適用する必要があります。深夜労働の割増率は25%以上です。
時給1,000円の人が法定休日に深夜労働を1時間行った場合、最低割増賃金は1,000円×(0.35+0.25)=600円です。
休日出勤に割増賃金が発生するケース
休日出勤に割増賃金が発生するかどうかは、状況により異なります。まずは、休日出勤に割増賃金が発生する主なケースを確認しましょう。
法定休日に働いた
これまでも解説してきたように、法定休日の労働には割増率35%以上の割増賃金が発生します。また、深夜労働と重なる場合の割増率は、35%+25%=60%以上です。
法定休日に働いた場合、その労働で週の労働時間が40時間を超えるかどうかは関係ありません。週の労働時間が40時間以内であっても、法定休日に働いていれば割増賃金を支払う必要があります。
祝日に出勤した
就業規則などで祝日を法定休日としている場合は、祝日の出勤に対して割増賃金が発生します。祝日を法定外休日に設定している場合、割増賃金が発生するかどうかは状況によりさまざまです。
祝日の出勤により週の労働時間が40時間を超える場合や、祝日の出勤が深夜労働になる場合は、時間外労働や深夜労働の割増率が適用された割増賃金が発生します。
代休を取得した
代休は、休日労働が行われた後の労働日を休みとするものです。代休を取得したとしても、休日に働いていることには変わりないため、働いた日が法定休日なら割増率35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
法定休日に働いたことにより週の労働時間が40時間を超えた場合、時間外労働の割増率より休日出勤の割増率の方が優先され、超過労働分に対し35%以上の割増率が適用されます。
休日出勤に割増賃金が発生しないケース
休日に働いても割増賃金が発生しない場合があります。主なケースをチェックし、取り扱いを間違えないようにしましょう。
法定外休日に出勤した
法定外休日は企業が独自に設定する休日であり、労働基準法の適用外です。法定外休日に出勤した場合は割増賃金の支払い義務がなく、労働に対して通常の賃金を支払います。
ただし、法定外休日の労働により週の労働時間が40時間を超えた場合は、超過分に対して時間外労働の割増率25%以上を適用した割増賃金の支払いが必要です。
振替休日を決めていた
振替休日は出勤日と休日をあらかじめ交換しておく制度です。振替休日を設定した時点で、もともとの休日は休日ではなくなるため、休日出勤の割増賃金は発生しません。
代休と振替休日は、いずれも本来の休日に働いて別の勤務日を休みにすることですが、設定するタイミングや割増賃金の扱いが異なる点に注意しましょう。
管理職が休日に出勤した
法律上の管理監督者に該当する管理職に対しては、休日出勤の割増賃金の支払いが不要です。管理監督者には、労働基準法で定義される労働時間・休憩・休日の規定が適用されないことになっています。
ただし、単に役職名で管理職であるからといって、法律上の管理監督者に該当するとは限りません。管理監督者は経営者と一体的な立場にある役職であり、経営方針の決定や労務管理において経営者と同等の権限を持っている必要があります。
管理監督者に法律上の労働時間・休憩・休日の規定が適用されない理由は、一般の従業員のような制約を受けずに自己の裁量で勤務時間を管理できる必要があるためです。
休日の種類や休日出勤の割増率を理解しよう
休日出勤に割増賃金が発生するかどうかは、休日の種類により異なります。法定休日に出勤した場合は35%以上の割増率が適用されますが、法定外休日の労働の場合は状況によりさまざまです。
また、割増賃金を正確に計算するためには、時間外労働や深夜労働についても理解を深めておく必要があります。正しい知識を身につけた上で、賃金の計算に役立てましょう。