リテンションの意味とは?人事用語を解説

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リテンションの意味とは

人事用語として広く用いられるようになった「リテンション」。そもそも“retention”とは、「保持」「維持」を表す英語です。 人事領域でリテンションとは、自社の優秀な人材の流出を防ぐためのさまざまな施策のことを言います。リテンション施策がうまくいっているかどうかは、1年後や3年後に企業に留まっている社員の割合などから測ります。 なお、マーケティング領域でも「リテンション」という言葉を用いますが、この場合は「既存顧客を維持すること」を意味しています。

リテンションが注目されるようになった背景

人事の現場でリテンションが注目されるようになった背景には、人事管理評価の指標として、定着率の高さが重要視されるようになったことが挙げられます。企業の中には、部下の定着率を管理職の評価指標としているところもあります。 また就職や転職活動において、採用候補者から退職率の高い業種や企業が敬遠される傾向が強まってきたことも一因となっています。 リテンションに失敗し、優秀な人材が流出した場合、組織には別の社員の採用・配置転換や育成にかかるコストが発生します。また、一時的に業務の生産性が低下したり、企業機密が漏えいしたりするとったリスクが生じます。 こうした利益損失を防ぐために、リテンションに取り組む企業が増えてきているのです。

リテンションマネジメントとは

優秀な人材の離職を防ぎ、組織の中で能力を発揮してもらうためには、さまざまな施策を行う必要があります。これを、「リテンションマネジメント」と言います。 リテンションマネジメントは、それ自体が何らかの施策なのではなく、さまざまな人事管理の施策を通して社員の定着率の向上を図るものです。 たとえば、研修などの教育施策は社員の能力開発を目的として行われます。また、各種休暇制度や賞与といった福利厚生は社員の福祉の向上を目的とします。こうしたそれぞれ目的を実現することで組織に対する社員のエンゲージメントを高め、ひいては離職を防止することになるのです。 参照元:リテンションマネジメント - 山本寛研究室|青山学院大学経営学部 山本寛ゼミ
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リテンション活動の事例

青山学院大学経営学部教授で、リテンションマネジメントについて研究している山本寛教授は、「リテンションマネジメントとして対策をとっている企業は、実は“コミュニケーションの活性化”を促進している」のだと言います。コミュニケーション活性化の具体的なケースとして、次のような事例を挙げています。

若手社員のリテンションを向上させる同年代社員とのコミュニケーション

優秀な若手社員は、会社の次世代を担う貴重な人材です。若手の離職を防ぐには、同年代社員とのコミュニケーションが重要です。 ある美容院では、新入社員に対して年齢の近い先輩がサポートにつき、職場での相談や実務指導にあたる「ブラザーシスター制度」を導入。先輩が失敗談を話すなどして心理的な要求水準を下げる取り組みなどをしています。 また、同期とのコミュニケーションも離職率を下げる一助になります。新入社員研修などで同期との絆を構築することで、実務に出たあとでも仕事や人間関係の悩みを相談しやすい環境を構築します。ブラザーシスター制度と同様、同年代の社員同士で研修や各種イベントを開催することは、リテンション施策として有効です。

コミュニケーション活性化はトップとボトムの双方向から行う

コミュニケーションの活性化は、組織のトップからもボトムからも、双方向から行うことが理想です。 組織のトップからのコミュニケーションではまず、会社全体の離職率と新入社員の3年以内の離職率を計測し、今後離職率をどこまで下げるのか、どういった施策を打つか、目標を決めます。離職率を抑えるための環境づくりに取り組むことを行動指針や行動憲章にすえ、経営層が明確に意思表示をするとよいでしょう。 組織のボトムからのコミュニケーションを活性化していくには、従業員満足度を高める必要があります。ある会社では、現場の社員が委員会を作り、「会社の課題をどうするか」といった改善策を議論をしています。まず、上司を除いた現場のメンバーのみで議論し、そこから部門会議、経営会議と徐々に改善策を上に上げていく取り組みをしています。 ▼参照元 社員の離職を防ぐ「リテンションマネジメント」の施策とは?〜青山学院大山本教授インタビュー(前編)〜|TUNAG(ツナグ)

リテンション活動の4つの効果

リテンション活動に取り組むことで、社員の勤続年数の長期化につながります。それにより、次のような効果が得られます。

1.採用・育成コストの削減につながる

社員が離職することで、人員補充のための採用コストや新入社員の育成にかかるコストがあらたにかかります。また、退職する社員から現場のメンバーへの引継ぎが行われるあいだ、一時的に現場に負担がかかり生産性の低下にもつながります。リテンション施策で離職率を低下させることで、採用や育成にかかるコストや労力を削減することができます。

2.社内にスキルやノウハウが蓄積する

高いスキルやノウハウを持った社員が離職することは、企業にとって大きな損失となります。リテンション施策を打ち、社員の勤続年数を長期化することで、社内にスキルやノウハウが蓄積します。

3.「働きやすい職場」をアピールできる

社員の定着率が高いことで、外部の人材にとって「働きやすい職場」であると印象づけられます。少しでもいい労働条件や労働環境を求めている人に自社をアピールする材料となります。

4.組織の長期的戦略が描ける

定着率が高く、社員が長期にわたって勤め上げるような組織では、社員の心理的安定性や社員同士の信頼関係が保たれやすくなります。人材が流動的でないことから長期にわたる戦略が描きやすく、経営の安定にもつながります。 ▼参照元 リテンションマネジメント - 山本寛研究室|青山学院大学経営学部 山本寛ゼミ

3つの退職理由

厚生労働省の雇用動向、実態調査

社員の離職を防ぐには、退職理由を知って対策を施す必要があります。厚生労働省が2020年に行った「平成30年雇用動向調査結果の概況」ならびに「平成30年若年者雇用実態調査の概況」からは、社員の退職理由としては次の3つが上位を占めることが分かります。

1.賃金の条件がよくない・給料等収入が少なかった

「賃金などの条件がよくない」という理由で退職した人は、雇用動向調査結果の概況では男性の10.2%、女性の8.8%、若年者雇用実態調査の概況では全体の30.3%を占めています。 そもそも労働の対価である賃金が低いと、会社そのものに対する不満が蓄積したり、労働への意欲が低下したりしかねません。

2.労働時間や休日など労働条件がよくなかった

「労働時間や休日・休暇など労働条件がよくない」という理由で退職した人は、雇用動向調査結果の概況では男性の10.0%、女性の13.4%、若年者雇用実態調査の概況では全体の23.4%を占めています。労働条件が合わないという理由で退職する人の割合は、「雇用動向調査結果の概況」でも女性の割合がわずかに多くなっています。 ライフワークバランスが叫ばれる昨今、労働者がいかにプライベートの時間を確保できるか、仕事以外で自己実現の時間を持てるかを重視していることがうかがえます。離職率を低下させるには、働き方改革が必要と言えます。

3.職場の人間関係がよくなかった

次に多かったのは、「職場関係の人間関係が悪かった」という理由でした。雇用動向調査結果の概況では男性の7.7%、女性の11.8%、若年者雇用実態調査の概況では全体の26.9%を占めています。 人間関係の悪化は、社員にとって大きなストレスになります。職場は性格や考え方の異なるさまざまな人が集まる場です。コミュニケーションが足りていないと、お互いに誤解を生んだりネガティブな感情を抱いたりすることにつながりかねません。また、セクハラやパワハラといったハラスメントを放置していては、社員の定着率の低下は避けられないでしょう。 ▼参照元 平成30年雇用動向調査結果の概況|厚生労働省 平成30年若年者雇用実態調査の概況|厚生労働省

職場の人間関係を良くし、リテンションに貢献する

コミュニケーション活性化で人間関係を滑らかに

退職理由の上位に挙がる、職場の人間関係。放置すると離職率が上がるばかりでなく、「情報が共有されにくくなる」「現場の士気が低下する」「業務上の連携が取れず生産性が低下する」といった問題を引き起こします。 職場の人間関係を滑らかにするには、青山学院大の山本寛教授が言及するように、コミュニケーションの活性化が欠かせません。事例で挙げたようなマネジメント施策を打つ、社内コミュニケーションツールを導入するなどして、社員同士がお互いに歩み寄れる環境、仕組みを整えることが求められます。 ▼関連記事 若手社員の早期離職防止対策5つのポイント、原因調査の方法を解説
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