人的資本経営とは?人材版伊藤レポートや人材ポートフォリオも解説

人的資本経営とは?
人的資本とは「ヒト」を資本とする考え方です。個人が習得している技能や資格、能力などを資本とし、積極的に投資する経営のことを指します。 ここでは、人的資本経営の考え方や定義などについてご紹介します。人的資本の定義とは
人的資本とは、従業員が習得した技能、資格、能力を資本とみなす考え方を指します。企業における終身雇用制が浸透していた日本において、従来から人件費はコストとして捉えられており、消費するものという考え方でした。人的資本では、人は長期的に見て経営に必要な資本であると位置づけています。 長期的に経営を安定させ、維持していくためには、人財戦略は大きなカギになるでしょう。近年では投資家なども人的資本に注目しているとされ、人的資本に対しての取り組みが投資判断の有無にも影響してくることが考えられます。人的資本経営とは
人的資本経営とは、人材を資本と定義し、その価値を最大限に活かすような経営のことです。中長期的に企業価値を向上させる手段として注目されています。 近年、グローバル化やコロナ禍によって先が見通しづらくなっています。そうした環境下においては、無形固定資産や非財務情報などに関心が集まるようになりました。その結果、人的資本がより注目されているのです。人的資源と人的資本の違い

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人的資本とよく似た概念に「人的資源」があります。人的資源は、経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報のヒトを指す言葉で、従業員そのものを企業の「資源」として見出す考え方です。人材を資源として消費し、コストとして人件費がかかるという捉え方をします。 一方、人的資本は従業員のスキルや能力、知識など、人に付随する能力を企業の「資本」とする考え方です。人材に投資することで資本としての価値が高まるという捉え方をします。 近年では、これまで一般的だった人的資源に代わり、人的資本が注目を集めています。
人的資本経営が注目される背景
昨今、人的資本経営が注目されているのはなぜなのでしょうか。ここでは、3つの背景についてご紹介します。 関連記事:人への投資とは?「骨太の方針2022」新しい資本主義に向けた改革について人的資本経営とSDGs
人的資本経営が注目されている背景の一つに、SDGsへの世界的な取り組み強化が挙げられます。国連は2015年に、SDGs(持続可能な開発目標)について発表しました。これは人類が今後地球で持続的成長を遂げるため、2030年までに達成が必要な17個の目標のことです。 その17個の取り組みの一つとして、日本では企業へのダイバーシティの推進、働き方改革などを掲げています。さらに企業では、人材育成や雇用環境の改善などが挙げられました。 SDGsの達成には、人的資本に関わる内容が多く含まれています。そのため、人材資本経営の取り組みも、今後ますます重要な位置づけとされていくでしょう。人的資本経営とISO30414
人的資本経営は、ISO30414の観点からも注目されています。ISO30414は、ISO(国際標準化機構)が2018年に発表した人的資本の情報開示に関する国際的なスタンダードです。開示すべき情報が11領域49項目にわたってまとめられており、以下のような項目が含まれます。- 人件費などの労働コスト
- 組織文化
- リーダーシップ
- ダイバーシティ など
人的資本経営とESG投資
人的資本経営は、ESG投資への取り組みを強化できる意味でも注目されています。ESG投資とは、環境や社会、企業統治に配慮している企業に注目して行う投資のことです。ESG評価が高いと事業の社会的意義や成長の持続性などに優れた企業といえるため、積極的に投資してもらいやすくなります。 ESG評価を意識する企業にとっても、人的資本経営は重要な経営手法です。人材ポートフォリオとは?
近年注目が集まる人材ポートフォリオも、人的資本経営に関係のあるキーワードです。人材ポートフォリオの意味や重要性について解説します。
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人材ポートフォリオの定義
人材ポートフォリオとは、経営戦略を遂行するための組織内の人材構成を可視化したものです。具体的には、組織のどんな部署や役職に、どんなスキル・資格、能力のある人が、どのくらいの人数、どの期間に在籍すれば経営戦略を遂行できるか、をまとめたものです。 人材をタイプ別に可視化することで経営戦略に適した人材構成を組むことができ、採用、人材育成、人事評価などの観点で近年注目されています。人的資本経営における人材ポートフォリオの重要性
人材ポートフォリオは、人的資本経営にも大きな意味を持ちます。従業員のスキルや資格、能力などを資本と捉えて投資の対象とする人的資本経営では、人材のスキル・資格、能力を分類してまとめた人材ポートフォリオをもとに何に対して投資すべきなのか見極めることができるからです。 実際、以下で紹介する人材版伊藤レポートでは、人的資本経営に必要な枠組みである3P・5Fモデルの中で「動的な人材ポートフォリオ」が紹介されています。人材版伊藤レポートとは?
ここでは、人材版伊藤レポートとは何か、人的資本経営とどんな関係があるのかについて紹介します。人材版伊藤レポートについて
人材版伊藤レポートとは2020年に経済産業省が発表したもので、人的資本経営についての取り組みや、人材戦略に関わる経営陣、取締役、投資家の役割などの方策などを検討する研究会の報告書です。正式には、「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~人材版伊藤レポート~」と言いますが、通称「人材版伊藤レポート」と呼ばれています。 一橋大学の特任教授 伊藤邦雄氏を座長として発表されたもので、人的資本の情報開示や「高め方」などが記載されています。人的資本の重要性が記されており、日本企業において人的資本の情報開示が進むきっかけになったともされています。 参照:https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kigyo_kachi_kojo/pdf/20200930_1.pdf人的資本経営と3P・5F モデル

- 経営戦略と人材戦略の連動
- As is‐To be ギャップの定量把握
- 人材戦略の実行プロセスを通じた企業文化への定着
- 動的な人材ポートフォリオ、個人・組織の活性化
- 知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
- リスキル・学び直し
- 従業員エンゲージメント
- 時間や場所にとらわれない働き方
人的資本経営に取り組むメリット
企業が人的資本経営に取り組むメリットには主に以下の2つが挙げられます。人的資本の情報開示が投資家の積極的な投資につながる
企業が人的資本の情報を開示することで、投資家の積極的な投資につながることが考えられます。環境の変化が激しい現代において、さまざまな状況に対応できる人的資本は、投資判断に大きな影響を与えるとされています。 そのため、アメリカでは2020年8月に米国証券取引委員会が上場企業に対して「人的資本の情報開示」を義務付けました。アメリカの上場企業は、人材の育成や採用、維持に関する情報を開示する必要が出てきたのです。これは投資家の強い希望があったからといわれています。 日本においても人的資本の情報開示の流れは広がっています。積極的に情報開示を行う企業は、投資家の投資の対象となる可能性が高いでしょう。投資家が多くの自社株を購入すると株価が上がり、企業としての価値を上げることができます。従業員のスキルや生産性の向上により企業価値が高まる
企業は人的資本へ積極的に投資をすることで、従業員のスキルアップが期待できるでしょう。従業員の質が上がれば生産性が向上し、今まで以上に会社に利益をもたらしてくれることが考えられます。その利益をさらに人的資本に投入すれば、さらに生産性が向上するなどの好循環を生んでくれるでしょう。企業が持続的に成長することは、企業価値を高めることにもつながります。人的資本経営の取り組み事例3社
各社で人的資本経営への取り組みと開示が行われていますが、具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか。ここでは、人的資本経営を推進する3社の取り組み内容と開示状況を解説します。1. 株式会社丸井グループ
百貨店などを運営する丸井グループでは、「人の成長=企業の成長」を経営理念に掲げ、企業文化の変革と人的資本に対する取り組みと開示を積極的に実施しています。具体的には以下のような取り組みを実施しています。- 人材の育成や採用への投資額をみえる化
- 職種変更やスタートアップ企業への出向
- 自ら手を挙げる組織風土
- キャリアアップ支援制度
- グループ一体での情報共有
2. オムロン株式会社
産業向け制御機器や電子部品、ヘルスケア製品を展開する電気機器メーカーのオムロン株式会社では、2022年からの3年間で累計60億円(19〜21年比で3倍)の金額を人材開発に投じることをコーポレートサイトにて公表しています。グローバル全社員を対象に以下の3つの軸に基づき、施策を実施する予定です。 1. リーダー育成と登用 2. 多様で多才な人材の活躍 3. コト視点に適用できる能力獲得 具体的には、「DXなどの新しいスキル獲得・強化」「海外留学や社外への派遣などによるリーダーの育成」「ジョブポスティング制度の拡大」などに取り組み、従業員が能力を存分に発揮できる組織への変革を進めています。また、同グループが掲げる長期ビジョン「Shaping the Future 2030(SF2030)」において、人件費あたりの付加価値額「人的創造性」を指標として定め、2024年に2021年比+7%を定量目標として設定しています。 参照:人財アトラクション | 社会 | サステナビリティ | オムロン3. アサヒグループホールディングス株式会社
飲食料品事業を展開するアサヒグループホールディングス株式会社では、中期経営戦略において人的資本の高度化を掲げています。同グループでは、「ありたい企業風土の醸成」「継続的な経営者人材の育成」「必要となるケイパビリティの獲得」の3つのアプローチから人材戦略を策定しています。 ■ありたい企業風土の醸成 中期経営戦略を実行するためにも、優秀な人材を採用・維持することが不可欠であると考え、エンゲージメントの高い組織づくりに取り組んでいます。同社は「ピープルステートメント」として「学び、成長し、そして共にやり遂げる(Learning, growing, achieving TOGETHER )」を掲げ、①セーフティ&ウエルビーイング②ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン③学習する組織④コラボレーションの4つを策定しています。 ■継続的な経営人材の育成 同社は、長期戦略を実現するためにもグローバル経営を推進できる人材の育成・確保を重要事項として掲げています。その戦略の一つとして、「アサヒグローバルリーダーシップコンピテンシーモデル」を開発し、アサヒグループのリーダーに求めるコンピテンシー(行動特性)を定義し、キータレントの可視化を進めています。加えて、人材育成面では毎年30名以上のグローバル経営人材を輩出すべく、プログラムの拡充に着手しています。 ■必要となるケイパビリティの獲得 同社は中長期経営方針で掲げた「目指す事業ポートフォリオ」「コア戦略」「戦略基盤強化」の実現に向けたケイパビリティ(組織力)の確保に取り組んでいます。具体的には、人材の能力を最大限発揮されsるための適所適材と育成、専門性に秀でた人材の採用、パートナーシップやアライアンスなど社外リソースの活用等の施策を組み合わせ、ケイパビリティの獲得を目指しています。 参照:人的資本の高度化 | サステナビリティ | アサヒグループホールディングス人的資本経営に取り組むには?
人的資本経営への取り組みとして、具体的にはどのような方法があるか紹介します。3P・5F モデルに関連するサービスを活用する
この記事の「人的資本経営と3P・5F モデル」でも紹介したように、人的資本経営には3つの視点・5つの共通要素が必要です。そこで、3つの視点・5つの共通要素に取り組めるサービスを活用することも有効です。 例えば、各種サービスを活用して以下のような取り組みを実施していくことができます。- Web社内報サービスで、経営陣から「経営戦略と人材戦略の連動」についてメッセージを発信する
- 1on1の実施、従業員のプロフィールの見える化、表彰制度の蓄積ができるサービスで「動的な人材ポートフォリオ」に取り組む
- サンクスメッセージのサービスで経営理念の浸透や称賛文化の醸成に取り組み、「企業文化への定着」をはかる
- チャットや稟議申請などのサービスでDXを推進し、「時間や場所にとらわれない働き方」を社内で推奨する
- 情報共有やコミュニケーション活性化のサービスで「従業員エンゲージメント」を高める / 組織診断の「従業員エンゲージメント」の結果をもとに施策を実施する
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