パーパスを策定したものの、社内の反応が薄いと感じていないでしょうか。従業員には「きれい事」と受け取られ、日々の業務とのつながりが見えていない。こうした悩みを抱える企業は少なくありません。では、パーパスを社内に根付かせ、社外からの共感につなげるには、どう進めればよいのでしょうか。本記事では、パーパスブランディングの意味や注目される背景、社内に浸透させる手順を解説します。
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本資料では、理念浸透を実現するための4つのステップと、理念を浸透させるための20の取り組みを解説しています。
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・経営理念を社内に浸透していきたい方
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パーパスブランディングとは、その名の通り「パーパス(企業の存在意義)」を軸に「ブランディング(ブランド価値を高める取り組み)」を行うことです。すなわちパーパスブランディングは、企業の存在意義を社会に示し、その考えへの共感を通じてブランド価値を高める戦略です。
商品の機能や価格ではなく、「なぜこの会社が存在するのか」に共感してもらうことで選ばれる理由をつくる点に、この戦略の本質があります。
パーパスブランディングという言葉は広く使われるようになりました。しかし、経営理念や従来のブランディングとの違いを明確に説明できる人は多くありません。まずは基本的な意味を押さえ、似た概念との違いを整理しましょう。違いが明確になると、自社で取り組む目的も見えやすくなります。

パーパスブランディングとは、その名の通り「パーパス(企業の存在意義)」を軸に「ブランディング(ブランド価値を高める取り組み)」を行うことです。
すなわちパーパスブランディングは、企業の存在意義を社会に示し、その考えへの共感を通じてブランド価値を高める戦略です。
商品の機能や価格ではなく、「なぜこの会社が存在するのか」に共感してもらうことで選ばれる理由をつくる点に、この戦略の本質があります。
パーパスと混同されやすいのが、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)です。いずれも企業の方向性を示す言葉ですが、答える問いがそれぞれ異なります。
用語 | 意味 | 答える問い |
|---|---|---|
パーパス | 社会から見た企業の存在意義 | なぜ存在するのか |
ミッション | 企業が果たすべき使命 | 何を成し遂げるのか |
ビジョン | 目指す将来の姿 | どこを目指すのか |
バリュー | 判断や行動の基準となる価値観 | どう行動するのか |
一般的に、パーパスはMVVを内包する上位の概念と位置付けられます。つまり、ミッションやビジョンはパーパスが決まっていて初めて成立するものであり、いずれもパーパスとひも付いていることが求められます。
従来のブランディングとパーパスブランディングは、手法以前に目的そのものが異なります。主な違いを表で比較してみましょう。
観点 | 従来のブランディング | パーパスブランディング |
目的 | 競争優位の獲得と利益拡大 | 社会からの共感と支持の獲得 |
訴求対象 | 顧客や取引先など利害関係者 | 利害関係を問わず社会全体 |
価値の捉え方 | 私にとっての価値(ME価値) | 私たちの価値(WE価値) |
表の通り、従来型は競争優位を通じて短期的な利益拡大を狙う戦略です。これに対しパーパスブランディングは、社会全体の共感を得て、長期的にファンを増やしていく戦略といえます。
なぜ今、多くの企業がパーパスを掲げるようになったのでしょうか。背景には、市場や社会で起きている四つの変化があります。
一つ目の背景は、商品やサービスのコモディティ化です。コモディティ化とは、市場の成熟によって商品同士の差別化が難しくなる状態を指します。
品質や機能の差が薄れると、顧客は価格で商品を選ぶようになります。その結果、多くの業界で低価格競争が激しくなり、利益を確保しにくい状況が生まれました。
こうした状況で注目されたのが、企業の存在意義による差別化です。「何を売るか」で違いを示せなくても、「なぜこの会社から買うのか」という理由は企業ごとに異なります。
パーパスブランディングは、価格以外で選ばれる理由をつくる手段として期待されているのです。
二つ目の背景は、消費者の価値観の変化です。近年は、モノを所有することよりも、体験や商品の背景にあるストーリーを重視する傾向が強まっています。
例えばスーパーの野菜売り場では、生産者の顔写真やこだわりを添えた商品を目にすることが増えました。価格が多少高くても、作り手の思いに共感して手に取る人は少なくありません。
日用品でも同じような変化が見られます。詰め替え用の商品や、環境に配慮した素材を使った商品を選ぶ人が増えています。性能の差ではなく、「環境に負担をかけたくない」という価値観が選択を左右しているのです。
こうした姿勢に共感した消費者は、それを商品を選ぶ理由にします。言い換えれば、企業の姿勢が伝わらなければ、共感によって選ばれる機会を逃してしまうのです。
三つ目の背景は、投資家の評価基準の変化です。環境・社会・ガバナンスに配慮した企業を選ぶESG投資が広がり、財務数値以外の要素が重視されるようになりました。
この流れは、投資先を選ぶ段階にとどまりません。社会課題への取り組みに消極的な企業から投資を引き揚げる、ダイベストメントと呼ばれる動きも見られます。
国内でも制度面の変化が進んでいます。2023年1月の内閣府令改正により、2023年3月31日以降に終了する事業年度の有価証券報告書から、人材育成の方針や社内環境整備の方針などの開示が求められるようになりました。
企業が人や社会にどう向き合っているかが、投資判断の対象になっているのです。
出典:「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」等の公布及びパブリックコメントの結果について:金融庁
四つ目の背景は、求職者の情報収集の変化です。求人票や採用サイトだけで企業を判断する時代ではなくなりました。
現在の求職者は、SNSや口コミサイト、社員の評判からも情報を集めています。こうした情報は企業がコントロールできないため、社内の実態がそのまま社外に伝わりやすくなっています。
このような状況では、掲げたパーパスと職場の現実がずれていれば、求職者にすぐ見抜かれてしまいます。採用の観点から見ても、パーパスを社内で実践している状態をつくることが欠かせないといえるでしょう。
パーパスブランディングの効果は、顧客からの評価といった社外面だけにとどまりません。判断軸の明確化や従業員のエンゲージメント向上など、組織の内側にも効果をもたらします。ここでは代表的な四つの効果を見ていきましょう。
パーパスを定める大きな効果は、自社が実現すべきことが明確になる点です。存在意義が言葉になることで、判断に迷ったときに立ち返る軸ができます。
この軸があると、新規事業の検討や施策の優先順位付けでも、「パーパスに照らしてどうか」という共通の基準で議論できます。部門ごとにばらばらだった判断がそろい、事業や施策に一貫性が生まれるのです。
さらに、この一貫性は競合との差別化にもつながります。「当社らしさ」を言葉で説明できる状態は社内の合意形成を早め、経営判断のスピード向上にも寄与するでしょう。
パーパスに基づく活動を続けると、顧客からの信頼が少しずつ積み上がっていきます。共感した顧客は一度の購入で終わらず、長く自社を支えるファンになってくれるでしょう。
一例として、花王はパーパスである「豊かな共生世界の実現」への思いを、世界の子どもたちの絵を通して伝えるため、2010年から「花王国際こども環境絵画コンテスト」を開催しています。これまでに約100の国・地域の子どもたちから、19万点を超える応募が寄せられました。
この事例が示すのは、信頼を生むのは一度きりの広告ではなく継続的な活動だということです。パーパスブランディングは、時間をかけて効果が表れる施策として捉える必要があります。
参考:花王 | 「第17回 花王国際こども環境絵画コンテスト」募集開始
エンゲージメントとは、従業員が会社に共感し、自発的に貢献しようとする意欲のことです。パーパスが浸透すると、従業員は自分の仕事が社会にどう役立っているかを実感しやすくなります。この実感が、仕事のやりがいにつながるのです。
社内の共感が高まれば業務への主体性が増し、生産性や業務の質も向上しやすくなります。社内浸透は、パーパスブランディング全体を支える土台といえるでしょう。
パーパスが明確な企業には、その考えに共感する人材が集まりやすくなります。背景には、報酬や待遇だけでなく、仕事の意義で会社を選ぶ人が増えていることがあります。
この効果は、入社時点で終わるものではありません。社員が誇りを持てる会社は社外からも評価され、その評価がさらに社員の誇りを高める結果につながります。
この循環が回り始めると、価値観の合う人材の入社が増え、定着率の向上も期待できます。早期離職による再募集が減れば、採用コストの抑制にもつながるでしょう。
パーパスブランディングで重要なのは、社外への発信より先に社内浸透から始めることです。社内に実例がないまま発信を強めると、言葉と実態のずれが目立ち、かえって信頼を損ないかねません。
ここからは、パーパスブランディングを具体的に進める四つの手順を解説します。

最初の手順は、既存の事業や制度がパーパスとどう結び付いているかを棚卸しすることです。
棚卸しでは、事業・制度・評価・行動の四つの観点で確認します。事業であればどの社会課題の解決に役立っているか、制度であればパーパスを後押しする人事制度があるかを確かめます。さらに、評価項目にパーパスの要素が含まれているか、現場にパーパスを体現した実例があるかも確認しましょう。
棚卸しを進めると、すでにパーパスを体現している活動が見つかるはずです。一方で、パーパスと矛盾する制度や慣習も浮かび上がるでしょう。
見えてきた活動のうち、自社の強みと社会課題が重なる部分こそ、パーパスが最も説得力を持つ領域です。発信内容はここを起点に組み立てましょう。
次の手順は、従業員一人一人が自分の仕事とパーパスの接点を語れる状態をつくることです。全社メッセージを繰り返すだけでは、パーパスは「経営層の言葉」のままで終わってしまいます。
自社で始める場合は、部署単位でパーパスを自分たちの言葉に翻訳することから着手するとよいでしょう。その上で、1on1や朝礼で仕事との接点を話し合い、生まれた実践エピソードを社内報で共有します。体現した行動を感謝や表彰で称賛すれば、一つの実践が次の実践を生む流れができます。
例えば経理部門なら、「正確な数字で経営判断を支えること」がパーパスへの貢献になるかもしれません。現場の言葉で語れるかどうかが、浸透の分かれ目です。
三つ目の手順は、宣言と行動を一致させることです。パーパスを掲げただけで行動が伴わない状態は、パーパスウォッシュと呼ばれます。
パーパスウォッシュが問題なのは、言葉と経営実態のずれが、消費者や従業員、投資家からの信頼を損なう点にあります。社内では「どうせ言葉だけ」という不信が広がり、浸透の取り組みそのものが空回りしかねません。
こうした事態を避けるには、社外発信のタイミングを見極めることが重要です。社内に実例が蓄積してから発信を強めるのが安全でしょう。併せて、経営判断の場面でも「パーパスに照らしてどうか」を説明する習慣をつけることが求められます。
最後の手順は、パーパスを人事の仕組みに組み込むことです。意識づけだけに頼ると、担当者の異動や時間の経過とともに取り組みは薄れていきます。制度に落とし込まれて初めて、パーパスは日常の行動基準になるのです。
採用面では、社会的な要請を踏まえて「求める人物像」を定めることが重要です。成果を上げる社員の行動特性(コンピテンシー)を分析して基準にすれば、パーパスに沿った人物像を具体化できます。この人物像を、求人票や面接の質問に反映させましょう。例えば「当社のパーパスと、ご自身の経験の接点を教えてください」と問う方法があります。
育成面では、評価項目にパーパスを体現した行動を加えるのが有効です。何が評価されるかが明確になれば、従業員の行動は自然と変わっていくでしょう。
パーパスブランディングの出発点は、社外への発信ではありません。従業員が自分の仕事とパーパスの接点を語れる状態をつくることです。社内で共感と実践が積み重なれば、社外への発信にも説得力が生まれます。その結果、顧客や投資家、求職者からの信頼が高まり、事業成長につながっていくでしょう。
とはいえ、社内浸透を継続するには、実践を共有し称賛し続ける仕組みが欠かせません。組織改善プラットフォーム「TUNAG(ツナグ)」を活用し、パーパスを日常の行動につなげる組織をつくりましょう。
TUNAG(ツナグ) は、社内報やサンクスカード、各種社内制度の運用を一つのアプリにまとめられるサービスです。パーパスを体現した現場の実例を社内報で共有し、感謝のメッセージで称賛することで、本記事で紹介した施策を日常業務の中で無理なく続けられます。