ミスコミュニケーションとは?発生する原因や防ぐためのポイントを解説
ミスコミュニケーションの意味とは
ミスコミュニケーション(miscommunication)とは、コミュニケーションがうまく行かずに、情報を伝えた人と受け取った人の間に認識の相違(ズレ)が生じてしまっている状態を指します。伝えた側は「ちゃんと伝えたつもり」でいます。一方、受け取った側は「ちゃんと理解したつもり」でいるかをよく理解できないまま、うやむやにしているような状況です。
そうしたことから後になって問題が発生し、認識の相違が明らかになったり、「言った、言わない」で争いになったりします。
ディスコミュニケーションとの違い
ディスコミュニケーション(discommunication)とは、「コミュニケーションをすべき状況でコミュニケーションをしない(したくてもできない)」状態を指します。ミスコミュニケーションの場合は(誤解は生まれているものの)一応コミュニケーションが行われていますが、ディスコミュニケーションではそもそもコミュニケーションが行われません。
コミュニケーションエラーとの違い
コミュニケーションエラー(communication error)とは、コミュニケーション上のエラー(ミス)が生じている状況の総称です。コミュニケーションエラーには、ミスコミュニケーション(認識のズレ)、ディスコミュニケーション(コミュニケーションの欠如)、誤情報伝達の3種類があります。
誤情報伝達では、伝えた側と受け取った側の間に認識のズレはない(情報を同じように理解している)ものの、そもそも伝えた側が誤った情報を持っており、それが受け手にそのまま伝わってしまっています。
コミュニケーションギャップとの違い
コミュニケーションギャップ(communication gap)は、ミスコミュニケーションの同義語(言い換え表現)です。情報の送り手と受け手の間に、属する世代・文化や知識量、理解力などの明確な相違・格差があるケースに対して、コミュニケーションギャップという呼称が使われることが多いようです。
参照:コミュニケーションギャップとは? 意味や使い方 - コトバンク
ミスコミュニケーションが発生する4つの原因
ミスコミュニケーションの原因としては、「情報の不足・省略」「情報の歪曲」「軽率な一般化」「質問しづらい環境」などがあります。これらの原因は独立したものではなく、互いに絡み合ってミスコミュニケーションを発生させます。
参照:ミスコミュニケーションが起こる原因と4つの対策 | VWS blog(ブログ)
情報の不足・省略
コミュニケーションがきちんと成立するために必要な情報が欠けている(省略されてしまっている)と、不足している部分を受け手が推測・憶測で補わざるを得ないため、ミスコミュニケーションが発生しやすくなります。
例えば、具体的に何なのかを言わずに「あれ」「例の件」と言ったり、期限日を明確にせずに「早めにやっておいて」と言ったりするような場合です。
情報の歪曲
受け手側が情報を歪めて受け取ることでミスコミュニケーションが発生することもよくあります。情報が不足していると受け手が自前で補わざるを得ないために歪曲が生じやすくなりますが、情報が不足しているとは言えない状況でも、受け手の思い込みで情報が歪められてしまうことがあります。
あまり聞き慣れない品物の名前を日頃扱い慣れている別の品物の名前と取り違えるという単純なミスも一種の歪曲ですし、日頃関係のよくない上司からの褒め言葉を(嫌みったらしい言い方ではないのに)嫌みと取り違えるといった例もあります。
軽率な一般化
人は自分が経験したことや見聞きしたこと、身につけたことをもとに「○○は一般的に××だ」と決めつけてしまうことがよくあります。例えば、自分のいる部署での指示の伝え方や用語の使い方、業務の進め方などが一般的に通用するものだと思い込んでいるような場合です。
別のやり方が一般的になっている別の部署に異動すると、省略や解釈の仕方が異なるために、様々なミスコミュニケーションに遭遇することになります。外国人と日本人が一緒に働く場合にも、互いに自分の文化を一般化するところから、大小様々なミスコミュニケーションが発生します。
一般化は省略や歪曲の背景にある、より根本的な原因とも言えます。自分の立場を一般化するあまりに相手の立場に立てず、一方的な省略や歪曲をしてしまいがちになるのです。
質問しづらい環境
情報を受け取ったときに不明な点や理解できない点があった場合、送り手に質問して不足している情報や説明を補ってもらえば、ミスコミュニケーションとならずに済みます。部下・後輩から上司・先輩に質問がしにくい職場環境だと、上司・先輩の言葉に情報不足があった場合にうまく補うことができず、ミスコミュニケーションに陥ってしまいがちです。
ミスコミュニケーションを防ぐための4つのポイント
ミスコミュニケーションを防ぐためには、各自の意識改革と組織的な改革(環境・ルールづくりやツール導入)が必要です。
5W1Hを意識し具体的な言葉・数値で伝える
「いつ/いつまでに・どこで・だれが・何を・なぜ・どのようにするか」という「5W1H」を意識し、相手にとって必要な要素は省略せずに、できる限り具体的な言い方で伝えることが重要です。「なるべく早く」などの曖昧な言い方は避け、「明日の○時までに」など、具体的に(数値で言えるものはなるべく数値で)表現します。
質問がしやすい環境を作る
人はどうしても自分の立場から省略・歪曲・一般化をしてしまいがちなので、情報の送り手と受け手の間で気軽に質問できる(受け手は不明点などを質問でき、送り手は理解確認の質問ができる)環境を作ることも必要になります。
コミュニケーションルールを作る
ミスコミュニケーション防止策をコミュニケーションのルールとして定式化し、社内に浸透させることにより、対策を組織的なものとすることも重要です。社内のミスコミュニケーション発生事例を蓄積して共有し、ルールの編成・改善に活かすことで、ルールをより実効性のあるものにしていくことができます。
コミュニケーションツールの活用
口頭のコミュニケーションでは省略や歪曲などが生じやすく、後で「言った、言わない」の衝突も起こりがちです。文字による情報伝達・質問・意見交換が手軽に行え、コミュニケーションの履歴を見やすい形で保存・管理できるコミュニケーションツールをうまく活用すると、ミスコミュニケーションの予防や失敗事例の蓄積、問題点の明確化と共有が効率的に行えます。
ミスコミュニケーションが社内に及ぼす影響
コミュニケーションはビジネスのあらゆる側面に関わっているため、ミスコミュニケーションの影響も多方面にわたります。ここでは主な影響を簡単にまとめます。
業務の遅延やコスト増加
ミスコミュニケーションのために指示がうまく伝わらないと、業務が遅延したり、修正のために時間・コストがかかったりします。ミスコミュニケーションが重なると、プロジェクトの頓挫や生産性の低下にもつながります。
対外的な信用低下・機会損失
取引先や顧客との間でミスコミュニケーションが発生し、原因が主に自社側にあった場合、信用低下が引き起こされ、機会損失につながる恐れがあります。問題の大きさによっては損害賠償責任などが発生することもありえます。
従業員のモチベーション・エンゲージメントの低下
ミスコミュニケーションによるフラストレーションは、従業員のモチベーションやエンゲージメントを低下させる要因のひとつです。ミスコミュニケーションが横行しているような職場環境は、全般的な積極性・生産性の低さや人材の定着率の悪さにつながります。
職場でのミスコミュニケーションの例・ケース
職場において起こりがちなミスコミュニケーションの例を紹介します。
暗黙のルールがあることで発生するケース
就業規則などで明文化されていなくても、当たり前となっている暗黙のルールがどんな職場にもあるものです。例えば、「始業時刻の○分前までに出勤する」「自分に割り当てられた仕事が終業時刻までに終わっていても、残業がないか上司に確認してから退勤する」「残業する同僚がいれば、手伝いを申し出る」といった例が代表的です。
新卒社員や別の会社・業種からの転職者、外国人の新入社員などが、こうしたルールを知らずに、時刻ぎりぎりに出勤したり、自分だけ定時で退勤したりすることがあります。そうしたときに、上司・先輩社員が一方的な言い方や遠回しな言い方で非難したり、そのルールの背景や必要性を説明せずにただきまりに従うことを要求したりして、なし崩し的に新入社員を矯正しようとする例がよく見られます。これは一般化や情報の省略によるミスコミュニケーションと言えます。
伝え方に問題があるケース
「最近よく頑張っているね」「最近たるんでいるんじゃないのか」といった曖昧な言い方で部下を褒めたり叱ったりしても、言われた方としては上司がどんな認識でそうしたことを言っているのか理解できません。不明点を質問するのも難しい状況なので、部下としてはすっきりしないままで、上司だけが「ちゃんと褒めたつもり・叱ったつもり」になってコミュニケーションが終了してしまいます。
そのような状況では、上司の言葉を今後に活かすことは困難ですし、叱られた場合にはフラストレーションが残ります。伝言によりミスコミュニケーションが引き起こされるケースも少なくありません。例えば、部下が提出した資料について「内容はいいが、見た目を工夫してもっとわかりやすくしてほしい」と上司が考え、その旨を伝えるよう別の部下に頼んだところ、頼まれた部下が「見た目を工夫して」という情報を重要でないと捉え(つまり上司の言葉を歪曲し)、勝手に省略して「もっとわかりやすく修正して」とだけ伝えてしまうようなケースです。
言われた方はどうわかりやすくしたらよいのかわからず、困ってしまうでしょう。さらに言えば、上司の言葉がそのまま伝えられたとしても、「見た目を工夫して」では言い方がまだ曖昧かもしれません。もし「図や表を使って」と上司が考えたのであれば、そう具体的に言うべきなのでしょう。
参照:日本人社員も外国籍社員も職場でのミスコミュニケーションを考える ~動画教材を使った対話による学びの手引き~ | 経済産業省
まとめ
当コラムでは、ミスコミュニケーションの意味や原因、対策などをまとめてきました。ミスコミュニケーションが連鎖すると、業務の遅延や従業員のモチベーション・エンゲージメントの低下につながるため、注意が必要です。
発信側の少しの言葉の欠如や、受け手の情報の歪曲で、無意識のうちにミスコミュニケーションンの状態に陥る可能性があります。ミスコミュニケーションを防ぐためには、コミュニケーションルールを作成したり、情報不足を補うためのコミュニケーションをこまめにとることが重要です。
当コラムで紹介した原因や対策方法を参考に、ミスコミュニケーションの防止に努めてみてはいかがでしょうか。