6時間勤務のシフトで休憩はどうすべき?法律の定めから実務上の対応まで
6時間勤務のシフトを組むに当たって、若干の延長が休憩なしで認められるか気になるケースもあるでしょう。6時間勤務に関する休憩についてのルールは、労働基準法や過去の判例から把握できます。適法に休憩時間を設定するために必要な知識を、網羅的に解説します。
6時間勤務と休憩の基本ルールを確認する
労働時間によって、付与しなければならない休憩時間は労働基準法で定められています。6時間勤務の休憩に関する基本的なルールを、同法から整理していきましょう。
6時間以内なら休憩なしでOK
労働基準法第34条第1項では、労働時間が「6時間を超える」場合には少なくとも45分の休憩を与えなければならないと定めています。逆に言えば「6時間以内」なら、法的には休憩なしで問題ないということです。
「休憩を与えてはいけない」決まりはないため、疲労度が高い業務などの場合、6時間以内でも休憩を与えて問題ありません。ただ4時間・5時間など短時間シフトであれば、休憩を入れることで帰宅時間が遅くなり、かえって労働者の負担になることもあります。
6時間以内の労働に対する休憩設定には、法律の定めだけでなく実態も加味した判断が必要です。
6時間を超えると45分以上の休憩が必要
労働基準法第34条第1項の規定によれば、労働時間が「6時間を超える」場合には最低45分の休憩を与えなければなりません。
仮に6時間半労働の従業員が「早く帰りたいから休憩をなくしてほしい」と訴えたとしても、労働基準法は強行法規であるため、希望に応じて休憩をなくせば違法です。6カ月以下の拘禁または30万円以下の罰金が科される可能性があります(同法第119条)。
また、休憩時間の規定の対象となるのは、一部の例外を除く全ての労働者です。「本人の希望だから付与しなくてよい」という運用は認められません。
参考:労働基準法 第34条第1項・第119条|e-Gov法令検索
休憩は勤務の途中に与える必要あり
労働基準法では、休憩について「途中付与の原則」を定めています(同法第34条第1項)。始業直後や終業直前に付与することは、どのような場合でも認められません。
業務に集中したいなどの理由で途中休憩を嫌がる従業員がいても、労働基準法の定めであることを説明して納得してもらう必要があります。
休憩時間と労働時間の線引き
休憩時間を考えるとき、気になるのが「休憩時間の定義」でしょう。労働基準法や過去の判例をベースに、どのようなケースが休憩時間と認められるのか、労働時間と見なされてしまうのかの線引きを解説します。
業務の指示や相談をすると休憩と見なされない
休憩時間とは、文字通り「休憩する時間」であり、完全に労働から解放されていなければなりません。労働基準法第34条第3項にも、休憩時間は自由に利用させなければならないと定められています(自由利用の原則)。
ちょっとした相談でも、仕事に関するものだと休憩時間と見なされなくなることに注意しましょう。電話番や1人の夜勤や宿直など、手待ち時間となる場合も休憩ではなく労働時間と見なされます。
休憩を与えたつもりが実質的に労働時間に該当してしまう例は、以下の通りです。
- 指定した制服に着替える
- 業務を指示する(電話対応や荷物の受け取りなど)
- 実質的に強制参加のランチミーティングが実施されている
自社でこのようなケースを休憩として扱っていないか、いま一度チェックしておきましょう。
指示に基づく片付け・準備の時間は労働時間
明示的・黙示的な指示による、片付け・着替えなどの準備は労働時間と見なされます。「黙示的な指示」はイメージしにくいかもしれませんが、業務の遂行に当然必要とされる行為であると言えば分かりやすいでしょう。
例えば、過去の判例「三菱重工長崎造船所事件」では黙示的な指示による準備が労働時間であるとの見解が示されています。この事件では、作業服・安全保護具の着脱や更衣所から作業現場への往復時間を、労働時間とするかどうかが争われました。
長崎地方裁判所は、これらの準備時間は使用者の指揮下で労務を提供しているわけではないものの、労務の提供に不可欠・不可分な行為も含まれているとして、労働時間と認めるとの見解を示しています。
業務後の片付けについても同様です。「次のシフトに入る人が滞りなく仕事をするために必要」「慣例的に片付けをすることになっている」など、完全に従業員の自由意思のみで行われていない場合、黙示的な指示があり労働時間に該当すると考えましょう。
6時間勤務で休憩時間を柔軟に与えるには
6時間勤務なら休憩を与える法的義務はありませんが、仕事の性質や残業の有無によっては付与が必要になります。ただ、サービス業や娯楽業など、業種によって「45分間連続で休憩を取ると業務に支障が生じる」「全員が同時に休憩に入ると店舗運営が難しい」などの懸念があるでしょう。
その場合は、以下に紹介する方法で柔軟な休憩の付与を検討できます。
休憩を複数回に分ける
労働基準法第34条第2項では、休憩の法定時間や原則として一斉付与を義務付けていますが、まとめて付与することは義務付けられていません。一斉付与とは「全員一斉に休憩を取らせること」を意味しています。
45分休憩の場合、途中2回に分けて20分、25分と分割することも可能です。業務の特性上、長時間連続して休憩を取ることが難しい場合には、このような分割付与も有効です。
ただ、3〜5分など短すぎる休憩時間では、従業員が自由に休めません。同法第34条第3項に定められた「自由利用の原則」に反しないよう、ある程度はまとめて付与する必要があります。
また、休憩時間を分割する場合は、従業員に分かりやすいよう就業規則に明記することも必須です。
参考:労働基準法 第34条第2項・第3項|e-Gov法令検索
労使協定の締結や例外規定の適用で一斉付与を避ける
労働基準法第34条第2項には一斉付与の原則が定められていますが、同項では労使協定がある場合は例外ともされています。過半数労働組合と、過半数労働組合がない場合は過半数代表者と書面で労使協定を締結すれば、全労働者に一斉に付与しなくても違法にならないということです。
また以下の業種では、元々休憩を一斉に付与しなくてもよいとされています(同法施行規則第31条、同法別表第1より)。
- 道路、鉄道、軌道、索道、船舶または航空機による旅客、または貨物の運送の事業
- 物品の販売、配給、保管もしくは賃貸または理容の事業
- 金融、保険、媒介、周旋、集金、案内または広告の事業
- 映画の製作または映写、演劇その他興行の事業
- 郵便、信書便または電気通信の事業
- 病者または虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
- 旅館、料理店、飲食店、接客業または娯楽場の事業
- 官公署
- 動物の飼育または水産動植物の採捕もしくは養殖の事業その他の畜産、養蚕または水産の事業
この業種に当てはまるなら、一斉付与の例外として扱われます。
参考:労働基準法 第34条第2項・別表第1・第41条第1号|e-Gov法令検索
「6時間ぴったり」シフトの休憩に注意
アルバイトやパートなど短時間勤務の従業員を雇っている場合、6時間ぴったりのシフトを組むこともあるはずです。ただ、休憩が不要か必要か法的なラインとなる「6時間」の勤務には、注意すべき点があります。
1分の超過でも休憩が必要
「6時間を超えた場合には最低45分の休憩を与えなければならない」という労働基準法の定めは、たとえ1分でも超えたら適用されます。
1分程度の片付けだからよいだろうと思っても、業務上必要な片付け(暗黙のうちに指揮命令下にある状態)なら労働時間と見なされることに注意が必要です。
6時間の勤務後に1〜2分の片付けが発生するならば、途中に45分以上の休憩を設けなければなりません。
あらかじめ45分以上の休憩を設けるのが無難
6時間ぴったりのシフトの場合、1分でも片付けなどで残業の可能性があるなら、45分以上の休憩を設けておくのが安全です。
もし休憩時間を設けておらず、6時間働いた後に数分の片付けが発生しても、途中付与の原則があるので「帰る前に45分休憩して」という運用はできません。結果として6時間を超える労働があったにもかかわらず45分以上の休憩を与えなかったことになり、労働基準法違反となってしまいます。
分割付与は可能なので、連続した労働時間を確保したい場合、次のような付与の仕方も検討できます。
- 始業から30分後に15分の休憩を付与する
- 終業前1時間から30分の休憩を付与し、残り30分は業務にあたる
ただしあくまでも労働者の健康や安全を考慮し、適切な休息ができるよう配慮した運用が求められます。
休憩付与のルールは明文化を
休憩付与について法律のルールを整理して整備が済んだら、全社的に明文化して周知する必要があります。特に休憩の要不要が法的に分かれる「6時間」という勤務時間だと、休憩付与の基準や運用などが複雑になりがちです。
従業員に対してはもちろん、労務担当者にもルールを周知しましょう。特に複数の拠点がある企業の場合、現場によって判断にブレがあると法令違反のリスクが増大します。
6時間勤務の休憩ルールを整理して法的リスクを回避
6時間以内の勤務に対しては、休憩を付与しなくても法的に問題はありません。ただ、1分でも6時間を超えた場合、最低45分の休憩がないと労働基準法違反となってしまいます。
勤務時間6時間のほかに、数分でも業務上必要な片付けや準備など労働時間と見なされる時間が発生するなら、45分以上の休憩が必要です。6時間ぴったりのシフトで片付け・準備など「少しの残業」が発生する可能性が高い場合は、あらかじめ45分以上の休憩を設定しておきましょう。