日本と海外の働き方の違いとユニークな制度とは?日本に合う制度も紹介
現在注目を集めている「働き方改革関連法案」ですが、『高度プロフェッショナル制度』や『裁量労働制対象の拡大』など、解釈によっては労働者の負担を増大させかねない施策であるとの意見もあり、賛否が分かれています。
一方、海外の働き方を見てみると、日本では行われていない奇抜な施策で一定の効果を上げている国々もあります。
オンライン総合旅行サービス「エアトリ」を運営する株式会社エアトリの調査で、他国のユニークな働き方や制度が紹介されていました。
これは、海外で取り入れられている様々な「働き方」において、日本でも導入できそうな施策がないか、10代~70代の男女849名を対象にアンケート調査を行ったものです。
この記事では、ユニークな世界の働き方や制度について紹介します。
ユニークな世界の働き方&制度9選
調査において紹介されている世界の働き方&制度は以下のとおり。日本では難しそうと思うような制度もありますが、自社の企業文化や事業内容も合わせて、ぜひ参考にしてください。
1)ドイツ「1日10時間以上の労働を法律で禁止」
ドイツは1日10時間以上の労働が禁止されており、日本に比べるとかなり労働時間が短いにも関わらず、労働生産性は日本を上回っているとのこと。従業員と会社は労働契約書を必ず結ぶそうで、徹底した労働時間管理をお互いが意識して勤務しているようです。
2)ベトナム「副業/ダブルワーク可能」
日本でも最近少しずつ広がっている副業。ベトナムでは複数の仕事を行うことが当たり前であり、過半数が兼業しているそうです。
3)タイ「子連れ出勤」
日本では議会に子どもを連れてくることが賛否両論となったことが話題ですが、タイでは社会全体で子育てを行うという文化があり、子連れ出社も珍しくないとのこと。
4)ブラジル「バケーション休暇」
ブラジルでは、1年のうちに連続30日の有給を与えなければいけないとのこと。30日というとほぼ1ヶ月。かなりうらやましい制度です。
5)アメリカ「フレキシブルワーク」
完全成果制の印象があるアメリカ。在宅勤務など働く場所や、労働時間も完全自由という制度が多いようです。
6)イギリス「圧縮労働時間制」
圧縮労働時間制とは、1日の労働時間を延ばす代わりに週の労働日数を少なくできる制度。イギリスでは「フレキシブルワーク」の考え方が浸透しており、それに対応したシステムも非常に多数あります。
圧縮労働時間制だけでなく、子どもが投稿する時間や休暇に合わせて労働時間を短縮したりすることができる「学期間労働時間制」などもあるそうです。
7)スウェーデン「親休暇法」
子供が8歳になるか基礎学校の第1学年を終了するまでに合計480日間を取得できる制度。スゥエーデンは出産・育児との両立に関しては、最も成功した国の一つといわれており、その取組も進んでいます。
参考:スウェーデンにおけるワーク・ライフ・バランスと労働法 ―育児・介護休業を中心に
8)オランダ「時間貯蓄制度」
残業や休日出勤など所定外の労働時間を貯蓄し、後日有給休暇などに振り替えて利用できる制度です。
9)フランス「日曜勤務の給与は平日の倍」
日曜出勤で給与が平日の倍になるなど、高待遇な制度がります。
※上記は記載の国の企業全てで取り入れられているとは限りません。また、その後の法改正等で変更となっている場合もあります。
※細かい条件等の記載を省いています。
日本の働き方の特徴とは
海外の働き方は日本の働き方と大きく異なる部分があります。そこで、日本の働き方にはどのような特徴があるのかを確認しましょう。
終身雇用制度
終身雇用制度とは、企業が正規雇用している従業員を定年(原則60歳以上)を迎えるまで雇用する制度であり、従業員は一度採用されると定年まで同じ会社で働き続けることが前提とされています。昨今では、働き方の多様化が進みましたが、労働者が一定年齢に達した際に労働契約が終了する「定年制」を定めている企業は多いです。厚生労働省の「就労条件総合調査結果の概況」(令和4年)によると、定年制を定めている企業は94.4%にのぼります。
企業は従業員の安定的な雇用を保障し、従業員は会社に忠誠を尽くすことが求められます。この制度は高度経済成長期において、企業と従業員の間に強い信頼関係を築く基盤となりましたが、現代においては市場の変化に対応する柔軟性の欠如や、若年層のキャリア形成における課題も指摘されています。
年功序列
年功序列は、日本の企業文化において長く続いている制度で、従業員の昇進や給与が年齢や勤続年数に基づいて決定されます。この制度は、従業員の安定と長期的な勤続を推奨し、組織内での協力や和を大切にする文化を育んできました。しかし、近年では成果主義や能力主義を重視する動きが強まり、年功序列制度の見直しが進んでいます。
総合人事コンサルティング会社のフォー・ノーツ株式会社が実施した調査によると、勤務先が「年功序列である」・「やや年功序列である」と回答した割合は合わせて71.8%となり、年功序列の企業の割合が多いものの、特に若手社員や女性の活躍が期待されている中で、能力や成果に基づく評価の重要性が増しています。
長時間労働
日本の働き方において、長時間労働は根深い問題です。企業文化として「働き続けること」が美徳とされ、定時以降も仕事を続けることが当たり前とされる風潮があります。また、時間外労働に対して賃金が支払われないサービス残業・隠れ残業も存在し、社会的な問題として取り上げられることもあります。これらの長時間労働は、職場での上司や同僚との協調性や連帯責任を重んじる文化、業務の効率化への着手が遅れアナログな業務が残存してしまっているという背景から生まれています。
これらの長時間労働が原因で過労死やメンタルヘルスの問題にも発生しており、政府や企業も働き方改革の一環として、労働時間の削減やワークライフバランスの改善に取り組むようになっています。
理想的かつ現実的でもあると考える人の割合が多い働き方はオランダの『時間貯蓄制度』
『時間貯蓄制度』は、周りに迷惑がかからなさそうという意見
結果を見ると、オランダの『時間貯蓄制度』が、理想的な働き方と考える人が13.6%、現実的に導入できそうだと考える人が12.9%と支持を集めました。周りに迷惑をかけずに、自分のペースで仕事とプライベートの時間調整ができる点が、チームワークや協調性を重んじる日本人にとって魅力的に映ったのかもしれません。
- 時間外労働は忙しいときはどうしても避けられない。日本は基本的に有給休暇も少ないし、目的を持ってプランすることによりメリットは大きいと思う。(50代男性)
- 一定期間に集中して仕事を行うことでパフォーマンスも上がり、後から有給休暇として活用できることでバランスも取りやすい。現状の企業でも代休などとして取り入れている企業もあり、導入ハードルが低い。(30代男性)
現実的ではないが、一番理想的なのは、ブラジルの『バケーション休暇』
「理想的な働き方」の1位はブラジルの『バケーション休暇』(14.3%)でしたが、その一方で「実際に日本でも取り入れられそう」と答えた人は8.2%に留まりました。
実際に30日休暇をとるというのは、日本ではなかなかイメージがわかない人が多いのではないでしょうか。
理想的と考える割合が少なかったのは『子連れ出社』や『副業/ダブルワーク』、『日曜出勤』
一方、理想的と考える人の割合が比較的少なかったのは、『子連れ出社』『副業/ダブルワーク』『日曜出勤』でした。環境や時間などメリハリを持って働きたい人が多いためであると考えられます
休暇に関する海外企業のユニークな働き方
企業単位で見ると、よりユニークな働き方や福利厚生を導入しているところがあります。ここでは、休暇に関する海外企業のユニークな働き方を紹介します。
アドビ株式会社の長期無給休暇
クリエイティブツールとドキュメントソリューションを提供するアドビ株式会社(本社:米国、Adobe Inc.)では、個人的な理由での長期休暇の申請が可能な制度を設けています。
上司とEmplyee Experienceと相談したのち、個人休暇が認められた場合は、1ヶ月から3ヶ月(最大は6ヶ月)の長期で休むことが可能です。
当社で12ヶ月以上勤務していることや個人のパフォーマンスが良好であることが条件にはなっており、休暇自体は無給ではあるものの、リフレッシュするには十分な期間であり、フレキシブルな働き方を実現できます。
Epic社のサバティカル休暇
米国のソフトウェア会社であるEpic社では、5年ごとに1ヶ月間の有給サバティカル休暇を受ける資格が従業員に付与されます。
それだけではなく、一度も訪問したことがない国へ旅行した際には、従業員と同行者1名の飛行機代とホテル代を負担するとしています。
これは、従業員に新しい体験をしてもらうことを推奨している企業文化が由来となっています。
職場環境に関する海外企業のユニークな働き方
ここでは、職場環境・働く環境を良くするために海外企業が行なっているユニークな取り組みを紹介します。
Automattic社の多様な働き方への手厚い補助
ブログやWebサイトを作る際の基盤となるCMS(コンテンツマネジメントシステム)のWordpressを提供するAutomattic社では、従業員が世界各国で業務に取り組んでいることから、各自の働き方への手厚い補助・福利厚生を用意しています。
具体的には、以下のような制度を設けています。
- 自己研鑽の推進:「私は決して学ぶことをやめない」というクレドに基づき、継続的な学習を促進するハードウェア、ソフトウェア、書籍、会議の費用を負担する。
- ホームオフィス手当:ホームオフィス(オフィス・仕事場を家庭内に設けて、在宅勤務を行う形態のこと)の設置やコワーキングの確保に手当を用意する。コーヒーショップで働く際には、飲料代に手当を使うことも可能。
- 心身の健康維持への補助:従業員支援プログラム、マインドフルネスアプリの利用料やストレッチ・ヨガなどのエクササイズといった従業員の心身の健康維持に対する補助を用意する。
健康支援を積極的に行うIntuit社
米国カリフォリニア州に本社を置く金融・会計ソフトウェア大手のIntuit社では、従業員およびその家族の健康をサポートするために、様々なプログラムを用意しています。このプログラムの中には、日本ではなかなか見られないものもあり、無料の予防医療検査や理学療法、家族計画やジェンダーに関連する給付金なども網羅しています。
加えて、これらのプログラムにかかる費用に対しては、最大1,300$の支援がつきます。Intuit社では、従業員のウェルビーイングに着目して、心身の健康を保つための予防から治療までを包括的にサポートしています。
メリハリのある働き方推進が、働き方改革の近道!?
「周りに迷惑がかからないようにしたい」という考えが反映されたこの調査。必要な時は残業はやむを得ない、普段は集中して仕事に取り組み、休む時はちゃんと休める。まずはそのように、ワークとライフの切り替えがしっかりできる社会を望んでいる結果ともいえるのかもしれません。