企業の社会的責任(CSR)とは?メリットや実践方法、成功事例を解説

「CSR活動を始めたいが、何から手をつければよいか分からない」といった悩みを抱えている経営者や人事担当者は多いのではないでしょうか。企業の社会的責任(CSR)は、大企業だけのものではありません。本記事では、CSRの基本的な考え方から具体的な実践方法、成功企業の事例まで、中小企業でも取り組めるCSR活動のポイントを分かりやすく解説します。

企業の社会的責任(CSR)とは何か

企業の社会的責任は、現代のビジネスにおいて避けて通れない重要なテーマです。利益追求だけでなく、社会全体への貢献を考えることが、持続可能な経営につながります。ここでは、CSRの基本的な概念から、なぜ今注目されているのか、その原則まで詳しく見ていきましょう。

CSRの定義と基本知識

CSR(Corporate Social Responsibility)とは、企業が利益追求だけでなく、社会全体に対して果たすべき責任のことです。具体的には、環境保護、従業員の働きやすさ向上、地域社会への貢献などが含まれます。

重要なのは、CSR活動が企業の本業と切り離されたものではないということです。事業活動そのものを通じて社会課題の解決に貢献することが、真のCSRといえるでしょう。

CSRが注目される背景と社会的意義

CSRが注目されるようになった背景には、いくつかの社会的変化があります。まず、企業活動のグローバル化により、企業の社会的影響力が格段に大きくなったことが挙げられます。

次に環境問題の深刻化も大きな要因です。気候変動や資源枯渇といった地球規模の課題に対して、企業の責任ある行動が求められています。消費者の意識も変化し、環境や社会に配慮した商品・サービスを選ぶ傾向が強まっています。

加えて投資家の視点も変わってきました。ESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視した投資)が拡大し、CSRに積極的な企業への投資が増えています。これは、社会的責任を果たす企業の方が、長期的に安定した成長が期待できるという考えに基づいています。

日本では、2000年代初頭から本格的にCSRが普及し始めました。企業不祥事の多発や、東日本大震災を契機とした社会貢献意識の高まりなどが、CSRへの関心を後押ししています。

CSRにおける7つの原則

ISO26000という国際規格では、CSRを実践する際の七つの原則が定められています。これらの原則を理解することで、効果的なCSR活動の基盤を築くことができるでしょう。

七つの原則は以下の通りです。

  • 説明責任:環境や社会に与える影響について説明する責任
  • 透明性:意思決定や活動の透明性を保つ
  • 倫理的な行動:公正で誠実な行動を取る
  • ステークホルダーの利害の尊重:関係者の利益を考慮する
  • 法の支配の尊重:法令を順守する
  • 国際行動規範の尊重:国際的な規範に従う
  • 人権の尊重:基本的人権を尊重する

CSR活動における原則は、企業が守るべき基本的な価値観です。これらの原則を実践するためには、企業の規模や事業特性を考慮し、各原則に基づいた具体的な行動を取ることが求められます。

CSR活動が企業にもたらすメリットと効果

CSR活動は単なるコストではなく、企業価値を高める投資といえます。適切に実施すれば、企業イメージの向上、優秀な人材の確保、リスク管理の強化など、さまざまなメリットが期待できます。ここでは、CSR活動がもたらす具体的な効果について詳しく解説します。

企業イメージ向上とブランド価値の向上

CSR活動の最も分かりやすいメリットは、企業イメージの向上でしょう。社会貢献に積極的な企業は、消費者や取引先から高い評価を得やすくなります。

具体的には、環境保護活動や地域貢献活動を通じて、「信頼できる企業」「社会的責任を果たす企業」というイメージが形成されます。このような企業イメージは、商品・サービスの差別化にもつながります。

また、メディアでの露出機会も増える傾向があります。優れたCSR活動は、新聞やテレビ、Webメディアで取り上げられることが多く、広告費をかけずに企業の認知度を高めることができます。

取引先や株主からの信用獲得にも効果的です。CSRに積極的な企業は、経営の透明性が高く、リスク管理もしっかりしているという印象を与えます。これは、新規取引の獲得や資金調達の際に有利に働くでしょう。

従業員満足度向上と人材採用への好影響

CSR活動は、従業員のモチベーション向上にも大きく貢献します。自社が社会に貢献していることを実感できれば、仕事への誇りややりがいが生まれます。

採用活動においても、CSRは強力な武器となります。特に若い世代は、企業の社会的責任を重視する傾向が強く、CSRに積極的な企業を就職先として選ぶ傾向があります。

加えて優秀な人材の定着率向上にもつながります。社会貢献に関心の高い人材は、CSR活動に積極的な企業で長く働きたいと考えるからです。その結果、採用コストや教育コストの削減も期待できるでしょう。

コンプライアンスの向上

CSR活動を推進する過程で、企業のコンプライアンス体制も自然と強化されます。法令順守は、CSRの基本原則の一つだからです。

CSRに取り組む過程で、潜在的なリスクを早期に発見し、対策を講じることができます。例えば、サプライチェーンにおける人権問題や、環境汚染のリスクなどを事前に把握し、予防措置を取ることが可能になります。

コンプライアンス意識の向上は、不祥事の防止にもつながります。CSR活動を通じて、従業員一人一人が企業の社会的責任を意識するようになれば、不正行為の抑止力となるでしょう。

効果的なCSR活動の実践方法

CSR活動を始めるに当たって、「何から手をつければよいか分からない」と悩む企業は少なくありません。効果的なCSR活動を実践するには、自社の特性を理解し、段階的に取り組むことが重要です。ここでは、CSR活動を成功に導くための具体的なステップを解説します。

自社に適した課題の決定

CSR活動の第一歩は、自社が取り組むべき課題を明確にすることです。全ての社会課題に対応することは不可能なので、自社の事業と関連性の高い分野から始めることが大切でしょう。

まず、自社の事業活動が社会に与える影響を分析します。製造業であれば環境負荷、サービス業であれば地域社会との関わり、IT企業であれば情報セキュリティなど、業種によって重点課題は異なります。

次に、ステークホルダーの期待を把握します。従業員、顧客、取引先、地域住民など、それぞれが企業に何を求めているかを調査しましょう。アンケートやヒアリング、対話の場を設けることで、具体的なニーズが見えてきます。

活動内容や方針の決定

課題が決まったら、具体的な活動内容と実施方針を策定します。この段階では、現実的で実行可能な計画を立てることが重要です。

初めにCSR活動の目的と目標を明確にします。「3年後に二酸化炭素排出量を○%削減する」「地域の小学校での課外授業を実施する」など、具体的な数値目標を設定しましょう。

それから社内体制を整備します。CSR推進担当者や部署を設置し、責任と権限を明確にします。小規模な企業であれば、既存の部署が兼務することも可能ですが、責任者は必ず決めておきましょう。

予算の確保も忘れてはいけません。CSR活動には一定のコストがかかりますが、必ずしも大きな予算は必要ありません。従業員のボランティア活動支援や、既存事業の改善から始めることで、低コストでも効果的な活動が可能です。

運営方法についても検討が必要です。定期的な進捗確認の仕組み、従業員への周知方法、外部との連携方法などを事前に決めておくことで、スムーズな活動が可能になります。

ステークホルダーに情報を開示する

CSR活動の成果や取り組み内容を、ステークホルダーに適切に伝えることは非常に重要です。情報開示により、企業の透明性が高まり、信頼関係の構築につながります。

情報開示の方法は、企業規模や対象によって異なります。大企業であればCSR報告書や統合報告書を作成することが一般的ですが、中小企業であればWebサイトやSNSを活用した情報発信をすると良いでしょう。

情報開示の際は、良い面だけでなく、課題や改善点も含めて正直に伝えることが大切です。これにより、ステークホルダーからの信頼を得やすくなります。

CSR推進に積極的な企業の事例

CSR活動の具体的なイメージを持つために、実際に成果を上げている企業の事例を見てみましょう。ここでは、業界が異なる2社の取り組みを紹介します。それぞれの企業がどのような課題に取り組み、どのような成果を上げているのか、参考にしてください。

日本マクドナルド株式会社

日本マクドナルドは、CSR推進に向けた取り組みを「サステナビリティレポート」として公開しています。

サステナビリティレポートには、日本マクドナルドのサステナビリティの方針や目標、現在の進捗、活動実績などが細かく記載されています。

例えば2024年度版には、「2030年までに店舗とオフィスにおける温室効果ガス排出量を50.4%削減する」「2025年末までに提供用パッケージ類および、ハッピーセットのおもちゃを再生可能な素材リサイクル素材または認証された素材に変更」といった目標が記載されています。

サステナビリティレポート | マクドナルド公式

ソフトバンク株式会社

ソフトバンクは、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、テクノロジーを活用したCSR活動を展開しています。特に教育分野での取り組みが充実しています。

具体的には、2023年度にはスマホ教室を約99万回開催しており、住んでいる地域や環境に関係なく、誰もがスマホを使って情報にアクセスできる社会を目指しています。

他には、次世代を育成するための支援活動や、障害者支援を行うNPO団体への支援や連携など、さまざまな地域・世代を幸せにするための活動に積極的に取り組んでいます。

これらの活動は、本業の強みを生かしながら社会課題の解決に貢献する好例といえるでしょう。

社会貢献活動 | 企業・IR | ソフトバンク

CSRを社員に共有するには「TUNAG」がおすすめ

CSR活動を成功させるには、従業員一人一人の理解と参加が不可欠です。しかし、CSRの理念や活動内容を全社員に浸透させることは、多くの企業にとって課題となっています。そこで活用したいのが、組織改善クラウドサービス「TUNAG(ツナグ)」です。

TUNAGの社内掲示板を活用することで、企業理念やCSR方針を発信することができます。またCSR活動の様子を共有することで、従業員同士のコミュニケーションを活性化し、CSR活動への参加意欲を高めることが期待できます。

主に、以下のような機能が効果的です。

  • 社長メッセージ:経営層の考えを発信できる
  • 社内掲示板:社員同士の交流や情報共有に活用
  • 社内ポイント:理念や行動方針を体現した行動にポイントを付与

CSR活動は、企業の持続的成長に欠かせない取り組みです。TUNAGを活用することで、CSRの理念を全社に浸透させ、従業員一丸となった活動を実現できるでしょう。

社会に貢献しながら企業価値を高める、そんな理想的なCSR活動の実現に向けて、ぜひ一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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