サーバントリーダーシップの有名人や企業事例・メリットデメリットを解説
こんにちは、エンゲージメントプラットフォーム「TUNAG」を提供する株式会社スタメンの編集部です。
サーバントリーダーシップとは、リーダーが部下や組織のメンバーをサポートし、彼らの成長や成功を最優先に考えるリーダーシップスタイルを意味します。資生堂やスターバックス、サイバーエージェントなど、多くの企業がこの考え方を取り入れています。
サーバントリーダーシップを取り入れることで、部下との信頼関係が深まり、組織のコミットメントやモチベーションが高まるだけでなく、業務の効率やスキルの向上も期待できます。
サーバントリーダーシップとは?
「サーバント」とは、英語で「使用人」を意味します。サーバントリーダーシップとは、その言葉通り、「リーダーはまず相手に奉仕すること。そして、その後相手を導くものである」という考え方をいいます。
サーバントリーダーシップは、1970年にアメリカのロバート・K・グリーンリーフ氏が提唱したリーダーシップ哲学です。リーダーは相手に奉仕や支援をすることで信頼をつかみ、協力を得るというこの考え方は、サウスウエスト航空やスターバックスなどさまざまな企業で取り入れられました。
関連記事:リーダーシップとは?ドラッカーの定義から学ぶ「能力のある人の特徴」 | TUNAG
支配型リーダーシップとの違い
サーバントリーダーシップとよく比較されるリーダー像として、支配型リーダーシップがあります。
支配型リーダー | サーバントリーダー | |
---|---|---|
関係性 | トップダウンで命令や指示を出すリーダー | 部下の成長のため、部下をサポートに回るリーダー |
コミュニケーション頻度 | 少ない | 多い |
強み | 迅速な意思決定ができる。経験の少ない新人を早期戦力化しやすい。 | 双方向コミュニケーションを促進し、チームワークが向上しやすい。 |
支配型リーダシップの上司の部下は、指示されたことをやろうとしたり、役割や指示内容だけに集中しようとしたりする傾向があり、「リーダーに従っている」という感覚を持っています。
支配型リーダーシップは「古い」考え方とされることもありますが、トップダウンでスピード感早く意思決定ができる点や、経験の少ない新人を早期戦力化しやすい点などがあげられます。
しかし、デメリットとして部下との双方向のコミュニケーションが取りづらく、コミュニティづくりが消極的であり、上司と部下との間でのより良い関係値を作ることが難しく、モチベーション低下へと繋がりやすいとされています。
一方、サーバントリーダーシップは部下の話に耳を傾け、部下が働きやすい環境づくり・コミュニティづくりを積極的に行い、部下とのコミュニケーションが取りやすいリーダーのことを主に指します。
グローバル化が進みビジネスのスピードもあがっている現代において、部下の成長を柔軟に受け入れ、個々が活躍できる職場環境・土壌を作ることは必要不可欠と言えます。
サーバントリーダーシップの有名人
サーバントリーダシップを発揮して組織を成長させた事例としてたびたび挙げられるのが、2015年から2018年まで箱根駅伝を4連覇に導いた、青山学院大学陸上競技部の原 普監督です。
原 普監督
青山学院大学を箱根駅伝4連覇に導いた原 普監督。チームの成熟度によって4つのステージにわけ、指導方法を柔軟に変えてきたといいます。
1つ目のステージが、指導者が命令をして選手を動かす君臨型。2つ目が、チームをいくつかのグループにわけ、各代表に指示を出してメンバーに伝える指示型、3つ目が、監督が伝えるのは方向性だけで、中身を部員が考えるステージ。最後、4つ目がサーバント型です。サーバント型の指導では、監督はサポート役に徹し、選手の自立を促します。
サーバンド型に行き着いたチームは、監督が指示を出さなくても、学生が自ら考え練習に取り組むようになります。
原監督は選手の成長を促すため、選手たちにとって「実現できる半歩先の目標設定」をしました。それをグループ内で議論させ、それぞれで管理し、目標達成の成功体験を重ねることで、常勝チームが形成されていきました。
参照元:半歩先の目標を設定 成功体験積み重ねれば選手は成長|NIKKEI STYLEキャリア 私のリーダー論
サーバントリーダーシップの具体事例3社
1. 資生堂
資生堂が推進するのは、「お客様」を一番上に置いた逆ピラミッド型のサーバントリーダーシップ組織経営です。
資生堂の再生をミッションとして社長に就任した池田守男氏は、お客様への奉仕と現場第一主義を念頭に、お客様の次に店舗スタッフを上層に据えました。池田氏は自ら店舗などの現場を回り、店舗スタッフと積極的に対話することで、社員が働きやすい環境を整備。組織を改革してきました。
参照元:資生堂のサーバント・リーダーシップとは?池田守男氏の奉仕型リーダーシップを徹底解説!|識学総研
2. スターバックス
質の高い社員教育と顧客へのホスピタリティを徹底するスターバックス。同社が掲げるバリューに、「お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくります」とあります。
上司・部下分け隔てなく心から認め合おうという姿勢に、同社のサーバントリーダーシップが表れていると言えるでしょう。
スターバックス・インターナショナル元社長のハワード・ビーハー氏は、「スターバックスが世界的なコーヒーショップとなった背景には、サーバントな文化・人を大切にする文化を原動力としてきたからだ」と明言しています。
3. サイバーエージェント
株式会社サーバーエージェントでは、優秀な人材を活性化するために、サーバントリーダーシップを取り入れています。
現在までに100社以上の子会社を生みだしてきた同社では、「スタートアップJJJ」という新規事業創出のための制度を策定。事業撤退のルールを明確に定めたうえで、その範囲内で社員の自己実現を支援しています。
▼参照元
CA藤田晋氏が明かす、会社が社員を大事にする理由 ネットバブル崩壊後の転機を振り返る|logmiBiz
藤田晋氏「若者は上司や先輩がいると意見を言えない」 サイバーエージェント流、若手を活かす育成メソッド|logmiBiz
なぜサイバーエージェントは数多くの新規事業を創れるのか? 藤田晋氏が語る、アイデアの源泉と独自のシステム|logmiBiz
サーバントリーダーシップのデメリットとメリット
デメリット
1. 丁寧な傾聴が組織の方向性決定の足かせになることも
サーバントリーダーには、メンバーの意見や希望にしっかりと耳を傾ける「傾聴」という特性があります。1人ひとりの話をじっくり聴くことは、メンバー個々の主体性を育てたり、モチベーションを向上させたりといった点で有効ですが、一方でじっくり話を聴きすぎて、方向性の決定に時間がかかってしまうおそれがあります。
2. 経験や知識が少ないメンバーの士気低下につながる
サーバントリーダーシップのもとでは、メンバーの主体性が重視されます。すでに社会人経験や業務知識のある人、成長志向のある人にとってはまたとない環境ですが、社会人経験が浅い人、自ら考えて動くことが苦手な人にとっては苦痛に感じるかもしれません。そうしたメンバーへのフォローが必要です。
▼参照元
What are the pros and cons of servant leadership?|BetterUp
サーバントリーダーシップとは? ビジネスに効く最新のリーダーシップ論|カオナビ
「サーバントリーダーシップ」とは?基礎的な知識、メリットデメリットを解説|Talknote Magazine
メリット
1. 社員のモチベーションが向上し、行動が変わる
サーバントリーダーは、社員の意見や希望に耳を傾け、癒やし、成長する機会を提供します。そのため、メンバーは「自主性を尊重されている」「チームの一員として大切に扱われている」「このリーダーに協力したい」といったように、モチベーションが向上します。
リーダーとメンバー間に信頼関係が生まれることで、メンバーはリーダーに応えようと仕事への士気が上がり、組織が活性化します。
2. 社員が成長し、エンゲージメントが向上する
サーバントリーダーは、社員が何を実現したいか、どんな目標を掲げているかを把握し、そのために自分は何ができるかを考えて、社員の成長を支援します。失敗を恐れず果敢にチャレンジできる環境の中で、社員は自分自身の可能性や創造性をより発揮できるようになり、従業員エンゲージメントの向上につながります。
エンゲージメントの向上により、売上や利益の増加、離職率の低下など、企業にポジティブな影響をもたらすことがわかっています。
※参考:Employee Engagement: The Key to Realizing Competitive Advantage|DDI
サーバントリーダーシップ「10の特性」
サーバントリーダーには、次の「10の特性」があると言われています。
1. 傾聴
傾聴は、カウンセリングにも用いられる手法です。サーバントリーダーは、メンバーの意見や希望に耳を傾けることができます。同時に、自分自身の内なる声にも耳を傾け、「リーダーとしてメンバーのために何ができるのか」を考え部下を支援することで、自らの成長をも促します。
2. 共感
傾聴をするためには、自分をメンバーの立場に置き換えて、「何をしてほしいか」を考えることが大切です。人の気持ちに共感し、理解することで、部下はリーダーを信頼し、協力したいと思うようになります。
3. 癒し
チームメンバーの中には、仕事で失敗したり、人間関係がうまくいかなかったりして悩んでいる人もいるでしょう。サーバントリーダーは全体を見渡し、そうした傷ついた人を見つけ、癒すスキルが必要です。
4. 気づき
サーバントリーダーの特性としての「気づき」は、チーム全体はもちろん、自分自身への気づきを指します。自分と自部門を知ることで価値観・倫理観が多様化し、リーダーシップをさらに向上させます。
5. 説得
リーダーという職位を利用して部下を服従させたり、服従を強要したりするのではなく、リーダー本人の要素によって他者を説得できるスキルをいいます。
この点は、従来のリーダーシップのモデルとサーバントリーダーシップのモデルが明確に異なる要素の一つです。
6. 概念化
サーバントリーダーは、日常の業務の目標を超えて、自分の考えを飛躍させることができます。サーバントリーダーには、業務目標・経営目標の達成などの業務的なアプローチと、チームコンセプトの策定などの概念的な思考のバランスを保つことが求められます。
そのため、チームの目標やビジョンを明確にし、チームメンバーに的確に伝える能力が必要です。
7. 先見力
現在の状況がこの先どんな未来をもたらすか、見定めようとする能力も、サーバントリーダーには必要です。過去の教訓や現在の現実を見て、将来何が起こるかを予測し、トラブル回避などに活かします。
8. 執事役
大切なことを任せても「この人ならやれる」と信頼される人物は、執事役をまっとうできます。メンバーのために、自らは一歩引いて支援に徹する。そうした姿勢が信頼を呼びます。
9. 人々の成長に関わる
サーバントリーダーは、「メンバーが成長できる環境とは何か」「メンバーの成長のために自分ができることは何か」を考え、実行する能力を備えています。メンバーが持つ可能性を信じて、成長を支えます。
10. コミュニティづくり
メンバーそれぞれが成長できるコミュニティを形成します。メンバーは主体性を持ってコミュニティに参加し、相互に協力しあいます。
▼参照元
Character and Servant Leadership: Ten Characteristics of Effective, Caring Leaders|Regent University
スピアーズによるサーバントリーダーの属性|NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会
サーバント・リーダーシップを実践する方法について
サーバントリーダーシップのあるリーダーになるにはどのようなことを実践すればよいのでしょうか。
具体的な実践方法をあげてご紹介します。
1.リーダー自身の行動を改善する
リーダーにとって、自身を省みる姿勢は極めて重要です。サーバント・リーダーは、メンバーに奉仕し続けるためにはまず自らの成長が不可欠だと認識しています。メンバーの成長に真剣にコミットし、良い職場環境を築くためには、リーダー自身が学び、成長し続けることが基本です。
自己反省を通じて、より良いリーダーへと進化することが、チーム全体の成長にもつながるでしょう。
2.メンバーのキャリアビジョンやありたい姿の実現を支援する
部下が自ら行動し、成長できる環境をつくるためには、サーバントリーダーがメンバーの日々の業務を支援する必要があります。
サーバントリーダーは、メンバーのキャリアビジョンやありたい姿を理解し、その実現を支援する存在です。部下の目標に寄り添い、適材適所の担当領域や必要なフィードバックを提供することで、自己成長を促します。
信頼関係を築きながら、各人の強みを活かす環境を整え、メンバーとともに成長する姿勢を大切にします。
メンバーも自身が大切にされていることを実感することで、サーバントリーダーのために結果を出したいと奮闘するようになり、組織全体の活性化と生産性向上が実現します。
3.メンバーに感謝する
リーダーが日々業務に真剣に取り組むメンバーに対して、感謝の気持ちをしっかりと伝えることは、チームの心理的安全性を向上させる重要な要素です。感謝の表現はメンバーのモチベーションを高め、仕事への意欲を引き出します。
また、周囲に感謝を頻繁に伝える人がいることで、メンバー同士の間にも感謝や称賛の文化が根付きます。
こうした良好なコミュニケーションが促進されることで、チーム全体の雰囲気がより良くなり、協力し合う姿勢が生まれやすくなります。
朝礼で感謝の言葉を伝えたり、サンクスカードなどのツールを活用して感謝の気持ちを伝えるなど、継続的に感謝を伝え続けることで、チームのパフォーマンスも向上することが期待できます。
■ お役立ち資料
3ヶ月で10,000通のやり取りが生まれた株式会社BP様(ブライダル業界)の事例を紹介しながら、サンクスカード(サンクスメッセージ)の運用ノウハウを11ページで解説します。
サーバントリーダーシップを実現するには社内コミュニケーションの仕組みづくりが重要
リーダーが自らチームに奉仕することで信頼関係を築き、それぞれが自主性を持って仕事に取り組めるようになれば、生産性が高まります。
こうしたサーバントリーダーシップを実現するには、社内コミュニケーションが重要であることは言うまでもありません。リーダーからは、メンバーに向けて自分の想いを発信したり、賞賛したりすること。メンバーからは、リーダーに向けて自身の意見やアイデアを伝えること。
エンゲージメント経営プラットフォーム「TUNAG」は、アプリ上のタイムラインで相互にやり取りをしたり、サンクスカードを送ったりといった双方向コミュニケーションを叶えます。
サーバントリーダーシップの一環として、こうしたデジタルツールを導入するのも1つの手段です。