採用にかかる費用が、年々増えていると感じていないでしょうか。求人広告や人材紹介への支払いが妥当なのか、判断に迷う場面もあるでしょう。採用単価の相場や費用の内訳がわからなければ、見直しの手はつけられません。この記事では、採用コストの基本から平均相場、採用単価を下げる具体策までを解説します。費用を削るだけでなく、採用品質と定着率まで含めた最適化のヒントをお届けします。
採用コストと聞くと、求人広告費を思い浮かべることも多いでしょう。しかし、実際の費用はそれだけではありません。見えていない費用まで含めなければ、正しい見直しはできないのです。まずは、採用コストの全体像と内訳をつかんでいきましょう。
採用コストとは、企業の採用活動で発生する全費用の総計です。求人広告費だけを指す言葉ではありません。採用の準備から入社後のフォローまで、幅広い費用が含まれます。
具体的には、次のような費用が採用コストに当たります。
これだけ多くの費用が、採用活動には発生しています。範囲を正しく把握することが、コスト管理の第一歩です。
採用コストと採用単価は、似ているようで役割が異なります。採用コストは採用活動全体にかかった費用の合計であり、予算管理の対象となる「総額」です。
一方の採用単価は採用1人当たりの費用を指し、施策やチャネルの効率を測る「単位指標」です。
総額だけを見ても効率は判断できず、単価だけを見ても投じた規模はわかりません。
採用単価は「採用コスト総額 ÷ 採用人数」で求めます。シンプルな式ですが、分子と分母に何を含めるかで数字が大きく変わるため、社内で定義をそろえておく必要があります。
分子は、外部コストだけを入れた単価と、内部コスト(社内人件費)まで含めた単価を分けて算出するのが基本です。
外部コストだけの単価は他社や相場との比較に向き、内部コストを含めた単価は自社の本当の負担を把握するのに向きます。分母は、内定者数ではなく「実際に入社した人数」で計算します。内定辞退を含めた母数で割ると、単価を実態より低く見せてしまうためです。
注意したいのは、全社一律の平均単価だけで良し悪しを判断しないことです。採用単価はチャネル別(人材紹介・求人広告・リファラルなど)と職種別(エンジニア・営業・管理部門など)に分解して初めて、どこに費用が偏っているかが見えてきます。
例えば全体平均が100万円でも、人材紹介経由のエンジニアだけは250万円、リファラル経由の事務職は10万円、と内訳は大きくばらつくのが通常です。
平均値だけを相場と比べても、削るべき対象は特定できません。チャネル×職種のマトリクスで単価を出し、相場や採用難易度と照らし合わせることが、的を射た見直しにつながります。
自社のコストが高いかどうかは、相場と比べて判断します。ここでは、株式会社マイナビの調査データを基に平均相場を見ていきましょう。比べる目安があれば、見直しの優先順位もつけやすくなります。
中途採用状況調査2025年版(2024年実績) | マイナビキャリアリサーチLab
採用費の相場を知る手がかりが、マイナビの調査にあります。「中途採用状況調査2025年版」によると、2024年の中途採用費用は1社平均650.6万円でした。これは1年間の中途採用にかかった費用の総額です。求人広告費や人材紹介手数料などが含まれます。
この調査は、従業員3名以上の企業の人事担当者1,500人を対象に実施されました。業種や企業規模によって、実際の金額には幅があります。まずは、自社の年間採用費と比べてみてください。平均から大きく外れていれば、見直しの余地があるかもしれません。
同調査では、2024年の中途採用人数も示されています。1社当たり年間平均20.8人で、2年連続20人を超えました。多くの企業が、一定の人数を中途で採用していることが分かります。
採用費用と合わせれば、1人当たりの単価を試算できます。650.6万円を20.8人で割ると、採用単価はおよそ31万円です。ただし、これはあくまで全体の平均値です。専門職など採用が難しい職種では、単価はさらに高くなります。自社の採用単価を区分ごとに出し、この水準と照らし合わせましょう。
注目したいのは、採用費用の推移です。2024年の採用費用は、前年より20.9万円増えました。費用の増加は2021年から続いています。つまり、数年にわたって採用費が上がり続けているのです。
増加の背景には、企業の積極的な採用姿勢があります。前年より費用をかけて採用した、という企業が多い状況です。加えて、物価高によるサービス費用の上昇も影響しています。採用費は今後も上がる前提で、計画を立てる必要があるでしょう。
採用費が高止まりする背景には、市場の活発化があります。同調査では、2025年の中途採用に積極的な企業は9割を超えました。20〜40代の採用に積極的な企業は、8割以上になります。人材の取り合いが、費用を押し上げているのです。
特に、専門職や若手の採用ニーズは高い状況です。正社員の人手不足感が強い職種は、3年連続でITエンジニアでした。一方で、調査ではコストをかけて採用した人材が定着しなければ費用対効果への不満につながる、という点が課題として指摘されています。
だからこそ、採用後の定着支援まで含めた視点が欠かせません。
コストを下げるには、なぜ高くなるのかを知る必要があります。ここでは、採用コストを押し上げる4つの原因を解説します。自社に当てはまる点がないか、確認してみましょう。
人材紹介サービスは成果報酬型が多く、1人当たりの費用が高くなります。手数料の相場は、採用者に支払う見込みの年収(想定年収)の30〜35%です。想定年収500万円なら150万〜175万円が1人の採用で発生する計算です。
便利な反面、依存度が高いほど採用人数に比例して費用が膨らみます。チャネルごとの費用構造は次の通りで、「成功報酬型」だけに偏らせないことが要点です。
チャネル | 費用の発生のしかた | 採用が増えたときの費用 |
人材紹介 | 成功報酬(想定年収の30〜35%) | 人数に比例して増える |
求人広告 | 掲載課金(前払いの定額) | 何人採っても掲載料は一定 |
リファラル・ダイレクト | 報奨金や運用工数のみ | 1人当たりは下がりやすい |
求める人物像が曖昧だと、採用要件が現場と人事でズレ、選考の精度が下がります。その結果、次のような形で内部コストが膨らみます。
防ぐには、求人を出す前に MUST(必須要件)/WANT(歓迎要件)/NG(不適合条件) を切り分け、現場と合意しておくことです。要件が定まれば、応募の母集団の質が上がり、対応工数そのものが減ります。
選考に時間がかかるほど、候補者の離脱と工数の両方が増えます。
例えば1回1時間の面接に管理職2人が同席すれば、1候補者・1回で2時間分の人件費が発生します。これが4次面接まで続けば工数は単純に4倍です。
「面接の回数・所要日数・離脱率」を測り、初回連絡までの日数短縮や面接の集約(複数面接官を1回にまとめる等)でフローを縮めることが、見えないコストの削減につながります。
内定辞退や早期離職が出ると、それまでにかけた費用が回収できないまま、採用活動を一からやり直すことになります。失うのは、次の二重のコストです。
人材紹介経由なら一定期間内の早期退職で手数料の一部が返還される「返金規定(フリーリプレイスメント)」があるケースもありますが、それでも工数や欠員の損失は残ります。辞退・離職を防ぐこと自体が、最も確実なコスト削減策です。内定後のフォローや受け入れ体制の整備まで含めて対策を講じましょう。
原因が分かれば、打ち手も見えてきます。ここでは、採用単価を下げるための具体策を紹介します。明日から取り組める内容を中心にまとめました。
いま使っている求人媒体は、本当に成果が出ているでしょうか。掲載を続けているだけで、効果を検証していないケースは少なくありません。媒体ごとに応募数・採用数・採用単価を集計し、どの媒体が成果を出しているかを検証しましょう。
成果の出ていない媒体は、見直しの対象になります。例えば、上位プランから標準プランへ変更する方法や、掲載期間や掲載枠を絞り、費用を抑えるといった方法もあります。効果が低いまま続けている媒体は、思い切って停止する判断も必要です。費用だけでなく、採用品質まで見て媒体を選び直しましょう。
自社採用サイトからの応募は、求人広告費も紹介手数料もかからず、1人当たりのコストを大きく下げられます。一度整備すれば、求人を出すたびに費用が発生する媒体と違い、継続的に応募の入り口として機能します。
ただし「作っただけ」では応募は増えません。応募者が知りたい情報を、次のように具体的に載せることが効果を左右します。
社員インタビューや待遇の開示は、入社前後の認識のズレ(→早期離職)を防ぐ効果もあります。サイトは作って終わりにせず、流入数や応募率を見ながら情報を足していくのが前提です。
リファラル採用とは、社員の紹介による採用です。媒体費・紹介手数料がかからず、コストを抑えやすいことに加え、社風を理解した社員が間に入るため、ミスマッチや早期離職が起きにくいという利点があります。
定着させるには、社員任せにせず仕組み化することが要点です。
整備する項目 | 具体策 |
報奨金 | 採用決定時に紹介者へ報奨金(一般に5万〜30万円程度)を支給 |
紹介のしやすさ | 募集職種と求める人物像を社内に共有し、紹介の入り口を簡単にする |
運用ルール | 不採用時の気まずさを避けるため、選考結果の伝え方や対応フローを決めておく |
注意点として、紹介は社員のネットワークに依存するため、急な大量採用には向きません。あくまで他チャネルと併用し、安定した採用ルートの1つとして育てるのが現実的です。
ダイレクトリクルーティングとは、企業から候補者へ直接声をかける手法です。求めるターゲットに絞ってアプローチできます。
データベースの利用料は年間で定額のものが多く、採用人数が増えるほど1人当たりの費用は下がります。成功報酬型(想定年収の30〜35%)の人材紹介より割安になりやすい方法です。
運用の工数はかかるため、体制づくりが鍵になります。
採用コストの最適化は、削減だけが目的ではありません。可視化と改善を続けることで、採用成果そのものを高められます。ここまでの内容を踏まえ、次の一歩を考えていきましょう。
採用コストは、ただ削ればよいわけではありません。外部費用を削りすぎると、応募数や採用品質が下がります。結果として、採用難や早期離職を招く恐れがあるのです。大切なのは、採用単価・採用品質・定着率のバランスです。
採用コストの見直しは、入り口の費用だけの問題ではありません。採用した人材が定着し、活躍する環境づくりまでが範囲です。費用の可視化と定着支援を、両輪で進めていきましょう。それが、採用成果を最大化する確かな道筋になります。